うつけが斬るっ!   作:例のサーモン

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ようやく第二話です。
言葉使いなど、設定を形作るのに手間取っております・・・
一応、感想も頂いております!有難うございます。
感想の返事や、今後の展開、信長達の帝具などアンケートも募集しておりますので、
活動報告もよろしくお願いいたします。
お気に入りしていただいた方、感想をくれている田中田中様。
いつも有難うございます!


第二話「帝国の闇」

「改めて礼をさせてくだされ。私はチョウリ。

 帝都で内政官の末席を担う者です。」

そう言って、顔を上げる。

若き将は自らの主君の横で臣下の礼を崩さずに取っている。

 

「なかなかどうして気持ちのいい御仁であるか」

そう言ってチョウリの前に歩いてきたのは先程、若き将に主君と呼ばれていた男だ。

男はチョウリの前に手を差し出した。

 

「わしは織田信長。チョウリ殿と申されたな。貴殿を助けられた事、嬉しく思うぞ」

その手を取って、立ち上がる。

「・・・信長殿でよろしいか?私も信長殿に出会えた事を嬉しく思いますぞ」

固く、握手を交わす。チョウリにはこの出会いに何故か運命に近いものすら感じていた。

 

――――--―――

三人は馬車が動かない事を確認すると移動することにした。

その際、信長は蘭丸と共に賊達の死体を集め、穴を掘り、そこに死体を埋めていた。

チョウリを手伝いを申し出たが、信長は腕の怪我を指摘し、

「養生なされ。」と残し、手伝いを断った。

余談ではあるが、チョウリの親密度もまた、この事で上昇した。

 

賊の死体も済んだところでチョウリは声を上げた。

「信長殿に蘭丸殿。よければ、帝都まで一緒に来ませぬか?

 是非ともこのお礼をしたいのですが・・・」

チョウリの言葉を聞き、また信長も自身の予想通りに事が進んでいる事に

喜びを感じていた。

「嬉しい言葉である、チョウリ殿。ただ、連れがもう一人いる為、暫し遠回りに

 なるが、付き合ってもらえるだろうか?」

チョウリは肯定の意を示した。

「えぇ、もちろん構いませぬ。そうとあれば、急ぎましょう。最近は夜も近いので」

 

―――--―――

 

信長達が駆けてきた道を戻ると、不安そうに佇んでいる濃姫がそこにいた。

「・・・待たせたな。濃。変わりはないか?」

信長の姿を見た濃は満面の笑みを浮かべ、信長の胸の元へその身を投げた。

「・・・お待ちしておりました。何も変わりはありませぬ・・・」

 

「・・・・・・」

息を殺す蘭丸である。その表情は先の戦闘よりも全力のようだ。

「・・・・・・!?」

(・・・蘭丸殿が、何やら鬼気迫っているような・・・・)

このチョウリ、蘭丸の姿を見て、声を出さず空気を呼んだ。出来る男である。

 

―――-――――

 

「信長殿、ここをくぐると帝都です」

道中、美しい女性が信長の妻、濃姫と紹介されるなど。

チョウリの理想とする艶やかかつ一歩引いて主人を支えるその姿に少しの嫉妬すら

覚えたが、チョウリは信長に敬意すら感じていた為、悪感情はすぐに消えた。

 

そうして、門をくぐると覚えある風景が広がる。

(なんとか無事帰ってこれたか・・・)とチョウリは胸を撫で下ろした。

 

「・・・あの、チョウリ殿。ここが"都”なのですか・・・?」

濃は道行く人々の活気のなさに驚いた。

濃が知る都とはあまりに活気や、雰囲気が違ったためであった。

(・・・誰もが下を向いている・・・?嫌な気配のする人間のみが活気であふれているなんて・・・)

「・・・やはり、分かりますか・・・」

チョウリは三人の表情を見、悟った。

「チョウリ殿、ここではなんであろう。場所を変えて話されぬか?」

「・・・信長殿・・・少し行けば迎えが来ているのです。後は私の家にてお話しましょう・・・」

 

信長がチョウリを促すと、もう一度、周囲を一瞥した。

「・・・民を知らぬ国であるか・・・」

「・・・・・・」

チョウリは信長の言葉に胸を打たれた。

その一言は短くとも、チョウリには国を知る者の”重さ”を感じる一言であった為である。

 

(・・・信長殿はやはり・・・人の上に立っておられた方のようだな・・・)

チョウリは自身の家で帝国の今の現状を伝えようと、深く誓ったのである。

 

―――--―――

「・・・では、信長殿達は遠くから気付けばあの森へいたと・・・?」

チョウリの家に着き、信長達を部屋へ案内したチョウリは信長達の話を聞くことにした。

家に着き、部屋に案内するまでの一悶着があった為である。

(信長達が家に着き、靴を脱ぐべきか悩んでいる事に気付いたチョウリがさりげなく、

フォローしながら部屋に誘導していた。文化の違いから一度、信長達の話を聞いてみようと思ったのである)

「うむ、チョウリ殿の思われている通り、わしや蘭丸、濃はここには初めて参ったのだ」

 

「では、あそこで会えたことは何か運命的なものを感じますな」

そうチョウリがいうと、部屋の中が少し明るくなった。

「なるほど、チョウリ殿で巡り合えたのは天命であるかもしれませぬな」

そう蘭丸がいうと、信長もまた、笑い声を上げた。

「うわっはっはっは!よういった、お蘭。確かに言うとおりじゃ。天命とは実に面白い言い回しじゃ!」

場の空気が暫し和んだ後、チョウリは言った。

「信長殿。今日のお礼に何か私にできる事はないだろうか?何でも遠慮せずに言ってほしい」

「心使い痛み入る、チョウリ殿。わしらはまだ、この国の事、常識もまるで知らぬ。

 なればそこをチョウリ殿に教えてほしいのだが、頼めるであろうか?」

信長の言った事は半分、嘘だ。

あの森での目覚めの時、三人には膨大なこの世界の知識が流れてきていた。

しかし、まだその知識を咀嚼しきれていない為、信長はチョウリから情報を聞こうと思ったのである。

信長がチョウリを信じるに値すると思ったからこその言であった。

 

「その程度の事ではお礼の内にも入りませぬぞ。信長殿。

 お礼はまた、次の機会に持ち越しておきましょう。信長殿を驚かせてみたいですからな!」

 

そうチョウリがいうと、信長達もまた、笑みを見せた。

チョウリのその心の気持ちのよさに感じ入るものがあった為であった。

 

 

「・・・皆様はこの国をご覧になっていかが思われましたか?」

信長達にこの国の常識などを教えはじめてから、数刻の後。

チョウリは自らの憤りを隠さぬまま、信長達に問うた。

 

「・・・チョウリ殿は“国”とはなんであると思われるか?」

信長はあえて問いに問いで返した。

チョウリの心が今の帝国に憤りを感じていることが見て取れたからであった。

 

「・・・信長殿・・・・」

「・・・わしは国は民あってこそのものであると思う。国を栄える為、発展を促す。

 国を発展させる為、戦を起こす。だが、民がいなければ国は成り立たぬ。

 民を知らぬ国はいずれ滅ぶ、わしはそう思う」

チョウリは思わず、顔を上げた。

望んでいた“王”の言葉がそこにはあったのだ。

「・・・信長殿。あなたは・・・」

チョウリがその先を紡ごうとしたその時、

――――音が消えた。

「・・・上様・・・」

「・・・うむ、お蘭。・・・敵か。」

「チョウリ殿。この屋敷には奥方は在宅か?」

チョウリもまた、嫌な気配を周囲に感じはじめていた。

「いえ、妻は実家で療養をしております、信長殿。これは・・・」

大きな音が外から響いた。

鉄が無理やり裂かれたような音・・・門が破壊されたのだ。

そのイメージは容易にチョウリにも想像できた。

 

「チョウリ殿、どうやら先程の続きのようだ」

そう言って信長は立ち上がった。

 

「・・・うむ、これもまた天命というのであろうな。濃よ。

 チョウリ殿をお守りしろ!」

濃姫は一度、信長を見ると背に持った薙刀を構えた。

 

「・・・行くぞ、お蘭。天命とやらだ、斬って斬って斬りまくろうぞ!」




ちょいと短めですがここで一旦区切らせてもらいます。

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