魔法少女と穢れを愛する者の学校生活   作:koth3

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第46話

 笑う。嗤う。哂っている。

 私たちの前で、フランちゃんは笑っている。なにが楽しいんか、私には分からない。分かりたくない。あの肝試しで一緒に歩いていた時の笑みと違う、残虐という言葉がぴたりと合う形相をして笑っている。それを向けられるのは当然と思う。だって、私たちは裏切ったんやから。それでも、つらい。髪の色も違うけど、その背格好から、思わずヴィータの顔が被る。ヴィータが私を糾弾しているようで、胸をかきむしりたくなっていく。

 

「っつ! フランちゃん!」

「アハハハ!!」

 

 私の返事が聞こえんのかそれとも聞こえて無視したのか、フランちゃんは悪魔のような嘲笑を顔に張り付けて、爪で空を薙いだ。何をしようとしたのか分からんかったけど、悪寒が背中を駆けずり回り、とっさに後ろへ飛んだ。なのはちゃんもフェイトちゃんも後ろへ飛んでいる。それは正解やった。私たちがいたところを、カラフルな魔力弾が殺到して蹂躙しつくしている。

 あれ程の数に撃たれればどんなシールドも、もたんやろう。それにひとつひとつが信じられんほど濃密な魔力の塊で、それがシールドを破って殺到したらどうなるか、イメージしたくはない。それが幾十。いや、今も連続して出し続けていることやから百を優に超える魔力弾があとからあとから波のように押し寄せている。フェイトちゃんはまだ高速機動がウリやからええけど、私やなのはちゃんみたいな固定砲台のタイプじゃ、これだけの密度の弾幕に対処しきれへん。できることは後ろに下がってこの弾幕の間が広がったのを潜り抜けることや。そして隙があれば砲撃ないし、シューターでなんとか押していく。それが私となのはちゃんが取れる戦い方。

 なのはちゃんとは念話で一応確認を取った。フェイトちゃんはその機動性を生かして懐へもぐりこむように頼んだ。管理局員としてみんなずっと戦ってきたんや。言われなくともわかっておるやろうけど、こういった事は念入りにしないと不備を起こしてまう。……そんなのは嫌や。またなのはちゃんが落ちた時のような思いをしたくない。

 それにフランちゃんをはよう止めないと。私はフランちゃんと戦いたくない。たぶん、これが一番なんやろうな。私含めて、アースラクルーも、リンディ艦長も、そして何より二人ともこんなもの望んであらへん。唯一望んでいるのは、須佐とあのクレンちゅう、訳の分からんやつと上層部だけや。

 

「迷っているんだ? 莫迦だね。迷うくらいならしなければ良かったのに」

 

 私の顔を見て、フランちゃんが話しかけてきた。迷っている。そうや、フランちゃんが言うとおり私たちは迷っている。戦っていいのか。だって、私たちに正義はない。どっからどう見ても、私たちの行いが悪い。正当化できるか所なんてひとつもない。

 

「まあ、無理だよね。だって、貴方達は禍津日と友達でもなんでもないんだから」

「なんやて?」

 

 それは違う。確かにこうなってしもうたけど、私たちは禍津日ちゃんを友達と思っていた!

 

「嘘ばかり。まあ、人間なんてそんなもんだものね」

 

 弾幕がさらに苛烈になってきた。私たちもシューターを撃っていて、フランちゃんに当てているというのに、彼女は魔力ダメージを感じていないとでもいうように、顔色ひとつ変えずに攻撃を続けてきている。

 

「嘘やない!」

「嘘じゃない。だって、はたから見る限り貴方達は自分の立場の為に禍津日を売ったんでしょう?」

 

 

 

 私の怒りの原因は全てそこにある。

 はっきり言っちゃえば、幸が誰と喧嘩しようが私は別に気にしない。狂気に染まっているとき以外、私は基本的に争い事は嫌いだ。何でも壊せてしまうから、壊したくない。だから、なにかを壊してしまうかもしれない戦いは、嫌いだ。けど今回は違う。むしろ今私は全て壊したい。こんな脆くて見苦しい絆に似た足かせなんて、最初からなかったほうが良かった。

 禍津日を売った。禍津日ならば簡単に抵抗できたんだろうけど、禍津日は普段から他者に対して卑屈だから。唯一そうじゃないのは幸だけ。嫌悪感を持っている相手には別だろうけど、基本的に禍津日は嫌われることを恐れている。親から拒絶され、周りの兄妹である神々にまで拒絶された経験が影を作っている。だから、今回も抵抗しなかった。三人に拒絶されないために。

 周りから拒絶されるのは辛い。言葉で言い表せないほどに。お姉さまとて私を地下へ封印する必要があった。あの時はただただ寂しくて心が張り裂けそうになった。何度も泣き叫んで扉をたたいた。爪が剥がれ、血で床が染まるほど石を掻き毟った。それでも私はお姉さまを求めた。こいつら(・・・・)はそれを利用した。だから許せない。

 

「さて、そろそろかな。魔力も大分回るようになってきたし、肩慣らしはこれでいいか」

 

 私の言葉に、三人は顔を歪めた。多分だけど、今の私が本気だと勘違いしていたんだろう。そんな訳が無い。しばらく使っていなかったせいで魔力の循環が淀んでいた。それを洗い流すために魔力を使っていたに過ぎない。

 さあ、全力を出そう。今ここに居るのはフランではない。フランドール・スカーレット。高貴なる血を受け継ぐ悪魔。すべての人間が恐怖し、畏れ、逃げ惑うモンスター。

 友を攫い、友情を侮辱し者に、血の(むく)いを与えよう。体の奥底から魔力が解き放たれる。あふれ出た魔力が紅い霧へと変わる。ああ、今夜はこんなにも月が綺麗。私の魔力で紅く染められていく。こんなに月が紅いから、楽しい夜になりそうね。

 

「さあ、避けれるものなら避けてみなさい! 私の495年間の全て! お前たちが捨てたものはこれ以上に重いぞ!! 『QED 495年の波紋』」 




短いですが丁度区切りが良いのがここなので、今回はここまでです。次回をお楽しみください。
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