「星天様、棋礼戦に出ていただき本当にありがとうございました。私では回恢にとても勝ち目はなく、この店を売ることになっていたでしょう。なんとお礼を申し上げたらいいか」
「こちらこそ美味しい肉まんをありがとう。他にも六財商の会と棋礼戦している店あったら教えてね」
福々堂の主人に山ほど肉まんのお土産をもらって店を出る。美味しかったから鳴良にもあげよう。
回恢と戦って怕蓮と話して結構時間が経ってしまったので今日は帰ろうということで宿に戻る。宿に戻ると鳴良は普通の顔色で出迎えてくれた。どうやら元気になったらしい。
「あ、おかえり、星天」
「ただいま、鳴良。はい、お土産」
「ありがとう。って、なんか多くない?藩へのお土産なら買うの早すぎるよね」
ガサガサと鳴良の前に10個くらいの紙袋を置く。皆さんでお食べ下さいって言われて福々堂の主人に山ほど肉まん持たせてもらったからね。鳴良もたくさん食べるといいよ。
「棋礼戦で勝ったらお礼にってたくさんもらった」
「え、なんで棋礼戦してるの。棋礼戦ってそんな頻繁に起こるものじゃないよね。というか、観光に行ったんじゃなかったの」
鳴良がギョッとした顔でそういう。ご飯食べて囲碁打ちに行くつもりだったから観光に行ったわけではないかな。真剣勝負ができて美味しい肉まんも食べられたから良い一日だったよ。
取り敢えず鳴良にも回恢とのことを共有しておく。カクカクしかじか、六財商の会がみかじめ料払わない店に対して棋礼戦吹っかけているみたいだよ。あと、怕蓮が棋礼戦してくれなくて悲しかったよ、と。
「という感じだった」
「えー、それは酷いな。普通の店に棋礼戦受けてくれる伝なんかないだろうし完全に見せしめじゃん。白棋士の地位をそんなことに使う奴らがいるんだ」
「うん、だから明日からは積極的に六財商の会に戦いを挑んでいこうね」
「なんで???」
鳴良が鳩が豆鉄砲を食ったような顔で問いかけてくる。実際に見たことはないけどたぶんそんな顔。突拍子もないこと言われて驚いているみたいだ。
「あ、無茶を吹っかけられている店が可哀想だから?義勇心的な何かで助けたいってこと?」
「ううん。序列3位の財全と戦いたいから。六財商の会に喧嘩売ると財全様が出てくるぞって回恢が言っていたから是非とも出てきてもらおうと思って」
「だよね。星天はそうだよね。え、周軒様的には大丈夫なのですか!?」
鳴良が私の隣にいた周軒に向かって話しかける。周軒は大丈夫だよ。さっきいいって言ってたから。
「星天が勝つなら問題ないな」
「負けたら大問題ですよね。強い白棋士を敵に回すってことはこの間の棋礼戦みたいに、理不尽な戦いを強いられた時の相手方にそいつが来るかもしれないってことですよね。序列3位の白棋士が相手方につくとかヤバすぎでしょ。え、本当にいいんですか」
鳴良が必死に周軒に言い募る。ああ、なるほど。強い白棋士を敵に回すと残句戦みたいな藩の未来がかかった棋礼戦の相手に財全が出てくるかもしれないよってことか。すごく良いことじゃん。是非ともそうして欲しい。
「星天の実力は知っているだろ、鳴良。君はどう思う」
「そりゃ星天は鬼か妖か仙人か、とにかく人間じゃないだろってくらい強いですけど相手は序列3位の白棋士ですよね。この国の頂点に居続けた人とどっちが強いかはわからないです」
「私は星天の方が強いと思ってる。これまで何度も彼女の奇跡を見てきた。私は囲碁はそこまで強くはないが彼女の碁に白虎神が宿るのを感じた。だから信じてるんだ。星天はこの国の1番の棋士になるのだと」
周軒がはっきりとした口調でそういう。1番の棋士になりたいわけではないけど1番の棋士は倒したいね。いつか序列上位の棋士と全員戦いたいな。
「わかりました。周軒様がそうおっしゃるなら俺にいうことはないです」
「じゃあ明日から六財商の会と戦っていこうね」
「うん、星天がんばってね」
「鳴良も行くんだよ」
え、と呟いて鳴良が固まる。何を言ってる、鳴良も行くからこの話をしたんだよ。
「え、なんで」
「六財商の会に喧嘩売るなら1人より2人の方がいいと思うんだ。それに禍旋亭がないからここだと真剣勝負できるところも限られているし、ちょうどいいよね」
本戦始まるまでやること見つかってよかったよ。
『明日は西都の観光に行こうと思ってたのに』といって鳴良はシクシク泣いている。六財商の会が何処にいるかわからないから都も見て回るよ。観光もできて囲碁も打てるから大丈夫。よかったね、鳴良。