5連続ヘアピンで涼介と琢磨に抜かされてしまった走一と拓海、拓海の予想外のオーバーアクションをするアンダーに気を取られた走一、琢磨はそれを見逃さずに抜いて行き、走一と拓海は気を取り直して追いかける事にした。
そしてその様子を見ていた真子と沙雪が見る。
「流石だね、高橋涼介…。そんじょそこ等のドリフト小僧とはスピードレンジが違うわ…。それに如月琢磨…流石はプロだね…、高橋涼介以上の走りをするじゃん…」
「沙雪…どうなるの? このバトル…」
真子はこのバトルの行く末を沙雪に問い、それに沙雪は自分なりの考えを言う。
「高橋涼介と如月琢磨が前に出たら十中八九、抜かれる事はない…。相手が相手だもの…、でもそのバトルをしているのはあの拓海君と走一君だからね! 2人はまだ諦めてないよ!ラインのシビア差がFCとZとより一枚上手だもの!やっぱ秋名を走り込んでいるラインだよ!」
その様子に真子は静かに見守る事にする。
そして同時にFCとフェアレディZS130が走り去っていく様を見るシボレーカマロのドライバーが見る。
その人物の名は【
小次郎は少しばかり険しい表情をしていた。
「…不味いな、琢磨の奴…タイヤが」
そしてFCとS130を追いかける走一と拓海、走一は拓海に向けて叫ぶ。
「しっかりと付いて来いよ拓海!! 離される訳には行かないからな!!」
「分かってる!!」
拓海のそれに了解しながら走一のワンビアに付いて行き、走一は前を走るFCとS130を見る。
「(それにしても、抜かれてたら一気に置いて行かれると思っていたが、意外と差が開かないな…。コーナーの脱出速度は俺のワンビアよりも上だって言うのに、その傾向が何だか徐々に薄れていく感じがする…。どう言う事だ?)」
走一はFCとS130の車間距離が一向に開かない事に疑問を持っていた。
FCとS130の馬力は260馬力と300馬力であるが、その馬力だったらほぼワンビアと変わらない程である。
それなのに差が開かない事を走一は少し首を傾げる事だったが、これは走一と拓海にとってチャンスであった。
「(差が開かないって事は…)」
「(俺達にまだチャンスはある!!)」
そう感じた走一と拓海は必死に食らいつく様に走り、コーナーをハイスピードドリフトで抜けて行きながら追いかける。
すると徐々に距離が詰まって来て、それに気づく走一と拓海。
「(…差が詰まってる!)」
「(少しづつ差が詰まってる! でも…)」
走一がS130の挙動が妙にふらついているのに気づく。妙にリアが左右に振り、フロントの挙動も可笑しな感じに見え。それに走一は目を細めていた。
FCとS130の奇妙な異変に涼介は少し表情を曇らせ、琢磨は分かっていたの様な顔をする。
「(くっ!フロントタイヤの食いつきが急に悪くなった…。…タイヤの熱ダレか? まさか前半のハチロクの走りのコピーが、フロントタイヤに想像以上に負担を掛けていたのか…?)」
涼介はフロントタイヤを消耗させない走り方に変え、険しい感じになりつつも後ろを見る。
「(ハチロクとワンビアが追い上げて来ている、あいつ等のタイヤは問題ないのか? それに琢磨のあの挙動…まさか)」
そう涼介が見る中で、琢磨は分かっていたかのような表情をしながら走る。
「(フッ、やはり来たか…エンジンを乗せ換えた代償の影響が)」
琢磨はそう思いながら走っていた。
そう…琢磨のフェアレディZS130はエンジンをL型のL20からRB26DEに換装し、更にはツインターボチャージャーからスーパーチャージャー搭載仕様へと変更し、低加速からの立ち上がりを容易とする仕様に変更しているのだ。
しかしそれと引き換えの代償に、S130は低速域からのトルクが大幅に増えた事により、リアタイヤの摩耗が激しくなり、特に下り…ダウンヒルへのバトルへの扱いが非常に難しくなってしまったのだ。
それを琢磨の驚異的なドライビングセンスでカバーし、それを今まで誤魔化しをして来たのだ。
「(この程度…俺はまだまだ終わる訳には行かない! プライドに掛けても負ける訳には行かない!!)」
琢磨は凄まじいオーラを出しつつ、負けない様に走り続ける。
───────────────────────────────────────────
秋名山の頂上で、どんな結果が来るかを啓介達は待っていて、その様子に道郎達と春樹達はそれを静かに見守る。
そして彩音は両手を握りしめながら、走一の勝ちを願っていた。
「(走一…勝って、必ず勝って!)」
彩音がそう願う中で、徐々にゴールが迫る中、走一と拓海は何とか食らいついていた。
「(クソッ!このままじゃ負ける!! 何としても追いつかなければ!!)」
走一と拓海は何としても追いつこうと必死にコーナーで差を詰めようとしたが、それを許さない涼介と琢磨は中々車間距離を詰めさせてはくれなかった。
それに走一は歯を噛みしめ、拓海も悔しそうな表情をする。
「(くっ!!限界か…、はっ!そうだ! あれやってみっか…前に親父が言っていた、もう一つの溝走り!!)」
それは拓海が以前、雪の日に豆腐の配達から帰って来た時の事だった。
=====
配達からの帰って来て、文太が拓海の方を見る。
「おうご苦労、…ん?」
文太は拓海が何故か少し考えている様子に気づき、それに拓海が言う。
「あのさ親父、俺雪の日のカーブでタイヤ滑らないいい方法を見つけたよ」
拓海の言葉に文太は拓海の方を見て、拓海は語る。
「道路の溝に、片方のタイヤを引っかけるんだ。面白い様にスイスイ曲がるよ」
ちょっと面白い表情をする拓海を他所に、文太はタバコをすかしながら言う。
「ふぅー、溝走りか…その技なら俺もよく使う」
「ちぇ…親父もやってるのかよ」
「拓海、秋名の溝の使い方は二つあるんだ…、お前が発見したやり方は、コーナー入り口でアンダーを出さない突っ込み重視の溝走りだ」
「え?」
拓海は文太の言い分の事に少し驚き、文太はそれに気にせず言い続ける。
「もう1つ“立ち上がり重視”の溝走りってのがあってな、落とすタイミングも飛び出すタイミングも違う。こいつは難しいぞ?1人で研究してな」
そう言って家の中に入る文太、その様子をただ拓海は見つめるのであった…。
=====
そして今、その事を思い出して、試そうとする。
「(まだ一度も試した事ないけど、一か八か…やって見るか? でもそれだと走一が遅れてる可能性も、…いや、走一ならやれる!何故だか分からねぇけど、走一ならついて行けるって自信があるが!!よし!!)走一!!前に出る!!」
「何!?」
その言葉に走一は思わず驚き、拓海は決意の目をしながら言う。
「今から試す新しい溝走り! 俺の後で付いて来てくれ!! 走一ならやれる!そう確信するんだ!!」
「(新しい溝走り…、拓海…お前、フッ!成程な!)分かった!お前に賭けるぜ!!」
そう言って走一は拓海に前を譲り、横に並んだ際、互いの目が合い、頷きながら拓海を前に出す走一。その様子を前に走っている琢磨がバックミラーを見て目を細める。
「(っ!何だ!?)」
琢磨は何か来ると警戒し、拓海が次のコーナーに入った時に目が光る。
「(っしゃああ!!いっけええええ!!!)」
拓海が溝走りをする際に前輪だけを落とし、後輪だけ落とさない走りをし、それを走一は同じように真似をし、溝落としをする。
すると加速が増し、コーナー出口が見え、それに拓海はすぐにそこをから脱出し、それに合わせるかのように走一も脱出し、それに感じとる。
「っ!これは…!!」
今までとは違う溝走りに走一は衝撃が走る。そして一気に車間距離が詰まったのを見た涼介と琢磨は目を開く。
「っ!あいつ等一体何をした!?」
「フッ!成程な…!」
琢磨は拓海が行った溝走りの仕組みが分かり、微笑みながら前を見る。
「(これは…予想外な事だ。タイヤが限界を超えている…、これはもう…)」
琢磨は内心もう諦めていた。タイヤのグリップが限界に近い為、ブロックする事は難しい。
それでもブロックする事は諦めない琢磨、そして次のコーナーに入り、同じように立ち上がり重視の溝走りを、距離を一気に詰めた。
それを見た涼介は内心焦っていた。
「(一体…何をしたんだ?)」
そう感じたまま涼介と琢磨は進んでいくのだった。
───────────────────────────────────────────
蓮華たちが居るギャラリーにスキール音が聞こえ、それに振り向く蓮華たち。
「来た来た!」
「やっとだな、慎吾、平八!」
「あのスキール音だと…、どうやら4台もつれてる様だな…」
「その様ですね…。毅さんの睨んだ通りでしたね」
「仕掛けるポイントは…ここしかないよ」
蓮華がコーナーを見て、それに慎吾が呟く。
「ブレーキング勝負に必要なスピードの乗る直線…。道幅が狭い峠道で唯一このコーナーだけが三車線あってラインの自由度が高いうえに…二つのRが重なっている複合コーナーだ。ゴールはすぐそこだからな、他に仕掛けるポイントはねぇ…」
「このコーナーを立ち上がって、
「(さぁ…、涼介君に琢磨君。君達がどんな結末なのか、最後まで見届けさせてもらうよ…)」
蓮華がそう思う中で、スキール音が徐々に大きくなり、4台の車が姿を現す。
「来たぞ!!FCが
「っしゃあっ、ケツに食いついてる!!」
「あっ!見て下さい!!」
平八が指さす方を見ると、S130が徐々に遅れて行き、ハチロクとワンビアがS130を抜き去って行く様子が見られる。
それに中里と慎吾は衝撃が走る。
「何だと!?如月琢磨が抜かれていく!?」
「何だ!?どういう事だ!?」
「あちゃ~、どうやら琢磨君は中盤でタイヤのグリップを全て使い果たしちゃったみたいだね。琢磨君のS130はエンジンをRB26のスーチャにスワップして、かなりピーキーな車になってるからフロントとリアのグリップが持たなかったんだね」
蓮華がそう言う中で、ゴール手前の最後のコーナーで、FCがイン側を開けず、ハチロクとワンビアがアウト側に付く。
それを見た中里達は驚く。
「「「アウトだとぉーーっ!?」」」
「涼介君がイン側を開けなかった…、これは相当なブレーキング勝負になりそうだね」
そして最後のコーナーで、三台がドリフトに入り、イン側を抑えるFCを見る蓮華たち。するとFCが徐々にアウト側へと膨らんでいく様子が見られる。
「なっ!FCが
「どうやら涼介君、フロントタイヤのグリップが限界に来ちゃったみたいだね。あれじゃインを抑えていても、あれだけスピードが出てちゃ膨らんじゃうね…」
中里達が驚く中で、蓮華が冷静に分析しながらFCを見る。
そしてハチロクとワンビアがFCが空けたラインをクロスするかのようにイン側に入り込む。
「嘘だろう!?」
「ラインがクロスするぞォーッ!!」
ハチロクとワンビアがイン側を抑え込んでFCの前に出て、オーバーテイクを決めた瞬間、涼介は勝負が決まったと悟り、諦めてアクセルを緩めてハチロクとワンビアに先頭を譲った…。その様子を後ろで見ていた琢磨は若干微笑みながら見て、同じように涼介の後に続く。
「「「……!!」」」
「(…決まったね)」
中里達が衝撃的な場面を目撃した中、蓮華は勝負が決まったと見て、微笑みながら見送った。
そしてゴール地点、大勢のギャラリー達がどちらが先に下りてくるから心待ちにしていた。すると一人のギャラリーが叫ぶ。
「来た!!来たぞぉ!!」
その叫び声に見ながら振り向き、待っていると、先にハチロクとワンビアが降りて来て、その後にFCとS130がやって来る。
その様子を茂木と美琴たちが見ていた。
「…拓海君と朝倉君の車だ!」
「春樹のライバルの朝倉君…。勝ったんだね」
そう言って走一と拓海の様子を見守る茂木達…。
そして頂上、ゴールした報告を無線で伝える。
『ハチロクとワンビアだ!! ハチロクとワンビアが勝ったぞ!!! それもすっげぇコースレコードだ!!!』
その無線の内容を聞いた啓介達は衝撃が走った。
「(兄貴が…負けた。不敗神話は…崩れた)」
「(マジかよ…、兄貴が負けるなんて、大一番のレース以外であり得るなんて…)」
幸間と啓介はそれを聞いて無線機を下ろし、史浩たちもそれを聞いて騒然としていた。
勿論池谷達も一度は唖然として顔を合わせ、イツキも何度も顔を合わせる。
そして彩音はそれを聞いては喜びを上げる。
「やったー! 走一が勝ったわ!!」
「やったじゃん!」
「ばんざ~~~い!!拓海が勝った!!走一も勝った!! ハチロクとワンビアが勝ったんだ~~~!!!」
「「うお~~~すげぇぞ~~~~!!」」
彩音達が大喜びし、池谷達もそれに釣られて歓声を巻き起こす。
道郎達と将達はそれに少しばかり驚いていた。
「すげぇ…走一がプロに勝つなんて」
「やってくれると思ったぜ」
「やったね、走一に拓海…」
「ああ、流石は春樹のライバルだ」
「これは俺達も嬉しいぜ!」
「おうよ!」
そう言う中で春樹は笑みを浮かばせる。
「(やったな…走一、藤原もやったじゃねぇか…)」
ギャラリー達の報告を聞いた慎太郎達にも、それは届き、慎太郎は驚きを隠せないでいた。
「朝倉君達が…勝った?」
「うほっ!すげぇなおい! 琢磨に勝つなんてマジかよ!」
「…おめでとう、朝倉君」
そして別の場所に居た翔たちや百合華の所にも届いた。
「うおおおおおおお!! 走一さん達が勝った~~~!!!」
「五月蠅い!」
「ウフフフ♪ やったね…2人共」
そして今回ギャラリーに来た葉一と純恋もその報告を聞いては驚いていた。
「すっごいな、まさかプロに勝つなんて…」
「ハチロクのドライバーも凄い! ストリートキングに勝つなんてそうそう簡単じゃないのに」
「これは一度会って見たくなったな。プロとストリートキングに勝ったワンビアとハチロクのドライバーに」
───────────────────────────────────────────
そして藤原豆腐店でも、祐一達からの無線が入る。
『走一君達が勝ったようだ。先ほどギャラリーの中からその報告が来たようだ』
「そうかい、当たり前じゃねぇか」
『ハハハハハ!相変わらず不愛想な反応だ。兎に角終わったから俺達は戻る。その後そっちに寄って一杯飲もうぜ?』
「おう、待ってるぜ」
そう言って無線を切り、文太と泰三は呟く。
「…勝ったようだな、あいつ等」
「ああ…、勝ったか」
その反応を見た恵子は薄っすらと笑みを浮かばせながら、次のお酒の用意をするのであった。
バトルを終えて、四人は秋名山から少し離れた場所で車を止めた。
四人は車から降りて、拓海がああることを聞いて来た。
「あの…どうしても気になってることがあるんですけど…、教えてもらえますか…」
「何だい?」
「バトルの最中に俺達が来るのを待っていたのは…何でですか?」
拓海が走っている最中に、涼介がペースを上げずに待ち構えてた事を問う。
「俺が態々後半ペースを落としたとでも思っているのか?そいつはとんでもない見当違いだ…」
「…タイヤ、ですか? 妙にフロントタイヤがたれてると見れましたが、後ろに付いた時に、でもそれ以上に琢磨さんの方が酷かったって思いますが…」
走一は琢磨のS130のタイヤの方を見て呟き、それには琢磨は若干笑みを浮かばせながら言う。
「フッ、それは間違いない…。俺のは換装したエンジンの影響が強いからな」
「エンジン?それにタイヤ…?」
拓海はその言葉を聞いて首を傾げ、それに涼介は言う。
「フフッ、タイヤなんて言い訳にはならないさ…。今日のバトル…俺達の負けだ」
「そうだ、君達が勝ったんだ」
涼介と琢磨はそう言って自分達の車に乗り込もうとする際、走一と拓海が言う。
「あの。今回はありがとうございました。お陰でいい経験が出来ましたよ…」
「それは良かったよ、君達にとってはいい経験だろうさ」
「あ、あの…俺の方が速かったとは…そんな風には絶対思ってませんから…」
「フッ、つくづく変な奴だな。お前みたいな奴は初めてだ…。秋名の小さなステージに満足するなよ、朝倉と一緒に広い世界に目を向けていけ」
そう言って2人は乗り込み、走一と拓海は涼介と琢磨の方を見る。
「朝倉走一、藤原拓海。お前達は速かったぞ」
「最後のバトルをしてくれて本当に感謝している。もし良かったらこの番号に連絡してくれ。俺は今後プロを引退し、若い世代へのドライバーを育てていくつもりだ。教えを貰いたいならいつでも言ってくれ」
走一に携帯の番号を渡し、涼介と琢磨はFCとS130を走られて、その場を去って行った。
その様子を走一と拓海は見届けた。
今日、今夜…新たな伝説が始まった。2台の車がストリートキングとプロレーサーを下し、新たな頂点へと上り詰めた。
二度と敗れる事はないコースレコード、絶対的な不敗神話。それらを刻み込まれた日でもあったのだった。
そして翌日、夜の秋名では走一と春樹が頂上にいて、ワンビアとGTOを並べていた。
「それじゃあ…、始めるとするか?」
「ああ、俺はお前を下す。それだけだ!」
そう言って走一と春樹はワンビアとGTOに乗り込み、走り出しては全開ドライブしていくのだった。
FirstStage 終了
ようやくFirstStageが終えました。次回からはSecondStageです。