その日の昼休み、体育館裏。
昼食を取った俺は人の気配が全くないこの場所へとやってきていた。
…ちなみにだが、摩子はその暗がりに溶け込むような感じで佇んでいる。
「…来てくれたのね、翔哉」
「ああ、でもなんでこんなとこ呼び出したんだよ」
俺がそう摩子に返すと、「あそこじゃ話せないことだったから…かな」と続けてくる。
そして摩子は少し黙った後、改めて俺に叫んでくる。
「…翔哉の、バカッ!」
…俺はその声に一歩後ずさる。
「…お、おい摩子…。そんなに叫ばなくてもいいだろ…?」
…俺はそう話すが摩子は「叫ぶよ!」と重ねるように勢いよく返してくる。
「…2年前、近界人が来て翔哉たちと連絡が取れなくなって。
三門市の人から叔父さんと叔母さんが亡くなったって情報貰って。
それで翔哉は避難所にも来てないし、遺体も見つからないしで向こうに攫われたって分かって。
…ホントに心配したんだからっ!」
そう話す摩子の目には涙が浮かんでいる。
そして話し終えた摩子は俺の体に抱き着いてくる。
「…もう、帰ってきてたのなら、私たちに連絡ぐらいしなさいよ…。
それぐらいできなかったの?」
「…ああ、すまねえ。
そっちにまで手が回らなかったんだ…。
またいつか、そっちには行かせてもらうよ」
俺がそう話すと、摩子は「それじゃいつくるか分からないじゃない」と続けてくる。
「いつかじゃなくて今日ね。
ちょっと顔見せるだけでいいから、一緒に帰ってよ。
亡くなったおじいちゃんにも、会ってあげてほしいしさ」
摩子の言葉を受けて、俺は一瞬言葉を失う。
「ああ、分かったよ。
…って、じいちゃん、亡くなったのか?」
摩子は「うん」と返してくる。
「2年前に近界民に襲われた時に私を庇って…。
あのおじいちゃんならそうするってことは翔哉も分かるでしょ?」
「ああ、想像に難くねえな…」
俺は摩子にそう返していく。
「…だからさ、今年の5月からボーダーに入ることにしたの。
おじいちゃんが私を守ってくれたみたいに、私も守りたいから。
…オペレーターとして、だけどね」
俺は摩子に「そうなのか」と続けていく。
…それなら、俺がこっちに戻ってこれた理由、話しても大丈夫だな。
「…実は俺もボーダーに入っててな。
仮入隊も済ましてるんだ。
向こうの国のトリガーを持ってるってのもあるから、開発室にも結構行ってるけどな」
そう言って俺は制服の袖を捲って左腕に装着しているモーフィントリガーを見せる。
「え、それって…」
摩子がそう驚きの言葉をつぶやき、俺はそれに続けていく。
「…今の俺、半分近界民みたいなもんでさ。
向こうでいろいろ教えられたんだよ。
こっちに帰ってこれたのも、『ここと向こうの国で友好関係を結ぶため』って理由だからな。
今は建前上、向こうの国が裏切らないようにするための捕虜って役割にはなってるけど」
「え、翔哉何か体に改造されてたりしないよね!?
翔哉はあの時の翔哉のままだよね!?」
摩子はそう言いながら俺の体をぶんぶん揺らしてくるが俺は「あ、ああ…。もちろんだよ」と続ける。
…まあ、摩子からしたら近界民=トリオン兵だろうし、そう思うのも当然か。
…それと、寿命がほぼ永続になってしまってる件についてはまだ話さなくてもいいか。
「それじゃあさ、正隊員になったら私と隊を組まない?
こういうのはある程度知っている方がやりやすいでしょ?」
俺はそう話す摩子に「…悪い」と返す。
「…実はもう上に上がった後に入るチームは決まっててな。
少なくともあと1年はそこで続けないと行けないんだ」
俺がそう話すと摩子は「そうなの?」と残念そうな顔を見せる。
まあ摩子の言いたいことも分からないでもない。
「…だからよ、1年後俺と組まねえか?」
俺は摩子にそう話していく。
「俺は1年間そのチームで頑張る。
摩子はその1年でしっかりオペレーターとしての実力を高める。
それぞれ実力を高めて1年後、一緒にチームを組もうぜ。
それじゃダメか?」
俺がそう話すと、摩子は「大丈夫だよ」と返してくれる。
「…それじゃ、そういうことで。
お互いこれから頑張っていこうぜ」
「うん、それとこれから1年間クラスメートととしてもよろしくね」
俺と摩子はそう言葉を交わしていった。