頭文字D マキシマムブースト   作:ライダーGX

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第15話 溝落とし

拓海の驚異的なドライビングテクニックを見せ、それをギャラリーだけでなく、拓海の様子を見に来た走一達をも驚かせていた。

そして勝負はいよいよ終盤へと差し掛かっていた。

 

啓介は何度もコーナーで張り付かれるハチロクに苦痛の表情を見せる。

 

「(くっそ…!!)」

 

何度もアクセルを踏み、スピードを上げて逃げようとするも、啓介はFDの微妙な違和感を感じていた。

 

「(どう言う事だ!?今日に限ってFDがやけにのろく感じられる!! セカンダリータービンが止まってんじゃねえのか!?)」

 

啓介がそう思っている中、拓海の背後を追いかけている走一達は啓介のFDに様子を見て、何かに気付いた。

 

「…啓介さん、拓海に張り付かれている事でかなり焦ってFDのポテンシャルを引き出せてない。相当テンパってるな」

 

「そうなの?」

 

『ああ、俺もそれを見て思うよ。あの人…FDの性能を全く引き出せてない、パワーに頼り過ぎてる』

 

彩音がそう聞いた際、道郎もその事には賛同していた。啓介は拓海に煽られている事でFDのポテンシャルを引き出せずにいた。

更に馬力に頼り過ぎている為、FDのコーナリングをも全く活かしいきれていなかった。

 

『お?どういう意味だそれ?』

 

『お馬鹿…!』

 

『要するに、あの人は拓海の圧倒的なドライビングテクニックに圧巻されて、今自分を見失ってるって事!』

 

『おお~!なる程な!』

 

玄の呆れた様子に走一達は少しばかり崩れそうになったが、今は拓海を追いかけその様子をしっかりと観察する。

 

拓海はFDを追いかけながら 繊細なドライビングテクニックを披露し、FDを追いかけるのであった。

 

 

 

そして秋名山頂上で、涼介が史浩が持っている無線機を借りながら仲間に連絡する。

 

「こちら頂上、聞こえるか?」

 

『涼介さんですか!』

 

「もうすぐ6台がその5連続ヘアピンに付く。実況中継してくれ、なるだけ状況が克明に分かる様にな」

 

涼介の言葉にメンバーの1人が頷く。

 

「分かりました!すぐそこまで来てます、スキール音が聞こえる…もうすぐ突っ込んでくる。来た!」

 

メンバーが拓海達の車が見えた事に報告を続ける。

 

「啓介さんのFD!その後ろにハチロクだ!ほとんど差がない! それとワンビア達もだ!ピッタリ付いて行ってる!」

 

実況するメンバーにそのままコーナーに突入していく拓海達と走一達、拓海のブレーキングドリフトによってコーナーで差を埋められる啓介。

その様子にメンバーの1人がまたしても驚く。

 

「うわすげぇあのハチロク!!完璧なブレーキングドリフト!啓介さんの突っ込みが負けてる!!それにワンビア達もすげぇ!!ワンビアもブレーキングドリフトが上手すぎる!セリカはドリフトとグリップの間の走りをしてる!

FTOはケツが少し出る感じを見て見る限り左足ブレーキを使ってる!NSXはグリップ走行でありながらコーナーがマジ速い!! 立ち上がりも上手い!!ガードレールギリギリだ!!」

 

その報告を聞いている涼介と、近くにいる池谷達は思わず息を飲みながら聞いていた。

 

「2個目のヘアピンに入ります!もうほとんど差がない!」

 

拓海達と走一達が2個目のヘアピンに入り、姿が見えなくなったことで慌てて見える位置に移動し、立ち上がりの様子を見る。

 

「おお!立ち上がりは6台ともほぼ同じだ!!」

 

そして啓介がヘアピンに入る為、アウト側に移動した時だった。

 

「啓介さんがアウトにのった!ハチロクは…ああ!!」

 

なんと啓介のFDが減速したのにも関わらず、拓海は減速せずにそのままコーナーに突っ込んで行った。

その様子を走一達は勿論、啓介も驚きを隠せずにいた

 

「拓海!?」

 

「ええっ!?」

 

『おおっ!!?』

 

『何々!?』

 

『どう言う事だ!?』

 

『拓海君!?』

 

『トラブルが起きたの!?』

 

『拓海さん!!』

 

「(ヘアピンなのに減速してねぇ!? 何考えてやがる!!)」

 

走一達と啓介が思う中で、拓海はただ何かを狙って進んでいた。そしてその様子を中里も見ていた。

当然拓海の様子をメンバーが実況する。

 

「うわああ!!ハチロクがもう凄いオーバースピードで突っ込んでいく!!ブレーキがイカれたのか!?」

 

その報告を聞いた事で、イツキは思わず頭を抑え込んでしまう。

 

そして第3コーナーに差し掛かった時、拓海がハンドルをある方向に切り、タイヤがグシャリ!と音がした。

 

「なっ!」

 

「なんだ今の!?」

 

謎の音を聞いた走一と啓介は思わず驚き、拓海はタイトなヘアピンをイン側のまま突き抜けて行き、それには中里達は驚いた。

 

そして実況はそのまま報告する。

 

「啓介さんが抜かれちまった!!あっけなくインからスパーっと!!! 」

 

レッドサンズのメンバーの報告に涼介、イツキ、池谷、健二達に衝撃が走った。

それを聞いた史浩が涼介が持っている無線を取って聞き直す。

 

「そんな馬鹿な…! それじゃまるで状況が分からん!!ちゃんと説明しろ!!」

 

史浩がそう返答するも見ていたレッドサンズのメンバーは唖然としていた。

 

「それが…見ていた俺達も…、車ってのはタイヤを超えるスピードでは絶対曲がらないものでしょう? それなのにあのハチロク…インべたの苦しいラインなのに、まるでジェットコースターの様に奇妙な曲がり方をしたんです。

こっちも一体何が起こっているか、さっぱり分からないんです!」

 

その様にレッドサンズのメンバーが報告をする中、中里は笑みを浮かばせる。

 

「フッ、俺には分かった…あのハチロクが何をしたのか」

 

「「え?」」

 

「馬鹿馬鹿しい事だが、あんなのは絶対誰も真似できない、しかもこの秋名でしかありえない事だ。フフフ…とんでもねぇ馬鹿が世の中に入るもんだ」

 

そう言って中里はその場を去ろうとする、それをナイトキッズのメンバーたちが思わず声を掛ける。

 

「毅さん!上りの方は見ないのですか!?」

 

「上りで勝っても意味がない。峠では下りが全てを制するもんだ…、この勝負、レッドサンズの負けだ」

 

中里はそう言ってR32の方に乗り込み、笑みを浮かばせる。

 

「(楽しみが1つ増えたぜ。秋名の下りのスペシャリスト、あいつを仕留めるのは…この俺!妙義ナイトキッズの中里毅だ!!)」

 

 

 

そしてゴール地点、エキゾースト音が聞こえて来て、レッドサンズのメンバーが見る。

 

「来たぞ…どっちだ!?」

 

レッドサンズのメンバーが見守る中で、やって来たのはハチロクだった。

 

「ハチロクだって!?」

 

「啓介さんのFDが来た!!かなり差を開けられた!?」

 

そう言う中で拓海のハチロクがゴールをして、レッドサンズの1人がストップウォッチを止める。

そしてハチロクがゴールした事を頂上に居る涼介達に報告する。

 

『たった今ゴールしました…、啓介さんが負けた…!!』

 

「「「っ!!やったーッ!!!!」」」

 

その報告を側で聞いていた池谷達は大喜びし、中には泣く者もいた。

 

レッドサンズの方は啓介が負けた事で言葉を無くしていた。

 

その後啓介がゴールして、FDを止めて降り、走り去って行くハチロクを見る。

そして奥底で啓介はかなり悔しがっていた。

 

「(くっ!悪い夢は続きを見ているのか…? 俺がハチロクに負けた?しかも2度も!?)」

 

啓介が悔しがる中で走一達が乗るワンビア達もその場を後にし、ある場所に止めに行くのだった。

 

頂上ではイツキが興奮を抑えきれなかった。

 

「ひぇーーーー!!勝っちまいましたよ!! あのボケた拓海が!!!」

 

「凄い…凄すぎるぜ。血の気が引いた…頭が変になりそうだ!」

 

「やったな池谷!おいおい泣いてんじゃねえよバカ」

 

「なんだかよ…嬉しくて!」

 

池谷の目に涙が浮かんでいて、それには健二も同じだった。

 

「あいつには色々と教えて貰おうな? ドリフトのコントロールとかライン取りとか…」

 

「スピードスターズのステッカー!勝手に貼っちゃえ!」

 

「あーっ!その役俺がやりますよ先輩!!」

 

そう言ってスピードスターズが賑わう中、涼介達のレッドサンズは沈黙が保ったままだった、それを涼介が破る。

 

「…俺達の完全な負けだ。潔く認めよう」

 

「だとすると涼介。この事は明日になれば群馬中の走り屋達にこの噂は広まるぞ、“負け知らずだったレッドサンズが秋名のハチロクにやられた”ってな。この敗北はかなり痛いぞ」

 

「ギャラリーを集めたのが裏目に出たな…、だがこのリベンジは近い内に付ける、俺のFCでな!」

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そして走一達は近くのコンビニで車を止め、降りて飲み物を買い、拓海の事とで盛り上がっていた。

 

「いやー!すげぇぜ拓海の奴! あのFDって車を負かすんだからな!!」

 

「うん、拓海君があんなに速いなんてね~」

 

玄と凛がそう言う中で、走一は先ほどのバトルの事を考えていた。

それを隣にいる彩音が気づく。

 

「走一、どうしたの?」

 

「さっきのバトルの事を考えてるのか?」

 

道郎がその事を聞き、それに走一は頷く。

 

「ああ、拓海…啓介さんを抜かした際に、あんな芸当をするとは思わなかったって思ってな」

 

「さっきの芸当…もしかしてインべたで抜いた事?」

 

廉一郎がそれを聞いて、走一は頷きながら持っている缶コーヒーを一口飲み、それを説明する。

 

「拓海、あんなのを以前から練習していたのかもしれない、それもかなり前から。でなきゃあの技は誰も使えない」

 

「走一、教えてくれ。拓海は一体どうやってあんな芸当をやったんだ?」

 

「そうよ」

 

道郎と真美はその事を走一に問い、その答えを言う。

 

「拓海はあれを使ったんだ」

 

走一はある所に指を差し、それに彩音達がその先を見る、その先は縁石の近くにある排水用の溝だった。

 

そして同じ所で、涼介と啓介がハチロクに抜かれた場所で涼介が啓介に説明をする。

 

「奴はこいつを使ったんだ…」

 

「排水用の溝?」

 

「そうだ…。イン側のタイヤをワザと溝に落とし、引っかける様にして遠心力に対抗する、これならばタイヤのグリップ以上のコーナリングフォースを得る事も理論的には可能だ…」

 

その話しを聞いた啓介は唖然としてしまう中で涼介は説明を続ける。

 

「あまりにも単純明快でバカバカしい思い付きだが…、いきなりやっても絶対に成功しないだろうな。恐らく奴は普段からこんな練習もしているんだ、余程この秋名を走り込んでいる奴だ」

 

「くっ~~~!!!」

 

それを聞いた啓介は苛立ちをガードレールにぶつける。

 

「クソッたれがーっ!!!」

 

「まあ…こんな事が起きるから峠は面白い…、久々に俺が本気で熱くなるターゲットに出会えた気がする」

 

「っ…?」

 

それを聞いた啓介は涼介の方を振り向く。

 

「予定していた遠征は全て中止だ。まず秋名に完全勝利するまでその先はない、あのハチロクは俺がやる! それと啓介…お前ワンビア達が追いかけていた事に気が付いていたか?」

 

「…ああ、俺達の後ろを走って見ていた事をな、堂々とついてきやがって!」

 

「フッ、あいつとのバトル…来週だ。それまでしっかりと腕は磨いておけ、あいつは速いぞ!」

 

涼介の言葉に啓介は息を飲みながら頷き、同じ場所で走一の説明を聞いた彩音達は納得する。

 

「へぇー、拓海君そんな事をやったんだ」

 

「でもそれって絶対に成功しない奴だぞ。それを成功したって事は」

 

「ああ、拓海は以前から走っているんだ。あの秋名を…。まあ拓海のバトルは終わったとして…次は俺の番だ」

 

その事を聞いた彩音達は走一の方を見て、走一は決心した目をしながら言う。

 

「拓海が勝ったんだから、俺も万全な状態で臨む必要がある。今日のバトルで…啓介さんは更に速くなるだろう、それに対応するべくワンビアのアップグレードが必要だ、道郎…悪いが朝一に俺のワンビアを取りに来てくれるか?」

 

「取りにって…そうか、ワンビアを俺の父さんに頼むのか。分かった…任せろ」

 

それに頷きながら走一は夜空を見上げて、来週のバトルの事を考えるのであった。

 

 

 

 

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