体をわずかな振動が襲う。クッション性もあまり良くない椅子のせいで、腰が痛くなってしまう。それに先ほどから連続的に、規則的な轟音がうるさいせいで、耳が痛くなる。まあ、昔よりかは大分音がしなくなったし、私自身この音に慣れていることもあって、それ以上にはならないが。慣れていないと一時的に、難聴になりそうなほどの音だからな。
ふむ、それにしても先ほどから周りが私に視線を向けてくる。なにか、可笑しな点があるのだろうか? それとも久方ぶりに着たこの服で、なにか間違いがあったか? そんなはずはないのだが。これでも服には気を使っている。女の子が家にいるならば、それくらいしなければならない。じゃないと、嫌われるそうだからね。基地の雑誌でそう書かれたものを読んだことがある。それ以来、服装には人一倍気を使っている。
まあ、周りを気にしても仕方がないだろう。海鳴の街並みを見てみるが、どこも変わった様子はない。あくまでも、目で見える様子はだが。
「観測はどうかね?」
「はっ! 今のところ、試作ステルス観測機は正常に作動しています! どうやら、彼らアンノウンの技術にも無効化されないようです」
「では、結果は?」
「今のところ、戦闘行為が上空で行われているようです」
喜ばしい結果と、悪い結果が重なったか。
「それで、戦闘行為をしているのは?」
うむ? 画像を見て分析していた技術者が、唐突に言いづらそうに口をつぐんだが。いったいどうした?
「そ、それがアンノウンとの戦闘を行っているのは、どうやらその息子さんのようで……」
ああ、なるほど。あの子は、義娘のことが大好き、いや愛しているからね。こうなったのは仕方がないのかもしれない。あの人物が言った通りになったしまったようだしね。
やれやれ。それにしても、私が思った以上に事態は進行していたようだ。これも、官僚たちの事なかれ主義の弊害かな? 彼らの腰は重いったらありはしない。警察権を無理やり凍結させて、こちらを動かすのに、いったいどれだけのコネを使ったことか。まあ、彼ら警察に、治安維持が出来るとは思えないしね。
だが、まあなんとかなった。私の権力に、いくらか知り合いの力も借りたが。現状海鳴市は、非常事態宣言が発令したのと同じような状態だ。早くすべてを終わらせるとしよう。
まあ、それには目的地につかなければならないが。今は部隊の人間が移動しているので、そうそうなにかできるわけではない。しかし着いたら、すぐに終わらせよう。というよりも、そうでも考えていないと私は私を抑えきれない。
基本的に私は現場で動くタイプじゃない。だけど、政治が出来る人間も必要だと今回は無理やり上を納得させた。そうまでして、私がこの部隊編成にいるのは、一種の親心にすぎない。人様の娘に手を出したんだ。誰かの手で終わらせるなんてさせるものか。必ずこの手で奴らに後悔させなければ気が済まない。
さて、これから始めるか。人間に似た、なにかの排除を。
はあ、それにしても面倒だったわね。確かに私が出張るのが一番早いのだけれども、さすがに面倒なのよ。そこんところ、分かっている? いくら神隠しの主犯だからといって、こうも人が多いと気苦労するのよ。
そう、分かっているのならいいわ。じゃあ、今度からは面倒をかけないでちょうだい。あら、苦笑しているくらいならそうしてもらいたいわ。貴方の力ならば、それくらい簡単でしょう。でも、もだけど、も関係ないわ。力のわりに臆病すぎるの。貴方は。太陽の畑の主まで行かなくてもいいけど、貴方はあれくらい目指す方が丁度いいわ。まったく。
まあ、いつもいつも、貴方の使いが頑張るからいいのだけれど。それでもやっぱり私としては安心したいのよ。貴方が消えてしまったら、この世界は終わるも同然なのよ? 今現在の父君へ火をつけて、動かして、そして関係省庁に脅しをかけて。それでようやく、余計なものを追い出す準備が整ったの。まあ、優秀な人間で助かったわ。私の裏工作があまり必要ないのだから。
え? 幻想郷はすべてを受け入れるのじゃないか? バカね、すべてを受け入れるのは事実でも、敵にしかならない存在を態々幻想郷に入れるはずがないでしょう。
くすくす。ええ、そうよ。私は悪い妖怪ですもの。人をだまくらかす程度、いくらでもするわ。
そう。言ってしまえば私はワイルドカード。使えば必ず逆転できるけど、それには様々な条件がある。毎回助けに行くわけにもいかないの。この頃は、冬に向けていろいろな準備をしなければならないし。だから、私を使わないようにしてもらう必要がある。自覚しなさい。八十禍津日。貴方は、少なくとも、この船にいるすべての生物よりもはるかに価値がある存在だと。自分を卑下するのは勝手だけど、価値を見誤るのはいけないことよ?
――なにせ、貴方のためだけに動く王子様もいるくらいだし。
ふふふ。そんなに赤くならなくてもいいでしょうに。誰もが知っていることよ、貴方達の関係は。まあ、いいわ。王子様はそろそろくるそうよ? 貴方も準備した方がいいわ。
幸以外にも、奮闘している人はいるということですね。