魔法少女と穢れを愛する者の学校生活   作:koth3

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ごめんなさい! 本当はこれで終わりにするつもりでしたが、少し長引いて前編と後篇に分かれてしまいました! 本当に申し訳ありません! しかし、今度こそ、この話と後篇が終われば主人公が登場します。


第27話

 あれからリンディ艦長から一つの機械を手渡されて、家へ帰る事が出来た。何やら説明によると、僕自身居場所を特定するビーコンらしい。だが、今あるのは漸く理解してくれたか。正直そう言った感情しかない。あちらにはあちらの言い分があるのだろう。だけど、それを納得して従えと言われても、従うはずがない。

 建御雷之神を鞘に収めたまま、まずは道場の神棚に納める。僕自身が持っているべき剣じゃない。この剣は、それこそ人が持ってはならない剣なのだから。

 とはいえ、この事はお爺様に報告しなければならない。というか、心配かけているだろうから、早く安心させなければ。道場から出て、痛む体を引きずって母屋へ向かう。正直言って気が重いけど、それでも挨拶しなかったら大変だ。

 

「ただいま帰りました、お爺様」

「おお、帰ってきたか!!」

 

 挨拶をすると同時にお爺様が出てきて、顔を綻ばせた。その笑顔を見て、何となく後ろめたい気持ちが出来てしまう。お爺様を心配させてしまったという罪悪感に、身を焦がされながらも何と隠しながら返事を返す。

 

「お爺様、帰ってきましたが、その」

「大丈夫じゃ、ミールちゃんから聞いておる」

「そ、そうなんですか?」

 

 いつの間にちゃん付けに。いや、まあそれじゃなくて。

 

「その、建御雷之神については」

「それも聞いた。だが、建御雷之神は建御雷之神。お前はお前じゃ。儂らは気にせんよ」

 

 その言葉が何よりもうれしかった。正直、目が覚めた時からずっと心配だった。今の僕は人として認められるのだろうかと。人として生きて良いのか。それが不安だった。でも、お爺様は認めてくれた。それが何よりもうれしかった。

 

「さあ、早く家へ入りなさない」

「はい」

 

 

 

 あれから、束の間を過ごした。ミールと話をしたり、竹刀をふるったり。だけど、その中で、一つだけ気になっていた事が有った。ハラオウンだ。あの子は助かったとミールは言っていたが、どれだけ深い傷を負ったかは分かる。あの傷から考えると、助かったはあくまで命が助かった程度だろう。どれだけ体にダメージがたまっているか分からない。自業自得だとは思うのだけど、それでもやはり罪悪感というものはある。

 そんな事を想い続けていたせいだろうか。ある日、公園でいきなり絡まれた。僕の通っている学園の悪い意味で有名な後輩、須佐亘に。

 

「お前か! 俺のフェイトを傷つけた奴は!」

 

 いきなり現れて、そんな事を叫び始めた。はっきり言って、訳が分からない。そもそも、この後輩は何故彼女の事を知っているのだろう? 時空管理局が言っていたが、ハラオウンの現状は周りには語られていないはずだ。まさか、ストーカーか何か?

 

「行くぞ」

 

 だけど、そんな事を考えていたら、襲われた。あの時のように、須佐が着ていた服が見たこともない服に変わっていく。その服は、全体的な印象は西洋の鎧だろうか。全体的に刺々しい装飾が施されており、相手を威圧するためか、おどろおどろしい形に鎧が出来ている。顔はフルフェイスの、目の所にだけスリットが開いている物をつけており、表情を見ることはできない。

 ヤバイ。前回、魔導師と戦って分かった事が有る。それは、今の僕では何をしようとも意味が無いという事だ。単純に攻撃手段とその威力がが違う。それに、鎧のようなものは、バリアジャケットという奴のはずだ。こちらの攻撃は一切通用しないとみて良いだろう。武器もない僕では、何もできやしない。逃げなければ!

 だけど、そんな時間はなかった。

 

「っがぁ!!?」

「死にやがれ!!」

 

 

 

 拙い事になった。よりにもよって、あいつに気が付かれてしまうとは。そうならないように、最大限の注意を払っていた。しかし、どこかに緩みはあったのだろう。テスタロッサの状態に衝撃を受けていたせいで、私たちの注意は散漫になっていた。その結果が、あいつにテスタロッサの状態を知られるという最大の失態だ。

 おそらくあいつの事だ。テスタロッサを傷つけたなどと言って、少年を襲うだろう。確かに、私にも複雑な感情はある。それでも、私の中には感謝の気持ちが大きい。奇蹟的に、ノイズ塗れだったがそれでも残されていた記録映像には、その惨劇が映っていた。あれは、余りにも桁が違う。あのままではテスタロッサは必ず殺されていただろう。それを救ったのは彼なのだ。彼を恨むのはお門違いというものだ。

 だが、あいつはそんな事を気にしないだろう。独善的な、それでいながら善でもない価値観で動くあいつは、そんなことまで考えやしない。見えたその点だけを盲目的に正しいと判断するはずだ。実際にあの少年を、テスタロッサを傷つけた悪として処罰しようしている。

 

「クソ! シグナム、先に行っていろ! あとから追いつく」

「分かった! ヴィータ」

 

 だから、今私とヴィータは急いで、彼を助けに行っている。主となのはは、テスタロッサの状態に、まともな精神状態ではない。そんな状態では、まともな動きはできないだろう。シャマルとザフィーラは主についてもらい、私たちが止めるために飛び出した。だが、私とヴィータでは飛行速度の違いが出てくる。ヴィータも歴戦の騎士だ。飛行速度は決して遅いわけではない。しかし、ヴィータの本懐は破壊力。拮抗した状態を打開するための爆発力だ。速度ではなく純粋な攻撃能力が高い。私もまた攻撃型だが、ヴィータ程の破壊力はない代わりに、速度はヴィータより速い。それは飛行速度でもそうだ。

 だから、ヴィータを置いていく。今必要なのは、出来るだけ早くあいつを止める事。ならば、枷になってしまうヴィータは置いていくしかない。それに、ヴィータもまたそれを望んでいる。私がする事は、最大速度で飛んで、少年の反応がある地点まで急行するだけだ。

 

「っ!!? 酷すぎる」

 

 しばらく時間が掛かってしまったが、それでもかなり急いだためにそれほどは時間が掛かっていない。それなのに、少年は傷ついていた。弱者を守るための管理局員の手によって。少年の腕は折れ曲がり、至る所に出来ている擦過傷が肌を覆っている。

 幾ら魔法が非殺傷に出来るからと言って、あれほどのダメージはバリアジャケットがあっても許容できるものでは無い。それに、あれは戦いの後ではない。武器もなく、身を守るための道具もないのに、一方的に攻撃され、拷問された痕だ。

 それを見た瞬間、私の中の何かはキレタ。心の底から、燃え上がるような怒りが沸き立つ。管理局法など、今は如何でも良い。レヴァンティン。今から私は、主を守る烈火の将ではなくなる。今からなるのは、唯の一介の騎士。虐げられるものを守りたい只の騎士に。それでもついてくるか?

 

『Jawohl』

 

 ああ、そうか。お前もまた怒っているのだな。お前もまた、騎士の剣。弱者を守るために作られたのだからな。ならば、行くぞ。

 

「ああ、シグナ――」

「黙れ。貴様の口から私の名前を出すな。私の名が穢れる」

「っ? 何言ってやがるシグ――」

 

 抜刀すると同時に、レヴァンティンを唐竹に放つ。弧を描いて白刃はあいつを襲う。しかしそれは、大剣型デバイスに防がれてしまう。身体能力や魔力は向こうが上。しかし、技術はこちらの方が上だ。

 切りかかっていたレヴァンティンを横にし、あいての手首目掛けて滑らせていく。このまま手首を狙う。だが、それはおそらく防がれてしまうだろう。これ自体防ぐのは簡単だ。手首を上に持ち上げればそれだけで防がれる。だから、そのまま私は、持ち上がっていく大剣の刃に、レヴァンティンを手首の動きで縦に一回転させて、今度は刃の下に潜り込ませ捻りながら持ち上げる。それで、目の前の男の大剣は吹き飛ぶ。どれだけ強くとも、人間の手首は力をかけられると、力がうまく伝わらない方向がある。そうなるようにこいつの大剣を操った。もう、目の前の男はがら空きだ。

 

「破ぁああ!!」

 

 砕けろ。そうおもながら、振り上げられていたレヴァンティンを反して、こいつを地面に叩き付けるように力任せに振るう。

 

「がぁ!!」

「っあ!!?」

 

 だが、そこで私の体をバインドが縛っていることに気が付いた。薄汚れた褐色の淀んだ光の縄。構成は滅茶苦茶。しかし、そこに使われた魔力が余りにも多すぎて、ぬけ出す事が出来ない。

 

「痛ってなぁ。いきなり何しやがる。仲間を攻撃してきて」

「仲間? 誰がだ。私は一度もお前を仲間と思った事がない」

 

 その言葉に顔を真っ赤にして、哀れな男は激昂を見せた。

 

「ふざけんな! あれだけ一緒に戦ってきただろうが! それを仲間じゃないだと!?」

「ああ。お前は只、自分がしたいように暴れていただけだろうに。一緒に戦った事など、お前とはない。それと、おまえが仲間を騙るな。仲間という言葉が穢れる」

「テメェ!!」

 

 拳に魔力を集めて振り上げられる。あれだけの魔力、最大限の防御をしても耐えられるかは怪しいが、それでも私は騎士だ。後ろに倒れている人がいる。ならば、守るためにはこの身をいくらでも差し出すだけだ。

 しかし、その時はやってこなかった。

 

「この野郎! まだ動けやがったか!」

 

 うつろな目をして立ち上がっていた少年によって、こいつの拳は振りかぶっている所で止められていたからだ。驚いている私たちをよそに、瞳孔が開きかけている瞳で、何かを見ている。

 

「猛々しい雷の神。刀剣の神。我が憎き相手を屈服するまで打ちのめせ」

 

 彼は、うつろな目のままそんな言葉を吐いていた。

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