「…それじゃ、また明日な」
「ええ、それでは」
俺はそう話してライザーさんと別れ自分の部屋に向かう。
そして俺は支給されている非常用トリガーを扉に翳し、部屋へと入っていく。
…俺が入ると自動的に扉は閉まり、ガチャという音と共に鍵のかかる音がする。
一応俺にもある程度は自由があるが、囚われの身だ。
万が一を考えると仕方ないことだろう。
「それじゃ、もうちょっと仕事しますかね…」
俺はそう呟いて、機材を展開していく。
…取り敢えず今日思いついた案は出来る限りその日の内にやっておくのが俺の流儀だ。
一応外はどっぷりと暗くなってはいるが、少なくとも5時間は寝られれば十分である。7時に起きるとして、あと3時間は出来るだろう。
そう思いながら、俺は無言で開発機材を弄っていった。
◇ ◇ ◇
「もうこんな時間か…」
俺が開発に集中してからおよそ2時間半が経過していた。
「流石にそろそろ寝ないといけないな…」
眠たくなり、半分虚になった目を擦りながら俺は大きく伸びをする。
「…後は、明日の俺に任せるとするかね…」
そう呟いて、俺は機材を片付けていく。
そんないつもの日常を過ごしていた俺であったが、…この日ばかりはそうはいかなかった。
ズバンッ!
そんな鋭利な音と共に、俺の前の空間が大きく斬り割かれる。
「な、なに…!?」
俺はそう言い放ち、部屋の壁にもたれかかる。
「…お、ちゃんとこのトリガーでも亜空切断出来てるな。
さすがは母さんの作ったトリガーだぜ…」
…引き裂かれた空間から、そんな男性の声が聞こえてきた。
そして、その空間からある人影が見えた。
「…それじゃ、ちょっとお邪魔しますよっと…」
…身長は俺より頭一つ分大きいぐらい、年齢も俺より少し上ぐらいか。
そしてその人物の服装として、両肩には大きな真珠のようなものがあしらわれ、全体的に薄紅色を基調に統一されており、服装と同じような薄紅色の髪を後ろでポニーテールのようにしてまとめ上げている。
「…ん、お前は…」
…どうやら、俺の姿に気が付いたみたいである。
…一つ確実に言えること。
それはこの人が人型近界人であるということだ。
…まずは!
俺はそう思うと同時に机の上に置いて護身用、そして連絡用であるトリガーを手に取ろうとする。
…だが。
「…おっと!トリガーを使うのは少し待ってくれよ。
こっちだって手荒な真似はしたくねえんだ。
ちょっと大人しくしといてくれよ」
近界人は俺の手がトリガーへと届く前に俺を地面に組み伏せる。
「ぐっ…!」
俺はなんとか藻掻こうとするが、しっかりと力で抑え込まれており、動くことはできない。
「…応援を呼ばれちゃ面倒だ。
お前、ちょっと我慢してくれよ!」
近界人はそう言って小さくなり始めていた空間に俺を連れ込んだ。
◇ ◇ ◇
「うっ、こ、ここは…!?」
俺が連れてこられたのは真白い神殿のような場所。
天井は高く、照明や装飾など荘厳な雰囲気を醸し出しているが、その床には服や食べきった後のお菓子の袋などが散らかっており生活感がぎっしりと詰まっている。
「…悪いな、こんな部屋に連れ込んじまってよ。
万が一人を呼ばれたら困るからこっちへ来てもらったんだ」
近界人はそう言って俺の前に屈んでくる。
「…俺をどうするつもりですか?
殺すなら好きにしてください、もともと捨てた命なんで」
俺はそう覚悟を決める。
本来ならトリオン兵にさらわれた時に失うはずだった命だ。ここまで持っただけでも十分である。
…だが、近界人はそんな気はないようで「しねえよ。最初に手荒な真似はしたくねえって俺は言ったはずだぜ?」と立ち上がって続けてくる。
「お前、さっき見た限りトリガーの技術者だろ?
俺はトリガーについて詳しいやつと話がしたいんだ。
…楽にしてもらって構わないぜ?」
近界人はそう話して奥にあった椅子に座る。
俺は意を決して、近界人に話しかける。
「…あの、あなたは一体…?」
「俺か?」
近界人はそう話して続けてくる。
「…俺はパルキアって言うんだ。
一応これでも空間を司る神なんだ。よろしくな!」
…パルキアさんはそうあっけらかんとした声で俺に話してきた。