【書籍化】『星天』   作:空兎81

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第73話 開会式

 

真っ赤で派手で大きな建物で開会式が行われた。

 

楽器が奏でられ音楽が歌われ、賑やかな雰囲気の中入場する。去年の順位に沿って入場するらしく玄武国、白虎国、青龍国、朱雀国の順に建物の中に入った。白虎国は去年三位だったんだ。今年は優勝できるように頑張ろうね。

 

今日の衣装は琳華様に作ってもらった物ではなく、凛刹が用意してくれた物をみんなで着ている。白い布に金糸で刺繍がしてあり、他の国も朱雀なら赤、玄武なら緑と自国の色を纏っている。ユニホームみたいだね。一体感があって良いと思う。

 

全ての国が揃うと音楽が止まり、壇上に人が上がり赤い服を着たお髭のおじさんが四神戦のルール説明をする。凛刹に聞いていたのと同じ内容だったので特に問題はなかった。

 

丁寧に梱包された木箱を持って赤い服を着た一団が壇上に上がる。紐を解き恭しい手つきで中身を取り出すと『四神戦にあたり朱雀国に納められていた天外盤をお返しいたします』と漢字と色んな模様の描かれた、八角形を二つ組み合わせたみたいな盤を掲げた。なんだろう、あれ。

 

「天外盤?」

 

「優勝国にその栄誉を讃えられ与えられる証だ。相変わらずお前は物知らずだな」

 

私の呟きに答えてくれたのは財全だった。どういう基準で並び順が決まったのかわからないけど私の隣の席は財全だった。反対側は快燕で『いつも財全の隣は俺だったのに。いいなー、星天ちゃん』と頰を膨らませていた。快燕は財全のことが好きなんだね。

 

口調は優しくないけど親切に財全が教えてくれたので天外盤が何かはわかった。つまり優勝トロフィーみたいなものだろう。あれを持ち帰るのが私たちのやるべきことだね。

 

天外盤の返却が終わり、一人の男が壇上に上がる。瞬間、あたりに緊張が走った。

 

背は高い。周軒より高そう。身体つきはがっしりとしていて赤い髪を後ろで括り特徴的な顎髭を蓄えている。

 

空気が違う。皆の彼を見る目つきが違う。ピリピリと肌が痺れが走るような緊張感の中、その男が口を開いた。

 

紅烈焔世人(こうれつえせじん)朱 炎覇(しゅ えんは)である」

 

全ての緊張感を吹き飛ばすような威風が吹き荒れた。先ほどまで会場を覆っていたチリチリと痺れるような感覚は消え、代わりに重しのような圧力が身体を覆う。そしてそれは目の前の男から放たれたものだった。

 

紅烈焔世人、世人と名乗った。そうか、そうなのか。壇上にいる鋭い眼光の男がそうなのだ。

 

朱 炎覇、彼がこの世界最強の棋士なのだ。

 

「この世界はかつてない危機に瀕している。黒獣の活動が活発化しており、人類の活動領域が狭められつつある。今年に入りさらにその被害は増え続けており、先日の会談では四神戦を中止し四国共同戦線を前倒しした方が良いのではないかという意見が出たほどだ」

 

え、四神戦中止になりそうだったの?それはいやだ。確かに黒獣はやばいしなんとかしないといけないと思うけど四神戦がなくなるのは困る。私は碁が打ちたい。

 

「復興と守備に人員を回すべきだ。黒獣の脅威に備えるべきだ。四神戦の財源を別のところへ回すべきだ。言い分は様々あるだろうが俺はそれを聞く気はない。

 

何故ならば貴様らが敗者だからだ」

 

瞬間、チリチリとした痛みが肌の表面を撫でる。炎覇の言葉に会場の至る所から敵意が放たれ、会場内の空気はこれ以上ないほど逼迫した。

 

だけどもこれほどの敵意を浴びせられていると言うのに炎覇は平然とした顔で言葉を紡いだ。

 

「貴様らが真に世界を救いたいと望むのならばこの場で勝て。勝者だけが望みを言うことが叶う」

 

そういうと炎覇は壇上を降りた。それにより空気が緩んだのでふぅと息を吐く。あまりの重圧に呼吸するのもしんどかった。似たような圧を昔感じたことがある。

 

黒鶫との対局だ。ほっそりとして枝木のような風体の黒鶫だったが、碁盤を挟んで向かい合うと受ける印象がまるで違う。重厚でけして動かすことのできない巨石のような重さを感じる。強い人には圧がある。

 

ふぅ、そうか。あれが世人、この世界で一番碁が強い人か。絶対に戦いたい。強者との戦いが私を高みに連れていく。生を感じさせてくれる。

 

炎覇との戦いは私を今までにない領域に連れて行ってくれそうだ。

 

天外盤を返却して現世人が話をした。これで開会式も終わりかなと思ったら財全が『明日の対戦を決めるくじ引きがある』という。

 

あ、そうか。四神戦の対局は全部くじで決まるんだよね。『今引くんだ』と言えば『対局の前日にくじは引かれる。明後日の対局の分は明日の対局が終われば引かれるのだ』と言われた。なるほど。

 

壇上に赤い箱が持ち込まれる。赤い服を着た老人が箱に手を入れ中から札を二枚取り出した。

 

「初戦の対局者が決まりました。白虎国序列第三位、奎星天と玄武国序列第一位、燗常弱(かんじょうじゃく)の対局になります」

 

あ、私の名前が呼ばれた。四神戦初戦、いきなり私が対局できるらしい。

 

「玄武国序列一位だと?チッ、よりによって最悪の組み合わせだ」

 

財全が舌打ちをする。財全が嫌がるなんてそんなに凄い打ち手なのだろうか?

 

「強い相手なの?」

 

「全く資料がない相手だ」

 

顔を歪めながら財全がいう。ああ、データがないから嫌な相手ってことか。財全は分析好きだもんね。知らない相手はやりにくいだろう。

 

「他国の棋士だから棋譜を手に入れられなかったってこと?」

 

「そんなことはない。他国であっても公式戦の棋譜ならば取り寄せることはできる。だが常弱に関しては公式戦の記録が全くない。あの男は突然表舞台に現れたのだ」

 

財全のいうことに首を傾げる。私だって選定、本戦、上戦という公式戦を経て白棋士となり四神戦に参加している。公式戦なしに序列一位になれるのだろうか。

 

「常弱については資料が何もないため他国の棋士との対局を見つつ研究を行う算段であったが、初戦ではどうにもならない。実力でなんとかしてこい」

 

「うん、わかった。初戦から強い人と対局できるなんてついてるね。全力で戦い抜いてくるね」

 

相手の棋風がわからないのは残念だけど、でも序列一位ってことは玄武国で一番碁が強い人だ。楽しみだな。私は私の全てを賭けて精一杯戦い抜いてくるよ。

 

対局が楽しみでうずうずしていると『まあ、突然化け物が現れるところはうちも同じか』と財全が呟く。突然現れた化け物?いったい何のことだろう?

 

 

 

 

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