映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 勝ち取れ!泥門デビルバッツ   作:せんもくせい

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6th down

「ねねちゃん!ねねちゃん!あの人すごい早いね!漫画の主人公みたい!」

「うるさいわよ!」

「騒げっていったのねねちゃんじゃない…」

「それよりしんちゃんは見つからないけど王城のベンチを見なさい。」

「あれは風間くん?」

「風間くんってアメフト部に入ったの?何か聞いてる?」

「僕は知らないよ。でも風間くんなら『僕のパパはアメリカで仕事しててね。パパに会いに行った時、本場でアメフトを見たんだ。そしたら君もアメフトやってみないかって言われてね。やってみたら面白かったんだ。それで始めたってわけ』みたいなこと良いそうじゃない?』

「あり得るわね…」

 

泥門高校2回戦は最初にアイシールド21のタッチダウンにより先制したが、進の登場によりそれ以降得点できず。この試合幾度となく進とぶつかったアイシールド21であったが、一度も抜くことはできなかった。当然、助っ人の寄せ集めでは王城の攻撃を止める術もなく、最終クォーター残り時間4分45秒で56対6となっていた。最早、絶望的な点差であろう。

(50点差、6タッチダウンでも追い付けねぇ。)

「っち。ゲームオーバーだ。あと適当に流していいぞ。俺はもう上がる。」

「「「「えー!」」」」

「ついさっきまでは1億分の1くらい勝機があったが、たった今それが0になった。あとはハドルで時間潰されて『詰み』だ。」

「い、一応最後まで頑張ろうよ〜。」

「最後までよく頑張ったって褒められてぇのか?負けたけど俺たち頑張ったよなって慰め合うのか?勝つためにやってんだ。勝つ気ねぇ頑張りなんざ何の意味もねぇ。」

栗田の情けない、しかし少しでも蛭間とアメフトがしたい言葉と勝つためにやっている蛭間の会話が聞こえてくる。勝つ可能性が0になった以上蛭間がこの試合をやる意味は最早ない。帰り自宅を済ませフィールドをあとにしようとする。そんな中アイシールド21、小早川セナの目にはまだ進が写っていた。

「もう少し…もう少しだけ…いや、その…抜けそうかもしれないんです…進さん…もう少し…もう少しで…」

「勝ちてぇのか?進に。」

「え いやそのそんな大それたことじゃなくて…」

「ごちゃごちゃうるせーこの糞チビ!」

小早川セナの初めて見せた「勝ちたい」という思いに昼間が動く。

『ハドル!』

 

その後1分が過ぎ、2分が過ぎ、以前進を抜くことができず膠着状態ではあるこの試合。とある事件が起こる。泥門高校に入学してから大人しくしていた嵐が動き出す。

 

試合時間残り2分51秒。ベンチに座ってしたはずの王城高校、桜庭とアイシールド21の衝突により試合が中断される。

「やばい。鎖骨いってるかもしんない」

「救急車!」

「待ってられん。車で連れて行く!」

「桜庭くんが!」「酷過ぎ!」「なにすんのよ!」

観客席から桜庭軍団の罵声がアイシールドに飛んでくる。

「おうおう、よく吠える。無視しろ。フィールドに入るバカが悪い。」

「どうせ今のじゃ捕まってました。次はもう少し今度こそ。」

「ケケケ。良い入りかだ。さーて、もう時間がねぇ。最終決戦と洒落込もうか。中央には進と大田原が踏ん張っているから、ずっと外に大回りして攻めてきた。ここで突然中央突破!とにかく速攻!スタート直後に真っ直ぐ飛び込め!」

 

 

しんのすけが会場でナンパに勤しんでいると、救急車のサイレンが聞こえる。

「行ってみますか〜。お!おねいさーん!オラと愛のサイレン鳴らしませんか!」

「うるさい!桜庭くんが大変なのよ!どきなさい!」

「お、おぉ〜…なんだか大変ですな〜。」

 

 

試合は最終局面へと移っていく。蛭間に渡ったボールはそのままアイシールドへと渡されランが始まる。

「ふーんぬらばっ!!」

ライン栗田により大田原、さらに進を抑え込もうとする。栗田により大田原を抑え込むことに成功するも進は時間稼ぎにしかならずに終わる。その一瞬があればアイシールドが中央突破するには十分であった。王城メンバーを抜き去りゴールラインへと進んでいく。普通の選手であればもうアイシールドに追いつくことは不可能、タッチダウンを許すこととなっただろう。しかし、進は普通の選手ではない。アイシールドへと追いすがりタックルを仕掛ける。

(ダメだ逃げきれない…いやダメじゃない。みんながくれたチャンスなんだ!もう少しだ…もう少し早く…逃げる?違う!勝つんだ!」

40ヤード走4秒2 光速の世界。

『タッチダーウン!!』

アイシールド21ついに進を抜き去ることに成功する。

 

 

「あ」

セナはタッチダウンにより気が抜けたか、ゴールラインを越えたところで倒れ込む。

「一気に気が抜けっちゃったんだね。」

「すいません…」

「おい糞チビ。一回だけだ。何十回も突っ込んだうちの、所詮1回だけだが、てめーの勝ちだ。」

そして試合は終わりへと進んでいく。

 

 

しんのすけは騒ぎを頼りに、会場に入る。もちろん道中のナンパは欠かさない。先ほどのことでは全く懲りていないらしい。もはやライフワークなのだろう。おとなしく観客席にいって幼馴染と合流すればいいものを、なぜか騒ぎの中心を目指し、フィールドに入っていくのは騒がしいのが好きなおバカの特徴であろう。

「まもりおねいさーん!奇遇ですなー。」

「の、野原くん…どうしてチアガールの格好してるの?」

「まもりおねいさんを応援しようと思ってー」

「あ、ありがとうね。あはは…」

ハーフタイムショーでも見ていたのだろう。早着替えによりチアの格好をしているしんのすけ。その衣装はどこから来ているのか、なぜ着ているのか全くわからない。一つ言えるのはこれもおバカだからだろう。

 

ー王城ベンチー

「なんでしんのすけが…」

 

ー泥門ベンチー

「お、来てんじゃねぇか。少し試してみるか。ケケケ、糞庶務にパシらせた甲斐があったな。」

「ひ、蛭間?もしかして、野原くんを出すの?って、ぼールに何書いてるの?」

蛭間はポールに何か書いた後に前振りもなく、しんのすけにポールを投げつける。

「ほい!なにこれ?さつまいも?もう!危ないわねぇ!オケツから芽が出たらどうするつもりなのかしら!」

しんのすけはボールを尻でキャッチする。

「蛭間くん!危ないじゃない!大丈夫?野原くん」

(やっぱりキャッチできるか。糞ポテトがいるなら試合に出しておきてぇ。)

「おい糞マネ!糞ポテトが持ってるボールに書いてあること読め。」

「いつも強引なんだから。ええと、誰か格好よく、このボールを向こう側に持って行ってくれる人はいないかなー、そんな人がいたら惚れちゃうなー。アメフトはアメリカで人気だから金髪のおねいさんからも人気出るかもなー。これでいいの?」

「もっとマシに読めねぇのかよ。棒読みじゃねぇか」

「ほい!ほい!オラ!オラできます!」

『ピー!』

「あーまたタッチダウン返された。」

その後王城のキックをキャッチし、試合再開となるが残り時間30秒。

「ダメ。もう時間ない…」

「けけけ。さっさと脱いで、プロテクター着けろ。」

進とアイシールドの決着に終わったかに思えたこの試合。最後に嵐が巻き起こる。

 

ー観客席ー

「ねねちゃん!なんかしんちゃんが試合に出てるんだけど!」

「そんな訳ないじゃない!頭の中までおにぎりになったの!?」

「うえーん。違うよ〜。ほんとだって〜。あの背番号5だよ〜。」

「ほんとだ…なんで!?あんた何か聞いてないの!」

「知らないよ〜。」

「風間くんも王城のベンチにいるし!なんでうちの男どもは知らせないの!」

 

 

『『ハドル/だ!』』

ー泥門sideー

「いいかお前ら、最終決戦は終わったが延長戦だ。最後にもう一度タッチダウンもぎ取るぞ。観客の度肝抜いてやれ。ロングパスを相手に警戒させろ。ロングパスとでも言って騒げばそれでいい。あと、糞チビ。お前もフィールドに出ろ。立ってるだけでいい。奴らはお前を警戒してる。お前が出ればランに守備を割いてくるはずだ。少しでも、野原から気を逸らせ。」

『泥門最後の攻撃はロングパスで行くぞー』

『やるぞ!』『ロングパスだ!』『かつぞ!』

 

ー王城sideー

「なに!?ロングパスだと!?」

「まさか!最悪だ。なんで、しんのすけが…」

「あれが風間の言っていた野原か。風間どう思う?ロングパスはあり得るか?今まで泥門はパスの攻撃を成功したことはないんだが。野原について一番知る君に意見を聞きたい。」

「あいつはアメフト初心者どころか、初めてプレーするはずです。アメフト部に入っていることも聞いていません。観客席にいる幼馴染も驚いた顔をしています。ですが、無いと言い切れません。あいつの運動能力は普通じゃない。あってもおかしく無いかと。」

「そうか。わかった。作戦を伝える。泥門のラインで大田原を抑えられるのは栗田だけだ。怖く無い。大田原でブリッツを仕掛ける。」

「進さんと2人でブリッツではないのですか?」

「進は後ろに下がってもらう。桜庭が居ない以上、進にしか競り勝てない。アイシールドのランもある以上、進を前に出すのは危険だ。それにロングパスでも、ランでも進なら止められるだろう。」

「わかりました。」(本当は大田原さんと進さんでブリッツに行くべきだ。それで終わる。でも、しんのすけと蛭間さんならそれでも突破してくるかもしれない。)

泥門にとって最悪のプレーは風間のしんのすけに対する身体能力への信頼の高さと警戒心が裏目に出ることとなる。

 

「蛭間、いくら野原くんが凄くても初めてでキャッチからのタッチダウンなんてできるの?」

「わからねぇ。可能性はある。それに賭けるしかねぇ。糞ポテトはあいつと同じく天才の領域に居やがる。初めてでもある程度できんだろ。それにもう負けは決まってんだ。それなら野原と糞チビに経験をつける方が得だ。俺たちは絶対クリスマスボウルに行かなきゃならねぇ。クリマスボウルにいくならここでの野原と糞チビの経験を捨てるのはバカのすることだ。アメフトはビビらせたもん勝ちだ。今後の秋大会での試合で野原がいなくても、パスに守備を割けさせることができればランの攻撃力があがる。使えるもんは何でも使う。今ある手札を切り方で強くしていくしかねぇんだ。お前らもっと声出せ!」

「ローングパス!」「行くぞ!」「最後だ!気合い入れるぞ!」「一矢報いようぜ!」

 

しんのすけは先ほどのハドルを思い出す。ほとんど言われていることは理解していないが…

『いいか、うちのラインじゃ糞デブ以外大田原を止めれねぇ。大田原と進が同時にブリッツ来たら詰みだ。だから進を下がらせる。桜庭が居ない以上、ロングパスとランを止められるのは進だけだ。100%下がってくる。だが、進が下がっても、うちのラインじゃ、パスまでの時間を稼げねぇ。だから糞ポテト、お前はコールが鳴る前に走って助走つけろ。インモーションだ。HUTと言ったら、前に出ろ。お前ががライン越えたら、ミドルパス出して、そのあとは進交わしてタッチダウンだ。できるな』

とりあえず走って、ボールを取って、走るということだろうことはわかった。

「オラ行くぞ!カッコ良く決めておねいさんいモテモテだぞ!」

 

しんのすけはコールの前に走り出す。

 

SET

 

しんのすけは先ほどのテンションとは変わり集中しだす。しかし少し不思議なことが起こった。なぜだか昔のことを思い出す。まだ自分が幼かった時のことを。

『投げたい場所にちゃんと届くってイメージするの。私はビシッと決められる。任務もちゃんとやれる。私はやればできるって。』

『オラ超2枚目、オラ超2枚目…』

『『アクションビーム』』

おねいさんにモテたいために試合に出ただけなのに。アメフトと彼女は関係ないはずなのに。なぜか彼女との思い出を思い出す。あの時、不安を胸に抱いていた時にやっていたルーティーン。失敗できない集中する時にやっていたルーティン。幼い自分が彼女から教わった成功までの準備。彼女のことは歳を重ねる度に、だんだん薄れていき、ルーティンをやるのも随分久しぶりなのにしっかり覚えている。

「レモンちゃん…オラ超2枚目…オラ超2枚目」

 

HUT HUT

 

(はっきり言って、春大会でインモーションを使った作戦を出すつもりはなかった。だが、ここで野原と糞チビに経験を積ませることは手札を一枚晒すより価値がある。俺らは絶対クリスマスボウルに行かなきゃならねぇんだ。)

「お前ら死んでも時間稼ぎやがれ!野原とアイシールドの邪魔させんな!」

 




やっとここまで来た。長かった。だいぶ端折ったけど笑
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