魔法少女と穢れを愛する者の学校生活   作:koth3

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お久しぶりです。また投稿を再開します。


第35話

 キャンプ当日、待ち合わせの翠屋前では、高町たち五人組に高町の家族が待っていた。高町の姉と母親は特に俺たちを気にしていないようだが、父親と兄は警戒しているのが細かな動作でわかる。何せ、常に高町と、彼女の母親を庇える位置に立っているのだ。高町は気づいていなようだが。

 そんな居心地の悪い緊迫した状態ではあったが、それに気が付いていないバニングスや高町はハイテンションで禍津日に抱き着いている。どうやら、今日の事をそれほど楽しみにしていたらしい。微笑ましいものを感じるも、だからこそ父親たちの態度が気に障ってしまう。

 確かに俺たちが怪しい存在であるのはわかる。警戒すべきというのも。しかし少しくらいは考えてもらいたいものだ。こちらは月村の家について追及していない。つまりは、そちらの事情に踏み入れるつもりはないという意思表示をしたも同然だ。それなのに、こういった態度を取られ続けるというのは気持ちが良いものではない。

 いら立ちを隠すためにも、俺は家から持ってきた着替えなどが入っているバッグを荷台へ置かせてもらう。これで準備も終えたらしく、車に乗るよう言われた。ただ人数が多すぎるので、高町家の父親の運転する車と、母親が運転する車に分かれることになった。何故か高町たちは青い顔をして、最期まで首を振り、母親のいる車には乗ろうとしなかったが。

 まあ、気にする必要はないかと思い、俺はワゴン車に乗った。こちらは禍津日にフラン。そして高町家の男衆が乗っている。しかしメンバーがメンバーなせいか誰も話一つせず、嫌な空気だけが張りつめていく。可笑しいな。俺たちはキャンプに行くんだよな? 何でこんな緊張感にさらされなきゃいけないんだ。

 そんな中、助手席に座っている恭也は、俺たちをバックミラー越しに見てからぶっきらぼうに溢した。

 

「俺たちは君たちが何者であるかが分からない。それが如何仕様もなく怖い。けど、それでもなのはたちが君たちを信頼している。だから信じよう。その信頼を裏切るなよ」

 

 揺れ動いている声音が、いまだ完全に俺たちを信頼している訳ではないという事を突き付けはしたが、それでも語ってくれた内心の事がてともうれしかった。大概、俺たちはこういう時は迫害されるか、追われるかが関の山。こういった態度をとってくれる人間はいない。だからうれしい。

 先ほどまで固まりかけていた頬の筋肉がほぐれていく。ああ、良かった。素直にそう思えた。

 目の前で急に爆走し始めた、高町たちが乗る車を見るまでは。

 

「……え?」

「っく! やっぱりああ(・・)なってしまったか!!」

 

 え、え、え?

 何が起きている? ……もしかして、俺たちがこちらに乗ったのは、さっきの話をする為ではなく、只単にあの車に乗せないため?

 考え事に気を取られていたせいで、車が発車したのに気づかず、急にグンッと体が引っ張られて座席に押し付けられてしまう。つけかけていたシートベルトは手から離れ、額に当たり悶絶してしまった。

 

「わ、っわ。見て見て幸! 禍津日! これがジェットコースターって奴?」

「違うぞ、フラン。これは唯の暴走車だ」

 

 漫才をしている暇があったのなら、二人を止めてくれ、禍津日にフラン!!

 

 

 

 

 あれから体を何度も車体にぶつけ、痛い思いをして一時間もかかり、ようやくキャンプ場のある山にまでついた。転がり落ちるように俺と高町たちは車から飛び出して、声にならぬうめき声を漏らしている。というのに、なぜかフランと禍津日は平気そうな顔でゆっくりと落ち着いて出てきた。それどころかかなり余裕そうだ。

 二人は標高が少し高いからか涼しい風を、気持ちよさそうに受け、禍津日は風で乱れた長い髪の毛を綺麗に直している。その姿は絵になり、俺を含め高町たちもしばらくの間呆けていた。

 

「どうした。皆阿呆みたいに口を開けて」

 

 楽しそうに、柔らかな花のような笑顔を向けられて、俺たちは意識を取り戻した。

 慌てて立ち上がった俺は、どうやら落ち着く事が出来たようで、あたりの山々の美しい紅葉を楽しむ余裕もできてきた。このまま少し散歩をして、紅葉狩りというのもなかなか。そうは思ったが、キャンプの準備をしなければならない。キャンプを満喫するのなら、準備だけでも済ませてしまわないと。それに、このキャンプは俺にとって、久方ぶりのチャンスなのだ。千載一遇の機会は生かしたい。俺は禍津日と二人きりの時間を過ごすのだ。

 この頃は学校だと他の同級生が、家ではフランが一緒だったから、どうしても誰かが近くにいるという状況が続いていた。ロマンチックな夜とまでは言わないが、それでも二人だけの時間を取りたい。

 どうやって禍津日を誘い、二人だけになるか。計画を練る必要がある。

 そんな事を考えながらも、作業は始まった。俺を含めた男たちはテントを張り、禍津日たち女子はバーベキューの準備を。暫く経ってお互いの仕事が大分片付いてから、誘いたいと思っていた当の本人が話しかけてきた。

 

「なあ、幸」

「どうした、禍津日?」

 

 ハンマーを置いて振り返ったら、そこには禍津日が一人で立っていた。チャンスかもしれない。今周りには誰もいない。この機会を逃せば、もしかしたら今日中には言い出せなくなってしまうかもしれない。それは嫌だ。邪魔をされて、結局いつも通りというのは御免だ。

 いまだ誘い文句は思いつかないが、それでもこの絶好の機会を逃すわけにはいかない。速きこと風の如くと言うんだ。勝負に出ろ、八雲幸。男を見せるんだ!

 

「な「幸、肝試しとはなんだ?」」

 

 ……

 

「暗い夜道を歩いて、人間同士で脅かしあいをするんだよ」

「そうか。ふむ、なかなか面白そうだな。今日の夜に皆で肝試しをするそうだ。バニングス達がそう言っていたぞ」

 

 バニングスの奴! 余計な事をしやがって。これじゃあ禍津日を誘えないじゃないか。

 

「そういえば、さっき何か言おうとしていなかったか、幸」

「何でもない。ないんだよ」

 

 心の中で涙を流しながら、俺はそう言うしかなかった。

 涙が流れるのを我慢しながらも、上げた視線には、焼け始めた日に照らされた、赤く染まった禍津日の顔があった。

 

「パートナーを作って肝試しをするらしいが、一緒になれると良いな」

 

 

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