魔法少女と穢れを愛する者の学校生活   作:koth3

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今年この作品最後の投稿です。


第12話

 あれから数日が経った。宣言したとおり、俺はあの日から月村との関わりを絶った。月村経由で接触する可能性もあるからだ。

 あの時俺は月村の姉と会い、話を聞いていた。だが俺が夜の一族とやらの話を聞いたことが分かると同時に魔眼で洗脳しようとした。だからこそ、おれはあの家系と関わるのを止めた。誰が好んで洗脳されたがる? その結果今のような事態になっている。

 

 「ねえ、なんですずかと幸はこの頃話をしないの?」

 

 学校の帰りの学活の後、ハラオウンが俺の席の所まで来て問い詰めてきた。静かな声だがその声の中には怒りが詰まっているのだろう。目の前のハラオウンを見て、何も言わずに立ち去る。

 

 「あ、待って! 話は―」

 「全ての答えが全ての人を救うわけじゃない。その答えで苦しむ者もいる。今回の話はそういう類いだ。彼女の事を想うなら聞かない方が良い」

 

 自分でもわかるほど冷たい声。傷付けてしまうかもしれないがそうしなければならない。月村にとって知られてはならない事なのだろう。そのことを知られてしまえば彼女たちも何かされるかもしれない。それは月村とて望まないだろう。だから、話さない。

 伸ばされた手を無視して剣道場の方へ向かう。後ろで迷っている彼女を務めて忘れるように。

 

 

 

 部活が終わったが少々時間が掛かりすぎた。竹見部長との打ち合いが楽しくなってきて長引いたからだ。打ち合う度に少しづつ、本当に少しづつ強くなっていた。それがどこまで行くのか興味を持ってしまったのが理由だが。

 急いで帰る最中に覚えのある力を感じた。竹林の薬師の弟子の兎の瞳と同じような力を。かつてまともに見て狂いそうになったあの力を。

 

 「ここらへんか?」

 

 気配を消して不自然ではないようにその気配にゆっくりと近づく。路地裏から放たれる気配は間違いなく何らかの術だ。人通りが多い表通りから人通りの少ない裏路地へ進んでいく。気配の場所には三人の、以前気絶させたような少年たちがいて、彼らの前に紫色が目立つ髪色の青年が何かを話していた。

 

 「……これで月村の……頼むよ」

 「分かった」

 

 呆けた少年たちに何かを伝えてからポケットに札束をねじ込んでいた。あの青年の正体も気になるが今はそれどころではない。あの青年は瞳を合わせていた。あの月村の姉のように。そして同じ色の髪の毛。紫色の髪の毛から考えるに親戚の可能性が高い。もしそうなら魔眼も持っているかもしれない。あの時の男たちもそんなことを示唆していたからな。

 

 「あれ? 此処は?」

 「あ? あれ、お前のポケットなんか膨らんでねえか?」

 「本当だ? これは」

 

 今だ。一息に駆け付けて竹刀をふるう。

 

 『影無』

 

 影すら映ら無い。故に影無。俺が使える技の中で最も早い技。それを竹刀で再現する。振るわれた影無で一人を気絶させる。

 

 「な!?」

 「お、おい!! 如何した!!?」

 

 続けてさらに竹刀をふるう。狙うは鳩尾。そこを突く。

 

 「がぁ!!?」

 「な、何―」

 

 最後の一人は引き戻した竹刀を面の要領で振り下ろす。

 

 「ぎゃあ!!」

 

 三人を気絶させて中を視る。中とは肉体ではなく精神だ。ただ見ただけでは何も分からないし、見ることも出来ないが力を籠めればある程度は見れるようになり、判別できる、

 

 「やはり魅了されている。しかも何らかの起動コードを縫い付けられて」

 

 最も近いのは後催眠か。あるキーワードやトリガーが引かれると催眠状態に変わる。それが後催眠だ。この魅了は洗脳のレベル。催眠術なら拒否するような命令ですら従ってしまう強制力がある。こんな危険な代物を使ったあの男は誰だ? そして、あの男が此奴らに命じたことは? まだピースが足りない。必要な要素を見つけていないのだ。この先の事態に踏み込むか踏み込まないかそろそろ決めなければならない。月村の家の騒動の決着を自身の手で付けるか、それともこのまま静観すべきか。

 今決めなければならない。ならば、俺は

 

 「俺が禍津日に送りたいのは平和な生活だ。なら、その為には友人が居なくなってはならないな」

 

 結局甘さを捨てきれないのは俺もか。あの剣士に言った言葉は撤回しなければな。

 

 

 

 数日前の出来事が今もなお脳裏にて渦巻く。あの時もし魔眼を使わなかったら彼とは敵対しなかっただろうかと。

 

 「お嬢様、大丈夫ですか?」

 「ええ、大丈夫よ」

 

 心配してくれたノエルにはそう返すけど、正直かなり懸念がある。あの時、あの子は私たちと交渉はもう二度としないといった。それだけならまだ良いのだけど、魔眼の影響を受けつかなかった精神。あの一瞬で恭也ですら対応できなかった戦闘能力。それらを併せ考えると彼が敵対するとマズイ事になる。だからこそあの時の事を何度も思い出してしまう。

 

 

 

 

 恭也に連れてこられたのは一人の少年だった。正直こちらに恭也が来るまでに説明はある程度されていたけど正直信じられない。すずかと同じくらいの子が恭也に勝てたという事が。

 

 「初めまして、月村忍よ」

 「初めまして、妹さんからお聞きになられていられるかも知れませんが八雲幸と申します」

 

 すずかから聞いた話では温厚で剣道に優れた人だったわね。確かにこんな状況下でここまで落ち着いていられるなんてそうそういないわね。

 彼にソファーを勧めて対面した形で話し合いを始める。恭也と美由紀さんは私の後ろ。ノエルは横に。何かあった時すぐに対処できるように。

 

 「さて、本日はすずかを救っていただいてありがとう」

 「別にかまいませんよ。犯人たちはそこの高町さんの知人の警察関係者に引き渡しましたが問題は?」

 「無いわ。彼らに関しては私たちからも調査するから」

 

 彼らが何故私たちを襲ったか。それは調べなければならない。私たちの安全のため。

 

 「ところで貴方は何故すずかを?」

 「偶々見かけただけです。街を歩いていたところ連れ去られそうな彼女を見つけまして」

 

 そう。彼が居なければすずかが今より大変なことになっていたわね。その点は感謝しなくっちゃ。けど、余計なことを聞いているか調べないと。もしそうなら……。

 

 「ねえ、貴方に一つだけ聞きたいのだけど、彼らは何か話していなかったかしら? 私たちの調査の役に立つこともあるかも知れないから聴きたいのだけど」

 

 そう尋ねるとしばらく考え込んでいた彼だったが、最も聞きたくない一言をその口から発した。

 

 「確か、夜の一族が如何のこうの言っていましたね」

 

 仕方がないわ。すずかのクラスメイトにこんな事本当ならしたくはないけれど知られてはならない事。魔眼で記憶を消させてもらうしかないわ。

 そう考えて魔眼を発動させた瞬間だった。

 

 「忍!!」

 「お嬢様!!?」

 

 気が付けば私は地面に倒れこみ、眼球に突き刺さる直前で恭也がもっていたはずの剣を突き付けられていた。

 

 「こちらは素直にお前たちと交渉しようと思っていたのだが? それを魔眼で返すか。こんなチャチな魔眼では俺には効かんよ。かつてこれよりも強力な狂気の瞳に狂わされかけた事が有るからな」

 

 動くこともできずに私はただ彼の通告を聞き入れるしかなかった。この状態ではいくら恭也でも何もできない。私という人質が出来てしまっている。さらに最悪なことがすずかまでこの部屋に来てしまった事。これで抵抗するのは完全に不可能。私が殺されるだけではなくすずかまで殺されるかもしれないと思うと夜の一族の力で抵抗することもできない。

 

 「……分かったわ。私たちから交渉は望まない」

 

 それが彼の望んだ答え。その答えを私から聞き出した彼は刃を収めてそのままこの屋敷を静かに出ていった。

 

 

 

 もし、この時私が魔眼を使わなければ。今もなお思い続けるしかなかった。




それではまた来年お会いしましょう。
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