この呪術界に駄女神を!   作:ぷに凝

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1.この加茂家に異端児を!

「あ、あぁ……」

 

あら??

 

なにかしら、このおばあさん。なんだか今にも叫び出しそうな危険な雰囲気を感じるんですけど。耳塞いどこ。

 

……え。ちょちょちょ、ちょっと待って……!?

 

「忌み子よ……!!」

 

なんで!?ねぇなんで!!?こんなのおかしいでしょ!?

 

「“水色の髪”の、忌み子だわ……!!」

 

なんで私が“転生”してるのよ〜!!?

 

た……!

 

だずげてカズマざぁ゛〜ん!!

 

 

「おぎゃああああ!!」

 

あぁ、なんてこと。

 

水の女神の神聖すぎるおしっこが、今にも漏れ出ちゃいそうなんですけど。

 

「はいはい、すぐに替えますからね」

 

取り替えて!早くおしめを取り替えて!!

 

「うーん、どうしてこの子はこんなにおしっこが近いんでしょう……」

 

私のおしめを取り替えてくれるワフクのおばあさん。あなたはいい人ね。女神の加護を与えましょう。今ならなんとアクシズ教に入信すればポイント2倍よ。

 

どうやらここは日本みたい。どうして転生させる側の私が日本に転生しちゃったのかはわからないけど、多分エリスあたりがミスっちゃったんでしょうねー。これだからパッドが入ってる女神はダメ。

 

だけど私はとっっっっっても優しいから許してあげるわ。カズマさんにもいい土産話ができそうだし。シュワシュワ飲み放題で勘弁してあげましょう。

それにカズマさんは事あるごとに「日本が恋しい……」ってボヤいてたものねー。日本のものを一つでも持ち帰れば泣いて感謝して、私のことを崇め始めるに違いないわ。

 

取り替えたおしめでもいいかしら。

 

というか……。

 

「ねーんねんころりよ、おころりよ……」

 

ご飯は全部用意されてて、怖い思いしてお金を稼ぐ必要もないし。何かあったら泣けば全部やってくれる、赤ちゃんの環境……。

 

……一生このままでもいい気がしてきたわね。

 

「あやめ、何をしている」

 

……あら、何かしらこの怖い顔のおじさん。

 

あれはきっとモテないわね。だって顔が怖いもの。顔が。

 

「憲利様……この子のお世話をしておりました」

「なぜだ」

「なぜ、と申されますと……?」

「なぜ落ちこぼれの面倒なぞ見るのかと聞いている」

 

はー!!?誰が落ちこぼれですってぇ〜!?

 

私、水の女神なんですけど!!超偉いんですけど!!エリート中のエリートなんですけど!!

 

謝って!落ちこぼれって言ったことを謝って!!

 

「……しかし、ですね」

「口答えするな、あやめ。お前は加茂家の者としての自覚が足りん。青髪の赤子など、他人種の血が混じっている証拠に他ならん。すでにあれは家を出た。加茂家の由緒正しい血を汚した罪でな……お前も忘れろ」

「……」

 

……な、なんかこのおじさん、言ってることが難しいんですけど。

 

私の髪の色がダメだっていうの?なにソレ!中学校の体育教師みたいじゃない!超時代遅れなんですけどー!

 

プークスクス!!

 

「……わかりました」

 

あら、でもおばあさんは行っちゃったわ。なんだか落ち込んでて可哀想。ブレッシングをかけてあげたいけど、生憎今は魔法が使えないのよね。

 

「……」

 

うっわ!このおじさん私のこと見てすっごい冷たい顔したんですけど!!

 

……汝には水の女神アクアの名において、天罰が下るでしょう。スープの中に髪の毛が混ざってる天罰が……。

 

ざまぁないわね!!

 

 

「ぴゅうっ!!」

 

ぱんぱんっ

 

バシャバシャバシャ!!!

 

「み、美水矢(みずや)様!?何をしていらっしゃるんですか!?」

「鯉と遊んでたの」

 

カズマさんもこの特技は素直に褒めてくれたのよ? すごいでしょ?

 

「わかったらもっと私を褒め称えて。甘やかして。早く」

「み、美水矢様……どこでそんな言葉遣いを……」

「美水矢じゃないわ。水の女神アクアとよびなさい」

「……また、それですか?どの物語の影響を受けたんでしょう……」

「本名なんですけど!」

 

美水矢、というのは今の私の名前。気に入ったわ。この名に水の女神の加護を与えましょう。

でも、あろうことか私の元の肩書が物語のキャラ扱いされたんですけど。私がアニメのキャラに憧れて真似っこしてる痛い子だと思われてるんですけど。

 

失礼ね。アニメのキャラを真似るのなんていくつになっても楽しいものなのに。

 

私なんて今年で5歳よ?七五三の中間進化。そういうお年頃なの。

 

まぁ、5年間元の世界に戻れてないって意味でもあるんだけど……。

 

でもきっと私がいなくて、今頃カズマさんは毎晩のように泣いているに違いないわ。めぐみんやダクネスも……って、ちょっと待って。

あの3人、まさか私がいないのをいいことによくあるラブコメみたいな関係になってないでしょうね!?そんな面白い展開、私抜きでやるなんて絶対許さないんですけど!

 

そういう展開になるなら私はヒロインの彼氏を寝取る悪役令嬢役になるんだから。それでハンカチを噛み締めながらパーティ会場を追い出されるの。あ、勿論本当は心優しい令嬢って設定でね。

 

でも残念だけど。戻る前に、私はこの世界でやっておかなきゃいけないことがあるの。

 

なんでも今の日本は、“呪い”って呼ばれるアンデットの親戚みたいなモンスターがうようよいて大変なんですって。なんか私の知ってる日本より随分物騒になったわね。

 

ふふん、だけどアンデットのお仲間が相手なら、この水の女神アクア様に敵はいないわ。アクセル一のアークプリーストの実力を見せてあげようじゃない。呪いなんて不潔なものが故郷で暴れてたら、きっとカズマさんも悲しがるもの。

 

あぁ、なんて私は優しいの。だからもっと私に感謝してもいいと思うの。

 

「ねぇ、カズマさん?」

「? カズマ……?」

 

……。

 

そう言えば、ここにカズマさんは居なかったわね。

 

……。

 

とは言っても、ここは日本だからスキルも職業もないの。そんなもの無くても呪いなんて私の超必殺ゴッドブローでワンパンなんだけど、転生したせいで前みたいな力が使えないのよね〜。

 

だけどその代わり、日本にも“呪術”っていうスキルがあるみたい。なんか陰気くさい感じで私には合わないけど、かっこいいから許すわ。

そして呪術は子供に受け継がれる。私が生まれた“カモ家”っていう美味しそうな名前のお家にも相伝の呪術があるのよ。

 

その名も……。

 

“石鹸掃術”!!

 

ふふん、素晴らしいわ。まさに水と清潔の女神の私のためにある呪術と言って過言じゃないわね。どっかの誰かさんはトイレの女神とか失礼なこと言ってくれたけど。

 

“石鹸掃術”は洗剤を自由に操れる呪術なの。特に食後なんかには重宝するわ。呪いもしつこい油汚れも一発で浄化してくれるもの。使いやすさは花鳥風月と肩を並べられるレベルね。

 

ま、まぁ?ちょっとだけ加減を間違えちゃって、カモ家のお屋敷中が泡まみれになったりしたこともあったけど……でも綺麗になったから結果オーライよね?私だけで掃除をやらされたのは納得いかなかったけど。

カズマさんだったらなんだかんだ言いつつ一緒に掃除してくれたのに。あのノリトシさんって人はカズマさんの敬虔さを見習った方がいいわね。

 

……。

 

早くカズマさんの所に帰りたいなぁ。

 

「……ところで、美水矢様」

「なぁに?」

 

私が池の水に映る自分を見てると、あやめさんが私の隣に座ったわ。

 

「五条家の主催で、懇親会が開かれるとのことです。美水矢様もご出席なさるようにと、憲利様が」

 

親睦会??

 

……美味しいものが食べられるってこと!?

 

「行くわ!」

 

 

「皆様、本日は我々五条家主催の懇親会にお集まりいただき、誠にありがとうございます。皆様がご存知の通り、私ども五条家、加茂家、そして禪院家の縁は、古くは平安時代から始まり──」

 

懇親会当日。

 

「ねぇ、これ食べてもいいのよね?そうよね?」

「み、美水矢様……!」

 

懇親会に招待された私は、さっそく広いパーティ会場にお呼ばれされたわ。私以外にもカモ家の人たちは大勢いるけど、あんまり話したことはないわね。みんな私のこと見ると逃げるんだもの。

 

やっぱり女神の神聖さは隠せないみたい。困っちゃうわ。

 

それで、せっかくのご馳走が冷めちゃうのは食べ物に対しても失礼だからさっさと食べちゃおうとしたら、なんでかあやめさんに止められたわ。

 

仕方ないわね。こっそり食べることにしましょう。

 

「つきましては……本日、皆様にご紹介いたしますのは、次期五条家当主と目される私の息子……五条悟です。悟、皆様に挨拶なさい」

 

もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ。

 

「五条悟だ」

 

ごっくん。

 

……なんかすっごいイケメンになりそうな子が壇上に出てきたわね。日本人でイケメンの転生者は結構見てきたけど、あの子、例の魔剣持ちのマツルギさんよりすごいんじゃない??

 

でもちょっと派手すぎね。カズマさんぐらいが見てて飽きないから丁度いいわ。

 

「俺が最強だ。言いたいのはそれだけ。嫉妬すんのも媚びてくんのも勝手だけど、面倒臭いからそういうのナシで頼むわ。以上」

 

とか思ってたらなんかすごいこと言い始めて会場がザワザワし始めてるんですけど。

ああいうの、大きくなってからたまに思い出してベッドの中で悶えちゃったりするのよね。可哀想に。祝福を授けてあげるべきかしら。

 

「ははは、申し訳ありません。何分、まだ若いものですからご容赦を。しかし……」

 

サトル君からマイクを受け取ったサトル君のお父さんが、ニコニコ笑顔で話してる。けどあの笑顔はおばさんが井戸端会議で子供自慢してる時の笑顔ね。後輩の女神たちがよくあんな感じで話してるわ。

 

「悟は実際、この場にいる誰よりも強い。“最強”というこの言葉に、一切偽りはありませんよ」

 

──ざわざわざわ……。

 

あら、このお肉美味しいじゃない。ワギュウってやつかしら。

 

「……五条殿。これは手厳しいですな。しかし、先ほど我々の長く続く縁についてお話ししておりましたが、親しき仲にも礼儀ありと言いますぞ」

「然り、然り。息子がかわいいのはわかりますが……ははは、このような公の場に人を集めて見せるのが、みっともない親馬鹿というのも、中々おかしな話でしょう」

「いえいえ、ただ事実を申しているだけでして」

 

──…………。

 

「こっちの甘海老はおかわりとかあるかしら?」

「み、美水矢様……」

 

なによ、なんで私の口を押さえるの?

 

そんなことされても食べるのは諦めないんだから。

 

「疑わしくお思いですか……?では、実際に試してみましょう」

「……なに?」

 

あら、この可愛いのは何かしら?和菓子かしら。

 

「あ」

「あ?」

 

和菓子を取ろうとして伸ばした手が、誰かに手が触れたと思ったら。

 

例のサトル君じゃない。

 

「……誰だ?お前」

「私?通りすがりの水の女神だけど」

「は?」

 

決まったわね。一回言ってみたかったのこのセリフ。

 

「“御前試合”です。誰が呪術界の頂点なのか。そこではっきりとさせようではありませんか!」




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