第82話 掟破りのランエボ 前編
走一と拓海が涼介と琢磨を下し、一躍有名となってから少し経ち、夜空の秋の別の峠では何やらドックファイトをしている車が居た。
先頭を走る180SXに、その180SXを追いかける一台の車【CN9A 三菱・ランサーエボリューションIV RS(1996年式)】だった。
彼等は【サンダーファイヤー】と呼ばれる走り屋のチームで、他のチームとはまだまだ実力が程遠い弱小チーム。
そのサンダーファイヤーのチームにバトルを仕掛けているのは【Emperor エンペラー】と呼ばれるチームで、ランエボのみを好む走り屋のチームだ。
先頭を走る180SXのドライバーがバックミラーを見て、苦しそうになりながらも言う。
「くそ!余所者に嘗められてたまるか!!」
そのランエボⅣに乗る【岩城 清次】が笑みを浮かばせながら言う。
「へっ!軽くぶっちぎりだぜ!」
そう言って清次はシフトチェンジをしてアクセルを踏み、コーナーのアウトへと入り、コーナーであっけなく抜かされた事に驚く180SXのドライバー・
「なっ!!」
驚くのも束の間、ランエボⅣはそのままゴールへと突っ走り、ゴールで待っていたサンダーファイヤーのメンバーたちが先にゴールしたランエボⅣを見て驚く。
「嘘だろう…抜かれた」
「ひぇー!あのエボⅣバカッはえー!!! これで【大黒進】や【ブルースモーク】に続いてだー!!」
「畜生!」
180SXのドライバーは悔しがり、清次は笑みを浮かばせながら仲間の所に向かう。
そしてバトルを終えて、180SXのドライバーは清次にある物を渡す。それはサンダーファイヤーのステッカーだった。
それを頭にバンダナを巻いた男がカッターナイフを取り出し、それを真っ二つに切ったのだ。
当然その様子に180SXのドライバーは驚いた。
それを気にしないまま、清次は自分のランエボⅣのリアスポイラーに貼り、それを嘲笑うかのように彼等に言う。
「昔の戦闘機乗りがやってた撃墜マークみたいなもんだ。結構オシャレじゃねぇか?」
「ぐっ!!」
180SXのドライバーは悔しそうに帽子を取る。自分たちのチームであるステッカーがその様な有様にされては、彼らのプライドが深く傷ついただろう。
そんな中で先ほどのバンダナを巻いた男【須藤 京一】が前に出て言う。
「俺達エンペラーが、一ヵ月で群馬エリアを総なめにする、ランエボこそ峠の王者だ!」
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そして昼時の秋名山、秋名山に3台の車が上っていた。先頭は走一の父親、泰三のスープラに。イツキのハチロクのレビン。最後に廉一郎が乗る【シボレー・コルベット C5型】であった。
走一の隣には道郎が座っていて、廉一郎の隣には玄が座っていた。今回彩音たちが居ないのは、用事があるからだそうだ。
そして皆が話せるように皆インカムを付けていた。
するとイツキがこの様な事を話す。
「…なあ皆」
「どうしたイツキ?」
道郎がイツキが問いかけて来た事に返事をし、イツキは少しばかり悔しそうな声を出す。
「俺さ…慣れてくるとしみじみ思うんだけどさ。俺のレビンは100馬力以上はあるけどさ…、それでも上りだと情けない程遅いだろう? もっとパワーが欲しいんだよな~」
「成程な…、確かにお前のレビンは130馬力くらいはあるが、それでも上りはちょっとばかり遅い感じもするから、仕方ないと言ったら仕方ないな…」
「だろだろ! それでさ俺思いついたんだ。俺のレビンにさ、ターボを付けようと思うんだ!」
「ターボ?」
イツキの問いに走一は耳を傾け、廉一郎がそれに言う。
「でもそれだ足回りをどうするかが課題だね、スーパーチャージャーかターボチャージャーを入れた後は結構足が来るんだよね、吸排気系も結構くるし…」
「え?そんな事出来るのか? それにターボって最初から付いて来るもんじゃないのか?」
「それはそうなんだけど、ボルトオンターボって言って、後から付けようと思えば付くんだよ」
「へぇー」
その事に拓海はただ返事をするかのように言い、イツキはその事に言い続ける。
「手っ取り早く速くするには、ターボが良いんだよな~! それでさ~俺のレビンがさ? ストレートで先輩たちのS13と180に負けないくらい早くなったりして~!」
「それはどうかな…。ターボを入れる前にハチロクは足回りを入念にチューニングしないと、満足に足が付いて来ない。一発でパワースライドして車がスピンしてしまう」
「それでもだよ!!想像するだけでもわくわくしちゃう~! くぅ~!!!」
興奮するイツキに走一は呆れる感じとなる。イツキがこうなるともう大抵止まらない。
すると道郎がある事を言い出す。
「そう言えば走一。お前春樹とバトルしたんだろう? どっちが勝ったんだ?」
「おお~そうだったな! どっちが勝ったんだよ走一?」
玄もその事に聞き、走一は頭をかきながら言う。
「あ~…、それはだな…決まらなかった」
「え?」
「決まらなかったって…どう言う事だよそれ?」
道郎と玄がその事に問い返し、その事に走一は少しばかり難しい表情をする。
実は走一と春樹とのバトル…、決着が付かなかったのだ。互いにドライビングセンスが拮抗し、最後の最後で互いの腕が決着付かなかったそうだ。
何度も走ってはガソリンが減って来て、終わりが近い所で終了する事となり、走一と春樹は決着が付かなかった事に少しばかり不満気の様子だった。
そのせいで現在ワンビアはメンテナンスの為に和真の工場に入院中な為、泰三のスープラで来ている。
それを聞いた拓海と道郎達は何とも言えなかった。
走一はそれを切り替えるかのように玄達にあることを聞く。
「そう言えばお前等、今車をアップグレードしているって聞いたぞ。どんなアップグレードしているんだ?」
「おうよ!俺は足回りをより重点に見直す方向にしているんだよ。パワーがあっても足がどうももたついてな、そこを見て貰っているんだよ」
「僕はECUの変更をして、馬力と冷却性能と足回りをチューンするつもり。僕もそろそろアップグレードしないと、だから今僕はNSXを工場に預けて、このコルベットに乗ってるんだ」
「俺のはタービンを搭載し、冷却系や足回りも見直す。その方針で今タービンを付けている」
「おお!道郎達もいよいよか! くぅ~!!!なんだかおもしろくなって来た~!」
そうイツキはまたしても興奮していた時に、背後から一台の車が上がって来て、それに廉一郎がバックミラーを見て気づく。
「あれ?速い車が来た」
「お?ホントだな。どうすんだ?突き放すか?」
「何言ってるのさ、昼間からそんな事しないよ。避けるよ、走一もイツキもだよ」
「分かった。イツキ」
「え!?えっと…」
廉一郎が相手に道を譲り、イツキが道を譲った際にレビンを車線の真ん中に寄せてしまう。
走一も道を譲ったが、廉一郎が叫ぶ。
「逆だよイツキ!」
「そんな事言ったって!」
そう言っている車が3台を通り過ぎ、その車を見てイツキが叫ぶ。
「ランエボだ!!」
「ランエボ? それって陽毬さんが乗っていた…」
「お?よく覚えてたな。その通りだ拓海。あれは4代目のランエボだから…エボⅣだな」
「でも見かけない車だな」
走一が拓海が覚え居た事を褒めて、道郎がランエボⅣを見て首を傾げる。
コーナーを入って行く際に拓海が真剣な眼差しで見る。
「(何だあの車…、不思議な動きをする…)」
そしてコーナーの立ち上がりを一気に加速して行き、その様子を見たイツキが叫ぶ。
「見たかよ、あの頭が変になりそうな立ち上がり加速!! たった2リッターの排気量で280馬力だからなー。あれこそターボの威力だ!!それに4WDだし!!」
「(そうか、あのランエボ4WDだからか…。2個のタイヤでは使えないような
「(それも立ち上がりにも全くブレが無い、あんなランエボ…エリアに居たか…? それにあのリアウィンドウに貼られていたステッカー)」
走一はランエボⅣのリアウィンドウに貼られているステッカー、エンペラーのステッカーに違和感を覚える。
「(エンペラーって書いてあったな…、もしかしたら日光市にある所か? 噂でしか聞いた事ないけど…どうして此処に)」
何やら嫌な風が吹き始めている、そう感じとる走一であった。
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