ガムテープデスマッチの結果は拓海の勝利と終わった。ただEG6の慎吾は自身が自ら行ったクラッシュによる代償を貰った。
こればかりは彼の自業自得でしかないが、一応走一が道郎の父親の和真の所に修理の依頼をした。
そして一夜明けて翌日、走一達はイツキのお見舞いにかねて病院に来ていた。勿論茂木も一緒だった事には真美は不機嫌な感じになっているのは言うまでも無かったが。
イツキの病室に入ると、イツキがベッドで腕立てをしていた。
「おいおい何やってるんだお前」
「大丈夫か? そんな事して?」
それにイツキは思わず振り返る。
「あ!皆。うん!検査の結果も異状なし!無事退院だってさ!」
イツキの容態を聞いた走一達は一安心した。そして茂木は持ってきた花を見せる。
「これ、持ってきたから花瓶に入れるね?」
「うん!」
そう言って茂木は花瓶に花を添えに行く為、水を入れに部屋の外に出る。
するとイツキは何かを思い出す。
「あ、そう言えば沙織ちゃんは?「イツキさん」っ!」
その事にイツキは友梨佳の方を向くと、友梨佳は少しため息をつきながら言う。
「イツキさん、貴方はもう少しお休みなってくださいな」
「え? だ!大丈夫さ! そう言えば聞いたぜ拓海! ガムテープデスマッチ勝ったんだってな!」
「ああ」
「くぅ~~~~~!やっぱりすげぇよ拓海! FR潰しのルールでも勝ってしまうんだから!」
イツキの問いに答える拓海、その事に走一は頭を少しばかりかきながら言う。
「全く…あの時は本当に冷っとしたぜ、スピンするかと思いきや360度ターンしながら走り去っていくからな」
「あの時は…なんだか無我夢中になって…、それに…俺、あのバトルにどうしても勝ちたいと思ったんだ…。ムカつく事もあったけど、絶対負けたくないと思った。俺…走ってこんな気持ちになるの初めてだ…」
拓海の言葉に走一達は笑みを浮かばせ、走一は拓海に言う。
「だんだん変わって来たな…拓海、走り屋かレーサーになって来たって言うか…そんな感じかな?」
「え?走り屋とそんなんじゃなくてさ…」
「良いよ拓海君、素直になるのも良い事よ?」
真美の言葉に彩音達も頷き、それにちょっとばかり照れる拓海。するとイツキは興奮して言う。
「よーし!俺も退院したらテク磨こう!! 秋名のレビトレコンビの相棒としての恥ずかしくない様にな!」
「全く…」
いつものお調子者に戻ったイツキを見て、走一は呆れた。
そして茂木が花を入れた花瓶と一緒に戻って来て、少し話しした後に病室を出た。っとその前に友梨佳が走一達に言う。
「失礼、少しイツキさんに言い忘れた事があったので、すぐに戻ります」
「え? あ、ああ…。」
友梨佳はそう言ってイツキの病室に戻って行き、病院から出る走一達。
病院から出て、茂木がこう言いだした。
「イツキ君、元気そうだったね」
「ああ、ハチロクもすぐに戻せるって父さんが言ってたしな」
道郎がそう言うと、茂木が少しばかり暗い表情で言う。
「…なつき、ちょっと言い出せなかったんだ。沙織ね、事故起こした時もの凄く怖かったんだって、もうあの時の事…思い出したくないんだって。だから…イツキ君の事…良い人だって分かるんだけど…、もう…忘れたいんだって」
「…そうか」
その言葉に走一達は察した。沙織はもうイツキに会いたくないとの事…それはイツキはフラれたと一緒の事だった。
そう思うと彩音がこう言いだした。
「…ま、まあ…後の所はイツキ君の問題だよね? なつきちゃん、家まで送るよ。今日私車で来たんだ」
「そうなの? じゃあお願い。それじゃあね拓海君、走一君達も」
そう言って茂木は彩音にCR-Xに乗せて貰い、自宅まで送って貰う事にした。
走一はその事を考え、只々頷くしかない。
「…まあ、そうだよな…仕方ないよな」
「おい、走一まで何を」
「拓海、今回あいつ…庄司慎吾が原因だったとはいえ、イツキは沙織ちゃんに怖い思いをしてしまったのもまた事実なんだ…。それに…」
走一は空を見上げながらこういう。
「俺達走り屋は…世間から見たら可笑しな集団、嫌われものだ…。勿論レーサーとしてマナーを守る競技選手なら別だがな…」
「そんな…」
「拓海君。仕方ないよ…こればかりは…」
凛がそう言う中で、友梨佳が戻って来て、それに廉一郎が振り向く。
「友梨佳。どう話したの?」
「…大したことじゃありません。大したことじゃ」
友梨佳がそう言う中で、病室に居るイツキは友梨佳の言葉を思い出す。
《イツキさん、当分の間貴方は女性との関係を禁止します》
《え!?》
《当然です。沙織さんを危険な目に遭わせたのですし、貴方は走りになると感情的になってムキになります。そうなるとまた沙織さんと同じ目に合う人が必ず出ます。なので当分の間…女性との関係は一切禁止です。宜しいですね? 勿論何かしらの理由で関わりがあったのなら別ですが…》
友梨佳にとても痛い言葉を貰い、更にしばらく女性関係をも禁止された事で、イツキは毛布にくるまって泣いてしまう。
悲しいがイツキが現実を受け入れるのは少し先の事だった。
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そして夜、拓海達がバイトしているガソリンスタンドでは泰三たちが集まっていた。和真の他に玄の父親の【合田
甚平は玄と似た所があるがしっかりしている所があり、智晴は大企業の社長でありながら、自由人な性格。
当然彼等も昔は走り屋だったらしく、たまに集まる事がある。
「ほう?走一が?」
「ああ、アイツの走りが変わったのが眼に分かるんだ。タイヤの減り方とかな」
「成程…泰三の息子の走一君、確か私の息子の廉一郎のカート仲間だったそうだね。懐かし…走りに精通するものは惹かれ合うのかね?」
「がははは! そうかもな『ププーッ!』おう?」
甚平が振り向くと、ハチロクに乗った文太がスタンドに入ってくる。
「よう。なんだなんだ?懐かしい顔が勢ぞろいじゃないか」
「文太か。久しぶりだな、嘗ての友と会えたるのを、私は嬉しいよ」
「今日はどうしたんだ?」
「ハチロクを板金に出しに行くんだ、既に和真は知ってるだろう?」
文太の問いに和真は頷く。
「ああ、丁度昼間電話来たからな。それにしても拓海の奴…派手にやったな」
和真はハチロクのフェンダーを見て言い、文太はまんざらでもないような顔をする。
「全くあの馬鹿は。配達に行く前にとっちめてゲンコツを入れてやったよ。一番キツイのをな、でも良い傾向だぜ」
「あ?変な奴だな、フェンダーへこまされて喜ぶなんて」
祐一の問いに文太が言う。
「アイツ走りが変わって来たのさ、前は確かに速かったけど何か物足りなかった。この頃は速い走りをする様になって来た。1つ壁を越えたな」
それを聞いた泰三は文太に近寄りながら言う。
「何だ、お前の所の拓海もそんな感じか。俺の走一も良い感じの壁を越えたよ」
「何が壁だよ。お前所はまだまだだ、それじゃあ和真こいつをお前の所に持って行く。それと皆で一杯飲もうぜ、また後あとでな」
そう言って文太はスタンドを後にし、それには祐一達は呆れ、泰三は大笑いする。
「ハーッハッハッハッハ! あいつも変わらないぜ!」
「全くだ…、息子もクレイジーなら、親もクレイジーだな。あと泰三、お前も人の事言えないからな」
「言うなっての」
泰三は笑いながら中へと戻り、文太が戻るのを待つのであった。
そして秋名山、街が見下ろせる道で、一台の黒い車が止まっていた。
その車は峠では滅多に見ない車【三菱 GTO 後期型】であった。
そいつは街を見下ろしながら呟く。
「この峠に…、速い奴はいるかね…」
そう呟きながら車に乗り込み、車を走らせる。しかもそのドライバーはV6エンジンのツインターボ4WDでありながらドリフトをして見せ、秋名の下りを攻めながら街へと消えて行った。