【書籍化】『星天』   作:空兎81

76 / 76
第76話 色碁石

 

起きた。おはよー。今日はついに四神戦初戦だね。負けたら玄武国に行って飼い殺しの人生が始まるわけだけどやることは変わらない、全力で戦い抜くだけだ。常弱はどんな碁を打つのだろう。すごく楽しみだね。

 

支度をして周軒と鳴良と泊まっていた建物から出る。試合会場は開会式をした建物の奥にあるらしい。会場に着くと凛刹が声をかけてきた。

 

「やあ、星天。気分はどうだい?」

 

「ばっちり。やる気に満ち溢れているよ」

 

早く打ちたくてうずうずしている。

 

「それはよかった。今日は四神戦初戦というだけでなく棋礼戦も行われる。立会人として僕も同行しよう」

 

どうやら凛刹がついてきてくれるらしい。周軒と鳴良と別れて凛刹と共に奥に進む。

 

対局場につき扉を開けると目の前に広がるのは赤と金だった。

 

赤を基調として金色の装飾品が部屋を飾り立てている。壁には朱雀の絵が掛けられていて部屋の中央には木製の碁盤が置かれていた。紅服を着た時計係の人もいる。これが四神戦の対局場所になるらしい。

 

私が扉を開けたのと中に入るのとほぼ同時に反対側の扉も開いた。

 

入ってきたのは常弱だ。後ろに暁闇もいる。

 

常弱が碁盤の前に座ったので、私も席についた。

 

「ふふふ、本日は棋礼戦になります。内容は今更確認しなくとも大丈夫ですね?」

 

「ああ、星天も白虎国も承知している」

 

「ああっ、楽しみです。あの星天が私の蠱毒劫に入るなんて、こんな素晴らしいことがあろうとは。貴方はきっと私の最高作品になりますよ」

 

口調は柔らかいが暁闇の笑みは何処かゆがんでいびつだ。この狂気のシステムは関わる者をどこかおかしくするのかもしれない。

 

やはり蠱毒劫なんてものは存在してはならないのだろう。

 

「蠱毒劫はなくなるからそれはできないね」

 

「自信満々のようですが、私の常弱に勝てるといいですね」

 

準備は整った。背筋を伸ばして碁盤に向き合う。いよいよ勝負が始まる。

 

碁盤の上には白と緑の碁笥が置かれていた。碁笥ってだいたい木製で茶色のイメージだけどこの四神戦の為にわざわざそれぞれの国の色の碁笥を作ったのかな。おしゃれだね。

 

「双方とも準備が整ったようなので四神戦、一回戦を開始します。玄武国常弱が石をニギってください」

 

紅服のお兄さんがそういう。碁笥を碁盤から下ろしてふたを開く。中に入っているのは白石だ。

 

「私の碁笥に白石が入っているよ。常弱がニギルなら碁笥を交換しないといけないね」

 

ニギリは先攻後攻を決める物だ。白を持ったプレイヤーが碁石をひと掴みし黒を持ったプレイヤーがその個数が奇数か偶数かを当てる。当てればそのままで外せば碁笥を交換する。白を持ったプレイヤーが“ニギル”ことで先攻か後攻か決まる。

 

ニギルのは基本的に目上の人や棋力が上とされる人なので、私より年上で序列一位の常弱がニギルことに違和感はないけど、ニギルなら白石を持たないとね。

 

そういうと何故か微妙な空気が流れた。紅服の人もなんだか困った顔をしている。なんでだ。

 

「そうか、星天は他国の者と対局するのは初めてなのか。これは僕が説明しよう」

 

首を傾げていると凛刹が隣にやってきた。どうやらこの微妙な空気を解説してくれるらしい。

 

「星天、白虎国では白と黒の碁石を使うが他国では自国の国色となる色の碁石を使うのだ。朱雀国なら赤、玄武国では緑というようにな」

 

『同じ国同士の者同士で戦う時には同じ色を使えないから黒石を使うことになる』と凛刹が説明する。え、そうなんだ。元の世界でも囲碁を打つときは白と黒の石を使っていたからここでもそうだと思っていたけど、それは白虎国だからだったらしい。朱雀国だったら碁石は赤と黒を使うのか。じゃあ朱雀国だと白黒つけるとかも赤黒つけるっていうのかな?

 

色の違いには驚いたけど、別に碁石の色で勝負に優劣はつかない。『うん、わかった』と言えば『君の勝利を心から望んでいる。力を出し切ってきてくれ』と言って凛刹は下がった。さて、常弱がニギルのだったね。碁笥から白石をひとつ取り出し碁盤の上に置いた。

 

「2、4、5。奇数ですね。当たりになりますので白虎国星天の先番から勝負が始まります」

 

『コミは六目半になります』と紅服のお兄さんがいう。白だけど先番になった。うーん、やっぱりちょっと違和感あるな。まあでも昔は白が先に打つ時代もあったらしいしどっちの色が先に打つかなんて些細なことだ。

 

勝負は全て石の絡み合いで決まるのだ。

 

準備は整った。背筋を伸ばして頭を下げる。まずはあいさつだ。

 

「お願いします」

 

「……お願いします」

 

常弱の声を初めて聞いた。

それは暗く濁っていて単調な音だった。

 

 





朱雀国:赤石(あかいし)

青龍国:青石(あおいし)

白虎国:白石(しろいし)

玄武国:緑石(みどりいし)

この世界では碁石は五色あって、同じ国同士で戦う時は黒石を使います。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

龍神の巫女(作者:都森メメ)(オリジナル現代/ノンジャンル)

現代最強の退魔師、蛇谷水琴には隠し事があった。1つは男として過ごした前世の記憶があること、そして2つ目は最凶の妖魔である『龍神』の下僕にされてしまっていること。夜伽と称した陵辱を毎夜のごとく受けながらも水琴はそれを周りに秘匿しつづける。退魔師としての信念に揺れる彼女の未来は……▼


総合評価:17024/評価:8.93/連載:51話/更新日時:2025年09月30日(火) 21:50 小説情報

女帝からは逃げないと。(作者:霧江牡丹)(オリジナルファンタジー/恋愛)

古代中華風っぽいよくわからん異世界に転生した女主人公がDIYしてたら女帝に見つかって連れ去られる話。


総合評価:21911/評価:9.1/完結:150話/更新日時:2024年12月15日(日) 22:30 小説情報

転生爺のいんちき帝王学(作者:嶋野夕陽)(オリジナルファンタジー/日常)

【Kラノベブックスから1巻が発売。多分二巻は年明け!】▼グレイ=アルムガルドは七十を超える老爺だ。▼爺にしては心が少々やんちゃで、見栄っ張りで、爺らしく情に厚い。▼グレイは才能に恵まれ、努力を惜しむこともなかったが、その性格と不運が重なり日の目を浴びることのない人生を送ってきた。▼さて王都では近頃後継ぎ問題が起こり、少しずつ不穏な空気が蔓延し始めている。▼そ…


総合評価:17657/評価:8.91/連載:490話/更新日時:2026年09月20日(日) 20:46 小説情報

捕食者系魔法少女(作者:バショウ科バショウ属)(オリジナル現代/冒険・バトル)

「捕食するのも、苗床にするのも、お前たちだけの特権と誰が言った?」▼※書籍版第3巻発売中!▼※コミカライズ版第3巻発売中!▼※マルチ投稿中。


総合評価:53882/評価:9.09/連載:105話/更新日時:2026年08月04日(火) 15:30 小説情報

剣姫転生 〜エルフの娘は世界最強の剣士を目指す〜(作者:カゲムチャ(虎馬チキン))(原作:無職転生)

 学生最強剣士『剣崎絵美理』。▼ 彼女は一流の剣道家でありながら、幼い頃に憧れたアニメに出てくる人間の限界を超えたファンタジーな剣士達への憧れを忘れられない立派な中二病患者であった。▼ そんな彼女はある日、同じ学校の生徒達が言い争ってる場面に遭遇して気を取られ、トラックによる背後からのアンブッシュで昇天した。▼ そして、目が覚めると緑髪エルフの双子の妹として…


総合評価:30264/評価:8.88/完結:158話/更新日時:2026年09月21日(月) 04:13 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>