花の武者に魔王は蕩け   作:飴玉鉛

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三郎信長、攫われる

 

 

 

 

 

 製造者の片割れ、滝川一益は我が仕えるのを許してくれる主ではなかった。

 

 父である滝川一益が我に向けたのは、御母堂が我に向けたのと同種の厭悪。

 仮にも実子とはいえ、己の伴侶を殺めた我を忌み嫌う理屈は理解できる。生物とはそういうものだ。我としても反撃に出るのは本意ではなかったが、父にとっては関係なきことなのだろう。我を敵と見做し、敵対的な行動に出ないだけ理性的な御方だと感謝するべきなのかもしれない。

 我は滝川一益の差配に従い、子宝に恵まれておらなんだ、武家としては落第の病弱な当主、前田利久の養子と相成った。この御方もまた我の主になってはくれなんだが、懐の深い御仁である。利久殿は、否、親父殿は血の繋がりがない我に、己亡き後の家督を譲るとまで言ってくれたのだ。

 

「慶次、お主は人ではない。妖の類いか、或いは神仏の加護を受けし化身なのかもしれん」

 

 前田慶次郎利益。いずれはそう名乗れと親父殿は云い、名付けてくれた。

 幼名はない。本当はあったはずだが、彼奴は死んだと宣った一益殿に剥奪された。故に今の親父殿は名無しの我を慶次と呼ぶ。慶次郎を縮めての愛称だ。

 親父殿は神妙に我と向き合い、訥々と語った。我を人外の者だと。そして、

 

「お主の所業は滝川殿に聞き及んでおる。齢三つにして成せることではない、成していいものでもなかろうとな。母を殺めておきながら平然としておるお主には、人の心は解せんのかもしれん。であれば慶次よ、ゆめゆめ忘るることなかれ。武士で在れ、無事で在れ、お主は正道より外れてはならぬ」

「武士で在れ、無事で在れ、でござるか」

「人生の指針とせよ。お主は儂など及びもつかぬ武人となり、前田家の為、ご主君の為に生き、死ぬがよい。儂のこの訓戒、しかと胸に刻め。よいな」

「は。この前田慶次郎利益、終生親父殿の訓戒を忘れませぬ」

「そうか。ならば、慶次よ。お主に伝えることは最早何もない。我が前田家の家督は、お主が成人すればくれてやる。それまで文武の修行を怠らず、お家の為、主家の為、尽くすが良い」

「は」

 

 病弱な御方だ。しかし、現在我の所有権はこの御方にある。仕える主ではないものの、主がいないのであれば親父殿の指令に服すのに不満はなかった。

 床に伏せたままの親父殿は、安心したように目を閉じ、寝息を立てた。我は親父殿に頭を下げ、退出すると書斎に向かう。文武研鑽に励めと親父殿は命じた、ならばこれに従おう。

 書斎にあるのは兵書の類いや、領地の運営書ばかり。我は記されている内容をインプットしていきながら己の肉体に意識を割く。我が躯体の秘める潜在能力、ポテンシャルは鬼も斯くやといえるもの。長ずれば我は万全のパフォーマンスを発揮できるが、拡張性も含めたなら現状のままでは不足がある。

 我は文知を磨きつつ、躯体を改造していくことにした。より強く、より硬くする為に、必要な素材を集めねばなるまい。経口摂取しか方法がないのが痛いが、気長にやろう。

 

 我は肉を食らった。動物性タンパク質を摂取する為だ。家の者は不浄だのなんだのと言ったが、其れは仏の道に反しておらぬと、書に記されておるままを伝え黙らせた。仏とやらは肉を喰らい乳を飲むのを禁じておらぬ、今の世に広まる教えこそが歪んでおるのだ。

 まあ斯様な理屈は我の目的にはどうでもよい。我は血肉を喰らい、自らの筋肉、内臓、骨を強化していく。然る後に無用となった鉄製の武具を噛み砕き、摂取して必要な素材を体内に納めた。人はどうやら己と違うものを異端視し、排斥する向きがあるらしいと学んでいた故に、それは密かに隠れて行なった。

 摂取した種々様々な要素を体内で精錬し、不要物は排泄物として排出する。肉体の拡張を進めながら全身の筋繊維を剛性と伸縮性の高いワイヤーに置き換えていき、既存の内臓を『戦闘型もののふユニット』として必要なエネルギーを蓄え、放出する為のタンク等に改造していく。

 

 大脳、小脳を拡張し新たな機能を作り。眼球、聴覚、嗅覚などのセンサーも強化し、この躯体が有する潜在能力を十全以上に発揮できる土台とした。仮想敵には人類も含まれるが神仏や妖怪変化の類い、人の身では討ち果たせぬ大敵を想定して開発、発展させていかねばならないのだ。手は抜けない。

 

 我はこの躯体を成体へ成長するのに合わせ完成させる。使命を果たす為に。

 

 とはいえ武士たるからには武の性能のみを磨けばよいわけではない。知も磨き、人を知り、和を正さねばならぬ。未だ耳朶を離れぬ製造者の厭悪、これを理解せずに無事で在ることは叶わぬ。

 我は家の者に教えを請うていで、人というものを分析した。感情の働きと相互作用を見聞した。そうする中で我はふと、主にせよとされる家の者が気に掛かった。我が仕える主についても学んでおかねば、主の意を正確に汲むことは能わぬのではないかと懸念したのだ。

 とはいえ今の我は成人してもおらぬ小僧である。名を轟かせておるでもない小僧が、いきなり主家の御方に面通りが叶う道理もない。しかし噂に伝え聞くに、主家は敵対していた家の者と和睦して、同盟の証に娘を貰い政略結婚を行うという。これはよい、遠目にでも若殿を目にする好機であろう。

 思い立ったが吉日。我は早速行動に移った。

 

 

 

 

 ――天文十七年(西暦1549年)、利益、無名の年。

 史書に曰く、前田家に養子入りした利益は養父の意向に沿い健全に育った。

 しかし利益は天文十七年に突如として行方を晦ませ、家中を騒がせている。

 同年、弾正忠家の三郎信長は、その父が敵対していた斎藤道三と和睦し、道三の娘と政略結婚をする仕儀と相成っていたが、その婚礼の儀に不埒者が現れ花嫁が攫われる事件が起こる。

 この事件に織田、斎藤両家は激怒し不埒者を追ったが、事件の首謀者は行方を晦ませていた利益に討たれており花嫁は無事に帰ったという。信長はこの功に報い、利益を己の小姓として召した。

 

 

 

 

 美濃の蝮。

 織田弾正忠家と和睦し、同盟を結ぶ証として娘を差し出した、斎藤道三の異名だ。

 彼は野心を滾らせるまま生き、一代で美濃の大名まで成り上がった男で、此度の和議に際しても一つの計略を巡らせていた。

 

 弾正忠家との和睦、同盟は道三にとっても望むところ。周辺各国や、家中の問題に注力して解決するのに、織田弾正忠家と事を構えたままでは不都合があるからだ。付け加えて三郎信長の室に娘を送り込めば、弾正忠家は跡取りとして三郎信長を立てぬわけにはいかない。その際に弾正忠家でお家騒動が起こるなら後ろ盾になるもよし、ならぬもよしだ。そして道三が蝮とまで揶揄される所以として、彼の野心溢れる計略は娘にこそ宿っている。

 道三が一代で大名まで上り詰めるのに用いた手練手管が、尋常なものだけという訳もなく。彼の手にはとあるカラクリ士の作り上げた忍がいたのだ。

 姿形は異なれど。飛び加藤こと加藤段蔵と同型の、かの果心居士が手掛けたカラクリだ。美濃の蝮はこれを()()()()()、信長の許へ送り込んだのである。あわよくば信長を傀儡にせんが為に。

 

 しかし、道三にとって二つの誤算があった。

 

 一つは、彼があわよくば傀儡にせんとした信長の器量。信長は道三の思惑を看破しており、室に迎えることになる濃姫へ欠片たりとも心を許す気はなく。

 二つは、カラクリとしての性能面でも濃姫を凌駕する後天的機体が、濃姫の正体を一目で見抜きこれを()()()()拉致。その場にて濃姫の正体を暴き、手を加えたことだった。

 

「――おのれ何をするかこの痴れ者がッ! わしを弾正忠家の三郎信長と知っての狼藉か!?」

 

 眦を釣り上げ、怒気を燃やす白皙面貌の若殿。絹のように綺麗な黒髪と、宝玉のような赤い瞳はその美貌と合わさり異様な怖ろしさを見る者に与える。

 発される信長の怒りは、常の『大うつけ』の仇名に相応しからぬ覇王の物。鈴を鳴らしたように愛らしい声音でありながら、地獄の底から伸ばされた閻魔の腕の如き圧力がある。

 しかし濃姫と信長の婚礼に割り込み、二人を攫った下郎は信長の怒気に萎縮するでもなく、しかして横柄に振る舞うでもなしに礼儀正しくかしこまった。

 

「突然の狼藉、平に、平にご容赦を。火急の事変にて、至急御身のお耳に入れたき儀があり、また他に耳目があれば無用な火種になると判断し斯様な無礼を働きました。処罰は後ほど如何ようにも受けまする、しかしその前に何卒拙者の暴きたる謀をお聞き下され」

「なんじゃと?」

 

 人攫い――それも戦国乱世に生きる群雄の嫡子を攫った下郎の様子に信長は柳眉を逆立てた。

 

 所は何処かの林道。下郎は小柄な鎧武者。背丈が信長と大差ないにも関わらず、下郎は暴れる信長と濃姫を両肩に抱いたまま走ってきていた。駿馬でも追いつけぬ健脚で、だ。

 この時点で信長は、下郎が人ならぬ業を身に着けた何者かと目星をつけていた。人ならざる者が自身を拐かしたのだと。故に、彼の身には最大級の緊張が宿っている。大器なれど未だ経験浅い鳳凰の雛なのだ、人ならざる者に生殺与奪を握られている現状に、寸毫も戦慄せぬほど肝は据わっていない。

 

 だが信長を丁重に降ろし、逆に濃姫の両腕を掴んで拘束した鎧武者は臣下の礼を取っていた。信長でなくとも困惑してしまうだろう光景である。

 しかも鎧武者は、兜の目元から青白いプラズマ光を発し、兜を自動で外して顔を晒した。未知のカラクリ仕掛けに信長は目を瞠り、更に目にした面貌に違う意味で我が目を疑う。

 

 露わになったのは、まだ幼い男児の面貌だったのだ。

 

 硬質な黒髪と、無機質な黒瞳。整っているが軟な印象のない、将来は精悍になるであろう面構え。片膝をついて面を伏せつつも、濃姫の拘束は微塵も緩めていない。

 信長は彼の目元から発されていたプラズマ光の残滓に目を奪われる。しかしそんな場合でもないと気を取り直すと、低い声で威圧的に言葉を発した。

 

「……貴様、何者じゃ」

「我が血肉は滝川より、育ちは前田にて。幼名は捨てられた故ありませぬ。姓は前田、仮名は慶次郎と云い、諱は利益と申しまする」

「なに? ならば其の方は犬千代……利家の家の者か」

「然り、拙者は前田家当主利久の養子でありますれば、前田利家殿の義理の甥に当たりまする」

 

 腹心とも言える利家、その家の者と名乗られ信長の顔から一瞬険が抜ける。身内に甘い性根が顔を出しそうになったのだ。が、証拠はない。すぐさま緊迫感を取り戻すと、信長は思い返す。

 利益。名は知っていた。犬千代――利家が愚痴っていたのを覚えていたのである。『出来が良んのは認めっけどよ、血の繋がりも無ぇモンに家督を譲るっちゅう兄貴の言い様は納得いかん!』と利家が溢し、信長はやがて利家を前田家の当主に挿げ替えてやろうと考えていたのだ。

 利益。聞いていた年頃に被る外見だ。しかしこの者の成した狼藉は人間業ではない。信長は家中でも並ぶ者も少ない武芸の達人でもあり、加えて婚礼の儀には斎藤、織田両家の主だった者が集められており、兵達の警護も分厚いものだった。そこから信長と濃姫を容易く拐かすなど神仏でもなければ不可能だ。

 名乗った通りの者とは限らぬ。信長はそう思うも……。

 

「……で、あるか」

 

 生殺与奪の決定権は、遺憾ながらこの者に握られている。信長はそれを思い一先ずは信じたというていで首肯した。嘘か真かはこの際どうでもよい、真偽はこの場を生き延びられたら確かめられるのだ。ならば今は生き延びる為に、利益を名乗る不埒者の話を聞くのが上策であろう。

 

「是非もなし。謀と申したな、利益とやら。聞いてやるゆえ話してみよ」

「は、寛大なお言葉ありがたく」

 

 面を伏せ、利益は斯様な仕儀に至った経緯から話し出した。

 

「拙者は親父殿の言いつけ通り、主家の御方のため役立てるよう、日頃から文武を隔てず研鑽を積んでおりました。しかしこのまま仕える主を知らぬでは、いざお仕えした際に主君の意を誤りなく汲めるか不安に思い、御身が婚礼を結ぶと耳にしていたのを思い出した故、遠目にでも御身の晴れ姿を拝見させて頂こうと、密かに家を抜け出したのが始まりであります」

「続けよ」

「は。そこで拙者が目にしたのが、こちらの透波(しのび)型のカラクリでござる。故に拙者は美濃の蝮の風評と照らし合わせ、この者の秘しているであろう任を推察したのでございまする」

「――は? か、カラクリ……じゃと?」

「左様にござる」

 

 利益の予想だにしない告発に、濃姫が血相を変えて何かを喚く。しかし猿轡を噛まされている故か意味のある言葉は紡がれず、ただ身動ぎして抵抗するのが関の山であった。

 信長は呆気にとられた。そしてまじまじと花嫁になるはずの姫を見遣るも、どこからどう見ても人間にしか見えない。常人であれば何をくだらぬ戯言を、と吐き捨てるところだ。だが、ここにいるのは常人ではなく超世の傑、織田信長。虚言であれば赦さぬと利益を睨みつけつつ口を開いた。

 

「そんなくだらぬ戯言を吐く為だけに、身命を賭したのではないと申すなら証拠を見せよ」

「であれば、御免」

 

 信長が言うなり、利益は腰に帯びていた短刀を抜き放ち、信長があっと言う間もなく濃姫の胸に突き刺した。同盟相手の姫である、やはり予想を超えた乱暴狼藉に信長すら目を見開くも。

 赤い液体を溢れさせ、目を見開き痙攣する濃姫の胸の傷へ片手を突っ込んだ利益が、そこから無数の管を引き抜いたではないか。人体にあるはずもない物を目にし固まる信長を尻目に、濃姫の首の裏に手を置いた利益が何事かを為したのか、明らかに死んでいないとおかしい濃姫が突如跳ね置きた。

 直立不動。ガコン、と顎が外れて大きく口を開け、彼女は口から短刀を吐き出した。

 

「なっ……!? な、ぁっ……!?」

「ご覧の通りこれは人ではありませぬ。何者かの用立てた、忍の任を果たすカラクリでござる」

「…………」

 

 流石に絶句する信長へ、淡々と説明する利益。

 

「斎藤と弾正忠の盟の為、この者が必要なのは心得ております。拙者ならば、この者をクラッキングし負いし任を初期化、然る後に御身に都合のいい飾りにするのも可能でありまする」

「……で、あるか」

 

 なんとか声を絞り出した信長は、流石に立ち直るのも早かった。

 人智の及ばぬ、加えて想像もしていなかった光景も呑み込み、信長の冷徹な思考が再起動した。

 元より濃姫に気を許す気がなかった信長である。仮にこの場へ利益が現れずとも、遠くない未来に濃姫の正体を看破して、どうにもならぬ奥の室へ押し込み軟禁していただろう。しかしそうした未来に至らなくなった現在、信長はこの利益が濃姫の正体を暴いて己を救ったと判断した。

 くらっきんぐ、しょきか、等という聞き覚えのない言葉も気になるが、今は後回しだ。

 

「利益とやら。確かに其の者が欠けては色々と不都合がある。くらっきんぐとやらでも、なんでもしてわしに都合のいい人形に仕立て上げるが良い」

「御意」

 

 利益は命じられるがまま濃姫の首の裏に指先を突き刺しクラッキングする。

 この機体はよくできているが、桓武式大忍(こちら)にとっては玩具に等しい。己の正体に覚えはなくとも出来ると分かる、遣り方が分かる。それらを疑問にも思わぬ。誰であれ、己の手足の動かし方が分からぬと言う者は普通はいないのと同じだ。

 

「終わり申した。御身の口頭での音声入力により、如何なるお下知にも従うカラクリへと仕立て直させて頂きましたので、存分に活用なさってくだされ」

「であるか。でかした、利益。褒めてやろう」

「有り難き幸せ」

 

 深々と頭を下げる少年に、幾らか年上の信長は嘆息する。

 

「では、わしは帰る。其の方はどうする?」

「お供しましょう」

「……止めぬのだな」

「? 止めねばならぬ理由は、拙者にはありませぬ」

「……このままわしを帰せば、其の方は腹を斬るのも赦さず首を刎ねることになるぞ。わしを攫うというのは如何なる義があれ赦されぬことじゃ。なんぞわしに持ちかける取引はないのか? 腹にある存念を申せ、聞いてやるぞ」

「何もありませぬ。罪に罰が伴うのは是非もないことでありましょう」

「………」

 

 帰れば処罰は免れぬ。であるのに、利益は愚かにも止めもせぬどころか同道しようと申し出た。

 信長はやっと、利益に含意も敵意もないと察する。本当に、掛け値なしに、信長の為に濃姫へ処置を施す為に先般の狼藉に及んだのだ、と。

 理解すると毒気が抜けた。肩を落とし、溜め息を溢した信長は利益を見る。

 

「……前田慶次郎利益、と申したな」

「は」

「其の方は……わしをどう思う?」

「どう……と申されましても答え方が難しく存じまするが、()()の身で御家を背負われる、誠に困難な道を往かれるであろう御方かと」

「……フン。まあ、其の方に見抜かれても驚くには値いせんが。随分と正直に話す口じゃな」

「いずれ我が主君となられるやもしれぬ御方に、偽りを述べる舌を拙者は持ち合わせませぬ」

 

 信長――少女から大人の女になる前段階の乙女――は、利益の口にした禁忌の秘密に失笑する。

 この少年は頭がキレる。あの運動能力も体感させられた。加えて人智の及ばぬものへ見事対応し自身を守護した忠義もある。信長は溢れた笑みに苦味を加え、細い息と共に利益に告げた。

 

「……大儀である。わしは其の方を賊に攫われた姫を救った勇士として遇し、わしの小姓として召してやろう。いずれ、ではない。すぐにでもわしを主として仕えるがいい」

「宜しいのですか。拙者は罰を与えられるが相応の罪を犯した身でござるが」

「構わん。どうせ真相を知るのはわしと其の方だけじゃ。()()、わしと口裏を合わせよ」

「御意」

 

 気紛れ、ではない。

 信長は極めて合理的に、利益――慶次が得難い人材であると判断したまで。

 おまけに顔がいい。側に置いて苦痛にならぬ声と顔、そして信を置けそうな者というのも良い。

 見たことも聞いたこともないような単語を話し、未知の存在に対処した技能と知識も気になる。

 

 はっきり言うと、信長は慶次を気に入ったのだ。纏めればそれだけである。

 

 斯くして未来の魔王、織田三郎信長は終生信頼を裏切らぬ者を手に入れた。

 

 天下無双の戦闘型もののふユニットは、魔王に侍り公私に亘って尽くすだろう。互いの命が尽きる瞬間まで、決して違えぬ忠義は――桓武式大忍の本質である。

 

 

 

 

 

 

 

 




原作で名前が出ない濃姫。出ない方が不自然なのに出ないってことは、なんかあるんやろなぁってことで正体をこうした感じっす。
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