【書籍化】『星天』   作:空兎81

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第72話 作戦会議

 

赤。赤。真っ赤っか。視界に入るのは見渡す限り赤い建物だ。

 

白虎国の建物でも赤い建造物は多かったけど、その比ではない。道の塗装も赤で柱の一本一本も赤い。装飾品も多く鮮やかだ。

 

あとはなんかものっ凄く活気付いている。人々の声に張りがあって活発だ。なんとなく、白虎国では黒獣の脅威に怯えてわいわいムードは抑え気味なのに朱雀国は祭りのような賑やかしさだ。そういうお国柄なのかな?人も街もなんとも華やかだ。

 

首都、東都の一角に白虎国の一団は案内された。下手したら小さな町並みの広さがあり、好きに過ごして欲しいと言われる。私や周軒や鳴良と奎宿藩の皆でひと屋敷与えられた。人を出迎えるのに手慣れている感じがする。

 

荷物の運び入れも済んで部屋に用意されていたお茶を飲んでひと息ついていると凛刹の使いがやってきたので腰を上げる。これから作戦会議をするらしい。

 

案内された建物に行き部屋に入るとすでに怕蓮と快燕がいて、真ん中くらいの席に座るとついで万雹がやってきた。どうやら序列順に呼ばれたらしい。

 

「揃ったようだな。これより四神戦について作戦会議を執り行う」

 

最後に凛刹が席に着き会議が始まる。円卓の机の一番奥に凛刹が陣取りその右隣に万雹がいる。凛刹の左隣は何故か空いていて、鳴良は一番遠く、周軒は私の後ろに立っていた。

 

「周知の事実であるが、この百年間全て朱雀国が優勝し天元盤を手にしている。これを打破するのが我々の悲願である」

 

いきなり知らない話が出てきた。四神戦は百年間ずっと朱雀国が勝ち続けているらしい。え、すごい。桁外れの戦績だ。朱雀国はとんでもなく強いらしい。

 

「二十年ほど前、世人(せじん)を輩出し続けたのにも限らず白虎国は優勝国とならなかった。圧倒的強さを持つ者が一人いたとしてもそれだけでは駄目なのだ。我々一人一人が勝ち星を積み上げなければ優勝することはできない」

 

「世人?」

 

聞き慣れない言葉が出てきた。首を傾げると凛刹の視線がこちらを向いた。

 

「四神戦で最後まで勝ち抜いた、世界で最も強い棋士に贈られる称号のことだ。獲得した者の出身国で呼び方が変わる。我が国だと白閃鋭世人(はくせんえいせじん)と呼ばれることになる」

 

親切にも凛刹が教えてくれる。なるほど、世界で一番強い棋士の呼び名ということか。前の世界でいう名人とか棋聖みたいな感じかな?

 

白閃鋭世人、うん、いいね。かっこいい。でも四神戦で一番強かった人がいる国が優勝ではないとはどういうことなのだろう?

 

「じゃあどうやったら優勝できるの?」

 

そういうと凛刹は少し目を見開き『そうか、星天と鳴良は初めての四神戦だったか。ならば四神戦の規定から話さなければならないな』という。

 

凛刹曰く、四神戦は二十人の棋士による勝ち抜き戦だそうだ。二十人の名前が書かれた札が箱に収められていて、それを引くことによって対戦者が決まる。

 

勝った方の札は箱の中に戻され、負けた方の札は弾かれる。そうやって最後の一枚になるまで試合を行い、残った最後の一人が世界最高峰の棋士、世人となる。

 

優勝国については、最も勝ち数が多かった国となる。十九戦で一番勝ち星をあげた国が優勝となるので、世人と優勝国が一致するとは限らないそうだ。

 

「大切なのは我々全員が力を出し尽くし勝利すること。一戦、一勝が優勝に結びつく。今年こそ我が国の悲願、白虎国の優勝を成し遂げるのだ」

 

力強く凛刹がいう。四神戦の仕組みについてはわかった。負けた者が脱落し最後のひとりになるまで戦い続け、自国の勝利数によって優勝国が決まる。

 

凛刹は全員が力を出し尽くさなければならないと言ったのは、優勝する為には勝ち星が必要だからだ。五人全員が勝利を積み重ねた方が当然その確率は高くなる。うん、わかった。だけど疑問はまだある。

 

「五人しか四神戦に出れないの?」

 

私達は六人だけど出場できるのは五人だけなの?

 

「一人は控えの者だ。出場者が体調を崩したり何らかの要因で出場できなくなったりした場合の代役となる」

 

そう言った瞬間鳴良が『あ、俺は戦えないかもしれないんだ』とポツリと呟いた。えー、鳴良は出れないかもしれないの?やだな、私は鳴良と戦いたかったのに。

 

「というのが表向きの役割になるが実際は違う。代役はいかなる場合も一度だけ選手の交代を認める。つまり対戦相手が決まったあとで有利な棋士を割り当てることが出来るのだ。基本的にどの国もこの枠を戦略的に利用する」

 

凛刹の言葉になるほどと頷く。後出しで出場者を選べるなら相性のいい相手を割り当てることができる。6人目のポジションは結構重要なものになりそうだ。

 

「鳴良は最初から出場してもらうつもりだ。棋士の育成は我が国の最大の課題であり、一戦でも多く経験を積み国の未来に貢献してくれ」

 

「は、はい。俺も強くなりたくて必死でここまで来ました。四神戦で結果を残せるよう頑張ります」

 

緊張しつつ、それでもはっきりとした口調で鳴良がいう。いつも戦いに消極的なのに今日の鳴良からは強い意志を感じる。四神戦に対して意欲的だ。予選からやる気満々だったし鳴良は四神戦に何か思い入れがあるのかな?

 

『六人目については兄上にお願いしたい』と凛刹が言い、『ええ、勿論お受けいたしますよ』と怕蓮が答える。これで白虎国のメンバー決めは終わったね。

 

「最後に出場者ではないが、白虎国の勝利の為に参謀として招いている者がいる。入ってくれ」

 

その言葉と共に扉が開いて長身の男が入ってくる。銀髪に眼鏡をかけて不機嫌そうな顔をしているその人を私は知っていた。財全だ。快燕が『あ、財全』と嬉しそうな声を上げる。そういえば仲良かったんだっけ?

 

「ふん、参謀か。序列十位まで落ち、選抜戦すら勝ち上がれない俺が何かの役に立てるとは思わないがな」

 

「財全の分析力と知識量は間違いなく我が国一だ。相手の情報をどれだけ持っているかが勝敗を分けるだろう。是非とも力を貸して欲しい」

 

「責務であるなら果たそう。棋士ならば自国の勝利に貢献するよう努めるのは当然であるからな」

 

そういうと財全は凛刹の隣の席についた。財全の研究の深さは身に染みているからね。財全の参入に私も賛成である。

 

白虎国の布陣は完成した。いよいよ四神戦が始まる。世界で最も強い棋士達との戦えるなんてこんなにも心が躍ることはない。

 

さあ、天上(そら)に至ろうか。





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