「リザも――アズさんまで、こんなのってあるかよ……!」
ロウェルは涙を流しながら、巨人の一つ眼を睨んだ。
「著しい損傷を確認。危険性を考慮し、ザド・キルエは一時的な後退を実行」
ザド・キルエ本体は、まるでロウェルの存在を無視して、
「待ちやがれ‼」
怒鳴り、ロウェルは追った。が、ほかの三体のザド・キルエが、立ち塞がって行く手を
「邪魔だ!
ロウェルが相手にするしかないか、と舌打ちをすると、その望みが叶った。
「
一体のザド・キルエが、レグナシオンの繰り出した一見、変哲もない
「
またべつの一体は、聖剣を両手に握りしめたオネストが、覇気を
「下り穿て……
残る一体は、先ほどアズランドが本体に放った魔術の一つをまともに浴びた。放ったのは、構築するのに骨が折れそうな、魔術式に立つサロース
「おっさんたち……」
感銘したように、ロウェルは三人の
思いのほかすぐに追いついて、ちょっと拍子抜けしそうになった。ザド・キルエ本体は動けなくなっていたのだ。
原因は一目でわかった。周囲が水没していた。車輪はぬかるみに深く食い込み、脱しようと猛回転している。
「この図体です。さもありなん、といったところでしょう?」
イクトスが唇に中指で触れた。特徴的な猫目は、してやったりという具合に細められ、笑っていた。
「えと、だれだかわかんないけど、助かった。サンキュー!」
ロウェルは感謝を述べると、イクトスの横を通り抜けた。彼が肩をすくめて、「ご武運を」と言う声を耳に、より強く駆けた。
「迎撃。迎撃。迎撃」
立ち往生しているザド・キルエ本体は、迫るロウェルに対して右腕を伸ばした。大砲の内部が魔力の光を発するのを目撃した。寸前で回避するつもりのはずが、炎を纏って突貫したフォティアが軌道を逸らし、明後日の方向に魔力弾は発射されていった。
「やり遂げて。アイツらの分まで」
「ああ、わかってるって!」
ロウェルは返事をするなり、大きく跳び上がった。ザド・キルエ本体の胸部まで。
まず、眼前の空洞を凝視した。“アイツらの分まで”と今し方、聞いたばかりの言葉に――リザとアズランドの姿が脳裏でまざまざと駆け巡る。意識を外れて、左腕を振りかぶっていた。
それから、空洞から丸見えの青々と光る
そこに相棒を――杭打ち機を叩き入れた。いつものように。
想いを胸に握り手の側面の窪みを押し込んだ。当然のように。
ロウェルは虹色の光に包まれた。ほんの一瞬にも満たない時間で、不意に胸中で問いかけていた。
おまえはいったい、なんなんだよ……。
そして、猛烈な痛みとともに、妖精宝珠もろとも杭打ち機も形を失うのを目の当たりした。ありありと目に焼き付け、自分の左腕も同様のありさまになっているに違いない、と想像した。
それでいいとすら思えた。
相棒と一緒に壊れるなら、構いやしないや……。
それを最後に、ロウェルの意識は事切れた。