(仮)フロンティア・コンフリクト   作:真夜中都市屋

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第25話 引きこもり、鬼に出会う。

 

 

 

 姉が余計なお世話を焼いているなど、露知らずラスティ・ウルフェンシュタインは自室に引きこもっていた。

 

 彼は今、あるゲームに熱中している。それは『鬼ヶ島』が同盟を結ぶと共に技術提供も兼ねて開設された『鬼ヶ島まぁけっと』の一品「ギャラクシファイター」という格闘ゲームだった。

 

 そのゲームのシステムによってラスティは仮想空間の中に自分自身の体を作り、それを分身として操っていた。

 画面の向こうで同じ姿をしたもう一人の自分が化物と対峙する。彼は繰り出される打撃を避けながら反撃を繰り出した。

 

 

「よしっ……これでトドメだっ!!」

 

 

 彼が放った一撃は見事に命中する。すると画面には勝利の表示が映し出された。

 

 

「やったー!!勝ったぞぉ!」

 

 

 画面の前でガッツポーズをする。その様子を腕を組み眺めている存在がいた。それは他ならぬ引き篭もりになった原因、鬼ヶ島強慈郎だった。

 

 

「なるほど……お前がラスティか」

 

 

 背後から声を掛けられ、驚き振り返る少年に対して彼は優しく語り掛ける。

 

 

「だ、誰だ?」

 

 

 不思議そうな顔で見つめてくるラスティに微笑みかけると彼は言葉を返す。

 

 

「ん?わからないのか」

 

「わかっていたら聞かない」

 

「そうだな。まぁ、児童相談を受けたって感じだな」

 

 

 聞きなれない言葉に少年は首を傾げる。

 

 

「あ、あぁ?自動装弾……?」

 

「わからないならいい。とりあえず、話をしようか」

 

 

 その言葉にラスティは目の前の大男を警戒しながらも答える。

 

 

「お、おう……?」

 

「よし、来い」

 

 

 強慈郎はその返事を聞くと、彼の手を無理やり引いて部屋から出た。

 

 

「いてっ……お、おい!おっさん!どこに連れて行くつもりなんだ?」

 

 

 不安げに尋ねるラスティに対し彼は笑顔ではいるものの、額には青筋が浮いている。

 

 

「おっさんだと?これでも23歳だ。言葉には気を付けろよ小僧」

 

「お、同い年……だと?」

 

「は?……黙ってついてこい」

 

 若干のショックを受けながら強慈郎はラスティを掴む手に力を込める。

 それ以降お互い口を開くことはなかった。

 

 

「ついたぞ」

 

 

 しばらく歩き、扉の前に立ち止まる。中に入るように促されるまま入室するとそこは広々とした空間が広がっていた。床には畳が敷き詰められ、そこはまるで道場だった。

 

 

「な、なんだよ?こんなとこ連れてきて……ッ」

 

 

 戸惑う少年をよそに、彼は構えを取り戦闘態勢へと入った。それを見たラスティも慌てて構えを取るが彼との実力差は圧倒的だと直感が告げる。同時に強慈郎が襲い掛かった。

 

 

「くっ!」

 

 

 かろうじて攻撃を防ぐものの防戦一方になってしまう。

 

 

「どうした?その程度か?」

 

 

 挑発するように笑う彼に対してラスティの内心には怒りが湧いていた。

 

 

(くそっ……なんで僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ!)

 

 

 悔しさと怒りが入り混じった感情のまま、少年は渾身の一撃を放った。

 

 

「ぶっ飛べ!!」

 

 

 ラスティの放った拳は強慈郎の顔に向かって一直線に進むが……その攻撃が届く前に彼の体は宙を舞った。

 

 

「ぐはっ!?」

 

 

 地面に叩きつけられ肺から空気が抜ける。

 

 

「な、なんで……」

 

 

 困惑する彼に対し、強慈郎は冷たい視線を向けながら口を開いた。

 

 

「お前は弱い」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間ラスティの中で何かが切れる音がした。

 

 

「ふざけるなぁ!」

 

 

 怒りに身を任せた一撃が繰り出されるが、強慈郎はそれすらも容易く躱すと足を引っ掛ける。

 

 

「うわっ!?」

 

 

 バランスを崩した彼はうつ伏せに倒れる。それを見下ろしながら吐き捨てるように言った。

 

 

「お前は弱いんだよ」

 

 

 その言葉に怒りを感じながらもラスティは何も言い返せなかった。何も言えないでいる彼に向かってさらに追い討ちをかけるように言葉を続ける。

 

 

「お前の力じゃ勝てない」

 

「……くそ、いきなり出てきてなんなんだよもう!」

 

「たったの一度の敗北で挫けたのか」

 

「な、なんだと……?」

 

「そんなに悔しかったか。あの負けが」

 

「……」

 

 

 沈黙が続く中、強慈郎は再び口を開くと諭すような口調で語り始めた。

 

 

「一回負けただけで大の大人がうじうじして、全てを投げ出すのか?あんだけ偉そうに啖呵を切ってボロボロに負けたのがそんなに悔しかったのか?」

 

「うるさい!黙れ!」

 

「はっ、遠吠えは一丁前だな負け犬」

 

「黙れッ!」

 

 

 ラスティの叫び声が部屋中に響き渡る。彼の目には涙が浮かんでいた。それを見てもなお強慈郎は続ける。

 

 

「もう一度聞くぞ、お前が目指す強さとはなんだ?」

 

「目指す……強さ……」

 

 

 その言葉を聞くと少年は拳を強く握り下を向く。小さな声でぽつりと呟くとそのまま黙り込んでしまった。そんな彼に対して彼はさらに続けた。

 

 

「なんだ、答えられないのか?」

 

「……」

 

 

 何も答えない少年を見てため息をつくと、彼は静かに口を開いた。

 

 

「ならばお前は強くなれないだろう」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、ラスティは叫ぶ。

 

 

「お前に……お前に何がわかるんだよ!!」

 

 

 怒りに任せて殴りかかるがあっさりと躱されてしまう。そしてそのまま投げ飛ばされ、床が振動する。強慈郎はそんな少年を見下ろしながら語り続ける。

 

 

「確かに俺はお前の気持ちは分からんな。負け犬の気持ちなんざ分かりたくもない。……だが、お前が強くなりたいという心なら分かる」

 

 

 そう言って手を差し伸べるが少年はそれを振り払った。

 

 

「……なんだよそれ!偉そうにしやがって!」

 

 

 ラスティは立ち上がると再び殴りかかろうとした。しかし、その拳を受け止めると彼は嘲笑する。

 

 

「はは、引きこもり偉そうと言われてもな。俺はここに来て間もないが、周りの者を見たぞ。ここにいる奴は大体の奴がお前より偉い。守る者の為に全力で努力している者たちばかりだ」

 

 

 皮肉を言われ惨めな気持ちになりつつも、ラスティの脳裏に浮かんだのは姉の姿。彼女はいつも前線に立ち、その強さで自分を守ってくれていた。己の身勝手さから招いた結果からも身を挺して庇ってくれた。

 

 

「でも……」

 

 

 と彼は続ける。

 

 

「俺は姉貴みたいに強くないんだよ……どれだけ頑張っても届かないんだ」

 

「なら、強くなればいい」

 

 

 その言葉にラスティは一瞬言葉を詰まらせるがすぐに反論する。

 

 

「簡単に言うな!俺は頑張った、やったさ!あの戦いの後だって、死ぬ気で勝とうと何度も戦闘を見直した!努力で如何にかなる次元じゃない!それだけはわかったんだ!くそ!!」

 

 

 血が滲むほど握りしめた拳を叩きつけ、悔しさを吐き出す。少年はただ、家族の為に、仲間の為に強くなりたいだけであった。

 

 強慈郎はラスティに近づくと、その背をぽん、と叩く。

 

 

「俺の星には『鉄は熱いうちに打て』という諺がある」

 

「は?」

 

「やめるな。諦めるな。それだけ熱くなれるなら、後は行動あるのみじゃないか?」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、ラスティの中に微かに、だが確かに熱い気持ちが湧いてきた。ような気がした。今まで感じたことのない不思議な感覚だった。胸の奥が熱くなる感覚に戸惑いつつも少年は言葉を放つ。

 

 

「俺に、どうしろってんだ……」

 

 

 その問いに彼は迷いなく答える。

 

 

「俺が叩き直す。お前は筋がいい、すぐ強くなるさ」

 

 

 彼の言葉を聞いたラスティは思わず笑ってしまった。今までこんな気持ちにさせられたことがあっただろうか?いや、一度もなかったはずだ。彼の真っ直ぐな目が自分を見てくれていることが何よりも嬉しかったのだ。だからこそこのチャンスを逃すわけにはいかないと思った。

 

 

「なんなんだよ、お前。いきなり出てきて、なんでそこまで……」

 

「気に入ったからだ。お前はやれば出来る」

 

「……そうか。なら、もう少しだけ頑張ってみるよ」

 

 

 その言葉を聞くと強慈郎は満足したような笑みを浮かべると握手を求めた。差し出された手を少年が握ると、彼は再び言葉を発した。

 

 

「改めて、俺は鬼ヶ島強慈郎だ。宜しくな」

 

 

 ラスティはその名前を聞くと、手を振りほどく。

 

 

「だぁっ!?お前ッ!あの時の化物じゃねぇか!くそ、なんだよお前!!なんでここにいるんだよ!?」

 

「は?まだわかってなかったのか?」

 

 

 強慈郎が首をかしげると、少年は興奮と混乱を抑えようともせずに言葉を続ける。

 

 

「お前!俺の『C-X』!返せよ!」

 

「は?」

 

「だから!俺のシ・ク・ス!黒い奴だ!」

 

「はて、黒い奴……」

 

 

 喚きあげるラスティを見ながら、少し考えた後、胡散臭い眼鏡の博士を思い出していた。だが、あれは黒井が開発したものだ。腕を組み、天井を見上げる。

 

 

(……ん?いや、もう一体居たな)

 

 

 ようやく、奪い取った機体の事を思い出した。イリシウムに任せていたからすっかり忘れていたのである。

 

 

「あ、あぁ……あれか。悪いな。もうお前に返却されてるもんだと思ってた。すまん」

 

「え、あ、いや……そそうなのか?……なら、別に良いけど」

 

 

 あまりにも素直な謝罪を受け、拍子抜けした。強慈郎が素直に謝罪するとは思わなかったのだ。

 その少年はもはやどんな感情を抱くか整理もつかず、とりあえず深呼吸をすることにした。思い出すように謝罪を述べる。

 

 

「……その、こっちも悪かった。不意打ちをするような真似をして。姉貴からあの戦闘が終わってから、聞いた。あ、姉貴も!姉貴も戦闘の最中に知ったみたいなんだ……すまなかった」

 

「お前らに遅れて情報を伝えた奴なら大方予想は付いている。俺も後から知らされたからな」

 

「な……、そうだったのか」

 

「あぁ、お互い振り回されただけだ。たく、嫌になるよな」

 

 

 彼が軽く微笑むとラスティは途端に黙り込み、意を決したように口を開く。

 

 

「俺はラスティ・ウルフェンシュタインだ。改めて、よろしく頼む」

 

「鬼ヶ島強慈郎だ。よろしくな、ラスティ」

 

 

 二人は固く、握手を交わした。




こいつ主人公にしてぇ。
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