魔法少女と穢れを愛する者の学校生活   作:koth3

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少し長くなりました。


第15話

 空には赤い洋服を着てその色取り取りのクリスタルを揺らしながら口元を歪ませて嗤いだす。

 

 「あは、あはは、あはははははははははははははは―」

 

 何故、何故フランが此処に? 禍津日に何かあったとしたら俺はすぐに分かるはずだ。ならば少なくとも禍津日に何かあったのではない。それだけは確かだ。

 俺の内面の混乱を読み取ったのかフランは笑いながら俺に攻撃を加えてきた。

 

 「あは♪」

 「っく!?」

 

 何だ!? 威力がありすぎる!?

 叩きつけられたレーヴァティンは本来なら抵抗する事すら許さずに天羽々斬で斬れるはず。なのに斬れないどころかむしろ天羽々斬がおされている!?

 今の俺の力では長い間拮抗することは不可能。そう判断すると同時に上段に打ち込まれたフランの魔剣を天羽々斬で滑らすように軌道をずらして回避する。回避したと同時に蹴りを繰り出してその反動で一気に後ろに跳び退る。

 

 「な、何が?」

 「下がれ!!」

 

 突然起きたこの事態に混乱してしまった月村達に叫んで注意を促す。

 

 「ふは! よそ見していて良いの?」

 「っ、早、っがぁ!」

 

 莫迦な! 早すぎる! 

 ギリギリと首を絞める右手を左手で外そうとしながら右手の天羽々斬でフランの首を斬り落とす。幾らフランが最高位のヴァンパイアでもこれほどのダメージは早々回復する事など出来やしない。力の抜けた右手を力づくではずして倒れ込む。

 

 「ぜぇ、ひゅはぁ」

 

 息を思いっきり吸い込む。そんな時だ。その声が聞こえたのは。

 

 「何て事を!!」

 

 確かに何て事をだな。普通に見ればいくら首を絞められていたからと言って首を斬り落としたのは異常だろう。けれどこうまでしないとフランたち吸血鬼は止められない。それだけ力のある妖怪なのだから。だが、これで落ち着いた。幾らフランでも神剣で首を斬られたんだ。幾らなんでもそう簡単にダメージは回復しない。

 

 「キャハ♪ 甘いよ幸」

 

 !!?

 凄まじい力で持ち上げられて抵抗する猶予すらなく俺はフランに投げ飛ばされ、月村邸の一部を崩壊させた。

 

 

 

 ガラガラと私の家が崩れていく音が聞こえる。その現実感の無い事が私達よりも小さいこの女の子の手で行われたという事が今でも信じられない。

 

 「え?」

 「お嬢様!!」

 

 地上に降りてきた彼女からすぐさま私たちを庇うようにノエルとファリンが前に出て私たちをその女の子から隠す。

 

 「む~! つまんない! つまんないつまんないつまんない! こんな簡単に壊れちゃつまらないよ」

 

 歪み切った笑みを浮かべた斬り落とされたはずの首。けれどその首は確かに女の子の体につながっていた。切り落とされたはずの首が赤い霧になったと思った次には既に体には首がつながっていた。その異常は私達にも信じられないもの。

 

 「君は何だ(・・・・)?」

 

 そう言ったのは恭也さん。余りにも有り得ない事態が進行している。夜の一族ですら不可能な首すら再生させる再生能力に自分よりはるかに大柄な人間を投げ飛ばす異常な筋力。それはもはや同じ種族とは思えなかった。

 

 「うん? 私? 私はフランドール・スカーレット。唯の吸血鬼だよ」

 「有り得ないわ。幾ら夜の一族でもそんな出鱈目な力はない。それにスカーレットなんて一族にはいないわ」

 「夜の一族? 何それ?」

 

 夜の一族を知らない? じゃあ、一体どういう意味で吸血鬼なんて。

 

 「う~ん。あ、お姉さまが言っていた言葉通りに言うのなら私は高貴なる血族でありツェペシュの末裔だって。あははは、笑っちゃうよね? そんなたかだか流れる血を誇るなんて」

 

 ツェペシュ? 何それ?

 

 「そんな馬鹿な事が有るはずがない。ツェペシュはあくまでドラキュラのモデルでしかないわ。そしてドラキュラなんて存在しない」

 「ならそう思っていれば? 私は少なくともここに存在している。貴方達のくだらない言葉のようにいないふりをすれば良いの? U.Nオーエン(正体不明)にでもなれってこと?」

 

 笑いながら言うその子が余りにも怖かった。その瞳は赤く輝いてその口は笑みを浮かべる。そして気が付いてしまった。あの子の歯が、犬歯が異常に鋭く長い事に。

 

 「アハハハハ! 面白い事を言うね。なら幸が一人目のインディアンかな? ああ、さっき壊した奴が一番目か」

 

 笑みを浮かべながら笑い続ける彼女。けれど、その笑みが止まった時私は、ううん、多分他の人たちも怖気を感じた。

 

 「じゃあ、貴方達も壊してあげる!」

 

 彼女がかざした掌が赤く輝く。その掌からいつか見たなのはちゃんの魔法に似た、そして全く違う光が私たちめがけて放たれかけて、

 

 「セイ!!」

 

 恭也さんがその腕に切りかかっていた。

 

 「邪魔だな。でも、面白いね。人間にして速いね。面白そうだから、簡単には壊れないでね?」

 

 腕を斬り落とされそうになった瞬間彼女は斬り落とされそうになっていた手に生えている爪で刀を受け止めていた。

 

 「ば、莫迦な……!」

 「うそ」

 

 言葉が出ない。爪で刀を止める? それも恭也さんの刀を。恭也さんが振るった刀は斬鉄だってできるのに! どうやってもあんな事は夜の一族ですら不可能だ。そんな絶対に不可能なことをあの子は笑いながら行っている。

 

 「その程度? じゃあ、貴方はイラナイ。だからもう壊れちゃって良いよ」

 

 そしてあの子はその長い爪を使って恭也さんを!

 

 「恭也ぁーーーー!!!」

 

 

 

 

 「アハ♪ やっぱりそうじゃなきゃ」

 

 ずるりとフランが伸ばしていた腕がずれ落ちていく。

 

 「さあ、愛し合いましょう(殺し合いましょう)? ねえ、幸」

 

 間一髪間に合ったか。

 血が流れてきた所為でまともに右が見えない。しかも最悪なことに右手も動いてくれない。如何やら完全に骨が砕けてしまったようだ。一合だけなら無理をすれば刀を振れるがそれ以降はまともに動いてくれないと見たほうが良いだろう。

 

 「悪いな、フラン。そんな愛はお断りだ」

 「愛っていうのは押し付けるものだよ」

 「なら俺は愛なんていらないな」

 

 軽口をついているが正直ダメージは拙いくらいだ。油断すれば意識が絶たれるくらいのダメージがある。

 左手に刀を持ちかえて俺は自分を鼓舞するために、そして周りに余計な被害を及ば差ないために一つの遊びを提案する。

 

 「まあ良い。ならば遊びをするとしようか」

 「うふふ。そう言う物分かりの良いところは幸の美点だね」

 「阿呆、俺のは美点じゃなくて諦めだ。さあ、弾幕ごっこと洒落込もう!」

 「あはは、良いね! やっぱりそう来なくっちゃ! さあ、貴方はいつまで遊んでくれる(壊れないでくれる)? 私が満足してから終わらせ(壊し)てあげる!」

 「どっちもお断りだ、この破壊莫迦娘」

 「なら幸はロマンチック莫迦だね」

 

 ロマンチックね。俺には縁もかけらのない程遠い言葉だと思うが。まあ、今はフランを止めるとしよう。

 

 「幸君、何を?」

 「安心しろ、月村。これ以上フランはお前たちを的にすることはない」

 「何を言っているの! そんな体で何ができるの!?」

 

 ふふ、ああ、そうか、この子は。

 

 「優しいな、すずか(・・・)は」

 「えっ?」

 「あれだけお前たちと敵対した人間を心配できるんだ。そんな子が優しくない訳ないだろう?」

 「今はそんな事如何でも良いよ! 其れより早く逃げよう!」

 

 すずかの最後の言葉だけを無視して俺とフランは同時に空を飛ぶ。フランはその幻想的なクリスタルの軌跡を描きながら。そして俺は幻想的も蠱惑的とは到底言えないような垂直な壁を登るように空を跳ぶ。

 

 「別れの挨拶はあれで良いの?」

 「別れじゃないさ。これから続きがある」

 「アハハハハハハハ!

 貴方にコンテニュー(続き)が有るとでも?」

 「当り前だ。それより子供はもう寝る時間だ。続きはまた明日だ」

 

 そんな俺の言葉に歪んだ笑みをさらに歪ませてフランは哂いながら狂気に染まり切った声を上げる。

 

 「貴方がコンテニュー出来ないのさ!」

 

 

 

 フランから放たれた牽制の弾幕を当たらないものは無視して当たりそうなものは体捌きに足捌きで無理やりグレイズさせる。牽制弾を放ちながらフランは大技を繰り出すだけの魔力を。俺は技を繰り出すための霊力をためていく。

 

 「楽しいね! けど、今日の私は負けないよ!」

 「それは如何かな? 俺とて負けるわけにはいかないのでね!」

 

 弾幕をよけながらも接近して刀を振るう。

 

 「トンボ切り!!」

 

 振るう刀の斬線に沿って斬撃が飛んでいく。何処までもその衝撃波は刃となって宙を飛ぶ。俺が持つ唯一の通常弾幕でもあるが一撃自体は弧を描いた直線でしかない。何撃も角度を変えて放つ事でこちらも牽制の弾幕へと変える。

 

 「ふふふ、まずは一枚目!」

 

 何!? 幾らなんでも魔力の溜りが早すぎるだろう! レミリア、いやそれどころかこんな時間では禍津日ですら攻撃スペル分の神力を用意できないぞ!?

 

 『禁忌 クランベリートラップ』

 

 スペル宣言と同時にフランの後ろに魔法陣が現れて高度な情報を処理し始めて魔法を構築していく。構築が終わった瞬間俺を挟み込むように二つの小さな魔法陣が現れて上下に移動し始める。

 

 「これか!」

 

 二つの魔法陣から弾幕が放たれる。とはいえまだ通常弾幕の方が密度は高い。だがすぐにこのスペルの真価が現れる。

 二つの魔法陣がそれぞれ頂点に達すると今度は折り返してくる。しかも、新たに横を移動する魔法陣を作り出して。上下左右から放たれる弾幕による密度は凄まじく、すぐに人ひとり入る余裕も無くなっていく。しかし、しかしこの程度なら俺にもまだ簡単に対処できる。

 

 「はあ!」

 

 こちらも準備は整った。一枚目に行かせてもらう。

 

 『剣技 旋風巻き』

 

青い刃が幾つもフランを中心にして設置される。全ての配置が完了するとその刃が回転しながら中央に殺到する。回転することでよける際には大きく移動しなければならず、さらに大きく移動すれば他の刃を避ける余裕をどんどん奪っていくスペルカードだ。

 

 「甘いよ! こんなもの!」

 

 だが、俺のスペルカードはフランに対して絶対的な弱点がある。それは、

 

 「吸血鬼に斬撃なんて効かないんだから!」

 

 天羽々斬の一撃すらすぐに回復した今のフランではこのスペルではほとんど意味が無いだろう。せいぜい時間稼ぎになってくれれば。

 

 「それに今夜は特別。私達(・・)にとって特別な日だもの」

 

 特別? それに私()? 今夜は、……そうか! 満月か!

 

 「残念。大外れ! 幸の事だからどうせ満月だとか考えているんでしょう。確かに今日は満月だけどそれだけじゃない。ほら、そろそろ朝から厚くなっていた雲のスキマからその光が見えるよ」

 

 フランの言う言葉が本当だとすると今夜の特別という意味は満月じゃない。では何だ? 吸血鬼を強化する要素何て満月くらいしか。

 そこまで考えて雲のスキマから射す月明かりを見てその特別の意味が分かった。

 

 「莫迦な! a red full moon(赤い満月)だと!」

 

それはScarlet(緋色)にとって最も重要な意味を持つ日。この日限定で言うのならスカーレットの姓を持つフランドール・スカーレットは全知全能であり、絶対神と言われるヤハウェと同レベルといっても過言ではなくなるのだから。




赤い満月って普通はそうそうないんですよね。月が赤くなること自体数百年に一回と珍しいのにそれが満月。ならばそれだけレアなら吸血鬼であり緋色を意味するスカーレットを持つ吸血鬼は異常なほど強くなるのではという考えから出てきた独自設定です。
かなり前で運動会の朝から段々と曇りになったのはこの満月の光を隠す事と、夜の一族の人間による襲撃の成功要因の一つとして伏線として書きました。
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