【書籍化】『星天』   作:空兎81

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第30局 休息

 

えっと、整地してないけど黒の方がざっと10目くらいは多いね。ってことは鳴良の勝ちか。

 

私が勝って、鳴良も勝ったからこれで2勝。来生が負けても私達の勝ちだね。

 

「星天、勝ったよ」

 

「うん。私も勝ったよ。私達の勝利だね」

 

その時後ろで『負けました』という柑斗の声が聞こえた。あ、来生も勝ったんだ。これで3勝だね。

 

「嘘だろ。ここから負けるのかよ」

 

「僕の棋譜は研究したのだろ?耐える碁が得意だとはわからなかったのか?」

 

「耐久力が高いと思ったから途中で攻めるのやめて利益確定させたんだよ。まさか攻めなかったのを理由にプッツンして殴り返してくるとは思わねえよ」

 

柑斗が目頭を押さえてため息を吐く。まあ確かに来生のキレるポイントは全然わからなかったね。中途半端に殴ると逆襲されるみたいだから来生と戦う時はちゃんと息の根を止めておこう。

 

「わりぃ。負けちまったよ。牛正は負けたんだよな。庄作は?」

 

「俺も負けました」

 

「嘘だろ。全敗なのかよ。白棋士じゃない奴が2人もいるのにか」

 

柑斗が口を開け、唖然とした顔で2人を見渡している。白棋士じゃないけど白棋士になるつもりはあるから勝つつもりではあったよ。真剣勝負はいつだって負けられない。

 

「鳴良、君も勝ったのか?」

 

「え、あ、はい。一応勝ちました」

 

「凄いじゃないか。正直君は数合わせで僕と星天で勝てばいいと思ったから驚いたよ」

 

来生が笑顔で酷いことを言いながら鳴良に話しかけている。鳴良は強いよ。ちょっと勝負弱かったところも良くなっているしどんどん強くなっている。また鳴良と真剣に戦える時が楽しみだ。

 

「ひえぇ、驚きました。棋礼戦の結果は3-0で来生側の勝利ですね。賭けた物の清算をお願いします」

 

「わかってるよ。ほら、まずは白神石だ」

 

立会人の白棋士に言われて柑斗が十二個の白神石を机の上に置く。

 

「じゃあ1人4つずつに分けようか」

 

「出した種石の分だけ得るべきなのだから星天の取り分は9つにすべきだろう」

 

「9つだと鳴良との分け方が難しいし全員4つずつでいいよ」

 

「そうか。ではその言葉に甘えよう」

 

「え、俺ももらえるの」

 

「鳴良も戦ったんだから当然だよ」

 

そんなわけでもらった白神石は4つずつになる。これで私の持つ白神石は13個なんだけど、これって白棋士になった瞬間序列が上がるってことなのかな?

 

「あとは他の六財商の会がやっている碁会所の場所だったな。あー、誰か街の地図持ってこい」

 

柑斗は地図を受け取ると広げていくつかの場所に印をつけ始めた、そして、それが終わるとこちらに差し出す。

 

「ほら、西都にある六財商の会に参加している碁会所は全部印をつけた。これでいいだろ」

 

「うん、ありがとう」

 

地図を受け取り抱え込む。これで西都にいる間は行くところに困らないね。どこから行こうか考えるだけでわくわくする。

 

「他の六財商の会の場所が知りたいってことはお前たちは今みたいな感じで他の所にも勝負を吹っ掛けるつもりなんだろ?」

 

「そうだよ」

 

「今日のことは六財商の会に報告する。お前ら3人の棋譜も渡す。次はもう勝てねえぞ」

 

ぶっきらぼうに柑斗がいう。言い方は投げやりだけど私達の棋譜を六財商の会に流すことを教えてくれる柑斗は親切だ。六財商の会はあんまりいい組織じゃなさそうだけど柑斗は悪い人じゃないっぽい気がする。それに棋譜を六財商の会に共有してくれるのもいいことだね。

 

「じゃあ次は私達も来生みたいに対策されているってこと?」

 

「そういうことになるな」

 

「それは凄く楽しみだね」

 

「は?」

 

柑斗が惚けた顔をしてるが、つまり我々の苦手な布石や弱点を探して出してくれるってことだよね?自分の弱いところって自分じゃわからない物だから教えてくれるなんて有難いことだ。是非とも研究されたい。

 

「自分の碁を研究してきた相手と戦うのは初めてだからどんな碁になるかとても楽しみだよ」

 

そう言って笑いかけると何故か引き攣った顔で『こっちも化け物かよ』と柑斗が呟いた。何かおかしいこと言ったかな。色々な碁を打てるのは楽しいことだと思うけど。

 

勝負は終わったから来生と鳴良と周軒と外に出る。碁会所から少し歩いた所で来生が話しかけてくる。

 

「星天はこれからも六財商の会と戦うつもりなのか?」

 

「うん。財全と戦ってみたいからね。六財商の会と勝負していたらそのうち出てくるかなーって」

 

「そんな理由で勝負吹っかけられている六財商の会は堪らないだろうな。僕はやることがあるから悪いがこれ以上は共に戦えない。団体戦を組むのはここまでだ」

 

次の六財商の会の戦いに来生は参加しないらしい。それは残念だ。団体戦するの楽しかったのに。

 

「実は来柯が囲碁をできるようになったんだ。今回、棋礼戦で勝ったこと盛家の主人に是非とも囲碁をすべきだと言われたらしくて、白棋士も目指すといっていたんだ」

 

「それはよかったね。お姉さんに囲碁して欲しいって言ってたもんね」

 

「ああ。だからこれからは時間の許す限り来柯と戦おうと思ってる。来柯の強さを証明するために戦っていたけど、来柯が自分で戦えるなら僕の今の目標は来柯を倒すことだ」

 

清々しい笑顔で来生がいう。そっか、姉さんが囲碁できるようになったんだ。良かったね、来生。私も囲碁の強い人が増えて嬉しいよ。

 

『次は相手側として対局しよう』といって来生は去っていった。新しい目的を持った来生とは前とはまた違った強さを持つことだろう。次に戦えるのが私も楽しみだ。

 

頭を使ったらなんだかお腹も空いた。周軒、鳴良ご飯食べにいこー。

 

「お腹空いたから肉まん食べに行こう」

 

「星天は肉まんが好きなのだな」

 

「あったかい食べ物が好きなの」

 

「すっかり暑くなってきたのに熱い物食べるの嫌にならない?冷麺とかの方が良くない?」

 

鳴良がちょっと驚いた顔でそういう。暑くないわけではないけどご飯は温かい方がいいよ。冷えたご飯には飽き飽きなのだ。

 

「やだ。ご飯はあったかいのじゃないとダメ」

 

「温冷についてはどちらでも構わないが、食事に偏りがあるのはあまり良くないのではないか?ただでさえ13歳には見えないのだし食事には気をつけた方がいいと思うぞ」

 

周軒も食事について嗜めてくる。むむむ、確かに大きくなりたいという気持ちはたくさんあるので栄養バランスに気を使うべきというのには従うべきだ。私はご飯があったかければそれでいいよ。

 

「え、星天13歳なの。もっと幼いと思ってた」

 

「13だよ。鳴良は?」

 

「17だよ。周軒様は俺の4つ上でしたよね?」

 

「ああ、21だな」

 

知らなかった2人の年齢を知る。へー、鳴良は17歳で周軒は21歳なんだ。なんとなく周軒と鳴良なら周軒の方が年上だと思ったけどやっぱりそんなんだ。年齢についてあんまり意識してなかったけど、知ると2人ってやっぱりお兄さんなんだな、と思う。私にもお兄ちゃんいたけど元気にしてるかな。

 

ご飯は周軒に連れて行かれた飯店で各自好きな物注文して食べることにした。鳴良は冷麺食べてた。周軒は色んな物を頼んでくれて私とわけわけした。その中に肉まんがあったのにはなんかちょっと嬉しかった。

 

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