魔法少女と穢れを愛する者の学校生活   作:koth3

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主人公の弱点と言えない弱点が出てきます。


第30話

 通学路を歩く俺の上にある今にも崩れ落ちそうな空は、どんよりと灰色の雲に覆われている。そして進む先から吹き付けて俺が歩くのを邪魔しようとする風。さらには先ほどから何度も見かける黒猫。まるで良くない事がこれから、いや、既に起きているように思わせる。

 

「ふむ。今日は雲はあるが晴れていて清々しい。それに、風が適度に吹いて丁度良い気温だ。先ほど見た白黒の猫は可愛らしかった」

 

 莫迦な! こんな天候だというのに、禍津日はこれが良い天気だと!?

 確かに朝のお天気ニュースでは、快晴で風も程良く、洗濯物は乾くだろうとは言っていたが、あんなものが当たるはずがない。俺が晴れてほしい時は必ず雨の予想を出し、しかし晴れるんだからな(天候を司る神に土下座をしたのは関係ないだろう)。

 だが、何よりも心配なのは禍津日だ。こんな日を清々しいと言うとは思わなかった。それにあの猫が可愛い? 人をなめ腐って、俺の手を引っ掻いたというのに。

 

「主観が混じりすぎだ、幸。空は晴れ渡っているし、猫に関してはお前が強く触りすぎたのが原因だろうに」

 

 そう笑いながら言う禍津日だが、実際俺にとって今日起きていることはそう見えてしまう。

 

「やれやれ。まぁ、お前がそこまで悲観的になっている理由は知っているが」

 

 そうは言うが、禍津日は理由を知っているだけだ。俺の心理を共有できるわけではない。彼女は俺と違い持つものなのだから。

 

「恨めしそうな目で見るな、幸。人は人。他者は他者でしかない。それは分かっているだろう? ならば何故そう他者を羨む?」

 

 っぐ! 禍津日の瞳が痛い! 見ているだけで、俺自身の汚さを見せられているようで、顔をそらしたくなる。分かっているのさ。こんなことをしていても、何も変わらないという事は。だけど、それでも無駄だったとしても、抵抗したくなるのが人の性なんだ。

 

「そうなのか? 神であった私は理解できないのだが」

「そういうものさ。誰だって嫌なことが直面すれば、人を羨み自分の事を顧みない。それが人間の悲しき性質だ」

 

 格好をつけて語った自分のセリフに、空しくなった。カーブミラーに映る俺は余りにも見っともなく、哀れさを全身から放出している。それでも、俺は変われないのだ。そう。俺にとっての悪夢からは逃れられないという現実に。

 

 

 

 

 放課後、俺たちは教室で話し合いをしていた。教壇にはいつものようにバニングスが出て、黒板にチョークで様々な文字を書いている。黒板に書かれているのは箇条書きで五行だけしか書かれていない。先ほどクラスメイト達から出た意見を全て書いているのだ。

 そして今は、前に書かれている物の中から手を挙げて、自分がしたい事を決める投票をしている。だが、もしそれが決まらなかったらどうするんだ。もしかしたらなくなるのではないだろうか?

 クラスで一人だけ頭を抱えながら、俺はそんな事を考えていた。だからというわけではないが、いや、正直になろう。

 俺はこの行事をしたくない。

 唯それだけなのだ。その為にせめてもの抗議として手を絶対に挙げない。挙げるものか!

 だけど、俺一人がそんな事をしていても一切の意味が無く、結局クラスによる投票で行事に使用するものが決まった。

 

「それじゃあ、合唱コンクールで歌うのは『時の旅人』で決定よ」

 

 パチパチと拍手が聞こえる。だが俺の気分は拍手をするような状態じゃない。むしろ、暴れたい気持ちすらある。

 

「じゃあ、明日から練習を始めるわね」

 

 解散して皆が帰った後も、俺は机の上で頭を抱え続けるばかりで、動く事すらでき出来ずにいる。そんな俺を、腕を組みながら机に座った禍津日が見つめている。というよりも、この視線からすると呆れているのだろうが。

 そう。俺は歌が下手だ。歌うという事に抵抗を感じるような人間だ。かつてはリアルジャ○アン扱いをされたこともある。だから、一種のトラウマみたいな状態になってしまって、俺はこの行事を強く拒絶してしまう。

 

「ハァ。そろそろ帰るぞ。何時までもそうしていても何も始まらん」

「ああ」

 

 弱弱しいが何とか声を返し、俺は禍津日の背中を眺めながら家に帰る事にした。

 明日の朝練習がなくなれば良いのと思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

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