ワンビアとS15のバトルが始まり、スタート地点では彩音達がその様子をただ待つだけであった。
そして雅人が慎太郎に気になっていた事を問う。
「なあ、お前あの男、ダニエルって奴の事を知っているみたいだな? どんな奴なんだ?」
「ああ、俺が知っている限り…ダニエルはライン取りが上手いと聞く。それだけじゃなくブレーキングドリフトやタイヤマネジメントも強い…、果たして走一君はあのダニエルに勝てるかどうか…」
「ぶぇえええ!?そんな…!」
それを聞いたイツキは驚く表情をし、玄達もそれを聞いては驚きの様子をして、走り去って行った走一の方を見る。
だがそれを拓海は…。
「…多分だけど…、大丈夫な気がする」
「え?何だよ拓海? それどういう意味だ?」
池谷は拓海が言った言葉に振り向き、拓海はその事に振り向きながら言う。
「確信があるって訳じゃなんだけど…、多分走一…、あのダニエルって人の動きについて行けると思うんだ」
「どうしてそう言えるんだよ拓海!?」
イツキはその事に拓海に問うも、拓海は道路の先を見ながら言う。
「…俺、もしかしたらって思うんだけど、走一は一度…園崎零士とバトルしただろう。一度抜かされて、その走りを見たから、もしかしたらあいつは…勝てるんじゃないかなって思うんだ」
「まさか…そんな」
「私も…そう思う」
っとその言葉に彩音が言い、彩音の方に皆が見る。
「彩音?」
「走一なら…絶対に勝てる。そう思うのよ私。だから…信じてるの」
そう彩音は道路の先を見て、走一の勝利を信じていたのだった。
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そして走一のワンビアと、ダニエルのS15がいろは坂の下りを猛烈なスピードで駆け下りて行き、素早いコーナリングでコーナーをクリアしていく。
「(フッ、意外と葉っぱが多いぜ、お陰で走りづらいっちゃありゃしない。そう言えばさっきエンペラーのメンバーからの携帯が聞こえたが、小柏はゴール寸前でスピンしたそうだな、何とも哀れな…。だがこれを言い訳にするつもりはないぜ。これしきの事に比べたら、RDRSのコースに比べたら大した事ない。アカデミーのコースを思い出しながら、俺は駆け下りる…!それだけだ!)」
ダニエルはそう思いながら無駄のない足を使い、狭いコーナーをササっとクリアしていく。
その様子を走一は背後から見ていて、それに目を細める。
「(メチャメチャ上手い…! 後ろから追いかけていくと、ダニエルの動きがよく分かる! 直線のスピードは互角でも、タイヤを上手く使ってはコーナーを恐ろしい速さでクリアしていく!)」
走一はそれに必死に食いついて行きながらも、ダニエルのS15にピタリと張り付く。
「(隙が無い上にブロックが途轍もなく上手い…。これが零士と互角の男か…。でも…一つだけ違いがある!それは…)」
後ろを走っていて、ダニエルの走りには零士とは違う走り方がある事に気づいた。
そしてその様子をエンペラーのメンバーが見て、目の前を通り過ぎて行き、携帯で報告する。
「こちら29番ヘアピン! たった今2台が通過しました! 途轍もなく速いです。S15は俺達の想像を超えるぐらいに速いです!それに続くワンビアはピタリと後ろに付いています!!」
その報告を聞いた清次は頷きながら形態を切り、それを京一に言う。
「京一!ワンビアとS15は29番ヘアピンを通過したそうだ。思っていた以上に速いぞ!このままいろは坂の坂をあっという間に降りてしまうぞ!?」
「…そうか、予想以上に速いな」
清次の報告に京一はただ呟き、そして幸間の方を見る。
「ダニエルはそれほどまでに速い男なのか?如月幸間」
「…ああ、さっきも言ったが、アイツは園崎零士には及ばないが、ライン取りが上手く、タイヤマネジメントも凄く上手くて…温存がとても効く男だ。このまま先行させるのは不味いぞ、朝倉走一が勝つのは、何処かのコーナーで抜く事が重要だ。しかし…」
「それをあのダニエルは与えてはくれない…か。クソッ!こんな所で負けを増やすのは許さないから!」
幸間が言おうとした所、啓介がその事を拳をぶつけながら言う。
だがそれを涼介と琢磨は…。
「…フッ、まだ早いぜお前達」
「走一君の本番は此処からだ…」
「どう言う事だ、涼介、琢磨?」
京一は2人が言った言葉の意味が分からず、それを問うと、まず涼介がある事を言う。
「確かに相手はRDRS出身のプロレーサーだ、隙を与えないのは勿論だが、まず重大な事を忘れている」
「それは…此処がストリートである事だ。相手が培ってきた経験も、ここではそう簡単には行かない。それに…走一君はこの俺に勝った人物。零士の師である俺を勝ったとなれば、必ずダニエルの欠点に気づく」
「っ!(ダニエル・アンダーソンの欠点だと…!?)」
京一はその事を聞いて、ダニエルの欠点がある事に驚きを隠せなった。
そしてバトルに戻り、いろは坂のヘアピンはもう39番を過ぎており、走一はダニエルのS15の背後に食いついていた。
その事にダニエルはバックミラーを見ながら冷や汗を流す。
「(くっ!驚いたな…、ここまで付いて来れるとはな。レースでは俺に付いて暗れるのは如月幸間ただ一人だけだと思っていた。ストリートの世界でもレースの技術が通用する…そう思っていた。だが俺の後ろにあいつがまだいる…!)」
ダニエルはバックミラーで後ろから迫って来るワンビアを見て、冷や汗また流す。
走一はダニエルの後ろを付いて行きながら、ダニエルの様子をジッと見ている。
そして最後の前のコーナーを差し掛かる時に、アスファルトの道路脇を見る走一。
「(ん? 茂みが枯れて、アスファルトの段差…。親父…!まさか拓海と同じあれをしろって言うのか!? ならやるっきゃない!!)」
そしてコーナーを抜けては、最後のコーナーに入る時に、走一は段差を見て決心する。
「(拓海と同じ溝落とし!! そこだ!!)」
走一はワンビアの片方のタイヤを段差に落とした後、そのコーナースピードを生かしながら、ダニエルのS15の隣に並んでいく。
それにダニエルは思わず横を見る。
「(何!?ここで行くのか!!?)」
驚くダニエルを他所に、走一は横目でダニエルを見ながら語る。
「(ダニエル、お前と零士との間には決定的な差がある! それは…“
その事を言う走一はトンネルに入る直前、タイヤを瞬時に戻し、その反動で弾み、一気に車が前に出て、それにダニエルは目を見開いた。
ワンビアは前に出た後、着地の際にステアリングをコントロールしながら体制を立て直し、走一はダニエルの前に出た。
ダニエルはそれに思わず目を見開きながら唖然とする。
「(な!なんて奴だ…!)」
「(悪いなダニエル…、この勝負…)俺の勝ちだ」
そう語る走一はそのまま走り続け、ダニエルはその様子を見ては、もう諦めた感じになりアクセルを少しだけ開ける。
「(くぅ…、まさか最後辺りにあんな馬鹿げた行動を取るとは…。でもここはストリート…。そんなバカげた事が出来るからこそ…あんな芸当が出来るんだろうな…)フッ、零士が興味を持つのも頷けるぜ」
そして3番目の橋の先のゴール地点、その辺りでエンペラーのメンバーが見ていた。
「来た!先頭は…ワンビアだ!!」
「うっへぇ~!!どうやって抜いたんだよあれ!?」
そう言いながら、ワンビアはゴールして、S15もそれに続いてゴールする。
勝負はワンビアの勝利で決まった。
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すぐにその勝利の報告を清次に伝え、それを清次は京一に話す。
「京一!ワンビアが勝った! どこで抜いたか分からねぇが、既に一本目の橋の時点でワンビアが抜いていたそうだ!」
「…そうか」
それを聞いた京一は呟き。
走一の勝利を聞いた蓮華は喜ぶ。
「やった~!走一君の勝利だ~!」
「「「兄貴!」」」
啓介と壮真と幸間は涼介と琢磨の方を見て、琢磨は笑みを浮かばせ、口角を上げる涼介はノートPCを閉めながら啓介に言う。
「…帰るとするか、啓介」
「ああ!」
「俺達も帰るぞ、壮真、幸間」
「「おう!」」
そう言って涼介と琢磨、啓介と蓮華たちは撤収していった。
そして京一は帰って行く涼介達の後ろ姿を見て思った。
「(藤原拓海、そして朝倉走一…。あいつ等はデカくなる!涼介と琢磨が眼を付けるのも分かる。だがいずれ涼介と琢磨を超えていくドライバーだ)」
京一はそう語り、そしてスタート地点に居る拓海と彩音、玄達の所にも連絡が行く。
「そうか分かった。こっちも撤収する」
エンペラーのメンバーが携帯を切り、皆に叫ぶ。
「終わったってよ。勝ったのはワンビアだ!」
その報告を聞くと、イツキ達がいつも通り…。
「やった~~~!!走一が勝ったんだ~~~!!!!」
「おお~…!すげぇぞ! ここからが秋名のハチロクと稲妻のワンビアの真の伝説が始まるのか…!」
池谷がその事にちょっとばかり涙目となる。
「すげぇな秋名のハチロクと稲妻のワンビア! おいおい泣いてんじゃよ池谷」
健二が池谷の様子を見てはいい、それに耐えきれない池谷。
「だって…嬉しくって!」
「俺だって泣いちゃいますよ~!」
そう言って大はしゃぎする池谷達。その様子に陽毬たちは苦笑いしながら少し引いていた。
慎太郎は走一が勝ったことに驚きを隠せなかった。
「走一君が…あのダニエルに」
「すげぇな、どんどん速くなっていくぜ走一は」
「ああ、アイツは速くなるぞ」
海斗と雅人がそう言い、雅人が慎太郎の肩に手を置く。
そして彩音と拓海は。
「走一の奴…勝ったな」
「うん、信じてた。だって勝てるって思ってたもん♪」
「…そっか」
拓海はそう言っては夜空を見る。
そして走一とダニエルは分岐点の所で止めて、互いに降りては語っていた。
「流石だな朝倉走一、まさかあんな手で勝つとは思わなかった。だがここはストリート、レースの常識は通用しないだろうしな」
「だが、ライン取りは完璧だったよ。最後の所まで中々隙を見せなかったから、抜く事は出来なかったし」
「そうか。だが一つだけ分からない所がある。どうして最後辺りは抜かせた?俺は隙を見えなかったのに」
「ああ、それは駆動方式の違いだよ。アンタと零士の走りに違いがあったのはそこだった」
っと意外な事にダニエルは驚きの様子を見せる。
「……フフフ、アハハハハハ!」
まさか車の駆動方式で負けたと聞かされ、それに笑いが止まらないダニエル。
それに走一はただ見る。
「いや~負けた負けた。まさかそんな事で負けるとは、思いもしなかった。正直負けたのは悔しいが、結果的にはいい感じだったよ。零士がお前に興味を示すのも納得だ」
そう言ってダニエルはS15の所に戻り、振り返りながら言う。
「今日は楽しかったぜ。それと走一、お前更に速くなるぞ。これからも腕を磨いておけ、じゃあな」
そう言ってダニエルはS15に乗り込み、いろは坂を去って行く。それを走一は見届けて行ったのだった。
はい、どうでしたか?久々だったのと、走一のバトルシーンが少なかった事に反省です。
何せ中々浮かばなかったので。
とにかく、次回からは彩音の話しとなります。
感想と誤字と評価、よろしくお願いいたします。