この呪術界に駄女神を!   作:ぷに凝

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14.この逃亡劇に爆炎を!

「あ、この先3mを左に曲がったところに人がいます」

「カーナビみたいね、あんた」

「かぁなび……?」

 

ウィズ(偽)が小首を傾げて言った。

 

どうでも良いけど、小首を傾げるって仕草、自分が美少女だって自覚してないと出来ないと思うのよね。この子純真キャラの振りして結構腹黒いわ。

 

そんなとこもあの偽店主とそっくりなんだから。

 

「それにしても便利ねー。透視ができるなんて。お風呂も覗き放題じゃない」

「ダ、ダメですよ、アクアさん。ノゾキはいけないことですっ」

「呪いのくせに変なこと気にするわね……」

「最近はホント大変なんですから……コンプライアンスとかリスクヘッジとか……」

 

なんかブツブツ言ってるんですけど。この子本当に呪いなのか怪しいんですけど。

 

それとも、呪いって生まれてきた時は悪い子じゃないのかしら。

 

悪魔は私たちにとっての天敵だけど、意外と話のわかる子もいたりするものね。あ、でも仮面被ってタキシード着てるようなのは論外です。あれは塵も残さず消滅させなきゃいけないわ。

 

呪いってほとんどは話したりもできないし、見境なく襲いかかってくるからサーチ&デストロイで問題ないんだけど、その中にも悪いことしてないのに呪いってだけで祓われちゃったりした子がいたなら可哀想……でもないわね、別に。

 

やらなきゃやられるのはこっちなんだもの。

 

「あの、アクアさん」

「ん〜?」

「一つだけ質問があるんですが」

「なぁに?」

 

それにしてもラクでいいわね。透視なんて出来る子がいると。

 

「その、ずっと同じ速度で私たちの後を追いかけてきてる人がいるんですけど」

「……へ?」

「ただの偶然であればいいんですけど……これ、もしかしなくても……」

 

私が振り向くと……ギシッ、という音がした。

 

「尾行されてます……?」

 

……。

 

「……ねぇ、偽ウィズ」

「え、誰ですか……?」

「あんた、空飛ぶことってできる?」

 

偽ウィズは目を見開いて……覚悟を決めたような表情をした。

 

「できませんっ」

「じゃあ走るわよ!!」

「だと思った!」

 

わたしは にげだした!▼

 

 

「ぜぇ……どう!? まだ追ってきてる!?」

「お、追ってきてます! すごい速度です!」

「これもうバレてるわね、あんたのこと!!」

 

もう息が苦しいんですけど! なんでバレたのかしら!?

 

「ぜぇ、ぜぇ……っ! けど、あと少しで屋敷から出られるわ! 外に出ればこっちのもの……!」

「あっ……アクアさん!? あれ……!」

「えっ」

 

偽ウィズが指差した方向に目を向けると。

 

「……“帷”じゃない!?」

 

空から、一切の光も通さない真っ黒な壁……帷が降りてきていた。

 

「トバリ……? あの、あれがあるとまずいんですか?」

「……出れなくなるわね」

「えぇ!?」

 

う、うーんでもどうかしら。あれが通れなくなる帷じゃなくて単に中から外が見えなくなる帷だったりしないかしら……しないわよねぇ……しないか……。

 

「ど、どどど、どうすれば!? アクアさん!?」

「し、知らないわよ!? ……あっ、待って」

 

……今のこの状況って、どう考えてもこの子が原因よね。私一人だけなら閉じ込められるわけないもの。

 

ってことは……?

 

「偽ウィズ」

「わ、私……?」

「祓われなさい」

「……へっ」

 

私は偽ウィズの肩をガッと掴んで、パチクリしている目に語りかけた。

 

「このままじゃ私たち二人とも終わりよ。そうなるくらいなら……あんたが犠牲になって、私だけ助かった方がお得」

「……」

「そうでしょ?」

「……さ」

 

さ?

 

「最低です!? た、助けてくれるって言ったじゃないですかぁ!!」

「う、うるさいわね! ちょっとは自分の力でなんとかしてみなさいよ!?」

「信じてたのに! 信じてたのに〜!」

 

帷が降りて、完全に出口を塞がれた私と偽ウィズは取っ組み合って喧嘩を始めた。

 

「美水矢」

 

そんな私たちに、冷や水を浴びせるような声が聞こえてきて、私の肩がビクッと跳ね上がる。

 

「元気そうだな?」

「……ノリノリさんも元気そうで、何よりです」

「あぁ、私は元気だとも。なにせ……」

 

ギギギ……と振り向くと、和服を着た背の高い男の人……ノリノリさんが、右手にお札を持って立っていた。

 

「そこの呪霊が、袋の鼠なのだからなぁ」

「ひぃっ!?」

「あっ、ちょ……私の後ろに隠れるんじゃないわよ!」

「だ、だってぇ……!」

 

ちょ……この子、全然私の服離してくれないんですけど!

 

「美水矢、そこにいる呪霊……地下蔵に潜んでいたのだな。なるほど、お前は立派に務めを果たしたわけだ」

「え? え、あー……そうなる、のかしらね……?」

「結構。では残る仕事は一つだけだ」

 

そう言って、ノリノリさんが私の後ろを指差した。

 

「祓うのだ。そして証明してみせろ。お前は呪術師だと」

「……えー、あー」

 

私は、服を掴んで離さないその子を見た。

 

「……う、うぅ……っ」

 

……その子は、本当にムカつくくらいどこかで見た顔をしていて。私はずっと昔のことのように思える記憶を思い出してしまう。

 

(……そういえばウィズも、いっつも金欠で涙目になってたわね)

 

ここにはなんだかんだで彼女を助けてくれる仮面の悪魔も、臆病で小心者で誰よりも頼りになる勇者もいない。

 

『アクア様が本当はとても優しく、慈悲深い方だってわかってますから』

 

不意に誰かの声が聞こえた気がした。

 

「……あの、ノリノリさん」

「なんだ」

「……無益な殺生は、あんまり良くないと思うの」

 

私は指をつんつんと突き合わせながら言った。

 

「ほう」

「その、呪いも悪い子だけじゃないっていうか……偏見だけで差別をするのは良くないっていうか……」

「美水矢」

「は、はいっ!?」

 

ノリノリさんは……笑顔で私に言った。

 

「今すぐその呪いを祓わなければ、お前を加茂家から永久追放とする」

 

ダン、と一歩踏み出す。

 

「言ったはずだ。自らを呪術師だと証明してみせろ、と……それが出来ぬなら、お前には呪術師たる資格がないことになる」

「ちょ、待っ……!」

「非術師をここに置いておく意味はない」

 

ノリノリさんが手を挙げた。

 

──!!!

 

「えっ、ちょ……なによ、こいつら!?」

 

そして気づけば、私は何人もの呪術師に囲まれていた。

 

「美水矢。お前は呪術師としては半人前だ。呪霊が残す残穢を見落としたことも、こうして周囲に潜んでいた術師の呪力を感じ取れずにいたことも……お前には才能があっても、未だ未熟者である証拠だ」

 

うっ……なんか、これ。

 

すっごくピンチなんじゃないかしら……。

 

「そんなお前には呪霊一匹匿うことすらできんのだとその身をもって知ってもらおう。守りたければ守ればいい。しかし私も含めこの場にいる全員……手心を加えるつもりはないぞ?」

 

う、うーん。ゴッドブローで3人くらいはヤれるかしら……。

 

カエルには効かないけど、相手は人間だもの。気合いでなんとか……!

 

こういう時、カズマさんがいてくれれば誰も考えつかないようなトンデモ作戦を考えてくれるし、めぐみんがいれば相手を脅すなりなんなりできるし、ダクネスがいれば囮になって逃げたりできるんだけど……。

 

私、女神だった時ほどの力はないのよね。

 

「あの、アクアさん」

「な、なによ。集中してるから話しかけないでほしいんですけど……!」

 

うんうんとIQ5億の女神脳を唸らせてる私に、後ろから語りかけてくる声。

 

「いえ、もういいんです」

「……はぁ?」

 

そんな私に、この子はまたそんな意味のわからないことを……。

 

「私、アクアさんが私のことを守ろうとしてくれて……本当に嬉しかったんです。だからもういいんです」

 

偽ウィズは胸に手を当てて……微笑んだ。

 

「あの……危ないので、下がっていてください」

「え? ちょ、どういう意味……」

「多分ちゃんと使えるとは思うんですが……制御が効かないかもしれませんから」

 

そう言って、偽ウィズは前に出て……両手を掲げた。

 

「……っ!? まずい、全員退避──!?」

 

 

「──エクスプロージョン!!」

 

 

閃光と火花が辺りを包み込んだ──!!!

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