ガソリンスタンドの営業時間終了後、祐一は電気を落として店を閉じようとした時、スタンドにとある一台がやって来る。
その車はクラクションを何度も鳴らし、祐一はそれを聞いて出て来る。
「なんだよ、今日はもう閉店だぞ」
「固い事言うなって、ハイオク満タンだ」
「生意気だな、ハチロクの癖にハイオクだと?」
ハチロクを運転して来た文太が言って、祐一はそれを聞いて文太の方を見ながら言うと同時だった。
バオォォォォン!!
っと途轍もない爆音がし、それに文太と祐一が振り向くと、スタンドに別の車がもう一台入って来た。
そのエンジン音は重く力強いエンジン、2JZツインターボのエンジン音で、スープラが入って来る。
そしてそのスープラがハチロクの後ろに止まり、そのスープラから泰三が降りて来る。
「よう祐一、久しぶりだな。まさか文太までいるとは思わなかったな」
「げっ、泰三かよ…」
「ようお前か泰三、珍しいなお前が此処に来るなんて…」
祐一が泰三を出迎えると同時にスープラから降りて来る泰三、そして文太の方を見る。
「おうおう、相変わらずのぶっきらぼうな顔だ。逆に安心だ」
「何が安心だ。昔と変わらずなのはどっちだよ」
「全く、どっちもじゃねぇか」
そんな会話をした後、文太たちはその場で煙草を吸い始め、文太が言葉を語る。
「てめぇだろう祐一、あの池谷って奴に変な噂を吹き込みやがったのは」
「ああ、別に嘘言ったつもりないが、それがどうした?」
「今日も来たんだよ。頭に包帯巻いて、首にギブスをつけてな…」
その事を思い出しながら文太は語り出す。
────
───
──
昼間の藤原豆腐店、そこに一台の原付バイクがやって来て、店に入って行く。
「すいませーん。厚揚げ下さい」
「はいよー、まいど…ん?」
文太が顔を出すと、そこには頭に包帯と首にギブスを付けた池谷が来ていた。
「事故ったのか?」
「ええ…まあ」
「交流戦まで残り無いんだろう? どうするんだ」
「そこで藤原さんにお願いがあるんです」
「お願い?」
池谷の頼みごとに首を傾げる文太、池谷はそのまま文太にこう言う。
「明後日の交流戦…俺の代わりに走ってくれませんか!?」
「え?」
予想外の事に驚く文太、池谷は必死にお願いした事によって、痛めた首に激痛が走った。
グリッ!!
「ぐっ!?いたたたたた…!!首が!」
「大丈夫か?」
「え、ええ…それよりも藤原さん。どうかお願いします!」
「おいおい…昨日言ったつもりだが。俺みたいなオヤジが出ても仕方ねぇだろう」
文太の言い分はほぼ正しい、これはスピードスターズとレッドサンズの交流戦、更に部外者である文太が出るのは間違いの事である。
しかし池谷は引き下がるつもりはなく、更に言い続ける。
「それは分かっています! ですが今走れるメンバーではやはり、どうしてもレッドサンズには勝てないんですよ! それに貴方は一度、高橋啓介を
「(…ん?)」
池谷の言葉に文太は思わず引っかかってしまう、啓介を負かしたのはそれは文太ではなかった。別の人物である。
当時文太は家で豆腐の仕込みをしていて、ハチロクには乗っていないのだ。
「お願いします!藤原さん!俺…藤原さんが出てくれるまで何度でも着ますからね!!」
そう言って厚揚げを買って行った後、池谷は店を後にし、文太は少しばかり呆れかえるのであった。
────
───
──
文太の話を聞いた後、それに対し泰三は何とも言えない感じになっていた。
「はぁ…、和真の聞いていた通りか」
「あ?和真だって?」
「和真がどうかしたか?」
泰三の言葉に文太と祐一が振り向いて聞いて来て、泰三は煙草を地面に捨てて、火を消しながら言う。
「実は昼間な、和真から連絡が来たんだよ。“文太がちょっとばかし貧乏くじを引いてしまったってな、話を聞いてやってくれ”って言われたんだ。恐らくの池谷がだろうな」
「和真がか…? あ、そう言えば池谷の車は和真の修理工場に運ばれたんだったな」
「なる程な…、まあ話は戻すが、自分の代わりに走ってくれだってよ。ああいう奴は嫌いじゃないがな」
「嫌いじゃなかったら代わりに走ってやったらどうだ? 池谷は気の良い奴だぞ」
祐一が文太にそう言うが、文太はぶっきらぼうそうな表情をする。
「やだね、ガキの喧嘩に大人が首突っ込む様なもんだろう。俺の主義じゃねえ」
「中身はガキだろうが」
「むっ」
泰三の言う言葉に文太は思わずムスッとする。それを見た祐一は若干笑いを堪えながらもある事を言う。
「だったらガキの喧嘩に
「ん?拓海の事を言ってるのか?」
「そうだ、かなりの腕前になってるんだろう」
「…祐一、まさかこいつ」
その会話を聞いた泰三は祐一に問いかけた。
「ああ、そうだ。実はこの前よう電話してな、驚いたもんだよ」
祐一は文太に電話した事を思い出しながら語り出した。
────
───
──
それはスピードスターズとレッドサンズが顔合わせした日の事、店の営業終了後、文太がビールを飲んでいた時に電話がかかって来た。
文太はそれに出る為電話に出る。
「はい藤原豆腐店」
『よう文太』
「何だ祐一か…」
『何だとはなんだ、久しぶりに電話したのに冷てぇじゃねえか』
電話の相手は祐一、その人物に文太は呆れて、祐一はただそっけない態度に文句を言う。
「それで、今日は何の用だよ?」
『おいおい…まあいいや、昨日秋名山でお前を見かけたぞ。合図したのに無視しやがって』
「ああ~それね、それは俺じゃねえよ」
『何言ってる、あれは明らかにお前のハチロクだったぞ?』
祐一は昨日、ホテル街でとある用事があった為、秋名山を上っていた時だった、下って来るハチロクを見てヘッドライトで合図を送った、しかし合図を送った筈が無視され、それに祐一は苦笑いしつつもそれを見送った。
しかし今日電話した所、文太じゃない事に違和感を覚えた祐一、持っている缶コーヒーを飲みながら文太の言い分のを聞く。
「まあその…、俺の車だが、運転してたのは俺じゃねえ。今秋名湖のホテルに豆腐を配達しているのは息子の拓海だ」
『っ!!?ブホッ!! な!何だと!?何時からなんだ!?』
「5年前からだ…」
『5年前って!!中学1年の時からか!?』
文太の衝撃的な事実に驚きを隠せない祐一、息子の拓海を5年前から配達をさせていたのだからだ。それも中学生の時から。
『お前一体何を考えてる!? 無免許運転だとバレたらどうするつもりだったんだ!?』
「バレやしないよ、朝早いし田舎だしな…。まあたまにヒヤヒヤする事もあったがな、今はもう免許とらせたらか時効だ!」
『馬鹿野郎…!』
その文太の言い分には祐一は呆れる他なかった。
────
───
──
「ぷはははははははは!!! こりゃ傑作だなおい!!」
「笑い事じゃねえよ泰三!?」
いきなり笑い出した泰三に祐一は思わず怒鳴る、文太は耳をほじくりながらもそれらを聞き流していた。
「はぁ~、んまあ文太の考えそうな事だ。しかしまあお前も
「ん?同じこと…?」
「ああ、実は俺も息子の走一にも車の運転をさせていた時があったんだ」
「な!何!?」
泰三の一言を聞いて祐一はまたしても驚きを隠せないでいた。
「お前もかよ泰三!?何時からだ!?」
「ああ2年前だな、とは言っても走らせたのは俺が経営しているカートのサーキット場だけどな。あの場所は大勢のカートを走らせる為、広めに作っていたから車1台や2台分は十分走れる。
それに距離を少し長めにしてあるから、あいつのドラテクを高めるにはかなりの経験値を稼げるしな」
「だからと言ってな、お前奥さんの恵子ちゃんにバレたらどうするんだ?」
「ん?女房はとっくに知ってるぞ? むしろ笑いながら見てたしな」
「な……」
その事を知った祐一はもう開いた口が塞がらなかった、聞いていた文太はこっそり笑っていた。
祐一はもう聞いても無駄と判断したのか、話しを元に戻すのだった。
「全く…。まあ話しを戻すが拓海はかなりの腕前なんだろう?文太」
「まだまだだけどな…、秋名の下りならどんな奴が来ても負けないくらいにはなったがな。まあ俺には負けるがな」
「へっ、すぐ負けん気を出す」
「逆に言えば、文太には十分通用するレベルに達してるって事だろう?」
「うるせぇ泰三」
泰三の言葉に文太は文句を言う。その言葉を聞いた祐一は泰三に問う。
「拓海がそれならお前の走一はどうなんだ? どれ程の腕前なんだ?」
「かなりの腕前になったがな、まあ流石に文太の息子には及ばないが、どんな奴が来ても負けないくらいの腕前だ」
「なる程な…」
「まあ家の奴は一体誰に似たのか頑固な所があってな、走れって言っても素直に走るような奴じゃないんだよなー。まああの池谷って奴の頭の包帯に免じて、作戦を考えてやるか…」
文太はそう言って煙草を消して、その場を去ろうとした際に泰三が止める。
「待て文太」
「ん?どうした」
「今度祐一や和真たちと一緒に飲みに行こうぜ、勿論俺の奢りだ」
「おおいいぞ、それじゃあまた今度な」
そう言って文太はハチロクに乗ってスタンドから去って行った。
それを見送った泰三と祐一は再び話し込む。
「なあ泰三、さっきの話だが。走一はどんな車を使ったんだ?」
「ん?俺の車だ。そこのスープラ、ただあのスープラはな…元々走一の為に用意した車なんだ」
「なんだって? どうしてその車をやらなかったんだ?」
「どうもあいつがバイトしている解体工場でワンビアを見つけてな、それに惚れ込んで買ってはレストアしたんだとさ。まあ一度死んだ車に魂を入れ込むのは悪くねえさ」
「ははは、まあ走一がそうしたかったのなら、良いんじゃないか?」
「まあな、じゃあ俺も帰るわ祐一、じゃあな」
そう言って泰三もその場から立ち去って、自宅へと帰って行った。
───────────────────────────────────────────
同時刻、走一は玄達と一緒に秋名山を攻めていた。
池谷が出れなくなってしまったスピードスターズに暗雲が立ち誇る中、走一はもしもの為、啓介とバトルする為に念入りに秋名を攻めていた。
「(池谷先輩が出れなくなってしまった以上、1週間早めて俺が走る事にするしかない。しかも足回りがまだ届いてない状態だが、それでも行く以外方法はない!)」
そう思いながら走一は秋名を攻め、玄達も走一の後を付いて行くのであった。
アンケートですが、そろそろ終了して決定にします。ありがとうございました。