「!……痛ったぁ……って、ここは…?」
意識の覚醒と同時にやってきた頭痛に顔を顰めながら、自分の寝ていた場所が、住み慣れた我が家ではない事に気がついた。
「あれ…?ここって…」
そして、ここが僕の恋人の家である事に気がついた。
「しかも……楽郎の部屋じゃ…?」
昨晩の記憶が曖昧だけど、衣服が乱れている等はないので、特にそういう事はしてないんだろうけど…とても頭が痛い…。
「…にしても痛ったぁぁ…。えっと…確か昨日は、ちょっと嫌な事があって…楽郎の家にお酒持って行って……。」
そのまま酔い潰れた挙句に二日酔い…か。何をやってるんだ僕は…。
ガチャ
「おっ、京極起きてたか。おはようさん」
「おはよう楽郎。ごめんね、部屋まで運んでもらっちゃって……ってその頭どうしたの!?」
「え?あー……そうだ、ちょっと転けちまってな」
「転けたって…でもその包帯は…!」
僕は、様子を見にきたらしい楽郎の頭に巻かれた真新しい包帯を見て、僕は二日酔いにも関わらず、彼に詰め寄った。
「お、おい…そんな状態で派手に動くと…」
「うぷっ…気持ち悪い…」
「言わんこっちゃない…。ほら、ベッドに戻って安静にしてな」
「で、でも…」
「京極、俺は大丈夫だ。大丈夫だから…な?」
そう言って、楽郎は僕の身体を抱きしめた。
「ッ……!!」
抱きしめられた刹那、僕は昨日の出来事を思い出した。
そうだ。僕は…楽郎の事を……楽郎の事を……。
───ちょっ…京極!?
───いでっ…!!
───京極…!一旦落ち着け…!
僕は…僕は…!!ウッ…
「気持ち悪い…」
「オイマジか!ちょっと待て袋使え!袋!」
「ウォエッ…!」
「大丈夫かよ京極…ほら、いっぺんそん中に全部吐いちまえよ。その方が楽だぞ…」
楽郎の頭の怪我を見て、自分の犯した過ちを思い出した瞬間、僕はとてつもない吐き気に襲われた。だけど僕が袋に吐いてる間、楽郎は心配しながら背中をさすってくれた。昨夜あんな事をしたのに…!!なんで君はそんな普段通りなんだよ…!?
「ね、ねえ…楽郎…」
「どうした?って今にも死にそうな顔じゃねぇか…。とりあえず、洗面所行って口ん中ゆすいでこいよ。話ならいくらでも聞いてやるからさ」
「そう…させてもらうよ」
「ああ。」
──もしかしてあいつ…思い出したのか…?
──だがアイツが思い出したしても…俺は…
なんて事をしたんだ…僕は…!僕は…僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は僕は!!!!!!!……僕の大切な人を…傷つけてしまった…なのになんであんなに優しく接してくれるんだよ…!僕は…楽郎に嫌われたくない…。嫌われたくないけど…!でも……!!
「……ただいま」
「おう、おかえり」
「ごめんね、楽郎…朝からこんなに迷惑かけて」
「いや、気にするなって。でも、今度からは酒の量は減らした方が良いな」
「そうだね……」
彼はそう言いながら笑った。…って違うだろ!僕が言いたいのはそういうことじゃないだろ!
「なあ、京極」
「な、なんだい?」
「ッ…!?」
彼は僕をもう一度抱きしめてこう言った。
「さっきも言ったけどな、俺は大丈夫だから。京極、お前は何もしてない。昨日はただ、酒を飲んで酔い潰れただけだ…。」
「らく…ろー…?」
なんでだよ…。なんでそんな事言うんだよ…!僕を罵倒してくれよ!突き放してくれよ!こんな女なんていらないってさあ!酔った勢いとはいえ、あんな事をしたのに…
「らくろう…僕は…僕は君に…」
言うんだ…。さぁ、言うんだ龍宮院京極
「昨日…!僕は君に…」
「なあ京極、仮に昨日、お前が俺をビンで殴ったとしても、俺は京極の事を責めるつもりは一切無いし、お前のことを捨てたりなんて絶対にしない。」
「楽郎…?」
僕の言葉に重ねるように楽郎は僕を責めないと言った。
だけど…謝れなかった…。
「今、仮に俺を殴ったとしてもって言ったけど、この怪我はあくまで俺が転けたせいだからな?」
「え?いやでも…それは!」
「そうなんだよ。とにかく俺は…昨日の事なんてな、京極が何か嫌な事があったから、俺の家に飲みに来て、そのまんま酔い潰れたって事しか覚えてないし、仮にそうだとしても、こんな事で自分の恋人を捨てれるかっつの」
でも…こんな私で良いのだろうか…?
昨日、私が犯した過ちを見て見ぬふりした楽郎の優しさに甘えても良いのだろうか…
「楽郎……楽郎……!!」
「ああほら、泣くなって…ほら」
「うん……。」
「京極、俺は京極の笑顔が好きなんだよ。」
「だからさ、笑ってくれよ。なぁ…?」
「うん……。」
楽郎にそう言われ、私は……
楽郎への罪悪感から歪んだ笑みを無理矢理浮かべた。
もう今後一生普通に笑う事は出来ないかもしれない。
でもそれは私の贖罪なんだ。
でもこのあとわたしはいっしょうこうかいすることになるんだ。
ね?らくろー
ワタシハモウ…ジブンヲユルセナイヤ……。