最悪だ!! これ以上ないほどの最悪だ!
「クソったれ!!」
思わず悪態をついてしまったが目の前の状態で余裕なんてない。
『秘弾 そして誰もいなくなるか?』
フランの姿が闇に消える。あたり一帯何処にいるか。それは本人以外には決して分からなくなる。むやみやたらに攻撃したところで霊力の無駄だ。ならこのスペルの時間切れを狙うしか。
「まだまだ行くよ!」
!? 莫迦な! この魔力の高まりは二段スペルの発動!?
「スペルカードは一枚ずつというルールを破る気か!」
「此処は幻想郷じゃないよ? 幻想郷のルールに縛られる必要もない!」
見えないフランの攻撃が
これは間違いなくあのスペル。
「『禁忌 フォーオブアーカインド』」
声が重なると同時に見えない四人のフランの攻撃がますます勢いをつけて襲いかかってくる。
「クソ!」
こちらは左手しか使えない。攻撃はスペルカードを使うか、通常弾幕を使うしかないが、それでも左手だけでの影響は必ず出る。
『呼気 黒鋼の吸気』
ドーピングスペル。効果は単純。防御力の増大。この状態ならば撃ち漏らした攻撃なら耐えることも不可能ではない。
「おぉぉおおおおおお!!」
斬る、斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る!!!!!!!
トンボ切りを連発することでフランの弾幕を相殺していく。幾つかこぼれるものはあるが、それは黒鋼の吸気で高まった防御力の前では意味はなさない。
「スペルブレイク」
時間が切れた。さすがにスペルカードの時間制限は守るか。
姿の見えるようになった四人のフランに斬撃を加えていく。効果はなくとも時間を稼ぐ意味はある。俺に対処できなくとも他の方法がある。
「「「「あははは! そろそろフォーオブアカインドのスペルもブレイクするね!」」」」
そう、それと同時に俺の黒鋼の吸気ももうすぐ消え去ってしまうだろう。
「じゃあ、ブレイクしたから次のカードに行こうかな?」
「悪いがそうはさせないさ」
「?」
フランよりも早く次のカードを使う。
『剣極 力閂オロシ』
一瞬にしてフランを中心にしてレーザー上の斬撃の跡が広がっていく。横に動くことを防いだ後にさらに今度は天羽々斬を横に振るう。
横に一直線に振るわれた斬撃を追うようにいく筋もの斬撃が出来ていく。
「わあ、拘束趣味?」
「悪いな、フランのような幼女には興味が無いんだ」
「ムカ。これでもまだ彼奴よりは大きいんだから」
姉であるレミリアよりは小さいと思うんだがな。
「だが、まだ終わりじゃない」
俺の言葉に反応してフランの周りを囲っていた斬撃の跡が弾幕へと変わっていく。代わった弾幕は中心へと集まっていき最終的に一気に拡散してフランを襲いかかる。
「……この程度?」
これまた随分と厳しい事を言ってくれる。
「この程度ならもういいや。じゃあ
「……」
「アハハ。怖くて言葉も出ない?」
そろそろか。
「じゃあ、きゅっとして――」
「時間切れだ」
その瞬間フランを真っ黒な泥が覆い、フランを飲み込んでいく。
「なっ!?」
「いくら神のごとき力を持っていたとしても神の力なら対抗できる。
ずぶずぶと黒い泥にフランは飲み込まれて見えなくなった。
「やれやれ、少し目を離したらあっという間に消えていって暴走しているとは」
後ろに禍津日が飛んでくる。
「禍津日」
「これで終わりだ。フランはもう眠っている。精神を守るためだろう。眠って身を守っているよ」
「やれやれ、ようやく終わりか。右手を使う必要はなくて助かった。砕けているからな。使ったらしばらくは動かなくなっただろう」
さて、フランについては片付いたが、これからしなければならない事について些か面倒だな。
空から降りて彼らの前にまで降りるああ、話をしないとな。
「こ……う、君? それに禍津日ちゃん?」
愕然とした顔のすずかをよそに俺たちは泥から吐き出されたフランを抱えて空から降りる。
警戒する四人をよそに俺は禍津日にフランを預けて彼らに向かい合う。
「話をしよう。フランがいろいろ暴露してしまったのでな」
この時に気がつければよかったのだろう。壊れた機械は、まだ中の機能は生きていたことに。
破壊された客間とは違う場所で俺と彼らは向かい合っている。フランは禍津日が様子を見ているために帰らせた。
「さて、何を聞きたい?」
「……正直言っていろいろと混乱しているわ。でも最低でも教えてもらえなければならないのは、彼女について。そしてあなた達についてよ」
まあ、妥当だろうな。
「フランについてか」
「そうよ。彼女は異常よ。如何考えても有り得ない現象を引き起こしていたわ。それに関しては貴方もだけどね」
……。
「彼女に関しては保護者がいるからあまり詳しくは言えないが、それでもあえて言うのなら彼女は“狂っている”」
「狂っている?」
「そうだ。実の姉によって495年間の監禁。それで気が狂わない方が可笑しいだろう?」
「一寸、待って! あの子は如何考えても十くらいよ! それがなんで――」
「お前たちの考えを押し付けるな」
「っ!」
常に幻想は否定される。それは当り前だ。特にこの国では。
「彼女は吸血鬼。永遠と言っても過言ではない。不老長寿であり再生能力の高さはそれこそ蓬莱人等の特別な存在以外は届かない」
「……頭が痛いわ。はっきり言ってそんな事はあり得ないと言いたいわね。けれどそれを言うには余りにも凄惨な光景を見せつけられたから信じるしかないわ」
「それについてはすまないとは思う。しかし、ああでもしないとフランは止まらない。
……まあ、今回はそれ以外の要因で止まらなかったのだがな」
「彼女については分かったわ。では、もう一つ。貴方は何者? 八雲幸」
答えづらい。答えづらいが答えるしかない。
「唯の幻想だ」
「幻想? ……良いわ、それ以上は言うつもりはないのでしょう。
けど、あと一つだけ質問させてもらうわ」
「何だ?」
一つだけ? 一体その質問は?
「貴方はすずかの敵? だとしたら私たちは貴方を倒す」
強い、強い意志が込められた瞳だ。
これははぐらかすことは許されないし、もとよりそんな気はない。
「敵ではない。唯、友達なだけだ」
次回は普通の学校生活と見せかけて夏休みです。