「…とりあえず、これぐらい持っていけば大丈夫かな」
俺はいくつかの調整していた戦闘用トリガーを何も入っていないトリガーに入れ替えてリュックサックに詰め込む。
「…もう、これでここを見ることもないのか…」
作業をしながら、俺はそう呟く。
攫われてきて以来、…およそ1年ぐらいか。
まあ濃い1年だったことに変わりはない。
…最後に、俺は近くにあったメモ帳から1枚取り、ペンを走らせていく。
「…『近界の国に引き抜きされました。今まで面倒見てくれてありがとうございます。次は敵同士で会いましょう』と。
こんな感じで良いかな」
俺はそう書き終え、立ち上がる。
「…今までありがとうございました」
俺はそう言いながら誰もいない開発室に向けて頭を下げる。
…世話になったのには間違いはない。
俺は再び顔を上げて、開発室を後にした。
◇ ◇ ◇
「…もう準備はできた?」
俺の部屋の中で、オレンジ色のパーカーと水色の半透明のサングラス、そして同じく水色の髪をなびかせている小柄な女性がそう話してくる。
「…そうですね。とりあえずはもう悔いはないですよ」
…この女性はロトムさん。ポケトリアの中でのトリガー開発者である。
この人の体はプラズマ…のような電気で出来ているらしく、さまざまな場所へと侵入することが出来る(彼女曰くトリガーシステムの根本は電気とほぼ同じ…らしい)。
その特性を活かして、俺の手錠の解除、俺のこの部屋の鍵の解除、セキュリティシステムの一時的な停止等…、さまざまなことをしてもらった。
正直、俺は非常用トリガーだけ持ち帰ればいいと思っていたのだが、パルキアさんが「折角なら持てるだけ持ってこい!」という言葉と共にこのロトムさんを送ってくれたのだ。
「ねえ、案外この国気に入ってたの?捕虜として扱われてた割には『今すぐ離れさせてくれ』とか言ってないしさ」
ロトムさんはそう話してくるので俺は「そうですね…」と答える。
「別に暴力奮われたりだとか、24時間労働しろ…とかは無かったでしたからね。
結構希望とかも聞いてくれてましたし、悪い印象はないですよ」
「そうなんだねー。
…じゃ、行こうかポケトリアに。
一応セキュリティシステム弄ってるとはいえ、敵地にいつまでもいるわけにもいかないしね」
「分かりました」
俺がそう答えると、ロトムさんが手首に装着しているデバイスでパルキアさんと連絡を取る。
「パルさーん、こっちの準備終わりましたー」
『おう、それじゃちょっと離れてろよ』
そう聞こえてきた後、俺たち2人の目の前には俺がさっき聞いたズバンッ!という音と共に空間が斬り裂かれる。
「…よし、それじゃロトム、翔哉。
2人とも帰ってきて大丈夫だぞ」
「りょーかいです」
ロトムさんはそう言って空間の狭間へと歩いていく。
俺もそれに着いて行くように狭間へと進んでいき、入る直前で今まで過ごしてきた部屋を振り返る。
「…今までありがとう、レフォース」
俺はそう呟いて、空間の狭間へと姿を消した。