魔法少女と穢れを愛する者の学校生活   作:koth3

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第21話

 昨夜の出来事で頭がいっぱいになったせいだろう。僕は今日珍しく寝坊した。

 ……偶には良いのかもしれない。どうせ、夏休みだ。怠惰に過ごすのも時には良いだろう。何時も頑張っているんだ。休みだって必要だ。

 

 「ハァ」

 

 気がつけば、部屋の中でため息を何度もついてしまう。体を動かせば、考える必要がないのかもしれない。だけど、今は動く気分じゃない事は確かだ。だからこうやって自分の部屋で休んでいるのに。

 

 「何でだろうな。動いても、動かなくても変わんないや」

 

 動いても、動かなくてもあの気分になる。もやもやとして、嫌な気分に。如何すれば良いのだろう。如何すればこの嫌な気分から抜け出せるのだろう。

 

 「……」

 

 天井を眺めながら、考え続ける。

 頭の中では何もかもがごちゃごちゃになり、しっちゃかめっちゃかになってしまう。

 結局、いくら考えても何も浮かばなかった。

 

 

 

 

 ……あ、れ? 眠っていたのか?

 コキコキと背骨を鳴らしながら、家の異変に気が付いた。静かすぎる(・・・・・)。時計で確認したが、今は昼間だ。それならば、家の中の音、いや車道を走る車の音位聞こえても良いはずだ。なのに、そんな音が全然しない。

 

 「お爺様とお婆様は?」

 

 普段なら、いつもこの時間帯は軒先でお茶を飲み、太陽の光に当たりながら昔話に花を咲かせているはずだ。

 だが、先ほど抱いた疑問の通り、この家にはそんな声はなく、誰もいないようだ。

 

 「それが可笑しい」

 

 ミールは、この世界の住人じゃない。簡単に外へ出れる訳が無い。ミール自身が外へ出ないようにしているのもあるが、何よりお爺様が許さないだろう。

 あれでお爺様は策略家だ。ミールに降りかかりかけている火の粉を考えれば、当然外へ出してしまうことなどないだろう。彼女の安全のために。

 

 「ならば、この静けさは何だ?」

 

 その疑惑は、しかしさらに大きな疑惑で塗りつぶされてしまった。

 ふと目を上げて窓を見たら、そこは青空でなく、見たこともない色に塗りつぶされていたのだから。

 

 「何だ、これは!!?」

 

 

 

 

 与えられた客間ではなく、何となく道場という場所で考え事をしていた。自分でも何でここで閑雅ているのかはさっぱり分からない。だけど、何となくここで考え事をしていたかった。

 そんな事をボンヤリと考えていたら、突然魔法が発動された。

 驚く私は、しかしマルチタスクで理性的にその状態を把握していく。おそらくこの魔力の波長、サーチ系統の魔法が発動されたのだろう。

 そのことを理解できても、十分な対応を取る事すら許さず、すぐにこの屋敷は結界で閉ざされた。

 そして、その魔法を使った魔導師は、転移魔法で私の前に現れた。その魔導師は黒い、何処までも黒いコートに、要所要所をプロテクターを使用して防御力を強化しているバリアジャケットをつけて、私の首を掴み持ち上げてくる。

 

 「こんな所にいましたか。さあ、あの遺跡に眠っていた財宝を渡してもらいますよ」

 『マスター!!』

 

 く、苦しい!

 

 『スナイプショット』

 「っく!」

 「ぇほ、げほ、ごほ!!」

 

 えづきながらも、咄嗟に距離を取る。危なかった! ゼウスが魔法を使ってくれなかったらあのまま落とされていた。

 混乱している中、私の口はその疑問を出してしまう。

 

 「何で、何で今頃」

 「貴方が転移魔法で逃げた後を探していたのですがね、少し前に似たような座標で、スクライアの一族がこの世界に流れていたという話を思い出して、こうして訪れてみたらあたりだったというわけです」

 

 そんな! 余りにも運が悪すぎる!

 

 「さあ、あの遺跡に隠されていたロストロギアを渡してもらいましょう。 一応言っておきますが、助けを求めるのは無駄です。結界を幾重にも張ってあるので。管理局ですら気が付かないレベルのを」

 

 拙い! あのロストロギアは普通の物じゃない。特Aクラスのロストロギア。下手に刺激すると、一気に魔力を解放してしまうようなもの。その魔力は文明を滅ぼすとまではいかなくとも、都市一つは軽く焼き払える。そんな危険な代物でも、目の前の男は平気で裏に流してしまうだろう。

 こいつの顔は手配書で何度か見た事が有る。管理局でも捕まえられない犯罪者の一人で、懸賞金すら掛けられたほどの悪党だ。そのほとんどの犯罪はロストギアの違法取引。邪魔をした管理局を殺しつくした過去すらもある。

 

 「さあ、どこに隠したのですか?」

 

 ダメ! 言っちゃダメ!

 

 「ぜ、ぜう――」

 

 !!? 何で! 何で言おうとしているの!!?

 

 「ぜう?」

 「ゼウスの――」

 「めーーーーーん!!!」

 

 だけど、いきなり響いてきた声にその声はかき消された。掻き消えてくれた。

 

 

 

 避けもせず、防御もせず、竹刀が一方的に折れた。うぬぼれではなく、僕の実力はこれでも有段者と匹敵するだろう。そして、有段者の一撃とは、人を殺すことも可能だ。今の一撃とて、手加減はしていない。なのに、ダメージは通らず、攻撃した獲物が壊されてしまったのだ。おそらくはあれが魔法の力と言ったところか。

 

 「いきなり攻撃してくるとは、良い度胸だ餓鬼」

 

 怒気をはらみ、話しかけてくるが、それを無視して竹刀の代わりを探す。素手でもある程度なら戦える。だが、目の前の男には素手では余りにも非力すぎる。

 道場の中を見て、咄嗟にそれを掴む。

 

 「ふん。そんな古い剣で何をするつもりだ? 鉄どころか、青銅ではないか」

 

 鼻で笑われる。仕方がない。僕だって目の前の男の状態ならそういうだろう。竹刀を取ろうにも、距離はありすぎる。取りに行くまでに攻撃される。魔法の攻撃力は分からないが、防御力があれほど高いという事は、その分攻撃力も高いと考えて良いだろう。

 そしてそんな一撃を生身で喰らえば、死ぬのは当たり前だ。

 だから、一番近くに置かれていた古刀を手に取った。僕たちの一族が祭って、奉ってきた神具を。神具でありながら、神であるといわれている刀を。

 

 「ぉおおおおおおお!!!」

 

 男が動く。その瞬間には既に踏み込み終え、古刀で男を薙ぎ払う。男の動きは武術家から見れば、余りにも隙が多すぎる。おそらくは、接近戦を得意としている男ではないのだろう。

 しかし、その予想は当たっていたが、思惑は外れてしまった。

 

 「な、何だ! この縄は!?」

 

 灰色の光り輝く縄が、振りかぶっていた腕を拘束してくる。

 その縄に空中で固定され、腕を振るう事も許されず、僕は動けなく隙をさらしてしまう。

 

 「さて、さっきのお礼をたっぷり返してやろう、餓鬼!」

 

 男の周りを灰色の球体が周り、僕めがけて殺到していく。

 唯、僕は迫りくる灰色の光を眺め続けるしかなかった。 

 

 

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