魔法少女と穢れを愛する者の学校生活   作:koth3

13 / 58
今回の話は明白な伏線と分かりづらい伏線を入れます。


第13話

 空にはうすっらと雲がかかっているが、晴天と呼ばれるほどの天気だ。そんな中、この学校の全員が校庭に整列して校長の話を大人しく聞いている。

 

 「それではみなさん今年の運動会も精一杯頑張ってください」

 

 そう、今日は運動会だ。多くの保護者の方々も場所取りに励んでいる。一部の親は異常なほどの速度で場所取りしているくらいだからな。

 

 「なのは~、がんばれ!!」

 

 どうやら高町家の人だったようだ。高町が顔を真っ赤にしてうつむいている。まあ、保護者が目立つと恥ずかしいからな。

 それぞれのクラスの席に行っている最中にそんな事を考えていると、

 

 「おい!」

 

 声を掛けられた。

 

 「何だ?」

 「勝負だ!」

 

 ……頭が痛い。此奴の余りの阿呆さ加減につい頭を抱えたくなってしまう。

 

 「如何やってだ? 俺たちは同じ組。勝負しようにも点数差などでは付けられないし、一着の順位もお前が出る競技が多いんだから公平じゃないぞ」

 「簡単なことだ。俺とお前が同時に開始する競技である『借り物競争』で決着を付ける。これならどうだ」

 

 胸を張って言っているが俺がその勝負に参加しなければ如何する心算だったんだ、此奴? 

 

 「別に良いが一つ条件がある」

 「何だ?」

 「こちらが勝ったらもう二度と俺たちに近づくな。はっきり言ってこちらは迷惑だ」

 「それはお前だろうが! 俺たちの邪魔をするなよ!! 良いか、お前が負けたらもう二度と彼女たちに近寄るな!!」

 

 それだけ言い捨てて去っていく須佐。正直言って彼奴の言っていた事の全ての意味が分からんのだが。だがまあ、これで彼奴が近寄らなければ良いのだがな。

 さて、そろそろ競技が始まるか。俺も準備を始めるか。

 

 

 

 

 今俺たちのクラスは二位だ。一位とは先ほどの競技で十点ほど差が開いてしまった。しかし今行われている競技は百メートル走だ。俺たちの組は学年の中でもトップクラスの速度を誇る女子二人がいる。一位を取るのが二名確定して他の生徒もある程度は取れるだろう。これである程度の点が俺たちのクラスに入る。

 

 「幸、次の借り物競争でお前が一位を取れば逆転できるぞ」

 

 禍津日。それは遠まわしに俺に一位を取れと? 最初の人生で余りに運が無かった俺に。絶対このグラウンドを一周する自信があるんだが。

 

 「それでは午前の部最後の競技、借り物競争の開始です。選手たちが全員ピストルの合図と同時にスタートしてテーブルに並べられた折られている紙を取ります。その紙に借りるものが書かれているので皆様選手にご協力ください」

 

 はぁ、仕方がない。運が無いからその分は実力でカバーするしかないか。

 

 「おい。忘れていないだろうな」

 「分かっている」

 

 そして隣の奴はうるさい。げんなりしながらピストルが鳴るのを待つ。パンという軽い破裂音とともに皆一斉に走り出す。だが、俺と須佐が真っ先にテーブルにたどり着く。

 十数個並んでいる紙。しかし、どれをとっても結果は変わらないだろう。俺の運のなさからどんな無理難題が出るかは分からない。ならばさっさと選んですぐに借り物を探す方が建設的だ。そして、選んだ紙に書いてあった内容は。

 

 『貴方の愛する人』

 

 ぶるぶると体が震える。おい、この筆跡見覚えがあるんだが? これを紛れ込ませたのはスキマか。そう怒りを覚えながらも怒りを抑えていた時に重なっているもう一枚に気付いた。

 

 『眼鏡』

 

 良かった。今回は奇跡的に運が良かった。普通だ。大昔は普通にかつらとか出てきたからな。どうやって借りろって言うんだよ。そう思った俺は悪くはない。

 幸い、すぐ近くに娘さんをつれたお父さんがメガネをかけていたので眼鏡を借りる事が出来た。……何だろう、どこかで見たような顔つきだな。けどそんな事を考えている場合じゃないか。

 眼鏡を手に走り出すが俺の横を須佐も走っている。俺の横で須佐がかつらを持って。……良く借りれたな。それだけは認めても良いかもしれない。

 

 「邪魔だ邪魔だ邪魔だ!!」

 

 ガツガツと肩をぶつけて俺を針路から外そうとしているが只ぶつかっているだけだからバランスすら崩さない。しかもそれで自分がバランスを崩してこけている。

 ゴールの所にいる役員に紙と借りてきたものを渡す。それを確認した役員がゴールを宣言して俺が一位になった。

 

 「何でだよ! 何で俺が失格になるんだよ!!」

 「当り前だ! 保護者の方から借りずに強奪してきた奴がいう事か!!」

 

 借りたんじゃなかったのか、彼奴。流石にそれは拙いだろう。そんな事を思っていたら騒いでいた須佐を先生たちが引っ張っていった。それを見送りながらどうせこれで今回の事も無効だと騒ぐだろうなと嫌な予想がついてしまい、そんな自分に嫌気がさしてしまう。

 

 

 

 午前最終の競技を終えて禍津日と俺は中庭でアレの確認と食事休憩をしておく。

 

 「問題はない。今もきちんと作動している。それより次は私と二人三脚だ。これで一位を取ればほぼ確実に優勝は確定だ」

 

 先ほどの須佐の失格で禍津日の予想より点数差が開いていないようだから次の競技でも勝てと念を押してくる。それにしても禍津日が負けず嫌いなのは知っているがそれでも今日は凄いな。気合が入っている。

 

 (絶対この顔は分かっていないな。私が幸と一緒の競技で負けたくないという事を)

 

 何だ? 一瞬呆れ顔になったか? 一瞬だから見間違いかもしれないか。そう判断して手元の弁当を食べる。うん、卵焼きがうまい。

 

 

 

 

 「百メートル走はテスタロッサにバニングスのお蔭でかなりの点数が入ったな」

 

 二人は今校庭のど真ん中で一位の旗の所の列に並んでいる。ちなみに男子では須佐が出ることになっていたが先ほどクラスに連絡で須佐は一切の出場を許可しないそうだ。まあ、あんなことをしたらな。さっきかつらを取られていた人は泣きながら帰っていったし。南無三。

 

 「次は二人三脚です。選手の人は……」

 

 おっと、次か。入退場門の前で待っていると退場してきたバニングスから

 

 「勝ちなさいよ」

 

 そう激励された。やれやれ、これでさらに負けるわけにはいかなくなったか。

 

 「それでは選手の入場です」

 

 俺と禍津日は五番目の組。ラストの組だ。

 

 「ほれ、縄を結ぶぞ」

 「ああ、分かった」

 

 渡された縄、というより一本の細長い布を解けないようにしっかりと結ぶ。これで準備はできた。あとは順番が来るまで待つだけだ。

 

 

 

 四番目の組が走り終わり俺たちの組はそれぞれのレーンへと向かう。俺たちは一番外側か。大きく回るから一番大変なところだな。だが日差しが本来はきついがだいぶ雲が濃くなってきて日差しを遮ってくれているおかげで走りやすい。

 

 「禍津日」

 「何だ?」

 「勝つとしようか」

 「当り前だ」

 

 ピストルが鳴る。それと同時に全員一斉に走り出す。俺たちはいっせいに真ん中の結んでいる足を前にだす。一歩目に間髪入れずに二歩目へと。どんどん加速していき第一コーナーを回る。できるだけ内側を回ることでロスをなるべく減らして後ろの選手に追いつかれないようにする。全力を出せば必ず勝てるだろうが今回は二人三脚。ほかの選手と同じ程度の力で禍津日とのコンビネーションで俺も勝ちたい。だからこそこの戦いは勝つ。

 

 「一直線は速くするぞ」

 「分かっておる」

 

 最高速度へと加速して後ろを引き離す。高々十五年程度の人生で数年一緒にいた程度のパートナーと合計数百年一緒に生き続けた俺たちとでは息の合い方が根本的に違う。どうやっても彼奴らでは俺たちのようには走れまい。

 

 「早い、早い! 八雲幸君に八十禍津日さんトップです!!」

 

 第二コーナーを曲がる。これであとは最後の直線だ。あとは油断なく走れば問題はない。

 そう思ったのが問題だったのだろうか。あと少しというところで俺のあれが来てしまった。

 走っている俺と禍津日の間でぶちりという音が聞こえ、縄が切れてしまった。

 

 「アクシデントの発生です。トップの幸君と禍津日さんを結んでいたひもが切れてしまいました! 結び直すまでは走ってはいけません」

 

 マズイ! ど真ん中で切れたから長さが足りなくて結び直せない!

 

 「全く、幸の運の悪さも大概だ」

 「すまん、禍津日」

 

 如何する!? 結び直せないが今から新しい紐を取りに行く時間はない。それにもう後ろに他の組が来ている。

 

 「お前の悪いところは少々頭が固すぎるという事だ」

 

 そう言って禍津日が紐を手にする。半分に切れていた紐ともう半分の紐を。

 

 「如何するんだ?」

 「簡単なことだ。切れたといえこれは紐。切れた部分を結わってしまえば一本の長い紐になる」

 

 手早く禍津日は切れた紐を結わい直す。元の長さよりほんの少しだけ短くなった紐はきちんと俺と禍津日を結び直す。

 

 「行くぞ」

 「ああ」

 

 そうしている間に二組にぬかされた。後二十メートルで追い抜かす。

 

 「全力で行くぞ」

 「分かっておる。むしろ全力でいかねば叱りつけるぞ」

 

 苦笑しながらも今までの抑えていた速度と違い、禍津日の限界まで足を速める。俺が完全に禍津日に合わせてしまえば禍津日の全力疾走の速度と同じくらいの速度は出せる。だからこそまだ追いつける。

 残り十メートルの所で一組を抜かす。続いて五メートルの時点でトップを奪還して走り続ける。

 そしてゴールテープを切った。

 

 「あそこからの大逆転! 幸君と禍津日さん一位! 続いて二位は一君に明君! 第三位は……」

 

 禍津日と顔を合わせながら僅かに笑いだす。これでこのままいけば俺たちの組が優勝だろう。少しだけ気が楽になった。後は全員参加の競技だけだ。

 

 

 

 

 暮れていく夕日に照らされながら俺と禍津日は家路につく。あの後結局俺たちは無事優勝する事が出来た。須佐は今もこってりと叱られているだろうが。それ以外の生徒は全員家路について家で家族と談笑している頃だろう。俺たちは少し家が遠いから時間はかかるが今もこうして歩いているが。

 この時の俺はまだ知らなかった。そして気がつけなかった。これから後に起こる事態を。そして、その事態によって俺の隠している事がばれてしまうという事を。

 

   




初めての運動会の描写なので余り上手く書けませんでした。ですが、次回はまともな描写になります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。