ゼーレンヴァイス   作:朽木 堕葉

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ノット・ヴァイス・ヴァーサ 命にこそ意思は宿り-プロローグ-
     ※


 深い深い眠りから、()れは呼び起こされた。

 数千年の時を経て、初めて予期されていた異常を感知した。想定された手順に従い、状況把握を開始する。

「ケセドに於ける魔力供給率の大幅な低下を確認」

 人ならざる声質で、其れは喋った。一切の感情を削ぎ落したような語調で。

「測定結果を――七十パーセント以下と推定。緊急事態と判断」

 緊急事態と口にしてもなお、至って淡々としている。

「原因を特定するため、人物を選定――分析結果。最適任者名、ケートネス・ガーランド。干渉を実行」

 エリーゼと取っ組み合いの最中のケートネスに直接、質問していった。しかしケートネスの返答は不明慮なものばかりで、質疑を断念することにした。

「対処法をより確実化するため、ケートネス・ガーランドを、我が内臓(コア)に同化処理を実行」

「なんなんだ! ここはどこだ⁉ エリーゼはどうした? 説明しろっ」

 どこからともなく、ケートネスの喚き声が響いた。ひどく錯乱している様子で。

「対象は激昂状態にあると判断。妖精(スプライト)化の際の魔力源としては、優秀であると思われる」

「なにをわけのわからないことを、僕をだれだと思っているんだ? 統一国家〈アッシュガルズ〉の国王――」

 ケートネスの喚き声が途中で消えた。

「しかし、同化処理を優先――ただちに完了。対象の記憶情報のすべてを獲得。核に異常なし。ケートネス・ガーランドが、主人格に移り変わる可能性も皆無。次いで、対象の記憶情報から、対処法を検討」

 声に微かにケートネスの声が含まれたが、抑揚のない調子は変わらないでいる。やがて、数分の時を要し、

「魔力供給率を回復するための処置を演算。数万の死者の妖精化が必須。併せて妖精宝珠(スプライトジェム)なるものの製法の完全なる消失を遂行」

 方針を並べ立てた。

「これら二つを完遂。さすれば推定四十年後、魔力供給率の基準値以上を獲得するとの演算結果を算出」

 突如、なにかが青く輝きだした。といって、地中深くのこの場所で、視認可能なものは、ほぼなかった。

()って、管理機構体ザド・キルエは、規定に従い――ケセドに宿る神々の承認を不要とし、神樹の根の(くびき)を断ち、行動を実行」

 

 

 管理機構体ザド・キルエが、神樹の根の呪縛から解き放たれたことを、神々は根を通じて悟った。

 神々でさえ、それは望まぬ覚醒だった。警鐘(けいしょう)は幾度となく発せられた。それらを聞くことができた者が、今や少数であることが、魔導士の衰退を如実に物語っていた。

 “もはやだれにも止められぬ”

 これが神々の総意だった。

 それでも、希望を託すため、働きかける神もまだ存在していた――

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