慎太郎から突如告げられた事に走一達だけではなく、近くで聞いていた彩音達もそれに振り返り、亜里沙が慎太郎に注意する。
「ちょっとお兄ちゃん!また人にそんな事言って!」
「すまない。だがこれだけは言わないと行けない、俺が何故君にこの事を言うのかを…」
「どう言う事ですか?」
走一は慎太郎の言っている意味が理解出来ずにいて、慎太郎は走一のワンビアを見て言う。
「この車は過給機搭載しているだろう? 過給機はエンジンの寿命を縮める最大の欠点。パワーはあがるだろうけどカムシャフトとピストンの負荷が大きくなる為、あまりお勧め出来ない。だから自然吸気のNAが一番いいんだ」
慎太郎は自身のM3を見ながら言い、走一はただ黙って聞いていた。
その様子を見ていた亜里沙が気まずそうになって慎太郎に言う。
「お兄ちゃん…!」
「…すまない、俺はどうも過給機や過給機搭載車が嫌いでな、このM3に乗っているのが理由で語る事が多いんだ。勿論その車は君のだからどう扱うかは君次第だよ。帰るぞ亜里沙」
「え?う、うん…それじゃあね彩音ちゃん、みんな!」
慎太郎と亜里沙はM3とロードスターに乗り込み、走り去っていった。
2人が去って行く様子を走一はただ見届けていて、それに彩音が問う。
「…走一」
「…ああ、大丈夫だよ彩音。ただあの人がそう言うのも分からなくはないかも知れない」
「ええ~!?どういう事だよ走一!!」
イツキは走一の言葉に思わず抗議するが、走一はそれに振り向きながら言う。
「過給機は下手に扱うとエンジンに負荷が掛かり過ぎて、逆にエンジンを駄目にしてしまう事がある。恐らくあの人は過給機その物に拒絶反応するんだろうな…」
「だが自然吸気が一番と言うが、自然吸気でも乱暴に扱えばブローする可能性もある。そこはあの人も知っているだろうに…」
道郎はNAを否定はしないが、過給機の可能性も秘めている事を言う。
それには走一は勿論、廉一郎たちもその事に頷きながら考える。
だがこの時走一は知らなかった。慎太郎の言葉は時より的確で、今後ワンビアのエンジンに何かが起きる事を…。
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そして翌日の夜、通常に学校を終えた走一達はバイトに行き、拓海達のスタンドでは池谷達は碓氷峠でのバトルの事を話しあっていた。
「とにかく拓海と走一のテクニックはどの峠でも通用するってのがよくわかったよな」
「テクニックだけの問題じゃないだろう。始めて走るコースで、いきなり速いってのは天性のセンスだろう」
「真子ちゃんも言ってましたよ、“拓海君と走一君は本当に凄かった”って」
池谷が真子から聞いた事を話し、2人とバトルが出来て、本当に良かったと語っていた。
するとそれを聞いた祐一と健二がそれにニヤリを笑みを浮かばせながら問う。
「それはそうと池谷…、お前真子ちゃんと一体何処で何やってんだよ?」
「良い感じになって恋人同士になったんだろう?」
っと明らかに池谷の事を茶化しに来ていた事に、池谷は苦笑いしながら言う。
「あ、あはははは…それは聞くのはヤボでしょう。…まあ今回ばかりは彩音ちゃん達にしっかりと教えられました。俺は弱気になり過ぎていたって事に」
「なんだ~?今頃気づいたのかお前は?」
「今頃って…店長、まるで俺がずっと弱気だった様な発言に聞こえますけど」
「違うって言うのか? お前と健二は何時も弱気になる、負ける事ばかり考えてしまう所があるからな。そこを指摘したかったが、どうやら彩音ちゃん達に思いっきり言われてスッキリした様だな」
祐一の言葉に池谷は苦笑いしながら思い返していた。
「(まあ…彩音ちゃん達のお陰で、俺は真子ちゃんと恋人同士になれた。そしてあの後…っ!? おっと!いかんいかん!! この事!絶対にイツキには知られない様にしないと!!アイツここん所五月蠅いからな!)」
池谷はイツキに真子との関係を内緒にしている。友梨佳に女性関係を禁止されているイツキは、その反動でかなり敏感状態になっており、過剰反応を起こす事があるらしい。
因みに走一達に言わない理由は、単純にイツキは友梨佳に怯えているからだ。
そんな時に走一達のワンビア達がやって来て、それに拓海とイツキは振り向く。
「走一、それに皆も」
「拓海、ハイオク20リッター頼む」
走一の問いに頷く拓海、そしてすぐに別の車がやって来る。
「いらっしゃ・・・あれ?」
イツキは入って来た車が亜里沙のロードスターである事に気づき、それに亜里沙は車を止めて降りてくる。
「朝倉君、それに彩音ちゃん達もここに居たんだ…」
「亜里沙ちゃん。どうして此処に?」
「昨日お兄ちゃんが言った事に気にしてるのかなって思って、学校じゃなかなか聞けなかったから…」
「大丈夫だ、それなら気にしてないよ」
「良かった…」
それを聞いた亜里沙は若干ホッとしていた。その様子を見ていた池谷達は道郎に問う。
「なあ、彼女は?」
「昨日ウチの高校に転校してきた子です、遠藤亜里沙、ロードスターRSを操る少女で、凛達から聞いた所、幼い頃5歳の頃からカートをやっていて、16の時に原付を取って峠を走っていたそうです、その時からサーキットやドリフト競技にも参加していたそうですよ」
「ほ!本格的なドライバーじゃないか!?」
池谷と健二は亜里沙の腕前を聞いて、思わず腰が引けそうになった。
そしてまた別の車がやって来て、それに拓海が対応しようとした時に、花屋のトラックが来て、祐一に花束2つを渡す。
それに祐一は首を傾げる。
「花~?何かの間違いじゃないの? ウチはガソリンスタンドだし…」
そう言って祐一は花束の中にはる紙を取り、それを開けると同時に表情が変わり、走一と拓海に渡す。
「拓海、走一、お前等にだ」
「え?俺等に?」
「誰からですか?」
「高橋涼介と如月琢磨からだ」
『『『ええ~~~!!!??』』』
その言葉を聞いて彩音達は驚きを隠せないでいた。
「高橋…」
「涼介…!?」
「如月…!」
「琢磨だって…!?」
「群馬№1のスーパースターから拓海に!?」
「しかもプロレーサーの如月琢磨さんからって本当に!?」
彩音達が驚く中で、走一と拓海はその紙を開いて見て、それにそれに目を細めて池谷に渡す。
「なあ、なんて書いてあるんだ? ちょっと見せてくれ。…『9月15日午後10時、秋名山 頂上』」
「え?おいおい、それしか書いてねぇのかよ?」
健二が池谷からその紙を取って見るも、池谷の言っていた通り、走一と拓海の紙からはその内容しか書いてなかった。
その内容を見て、イツキは悟った。
「で、でも…これって」
「ああ…、遂に来たんだ…。高橋涼介と如月琢磨からの…、ダウンヒルバトルの挑戦状が!!」
その事に池谷達は興奮して声を荒げ上げる。
そして走一と拓海の方を向く。
「どうすんだよ!拓海!走一!!」
「どうするも何もこうなったら受けるしかないでしょう! レッドサンズは弟の高橋啓介が拓海と走一に負けてるんだから!」
「そうだ! リターンマッチを逃げたって事になったら、負けるより恥だ!」
「…勝手に決めるなよな、たくぅ…」
その事に走一は愚痴り、それにイツキは反応する。
「何だよ!?逃げるのかよ走一!?」
「馬鹿、バトルの挑戦状だったら俺は逃げるつもりもない、だがリターンマッチだったら啓介さんが直接言いに来る筈だ。俺はそれに逃げるつもりは更々ない」
「だな!!」
「厳しいバトルになるぜ、相手はあの如月琢磨…プロレーサーの中でもトップ中のトップの存在だからな」
そう会話する中で、拓海は何故か思い詰めた様子で黙り込んでいた事を、彩音のみがそれに気づくのであった。