魔法少女と穢れを愛する者の学校生活   作:koth3

29 / 58
次にお前は「まだ夏休みだと!」という!
すみません。主人公にはなりましたが、次からが二学期開始です。


第29話

 俺たちは今、夏休みの期間を利用して幻想郷に里帰りしている。というのも、いつまでもフランを、外の世界から隠し通せないからだ。実際、外が近くに有るのにその姿から家から出るわけにはいかず、フランはストレスを感じている。その所為で、家のものに当たる日も増えてきた。これ以上はフランを抑えるのも限界。フランの精神的にも、我が家の金銭的にも。だから、フランをレミリアに返しに紅魔館に来たのだ。

 今フランは美鈴に遊んでもらっている。フラストレーションを完全になくすまで遊んでもらっているのだ。いや、美鈴は本気で逃げているだろうが。接近戦特化の美鈴では、万能型で、さらに幻想郷最大級の破壊力を持っているフランの遊び(・・)相手をするのはつらいだろうが、頑張ってもらうしかない。……後でなにか差し入れを持って行ってやろう。

 

「で、何故フランを俺に預けたんだ?」

「あら、分からないの?」

「分かるわけがないだろう」

 

 部屋の壁も、物品も大体が紅く、目に悪い。そんな紅魔館の部屋の中で、俺は今レミリアと向かい合って座っている。それぞれの手元には紅茶が入れらたカップがあるが、どうせ中には何か入っているのは予想ができる。俺の前で飲んだレミリアの顔が僅かに歪んだのを、俺はきちんと見た。

 

「そうね。少し前の満月を覚えているかしら?」

「ああ。あの時は大変だったからな」

「そう。だけど、それは私達吸血鬼にとってもそうなの。普段の、空気が汚れて赤く見えるのとは違い、正真正銘満月が赤く染まったあの日は、私たちも力が抑えられなくなる程影響を受けたのよ。実際私も我を忘れて暴走したくらいだしね。私たち吸血鬼が二人、一緒に暴れまわったらどれだけの被害が出るか。分かるでしょ」

 

 なるほど。確かに吸血鬼の力は鬼、速度は天狗とまで言われている。突出した力はないが、その分オールマイティに高い力を持っている。そんな妖怪が暴れているのを抑えるのは難しいだろう。その事から考えるに、

 

「つまりあの子を預けたのは」

「そう。必要以上の破壊をしない為よ。以前、貴方があの子と相手した時が一番被害が少なかった実績もあったし」

 

 納得がいった。納得は言ったが、感情が治まらない。せめて理由の一つでも説明すれば良いのに。確かに彼女たちの力から考えて、それだけの対処をする必要はあったのだろうが、隠さないで言ってくれれば禍津日と一緒に協力して何とかできたのに。

 

「ところで、言い辛いのだけど一つだけお願いがあるわ」

「何だ?」

 

 珍しい。目の前にいるレミリアがお願いというなんて。何時もは傲慢に協力しなさいと言うだけなのに。

 何故か先ほどから目がこちらを向かないのだが。しかも、わずかに汗をかき始めている。

 

「さっき私は言ったわね。我を忘れたって」

「ああ。それがどうかしたのか?」

「……言い辛いけど、私も暴走してフランの部屋を破壊しちゃったのよ」

「は?」

「あの部屋は特別でね。部屋を作るのにもかなりの時間はかかるわ。咲夜を使っても、半年くらいは」

「まさか」

 

 言い辛そうにそっぽを向きながら、レミリアは信じたくはなかった一言を告げやがった。

 

「あと半年、あの子を預かってもらえると助かるわ」

 

 俺の不幸、今世強すぎないか?

 

 

 

 妖怪の山。言葉通り妖怪が住まう山。その山中で、何時ものように私は目の前の天敵とお互い笑みを浮かべながら会話を続けている。

 っち、この女狐が。さっさと本性を現せばよいものを。

 

「あら、そう言えばそろそろあの人が来る頃かしら?」

「悪いが、お前には合わせんぞ」

「まあ酷い。縛り付けるような女は嫌われますよ? 禍津日様」

「その首斬り落してくれようか、雛」

 

 鍵山雛。かつては流し雛として人の厄を集めて、流し続けた神。長い間厄を蓄え、身代わりとなり続けたその身は厄神となり、こうして私の下級神の一つとなっている。

 緑色の、私とよりわずかに短い髪。服はゴスロリで、全体が赤い。所々どす黒いのは、此奴の腹黒さからだろう。

 此奴の本来の役目は、厄を集めて私に渡す事。真面目に役目をこなしているのは良いが、この娘もまた私と同じように、幸に惚れこんでしまった。その所為で、何時からか顔を合わせればこうやって喧嘩腰で話をするようになってしまった。これさえなければ、優秀な神の一柱なのだが。

 あたり一帯に厄をまき散らしながら、私と雛はにらみ合いを続ける。この件に関して、私は絶対に引き下がらんぞ。

 

 

 

 

 妖怪の山に禍津日を迎えに来たら、山が真っ黒になっていたでござる。

 

「あ、あはははは」

 

 笑う事しかできやしない。そう思って笑っていたら、近くにいた白郎天狗の椛が、俺の肩を掴み、唾を飛ばしてきた。顔に唾が掛かって、はっきり言って不快だ。

 

「笑い事じゃないんですが! さっさとあの二人を止めてきてください! あなた以外に居ないんですからね。あの厄の塊の中を進めるのは!!」

 

 うん。分かった。分かったから頭をがくがく揺らさないで。そしてこんな近くでそんなに叫ばないでくれ。耳が壊れる。

 視線を椛から妖怪の山へ向けて、ため息をついてしまう。黒いドロドロとした厄が段々広がってきている。おそらく、中で二人の厄神がフィーバーしているのだろう。フィーバーするのは竜宮の使いだけで十分だ。

 

「畜生ォォォォオオオオオオ!!!!!!」

 

 この日、久方ぶりに禍津日に大祓いを頼もうかと思った。 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。