この呪術界に駄女神を!   作:ぷに凝

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13.このそっくりさんとステルスを!

「うぅ、鼻が曲がりそう……」

 

呪いってアンデッドと同じような匂いがするのよね〜……洗濯バサミ持ってきた方が良かったかしら。

 

確かに、地下には呪いがいるみたいだわ。だって……。

 

「うっわ、くっさ!!」

 

こんだけ臭ってるもの!!

 

「これもう部屋の中まるごと洗いしちゃダメなのかしら」

 

デュラハンのなんとかさんと戦った時と同じような方法を取るのが一番手っ取り早い気がしてきたわ。

 

……でもあの後壊れた街の設備の請求代で大変なことになってたのよね。主にカズマさんが。

 

今だから思うけど、カズマさんってなんだかんだ甘かった気がするわ。私に対する敬いが足りてないのは難点だけど、私を見捨てたりしなかったもの。

 

それに比べてあのウスノリだかノリコシだかって人は最低ね。仮にも血の繋がった家族を本気で家から追い出そうとか、もし本当にそうなったら児童相談所にでも駆け込んでやろうかしら。

 

「ふぅ〜……」

 

一呼吸。

 

……大丈夫。何も心配いらないわ。だって私は女神アクア。麗しくも美しいアクシズ教の御神体よ? 呪霊の一匹だか二匹、指一本でチョチョイのチョイだわ。

 

ってことで私は鍵を使って、地下蔵への扉を開けた。

 

「……オラァ!! 往生せいやぁ!!」

 

バーン!とドアを蹴破って中に入る。

 

……なんか勢い余ってドア外れたけど問題ナシ!!

 

「──ッ!!」

「いたわね!」

 

室内には呪霊が一匹だけ! クリア!!

 

「セイクリッド・クリエイトウォ──!!」

「や、やめてください!」

「タ……え?」

 

私が仁王立ちして、レールガンでも放ちそうな体勢で呪術を使おうとしたら。

 

「わ、私! 人に危害は加えてませんから……! 見逃してくださいぃぃ……!」

「な、何よこれ……どうなってんの……」

 

私としたことが、思わず攻撃をやめちゃったわ。

 

これが罠だったらとんだ大ポカだけど、その呪いは本当に私に敵意はないみたいで。

 

っていうか……。

 

「ウィズ、アンタなにしてんの……?」

「……ふぇ?」

 

見たことのあらローブ姿。メカクレ属性。無駄におっきなおっぱい。

 

どこからどう見たって、あの貧乏店主なんですけど……。

 

 

「粗茶ですけど」

「あっ、ご親切にどうも……」

 

とりあえず。

 

向こうに敵意はなさそうだし、私自身も聞いてみたいことがあったから、私は一旦屋敷に戻ってお茶を汲んできてあげたわ。

 

「……お湯」

 

ウィズのそっくりさんはお茶を見ながらなんか言ってるわね。

 

「それで? 誰なのよアンタは。言っとくけど私をだまくらかそうなんて思わないことね。私はどう見たってニワトリの卵にしか見えないドラゴンの卵だって見抜けるんだから」

「だ、騙すなんてとんでもないです……正直に言って私自身、自分が誰なのかはわかんなくて」

「? どういうこと?」

「記憶がないんです」

 

そっくりさんはお湯……お茶を見つめながらそう言った。

 

「気づいたらこの蔵の中にいて、外に出ることもできず……中からなんとか出してもらおうとしたんですけど。余計に警戒させてしまったみたいで……」

「そりゃそうでしょうねぇ」

「うぅ……何かわたし、悪いことをしてしまったんでしょうか……?」

 

そう言って落ち込んで溜息を吐く姿には、どうしてもデジャブを感じずにはいられないわ。

 

……やっぱり、どう見ても貧乏店主なのよねぇ。

 

「もう一回聞くけど、本当にウィズとは関係ないのね? あの性悪仮面のことも知らないっていうわけね?」

「性悪……? す、すいません。何のことか……」

「……」

 

……嘘じゃないみたいね。

そもそもこの子がウィズだとしたら、私に嘘をつく理由なんてないもの。そんなことしたらどうなるか身に染みて知ってるはずだし。

 

「……いいわ! 私は寛大だもの。貴方のことは見逃してあげましょう」

「ほ、本当ですか!?」

「ただし」

「……た、ただし?」

「絶対に、私以外の誰にも見つかっちゃダメよ」

 

ぱぁっと目を輝かせた後に、ごくりと息を呑む偽店主。

 

……なんか調子狂うわね。

 

「ど、どうしてでしょう……?」

「決まってるでしょ? 祓われるわよ、あんた」

「ひいぃっ!?」

 

キッパリと言ったら偽店主が半べそをかきはじめたわ。

 

「ここにいる人たち、アンデットに対するエリス並みに呪いを毛嫌いしてるもの。あんた、呪力も結構大きいみたいだし。見つかったら即処刑ね」

「即処刑!? そ、そんなぁ……」

 

情けなく涙目になってる偽店主だけど、呪力量は結構……というか、すごく多いわね。トッキュウってやつじゃないかしら。

そもそも前にどっかで聞いたけど、ハッキリ意思を持って喋れる呪霊なんていくらもいないって話だったし。こんな子は真っ先に狙われるわね。

 

「私……死んじゃうんでしょうか……」

 

もう死んでると思うけど。

 

「あ、あの。なんとか助けていただくことって……」

「え、嫌よ」

「あうぅ……」

 

ただでさえ謹慎中なのに、この子に手貸したらどんな酷い扱いを受けるかわかったもんじゃないわ。

まぁ、ウィズと似てても赤の他人みたいだし。私がわざわざ危険を冒して手を貸してまで助けてあげる義理ないわね。

 

私はカズマさんとは違ってリスクを考えられるきゃりあうーまんだもの。呪いにわざわざ手を差し伸べるほど女神は暇じゃな……。

 

「どうしても、ダメなんでしょうか……?」

「……」

「あなたしか、もう頼れる人は……」

 

ひ、暇じゃ、な……。

 

……。

 

「しょうがないわねぇぇぇぇ!!」

 

私しかいないんだったら仕方ないわね!!

 

……

 

………。

 

「スネーク、まずCQCの基本を思い出しなさい」

「スネ……え?」

「ムーブ!」

 

私と偽店主は地下を脱出した。

 

これはスニーキングミッションよ。痕跡は残せないわ。

 

「あ、あの……」

「何よスネーク。トイレでも行きたいの?」

「え、えっと……そういえばお名前を伺ってなかったので……」

「ザ・ボスよ」

「なんか違う気がしますけど!?」

 

違うものですか。私はこの名前で戦場を生きてきたんだから。

 

……。

 

「……アクアよ。女神アクアと呼びなさい」

「ア、アクアさん……その、本当にありがとうございます」

「? 何が?」

 

偽店主が胸に手を当てて私に言った。

 

「私……ずっと心細くて、独りぼっちだったんです。だから私を助けてくれたのはアクアさんが初めてで……。本当に嬉しいんです。このご恩は一生忘れま」

「うっさいわね」

「えぇ!?」

 

私の答えに、あんぐりと口を開ける。

 

「あ、あの……今、結構感動的な雰囲気だったと思うんですけど……!?」

「大げさなのよあんたは。たった一回助けてもらっただけで一生の恩とか、そんなんじゃこれから大量に一生の恩だらけになるわよ?」

「で、でも……!」

 

なんだか、この子は納得してないみたいね。

 

「簡単な話よ。恩は返さなくていいの。借りっぱなしでいいの。その代わり恩がある人を裏切らなければ、それで充分なんだから」

「……ア、アクアさん……!」

 

ふふん、私のありがたい言葉に感動しているみたいね。

 

……まぁ、恩は返さないといけないってなると私なんかはカズマさんにローン地獄になるからなんだけどね。

 

「……敵の気配がするわね」

 

私は壁にサッと隠れて言った。

 

「ほ、本当ですか……?」

「当たり前じゃない。私を誰だと思ってるの?」

「す、すごいですね……透視しても誰もいなかったので、てっきり無人だとばかり……」

 

偽店主は私を尊敬しているような態度で、そんなことを……。

 

「……ちょっと待って。今なんて言ったの?」

「え? てっきり無人だとばかり……」

「その前」

「すごいですね」

「その後」

「透視しても誰もいなかったので……」

 

……透視?

 

「あんた、透視とか出来るの?」

「え? ア、アクアさんは出来ないんですか?」

「出来るに決まってるじゃない」

「えぇ……」

「あんたも出来るのかって聞いてるのよ」

「は、はい……」

 

……。

 

「偽店主。あんたを索敵係に任命するわ」

「は、はぁ……。でもアクアさんも出来るって」

「部下に仕事を任せるのが上司の役目よ」

「な、なるほど?」

「さぁ行くわよ!」

「は、はい!」

 

ステルスとかいらなかったわね、これ。

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