かませ犬が本領発揮? します。
昨日は久方ぶりの学校だったから余裕はなかったが今日は余裕がある。
「幸、朝食ができたぞ」
「わかった、今いく」
俺は日課の素振りを終え、竹刀などを片付けていく。
朝は軽い食事で消化にいいものを食べる。そちらの方が体を動かしやすいからな。
「今日は体育があるから、体育着を持っていけ」
「そうか、今日は体育か。少し押さえて行動しなければならないな」
俺の身体能力は普通の人間よりはるかに高い。それこそ、軍人ですら今の俺にすら追いつかないだろう。
そんな身体能力を一般人に見せるわけにはいかないだろう。
ここは、平和な世界なんだから。
考え事をしている間に俺たちは食事を終え、片づけをして通学の準備を終える。
「さあ、乗ってくれ」
昨日と同じように俺は彼女を背負い、街中を走り抜けていく。
普通の人間には人ひとり背負って走り続けるなんてできないだろうが、すでに俺は半神半人を過ぎているから可能な行為だ。
「すこし、速度を落とせ。さすがにこの速度は不自然だ」
彼女からの忠告を受け、俺は速度を落としていく。
とはいえ、それから十分もしないで学校には到着したが。
放課後、またあの男が絡んできた。
禍津日の言っていたしつこいという言葉の意味がよくわかる。
「おい、ちょっと付き合え」
須佐が、俺に対してそんなことを言ってきた。
「どこへ?」
わかり切ったことだがこれほどの敵意を持っているのだ、おそらくは何か勝負でも仕掛けてくるのだろう。
そう俺は予測を立て尋ねた。
「剣道場だ」
この学校は大学の付属であるためか非常に広大な土地を持っており、いろいろな施設が充実している。
たとえばプールも屋内温水プールがあり、いつでも使えたり。また、剣道場はほかの柔道場と同じ建物の中にある。
「決闘だ」
一応、言っておくが日本国の法律では決闘は禁止されている。昔はそうではないが今では真剣や相手を殺すための技を使うがゆえにどちらかが必ず死んでしまうために禁止されている。
まあ、今回は竹刀を使った剣道で勝負をつけようということなのだろう。これ以上付きまとわれても面倒だな。仕方ない、するとしよう。
「わかった」
俺が言い、立ち上がった瞬間に横から声がかかる。
「ちょっと待ちなさい。アンタが本気を出したら勝てるわけがないじゃない」
あれは、アリサ・バンニグスか。
「去年、アンタは剣道の有段者を倒したでしょうが、幸が不利すぎるでしょう」
確かに彼女の言葉が本当なら素人と思われている俺では勝負にすらならないと思っているのだろう。
「いや、別に問題はない」
「はあ? 問題はないって」
その言葉を背中で聴き流し俺は剣道場へ向かう。
「君も災難だったね」
俺が剣道場で服がないために体育着を着ていると剣道部の主将、つまりは部長がきてそんなことを言ってきた。
「彼はあまりみんなに好かれていないが身体能力がすごすぎてね。部活の助っ人になってくれるからこういった事も止められないんだよ。すまない」
「別にかまわないさ。ひとつ聞きたいが、備品を壊すのはまずいな?」
「え? ああ、もちろん」
俺はそれだけ聞くと準備運動をはじめ、体の各所を温めて動きやすくする。
俺の竹刀は特別な竹刀だからな。ほかの竹刀では少し使いづらいが問題はないだろう。
「ほら、使え」
唐突に声を掛けられ、投げられた竹刀をつかむ。
俺が家においてきた十束の長さ、つまりは俺の拳を十個重ねた長さの特注品だ。
「ありがとう、禍津日」
「別にこれくらい構わんさ」
俺は邪魔になるからと防具をつけずに剣道場の試合場に向かう。
「ふざけているのかお前」
俺の前にいる須佐が防具をつけていない俺を見て嘲り笑いながらいってきた。
「防具も借りられなかったか。哀れだな」
どうやらあいつの中では俺は防具も借りられないやつのようだ。
「まあ、いい。賭けをしないか?」
「賭け?」
「ああ、俺が勝ったらもう二度となのはたちには近づくな」
「そうか、別にいいだろう。俺が勝ったら禍津日には二度と近寄らないでもらおう」
俺たちの間でかけは成立した。
いつの間にか集まっていた周りの人間がそれぞれ勝手に騒ぎ出す。
「痴情のもつれ?」
「逆恨みって噂だぜ?」
「幸君、危ないから防具をつけようよ」
中には俺を心配してくれる子もいるようだが正直いらない心配だ。
「審判始めようぜ」
「だが、彼は防具を」
「問題ない。防具など邪魔なだけだ」
「ほら、そいつも言っているんだ。さっさと始めようぜ」
俺たちの言葉を聞き、審判を務める先ほどの主将はためらいながらも試合開始を告げた。
「はじめ!!」
その言葉とともに俺は構える。独特な構え。剣道にも剣術にもおそらくはない構え、いや剣術には存在するが本来今の状況で使用する構えではない。なぜならそれは
「居合!?」
腰のところで竹刀を固定しているのだから。
それを見た須佐は笑いを深めながらこちらへ上段の構えで突撃してくる。
がら空きの胴をわざわざ見せつけて。
「胴」
俺は一瞬の交差で振り下ろされた上段を竹刀の柄で受け流し、そのまま胴を打ち残心をとる。
「胴あり、一本!!」
主将の声とともに俺の勝利が決まった。
「ちょ、ちょっと待てよ。どう考えてもおかしいだろうが」
何かわめき始めているがすでに勝負は決まったし、この場にいるすべての人間が証人だ。
「さあ、帰ろう。禍津日」
「うむ。そうしよう」
俺たちはそのまま、わめき続ける須佐を置いて家路についた。
これが二日目の出来事だ。
あの程度の相手なら子供の頃の魂魄妖夢のほうが強かったな。そう思いながら俺は禍津日と下校した。