悪食龍人   作:うんこ

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第2話

お腹が空いて仕方無い、どこかに食べるものは…

 

ふと耳に入ったせせらぎの音に気を取られ水路の先が気になった。

 

食べ物が無くなった水路に膝まで足を入れた途端体が強張る。足元から伝わる冷気によって体がぶるりと震える。

 

じゃぶじゃぶとしょっぱい水をかき分けかき分け進み海を見渡す。

 

目に入って来たのは生き生き泳ぐマグロの群れ、30メートルはありそうな巨大な青みがかった烏賊、龍の様な巨大な海蛇。

 

マグロは刺し身、烏賊は丸焼き、海蛇は活け造り、文字通り山の様なサイズになったそれらを喰う事ができるのならどんなに幸せだろう。

 

 

 体格差的に歯が立たないだろうけどもし仕留めてあの巨体を心ゆくまで堪能できたらと想像しただけで口の中が涎でぐちゃぐちゃになるわね…

 

喰えもしないのにプリプリとしたお腹や歯ごたえがありそうな筋肉、見るからに新鮮なゲソを見せつけられるのは生殺しだわ…

 

いけないいけない、餓死するまで喰えもしない餌をながめている趣味は無いしもっと現実的な案を考えましょう。

 

とりあえずここを出て…

 

そう思った途端烏賊の咆哮が鳴り響き巨大烏賊が海蛇に踊りかかった。

 

そりゃああの海蛇は美味しそうだし当然食べるために襲いかかるわよね。痛いほど、本当に痛いほど気持ちは分かるわ。

 

漁夫の利を得られないかと思い私は彼らの戦いを見守ることにした。

 

烏賊の方が攻撃能力、タフさ、速さ全てにおいて上回るものの海蛇もどきも負けてはいない、とぐろ状に身体を丸め、背中を青い稲妻を纏わせた。巨大な電力の全てを解き放つ。

 

落雷の様な爆発的なエネルギー量を持ったそれが発動し、その電熱は周囲の海水を瞬時に沸き上がらせる。

 

これにはさすがの巨大烏賊も怯んだものの地力が違い過ぎる。

 

お互い殴り、ぶつかり、激突する中徐々に徐々に海蛇は追い詰められていく。

 

動きが鈍った海蛇に烏賊が大技を放った

 

大烏賊の全身から赤黒い稲光が迸り触腕先端から赤黒い雷が滲み出る

 

溢れ出るエネルギーを光線の如く連続で照射し、

口内に集約したエネルギーを超極太ビームとして解放した。

 

そのビームは海蛇の頭部を貫通して爆散させ、空を覆う分厚い雲を吹き飛ばし天に穴を明けた。

 

終わってしまえば烏賊の一方的な勝利だった。

 

共倒れになってくれればどちらも美味しく頂けたのに流石にそう上手くはいかないわよね。ハァ…期待していた分余計にがっかりだわ。

 

私のお腹も悲しさのあまり地鳴りのような泣き声を上げる。

 

ハァーとため息をつく私の耳にズルズルズリュズリュと何かが這い回るような音が入ってくる。

 

こいつ今の音を聞いて洞窟の中に入って来やがった。

 

どう考えてもこの化け物相手に戦闘は不可能ね、隠れるしか無い。

 

壁に背中をつけて張り付き息を殺して気づかれないようにするものの大烏賊のゲソは洞窟の中にいる生物を探してぬらぬらと動き回った。

 

それほど時間がたっただろう。一瞬だったかもしれいし10分程だったかもしれない。

 

やっと諦めたらしい烏賊のゲソがズルズルと引っ込められていく。

 

目の前を通り過ぎていくプリプリとした触手にどうしようもないほど食欲が刺激され飛び付きたくなるが我慢。

 

うっかり我慢できずにかぶりついてしまったらここまで耐えたのが水の泡だわ。

 

 

しかしアレね、あの烏賊は食べものの分際で私に食欲を向けて来やがった、私を食うつもりで触手を伸ばして来やがった。

 

あのクソみたいな烏賊はいつか必ず徹底的に痛めつけて産まれて来たことを後悔させてから喰ってやる。

 

決意と共に私は烏賊に背を向け歩き出した。

 

■□

 

ぐうぐうと騒ぎ立てるお腹をさすってなだめながら歩いていくと洞窟を抜けた

 

林のような開けた場所に出た

 

 

海の幸の次は山の幸

 

想像したら余計にお腹が減ってきたわ。

 

口元にべったりとついた血を洗い流すようにダラダラと涎が溢れてくる

 

 

食べられてくれないクソみたいな烏賊とは違う新たなごはんを楽しみにしてウキウキ気分で私は林の中に突入した

 

 

★☆★☆

 

ごはんが見つからないわ…

 

もう3時間も何も口にしていない…

 

林に入ってから口にしたのは少量の木の実だけ

 

「お腹が空いたわ…」

 

そうぼやきながらうろついている哀れな哀れな私を神様も憐れんだのか私の右側の茂みが揺れた。

食べ物!そう思った途端茂みに潜伏していたごはんが飛びついてきた。

 

私の喉笛へ噛みつこうと二足歩行のエリマキトカゲもどきが大口を開け飛び上がる。

 

右腕を盾にしつつ頭に噛みつかれるのを防いだもののかぶりつかれた右腕には激痛が走る。

 

痛い!痛いわ!なんて私は不幸なのだろう!ただでさえ空腹で死にそうなのに意識が飛びそうな程の激痛まで味わうなんて!

 

怒りのあまりトカゲもどきを睨みつけるが視界の端に入った柔らかくてとってもおいしそうな喉元に徐々に視線が吸い寄せられる。

 

一瞬で怒りが食欲に塗り替えられる。

 

腕に噛みついている狼ごと腕を大きく掲げがら空きになった喉元にかぶりつき噛みちぎり飲み込む。

 

痛みのあまり飛び上がってあとずさりキャインキャインと哀れっぽく喚くトカゲ肉。

 

怯んだトカゲ肉を出刃包丁で殴りつけ地面に倒してから半身を踏みつけにしつつ出刃包丁でギコギコと真っ二つにする。

 

「肉が!尊い尊い私の!尊い尊い腕様に噛みつきやがって!でも心優しい私は怒らないわ!あなたはとっても美味しそうだもの!その肉で贖ってよ、ねえ!」

 

ボトボトと臓器が垂れるが構わずにゴリゴリと両断する

 

出刃包丁で真っ二つに切られたトカゲは両断されているのにも関わらず上半身も下半身もピクピクと動いている。

 

すごい生命力ね

 

もっともバラバラにされていることに変わりは無いからどっかの捕食者に襲われても抵抗できないだろうけど。

 

聖女のほほえみを携えてゆっくりとトカゲの胴体を持ち上げる。

 

涎が止まらないし私の尻尾も歓喜のあまりぶんぶんと揺れている

 

 

「それじゃあいた☆だき☆ます!」

 

切断された下半身を上品に食べ尽くして残った上半身を噛み砕いて噛みしめる。

 

「思ったより美味しくも無いし骨と皮ばっかりで肉が全然無いわね」

 

 

 

最後に残った飛び散った内臓も拾い上げて口内でミンチにして飲み込んだ

 

〝ジャギィを完食しました+213

 

これくらい食べれば少しくらいは腹の虫も黙ると思ったのにぐぎゅるるるるるぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅと騒音レベルの悲鳴を上げる腹の虫は絶好調。

 

ただでさえお腹が空いてるのにこの音を聞くだけで余計にお腹が空いてくる。

 

イライラするわね…私は寛容な方だけどこのクソみたいな腹の虫はいつか私の腹から引きずり出して喰ってやりたいわ

 

このイライラを収めるためにも早く何か食べないと…

 

そう考えた途端新たな餌が私の顔に飛びついてきた。

 

うふふ、日頃の行いが良いとこんなご利益もあるのね

 

頭に張り付いた50センチ程の大蜘蛛の頭を食いちぎり咀嚼し嚥下する。

 

頭を失った大蜘蛛がジタバタと暴れているけど彼の抵抗は今の私の食欲を刺激するだけに過ぎない。

 

踊り食いにしましょう。

 

ゲテモノ程美味しいとは言うけどお味はどうかしら

 

大口を開けかぶりつく。ガブッ、クチャクチャ

 

 

悪くない味だわ!

 

いた☆だき☆ます!

 

〝ネルスキュラ(幼体)を完食しました+126

+【睡眠牙】をラーニングしました〟

 

〝あなたが特殊能力を持った対象を食べた場合一定確率で対象の特殊能力をコピーできます〟

 

ふむふむ、このうざったい声もたまには役に立つじゃない!

 

食べれば食べるほど強くなるということは食べれば食べるほどごはん集めが楽になる、つまりたくさん食べれるようになるということ!素敵!

 

私は喜びの感情と共に湧き上がった食欲を満たすべく周囲の生物を片っ端からお腹におさめていった

 

【ジャギィを完食しました+145】

【ジャギィを完食しました+245】

【ジャギィを完食しました+142】

【地主ミミズを完食しました+8】

【皇帝バッタを完食しました+5】

【ジャギィを完食しました183】

【ジャギィの頭部を完食しました+28】

【狼を完食しました+245】

【カブトムシを完食しました+34】

【狼を完食しました+238】

【暴君バッタを完食しました+12】

【ケチャワチャ(幼体)を完食しました+145】

【ギルド産伝書鳩を完食しました+8】

 

【ケチャワチャ(幼体)から【奇猿狐の地獄耳】をラーニングしました】

【ジャギィから【噛みつき攻撃強化】をラーニングしました】

 

 

 

 

 

 

食事ついでに色々と試して見た結果眠らせる牙は昆虫には効き目が薄いものの哺乳類に対してはおぞましい程に有効

 

これからのごはん集めにもきっと役に立つ事だろう。

 

そして私は視界の端に入った獣の捕食に取り掛かった。

 

〜〜〜〜

 

もう私は10分近くそれを追いかけている。息は切れぎれ。走り過ぎで視界はぐちゃぐちゃ。

 

それでも一歩一歩大地を踏みしめる度に餌に追いついているのがはっきりと分かる。

 

餌に一歩近づくたびに新しい栄養を求めて私の臓器が悲鳴を上げる、歓喜に震える。

 

「ねえ、獣さん、あなたの血も、臓物も、筋肉も、骨も私のお腹に入りたくて仕方ないと言っているの!たった一口、たった一口で良いから食べさせてよ!ねえ!」

 

勢いのままお尻の肉に食らいついて噛みちぎると叫んだ後獣は動かなくなる。

 

【睡眠牙】の効果が発動、獣は変なダンスを踊るように倒れて眠って動かなくなる。

 

一応死んではいないのだけれどピクリとも動かないわね。

 

まるで死体みたい。

 

まあそんな事は関係ない、死んでようが生きてようが私が動けない生物に対してやることなんて一つしか無い!

 

いた☆だき☆ます!

 

 

 

立派な角ごと頭部をペロリと平らげ四肢を出刃包丁で切り分け咀嚼し残った大きな胴体を両手で持ち上げひたすらかぶりつく

 

さっきは一口で良いといったけどこんなに美味しいごはんをたった一口で我慢する方が失礼だわ。

 

私は肉の一片から臓器の一欠片に至るまでお残しはせず全部食べる

 

世の中にはごはんを残す人間がいるという人間がいるらしいけどよっぽど恵まれた環境で生きて来れたのね。

 

それに対して私は栄養失調で足はふらふら、アバラは浮いているし一食抜けば餓死しそう。

 

可愛い私がこんなに苦しんでいるのに食事を抜いても問題ない程裕福なガキもいるなんて世の中不公平ね…そんなクソガキも丸焼きにしてこの獣とまとめて喰ってやりたいわ…くちゃくちゃ

 

他にも…やめましょう、食事中に関係ない事考えても無駄にお腹が減るだけだわ。

 

【ケルビを完食しました+238 【健脚】のラーニング完了】

 

「ごちそうさま、あなたが目が覚めて食べたごはんの中では最高の食材だったわ。」

 

それなりに食べたし少しはお腹が膨れたような…

 

ごぎゅるるるぐぅぅぅぅぅぅぐぎゅるるるるぐー…

 

気の所為だったわ…

 

ひもじい…

 




【睡眠牙】噛みついた相手を眠らせる。小型モンスターに対しては強力だが大型にはほぼ無力
【噛みつき攻撃強化】顎を使った攻撃を強化する
【奇猿狐の地獄耳】200メートル先に落ちたコインの音を判別できる程度に聴覚が強化される
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