俺たちが学校へ登校すると須佐が話しかけてきた。
「おい、卑怯者」
いきなりこんなことを言われたのは初めてなので思考が停止してしまった。
「なぜ俺が卑怯者なんだ?」
「そんなこと決まっているだろう。昨日考えてみたがどう考えてもおかしい。何で防具もつけないような奴に俺が負けるんだ」
俺が勝った理由なんて至極単純に実力差の違いなんだが。それに油断して隙をさらし続けていた人間が言うべき言葉じゃないのだが。
「じゃまだ、どけ」
俺はくだらないと思いながらも適当にあしらおうとした瞬間に禍津日がバッグの中に教科書などをわざわざ詰め直して遠心力をつけ殴り飛ばした。
「女々しい奴め。お前が負けたのはお前の実力がなかっただけだろう。それをよりにもよって幸が卑怯なことをして勝っただと? 自分の弱さを見つめず他者に責任を押し付けようとするその性根。もう一度その根性を叩き直して来い」
それだけ言い残し、禍津日はさらにバッグで追い打ちをかけ吹き飛ばす。
その様子を見た一部の、というよりほとんどの男子学生が拍手をしている。
「どれだけ嫌われているんだ、あいつ?」
「学校中の男子から嫌われているわよ」
俺の後ろからクラスに入ったバニングスが説明する。
「おはよう。話の続きだけどあいつは私たちを自分の嫁とか言ったり、私たちに近づくだけで激怒し始めるのよ。それが原因でほとんどの生徒にはアイツきらわれてんのよ」
「そうなのか。ありがとうバニングス」
俺は現在のアイツの交友関係の一部を確認し、禍津日を止める。
「そろそろ授業の時間だ。そいつにかまっているより次の時間の準備を進めたほうがいいのではないか?」
「そうだな、そうしよう」
そうして授業が進み
「え~、じゃあ百メートル走は足の速いやつでいいわね?」
バニングスは委員長であるため、今は教壇で誰をどの競技に参加させるか判断して、それでいいかクラスに聞いている。
「じゃ、次の競技は二人三脚ね。やりたい人は?」
「俺がやろう。もう片方は六人の中ならだれでもいいぞ」
須佐が言うがその六人は一切反応しない。というか、中には顔色が悪い奴もいるぞ。
「私が出よう。ただし相手は幸だけならな」
そんななか禍津日が俺を指名して二人三脚に立候補した。
「わかったわ。じゃあ、その二人ね」
「ちょっと待て! そんなやつより俺とやった方が」
「何もできんわ。私はお前と合わせるつもりなど一切ないし幸以外の男子に肌をふれさせるつもりもない」
静かに決定的なまでの否定。
それを受けた須佐は口を開閉させながらも何も言うことができなくなっている。
「じゃ、その二人ね。禍津日と幸をペアにするけどいいわね?」
「「賛成」」
俺たち以外の人がこういった事を言えば周りが騒ぐだろう。特に今は男子と女子の差が気になる時期、つまりは思春期なのだから。だが、俺たちに関してはもうこういった感じと判断されているためかからかわれることもない。
「じゃ、次のパン食い競争は須佐でいいわね。これで全員が競技に参加したわね」
そう締めくくり、バニングスは教壇から自身の席へと向かう。
そんななかひとり納得していない男がまた、わめきだした。
「待った! なんで俺がパン食い競争なんてしなきゃ」
「だって、ほかの競技はもうメンバーが決まっているんですもの」
正論に何も言えなくなる。
と、思ったら、
「じゃあ、そいつを二人三脚から外せばいい。そして俺が二人三脚に出ればいい」
「はぁ? あんた何言っているの? もう決まっていることをアンタのくだらないわがままで覆せるわけがないじゃい」
まさかそんなことをいえるとは思わなかった。
「あいつより俺の方が早いんだ。なら、俺が出たほうが勝てるだろう?」
「頭が痛くなってきた。いい、二人三脚は速さだけで勝てる競技じゃないのよ? パートナーと息を合わせなきゃいけないのにあんたみたいな他人を考えないやつが出たって役立たずなだけよ!」
とうとう言葉をつまらせ何も言い返せなくなった須佐はこちらを睨みつけ席に座った。
やれやれ、また面倒に巻き込まれそうだ。俺はそう思いながらため息をつく。
須佐に恨まれるの会でした。
次回ではまたまた懲りない彼と幸の戦いです。