短いですが楽しんでください
Booooooooo!!!
大地揺るがす汽笛が鳴った。
体を蒸気か、霧か分からないものが辺り一面に漂い、薄いカーテンをかけていく。
前を見ればティータイムを満喫している、顔の見えない女性が薄らと確認できる唇を嬉しそうに歪めたのが分かった。
「ようこそ私のベルベットルームへ」
「何回やるんですかこのやり取り」
Boooo………
一気に神秘的な雰囲気が崩れてしまった。
ここは目の前の女性が言うには、夢と現実、精神と身体の狭間にある空間だそう。
この空間で特筆するべき点は、霧に包まれた庭園でティーパーティーしている目の前の女性と奥の方にひっそりと見える謎の蒸気機関車だ、最初来た時は驚いたが何回も来ているうちに慣れてしまった。
「ここに来ているってことは、
「えぇ、ぐっすり寝ているわね。
大丈夫よ、ちゃんと着いた時に起こしてあげるわ」
「まぁ、そこの所は信頼しているので」
現実では今、試験会場へバスに乗って向かっているはずだ。
「それで、今回は何の御用でしょうか?」
「激励の言葉とひとつの戯言を、と思いまして」
彼女は語るのが大好きなのかよく色んな話をしてくれる、誰よりもオンボロと言われた心優しき2番、雨を怖がってトンネルに閉じこもった3番、威張り屋で急行列車を引く4番、赤いボディが自慢で自惚れやの5番、イタズラ好きな6番、四角く誰よりも変わった形をしていた7番、大西部鉄道流を自慢する8番、皮肉屋な双子の9番と10番、そして誰よりも好かれていた1番
そしてどの機関車よりも愛おしいく話していた12番
幼い頃からずっと話していたがどの物語もその時の自分に当てはまり、一つ一つが人生への戒めとなっていた、そしてこれが一番心に残る理由だが
だからその話を自分はしっかり聞く。
自分の抱えている不安を解消するために。
「頑張りなさい、貴方ならきっと合格出来るわ」
「ありがとうございます」
昨日から何回も言われてるが一言一言が石炭となって心の窯に火を炊いていく。
その暖かさが心強く感じる。
「そして、さぁ始まりの時間が来たわ」
「貴方はエクリプス」
「唯一抜きん出て並ぶ者なし、まさに光を呑み込む月蝕のような蒸気機関車」
自分を通して誰を……一体何を見ているのだろう。
自分の影か、個性か、それとも自分の知りたいその先にある星か。
まぁいい、その願いも
線路は続くよ
ピィリリリリリリリリリ
「おーい!!そろそろ起きな!」
「フガッ!!」
意識が一気に浮上する、有難いことに誰かが俺を起こそうとしていた。これからヒーロー科の少ない席を取り合う相手なのに、他人のことも気にかける良い奴だ。
「緊張して昨夜寝れなかったのかな?」
「ああ、悪い少しね」
本当に良い奴だ、少し周りを見渡すと一緒にバスに乗っていたライバル達は外にいた。
目の前の奴はきっといいヒーローになるだろう。
「お互い頑張ろう」
「ああ」
さて、動くか
ゆっくり身体をほぐしながら個性の点検を行っていく。
朝もやったが、しっかり点検しないと事故や故障の原因が生まれてしまうのが俺の個性の欠点だ。
「ピストン、良し…ブレーキ、良し…各パイプ、良し…石炭の量、良し…水の量、良し…蒸気量、良し……」
俺の個性は『蒸気機関車』、そう名ずけられてる。
ただ、違和感があるがこの個性名しか思い浮かばないのでこの名前で登録してある。
「
さて、仕事の時間だ。
クラウチングスタートの体制をとる。
状況は既にスタートしている、リアルな災害は突発的に起こりうるものだ。
それは
何時でも車輪を回せるように気を緩めない、始まるのは1分後かそれとも10秒後か、それとも既に始まってる可能性もありうる。
「はい、スタート」
緩い声が会場に流れた。
来たぞ!!、汽笛を鳴らせ!!車輪を回せ!!
緑の旗は振られた、信号は青に変わった。
蒸気は満タン、グリップも最高だ。
Boooooooooooooo!!!!
昂る気持ちが溢れ出るように汽笛に伝わり、会場に鳴り響く。
1歩1歩確実に踏み込みながら加速する、一番乗りだ。
声高らかに宣言しよう、きっとこの光景を見ている彼女と一緒に。
『「
次回予告
「急行列車のお通りだーー!!」
「これで貸しは返したぞ!!」
「うおー〜!!デカすぎだろ」
「ヒーローは常に前に進む者だァ!!」
「必殺!!」
次回、『第二列車、飛べ!!蒸気機関車』
ここまで読んでくださりありがとうございます。
少しづつ彼を深めていければいいなぁ感覚で書いています。つまり設定はあやふやです。
次はいつになるんだろ、不明です。