拓海と中里のバトルが徐々に白熱し、走一のワンビアもその後に着いて行く。
ハチロクがコーナー入り口でR32に離される一方、いよいよ中盤の高速コーナーに入る時だった。
拓海が時速100キロを超えるスピードで四輪ドリフトをしながらガードレールをかすめる様な危険なドラテクをし、それに中里は驚く。
「(なっ!何!?)」
その様子には走一と啓介も驚いていた。
「(高速コーナーではハチロクが差を詰めている!? 100キロを超えるスピードで四輪ドリフトをしながらガードレールをかすめるなんて…!)」
「(おいおいマジかよ拓海…! お前本当に頭の中ネジが2~3個吹っ飛んでるな!)」
拓海の異常なドラテクには流石の走一はドン引きし、啓介はその様子を見て驚きを隠せないまま、2人は拓海の速さの秘密が明らかになった。
「(そうか…!拓海の速さの秘密はそこにあったのか! ハチロクは軽量の分パワーがない為、失速したらスピードを回復するのに時間が掛かる!)」
「(そのスピードを回復するの抑える為か、無駄な減速は一切しない! あいつとバトルした時、いくら逃げても背後霊の様にケツに張り付かれてしまう理由が、ようやく分かったぜ!)」
走一と啓介は拓海の速さの秘密を知って、再び拓海のバトルを観察する。
そして中里はハチロクに食いつかれてしまい、焦りながらも何とか引き離そうとするも、全く引き離せないでいた。
「くっ!(振り切れね…!! それで所か食いつかれたままの時間がどんどん長くなる! クソッたれ!手強い!!)」
中里は徐々に焦りを見せ、コーナーに突っ込みながら進む、ハチロクも同じ様に突っ込み、R32に食いついていく。
その様子を見ていた走一達はそれを思う。
「(ガードレールの間隔は中里さんのを見て20㎝から30㎝、どんなに上手い走り屋でもそれが限界だ…)」
「(だがあのハチロクは、バンパーをガードレールに擦りつける様にして最短距離で抜けていく…。桁違いだぜ…何でそんな正確なドリフトコントロールが出来るんだよ!?)」
啓介は拓海の正確なドリフトコントロールが出来ている事に目が釘付けとなる中、走一は拓海のドリフトコントロールの正確差の秘密に辿り着く。
「(っ!!そうか!! 拓海はいつも紙コップに水を入れて、完璧な荷重移動をしているからあのドリフトコントロールが可能なのか!! だからあんな芸当も出来るって事か! ようやく分かったぞ!)」
走一はその事に分かった頃、中里のR32がコーナーに突入している中で、フロントタイヤが徐々に滑り始めた事に気が付き、それに中里は表情を歪める。
「ぐっ!(ABSを効かせながら抉る様にステアリング操作をしてきたからな、フロントタイヤにかかる負担が考えていたより遥かにデカい!!厳しくなって来やがったぜ!!)」
中里はR32のフロントタイヤが限界になりつつも、それをドラテクで何とか抑え込もうとしていた。
それをお構いなく拓海のハチロクは中里のR32に食らいついていき、それを中里は耐えながらもコーナーの立ち上がりで引き離す。
そして走一のワンビアもコーナーの立ち上がりで付いて行き、助手席に座る涼介が口を開く。
「この先の5連続ヘアピン…」
「え?」
「お前があのハチロクとワンビアに抜かれた所。あそこがキーポイントになる」
その言葉に走一は横眼で見て、啓介はそれに唖然としながら前を見る。
5連続ヘアピンが勝利の鍵、それには未だ啓介の頭では理解出来ずにいたが、反対に走一はそれに理解出来ていた。
あのハチロクの勝利はそこにあると…。
───────────────────────────────────────────
5連続ヘアピン、そこは拓海と走一が啓介に勝ったコース、そこに拓海が今回R32に勝つ鍵があると涼介は言う。
そしてエキゾースト音が徐々に聞こえ、ギャラリーたちはそれに目を向く。
ギャラリーたちの目の先に、R32が先頭でその後方をハチロクが追いかける形でやって来た。
「おお!!ハチロクが食いついてる!!」
「すげぇ!!あの中里が苦戦している!? どうなってるんだ!?」
ギャラリーたちが歓声を沸く中、中里はアンダー気味のタイヤを抑えつつコーナーをクリアして行き、拓海は完璧なブレーキングドリフトをしながら、コーナーで中里のR32に差を詰める。
「出た!ハチロクのブレーキングドリフト!!」
「すげぇ!! あっ!!」
すると1人のギャラリーが後ろからやって来るワンビアを見て、ワンビアはハチロクと同じブレーキングドリフトをしながらコーナーをクリアしていく。
その様子を見ていたギャラリーたちは目が釘付けとなる。
「ワンビアだ!」
「稲妻のワンビアだ! あいつもすげぇ!」
そして中里は拓海のイン側に溝に進入させるのを阻止していた。
「(この5連続ヘアピンで、高橋啓介が抜かれるのを俺は見ていたからな。あのはハチロクは路肩を使ったコーナリングをするんだ!)」
R32はバックファイアを吹かしながらイン側を抑えていた。
それを見た啓介は目を開く。
「またインを開けない? 内側に飛び込ませないつもりだ!」
「中里さん…どうやら拓海と啓介さんとのバトルを見ていた様だな」
「フッ、中里め…。さあ…どうする?ハチロク!」
涼介がそう呟いた瞬間、拓海のハチロクはインからではなくアウトから攻めて来て、それに中里は驚きを隠せないでいた。
それには啓介と中里は驚きを隠せないでいた。
「外から!?」
「何!?外からだと!? なめてんじゃねーぞ!!外から行かすかよ!!」
中里はアクセルを踏み、R32のトラクションを生かしながら立ち上がっていく。
それに走一は呟く。
「おおー…流石GT-R。本当に立ち上がりの加速は凄いや」
「それよりもハチロクだ。あんな狭い場所を外からだなんて…」
「後3つで、このバトルの勝負が決まる…」
啓介がその事に呟く中、涼介はこのバトルの勝敗を気にしていた。
そして拓海がまたしてもアウトから来て、それに啓介は驚く。
「また外から行った!!」
またしてもアウトからやって来るハチロクに中里のストレスは溜まっていく。
「くそっ!!!ムカつくぜ!!! 外から良い様に来られちゃ目障りが溜まんねぇや!!!」
そう言って中里はアクセルを踏み、立ち上がっていくも、R32の挙動が乱れていた。
その様子を走一と涼介は見逃さない。
「あっ、中里さん、拓海に外から来られて集中力を切らしてますね」
「ああ、啓介、目を離すなよ?ハチロクが抜きに行くぞ!」
「え?(抜きに行くって…あんだけインを閉められてちゃ…、一体どうやって?)」
その言葉に啓介はここからハチロクがどう抜くかを見てるのでった。
そして秋名山頂上ではその会話を聞いていた彩音たちが興奮していた。
「ええ!?拓海君が抜きに行ってるの!?」
「よっしゃ!そのまま行けよ!拓海!!」
玄達が拓海に勝利のエールを送る。そして中里は今の状態にイラ立ちを隠せない。
「(屈辱だぜ!大勢ギャラリーが出てる前で良い様に外から突っつかれちゃな!無理にインに付こうとするから不自然なラインなって突っ込みが甘くなるんだ! 車一台分ギリギリ入れない程度に寄せれば良いだけでいい筈、そうすればもっと進入スピードを上げられる!)」
中里はインを攻めすぎない程度にコーナーに突っ込み、拓海はそれにアウト側に向かう。
それを見た中里は確信する。
「よし!インには来ねぇな!」
っとそう言った瞬間だった。突如ハチロクの姿が消えて、中里はバックミラーを見る。
確かにいた筈のハチロクがその場に居らず、動揺を隠し切れなかった。
そして横を見てみると、ハチロクがイン側に攻めていたのだ。
それには啓介は驚いていた。
「なっ…!」
「(しまったぁ!!肝心な所でアンダーを!!)」
中里はハチロクのトラップにまんまと引っ掛かり、動揺を出しつつも何とか体制を立て直し、ハチロクと横に並ぶ。
「(外に行くと見せかけて置いて、ブレーキングをしながらラインを変えやがった!ハチロクってのはあんな事が出来る車なのか!? だけどこれで勝ったと思うなよ!このまま並んで立ち上がれば、2速全開の加速で俺は前に出られるんだ!R32の底力を見せつけてやるぜ!!)」
中里は立ち上がりで加速しようとしたが、その様子を見た走一は呟く。
「…駄目だ、あれじゃあ滑る」
「え?」
走一の言葉に啓介は耳を向けた瞬間だった。R32のリアタイヤが滑り出して、スライドし始めた。そう…R32のタイヤはもう限界だったのだ。あれだけのダウンヒルをしていたらフロントタイヤだけじゃなく、リアタイヤも消耗している筈。
苛立っていた中里はそれに気づけずにいた。
そしてそのままスライドするR32はリアをガードレールにぶつけてしまい、そのままスピンする。
ワンビアはR32の間地かに迫り、それに啓介は思わず息を呑むが、走一はサイドブレーキを一瞬だけ引き、ハンドルを切ってサイドスピンする。
そのままR32のスピンと並んですぐに通り過ぎ、そのまま立ち上がって走り去っていく。
そしてR32はスピンが止まり、中里はそれに唖然としていた。
「(負けた…。俺とR32がバトルに負けた…? いや、負けたのは俺だ…こいつがハチロクに負けた訳じゃねぇ)」
中里は自身の負けと思いながら、R32の負けじゃないと意気込み、車を降りてタバコに火をつける。
「(あんな凄い走り屋が居るとはな…、まあ結果は結果、ショックはショックだけど不思議に爽やかな気分だぜ、全力を出して負けたんだからな…)…痛ってーな、また板金7万円コースか。まあ腕を磨いて、もう一度チャレンジするか」
R32のリアの傷を見ながら呟く中里、するとそこに1人の男が来る。
「お~お~、随分とやったなこれは?」
「あん?」
中里は振り向くと、そこにはギャラリーに来ていた和真がそこに居たのだ、和真は自身の車に乗って下ってくる際に、中里のリアを見て降りて見に来たのだ。
「大丈夫か君?」
「…ああ、これぐらいどうって事ねぇ」
そう中里は言うと、和真はある紙を中里に渡し、それに中里は見る。
「何だこれは?」
「これは私が経営している修理工場の住所だ。明日GT-Rを持って来なさい、板金は半額にしておいてやるよ。これだけいいバトルをしたんだからな、それとタイヤの使い方も教えてやる、下りでも上りでも十分に対応できるタイヤの使い方をな…」
「な…何?」
その言葉に中里は思わず目を見開くのであった。
───────────────────────────────────────────
そして秋名山の頂上、拓海が勝利したとの報告はすぐにイツキ達の耳に入った。
「やった―――ッ!!拓海が勝ったーッ!!!」
イツキは大喜びをする中で、池谷と健二は唖然とした表情をしていた。まさかハチロクがR32に勝つなんて思っていなかったか、もしくは買ったこと自体に唖然としていたのだ。
「ハチロクが!?嘘だろう!?」
「何でハチロクがGT-Rに勝つんだよ!?」
そして池谷と健二、イツキの3人は互いの顔を見た後…。
「「「……」」」
「へ…へへへ」
「「へへへ…」」
「「「へへへへ………!!」」」
っと可笑しくなった様子で笑い始め、それには流石のスピードスターズのメンバーとギャラリーたちは思わず引いたのだった。
そして彩音たちはと言うと、玄達の車に乗って、走一達の下にすぐに向かった。だがその際彩音と凛はある人物の車に乗って、その後を追いかけて行ったのだった。
その様子を見ていた琢磨達はなにも思わず、ただ今回のバトルに付いて話していた。
「今回のバトル、ハチロクが勝ったか」
「まああの中里の腕が弱かったって事だろう?」
「それとGT-Rのパワーに頼り過ぎなんだよ。まあ俺達なら平然と勝てるけどな?」
「やめろ2人とも、それにしても大したものだ…あのハチロクのドライバーは」
琢磨は愚痴を言う壮真と幸間に叱りつつ、笑みを浮かばせながらS130に乗って去るのであった。
そして秋名山の麓、走一は駐車場に止めて、涼介は啓介に話す。
「今回面白いバトルが見れて、楽しかったろう啓介?」
「ああ…凄かったよ、ハチロクの移動攻撃は…、アウトと見せかけてフルブレーキングをしながらラインをクロスして行ったんだからな」
啓介は5連続ヘアピンで拓海がハチロクをフルブレーキングして、ラインをクロスさせた事に衝撃を与えたのだ。
それは走一も全く同じである。
「すっげぇ性能の良いABSだぜ…」
「何言ってるんですか啓介さん。拓海のハチロクにABSは付いてませんよ」
「あ?だって…」
走一の言葉に啓介は思わず反論する、それ以外に何があるんだって事に涼介は言う。
「啓介、あれは“人間ABS”だ、初めからABSが付いている今の走り屋には、ロック寸前のシビアなペダルコントロールは絶対身に付かないだろうな。機械制御のABSは所詮…研ぎ澄まされた感性を身に付けたドライバーの右足には勝てないのさ」
「ええ…、それだけ拓海はあのハチロクを使いこなしていると言う事ですね…」
「ふふふ…久々にワクワクしたよ。つくづくあのハチロクは仕留めがいがあるおいしいターゲットだ」
っと涼介が言った途端、上から玄達の車が降りて来たのだ。それと同時に涼介のFCと啓介のFDが降りて来て、それに啓介は驚く。
「あっ!?おい誰だよ!!俺のFDに乗ってやがるのは!!?」
「お待たせです!」
「すいません、お渡しに来ました」
っと彩音と凛が運転席から降りて来て、涼介は微笑みながら言う。
「すまないな、わざわざ持ってこさせて」
「大丈夫です!」
「いえ、はいこれ啓介さんの鍵です」
そう言って彩音と凛は涼介達に鍵を渡す。だが啓介は涼介の方を見ながら叫ぶ。
「ちょっと待て兄貴!? まさか兄貴が渡したのか!?」
「そうだ。わざわざ上に戻って車を取りに行かせるのも面倒だからな、彼女達にキーを渡しておいたのさ。何か不満か?」
涼介の言葉に啓介は歯を噛みしめながら黙り込む、女性相手に怒鳴る訳にも行かない啓介は何とか押し留まり、凛から鍵を受け取ってFDに乗り込む。
そして涼介は走一の方を見る。
「朝倉、今回は済まなかったな。お陰で面白いバトルが見れた、またな」
そう言って涼介もFCに乗り込み、その場を去って行き、走一達はそれを見送るのであった。
はい、和真が中里にR32を修理する際、タイヤの使い方を教える形で強くさせます。その方が面白いと思いまして。
そして感想と誤字があればどうぞ