斜め下に抜きゲー悪役TS転生   作:神谷涼

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11:やはり無双は気持ちがいい

 

「お、おい。なんか人が大量にいるぞ」

 

「だからこそ意味がある! 来場者数は約3万! 自衛隊側も相当数がいる! 防衛大臣も来ている! 複数のライブ配信が行われ、総視聴者は10万人近いだろう!」

 

 多くね?

 いやまあ原作じゃ、ただの背景画なんだろけど。

 実際にここで歌ったり踊ったりするの、ハードルたけーよ。

 よく考えたら、俺って数人の前でしかレッスンしてねーじゃん。

 

「よし、今の音楽演奏が終わったら行くぞ!」

 

「ぐぬぬ……よし」

 

 あまりやりたくないが、今ある緊張と羞恥を抹消。とはいえ根本的な精神性を消すと廃人化が進むから、高まったのを消すだけだが。

 

「舞台ではその黒い炎は出さない方がいいぞ!」

 

「わかっている」

 

 ダメだ。

 すぐまた緊張と羞恥が高まってきてる。

 慣れるように、このままでいるべきなのか……。

 

「総帥、大丈夫か!」

 

「………………」

 

 変な汗でてきた。

 転生前も、この体も、そんな舞台の上に立った経験なんかない……。

 中学校の文化祭で劇に、それもモブで出たくらいしかねーよ。

 脚が震える……。

 

「総帥!」

 

「あ、ああ」

 

「失礼するぞ!」

 

「ん――んん?」

 

 え? え?

 

「よし! 今のは参謀殿には秘密だからな! では行くぞ!」

 

「え? お、おい、待て!」

 

 なんでいきなりキスされたんだ?

 唐突過ぎて唖然としたせいで能力発動もしなかったぞ。

 

 慌ててハメゴイ将軍を追って。

 

 なぜか大観衆の声も聞こえず、彼女だけ見て追って。

 

 気づいたらステージの上だった。

 

 

 

     ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 正直、ステージで何をどうしてたかほとんど覚えてない。

 

 将軍が思ってた以上に距離近くて。

 能力発動したらヤバいじゃんって焦ったのと。

 

 間奏に入ったトコ――将軍が洗脳能力使うトコで。

 またキスされたってコトくらいだ。

 全世界中継キスシーンだよ。

 なんでキスすんの?

 伏線も前フリもなくキスすんな!

 背高くてスタイルいい男装美人からキスされんのは、そりゃご褒美だけど!

 ご褒美だけど、俺がうっかり能力発動しちゃったらどうすんだよ!

 

 後から動画で見ると、観衆が突然停止したように静かになってたんだが……緊張とキスで全く気付かなかった。

 駆けつけてくる自衛隊員も、ステージを見ると硬直して涎を垂らすだけになる。

 すごいシュールな光景だったんだが……いろいろあったせいで見ているヒマもなかった。

 

 我に返ったのは、将軍が言い出したセリフゆえ。

 

「さて! 感動で声も出ない皆様に、音楽の途中だが! 重要な知らせだ! 陳腐なセリフで申し訳ないが……この国は我らがデスアクメ様のものとなった!」

 

 は?

 

「おい、名前を――」

 

 洗脳、俺には効かない。

 不都合な干渉があれば、能力がオート発動するっぽいんだよな。

 将軍の体の一部が消えたりもしてないから、内部で発動してる感じ。これはまあ、アジトでも試してみてわかってたんだが……これを自在に出す場所とかもコントロールできればなぁ。

 

「ここにいる人間すべて、このハメゴイ将軍が支配している! 彼らにはデスアクメ様の忠実な兵になってもらう!」

 

 デスアクメって連呼するなよ!

 あと自分の名前も堂々と口にするなよ!

 確かに、お約束の名乗り方だけどさぁ!

 ぐぎぎ、ステージ練習とかするより、どうにか俺の名前だけでも変えりゃよかった!

 

 と。

 

 いよいよ本当の意味の原作開始かな?

 

「「待て!」」

 

 目隠しした男二人が、動かなくなった観客の中から飛び出してくる。

 どっちもつい先日、写真で見た顔だ。

 NTR(部隊名)のウツボッキーとメスイキくんだっけ。

 いろんな意味でやる気のそげる名前しやがって。

 読み通り、もう一人のテレパシーの子……オナホちゃんから指示受けつつ動く形か。

 

「デスアクメ、貴様らの悪事もここまでだ!」

 

「ここにいる人たちに何をした!」

 

 ほらー、デスアクメで周知されちゃってるじゃん。

 

「おや、無事な連中がいたとは運がいいな! 私は――」

 

「代われ、将軍。私が相手をしよう」

 

「しかし、連中程度なら……」

 

「万が一にも貴様を失うわけにはいかんのだ。能力を使い続けろ。用心はしておけ」

 

 ハメゴイ将軍を抑えて前に立つ。

 相手が目隠ししてるだけで、将軍の能力は無効化される。

 

 それに。

 

 お約束を潰すのが、原作展開破壊の鍵だ。

 第一話でラスボスが実力披露だけじゃなく、ガチ蹂躙して壊滅させるのはありえん展開だろう。

 できれば、どっかで指揮してるテレパスのオナホちゃんを捕まえときたいんだが。

 

「答えろ!」

 

 夜神月そっくりのヤツが、手からフォース的なの放ってくるが。

 

「効かん」

 

 能力発動させれば、触れる前に消滅する。

 このウツボッキ野郎の能力はエネルギー放出。

 俺にはまったく効かん。

 問題はこの黒い炎を出しっぱだと、格闘戦したらコイツら殺しちゃうんだよな。

 

「このッ!」

 

 うん、小さい方――メスイキくんは高速移動と飛行だっけ。

 つまり体当たりなんよね。

 

「なんだ? 甘えたかったのか?」

 

 慌てて解除して、抱き止める。

 

「な……! あ、あ――」

 

 サイコレズをいつも壁にめり込ませてる、ゴリラみたいなこの体(おれ)に通常物理攻撃はほぼ効かん。

 ちょっと勢いで体が後ろに下がったが、普通に捕まえた。

 そのまま顔を将軍の方に向けさせ……目隠しを無理矢理ずらす。

 もがいてたのが、即座に脱力。

 

「よし、そのまま能力を使っていろ。将軍」

 

 すげーな。

 この集団洗脳というより集団無力化、マジ戦略兵器。

 何より使っても特殊な光とかでないから、何してるかわからんのが強い。

 バッステとデバフをオート無効化する俺と組んだら、シナジー最高やん。

 実質、全体除去を連発しつつ大型クリーチャーを場に残してるようなもんだぜ。(TCG脳)

 観客全員、停止してるせいで避難しないし悲鳴もあげない。

 まさに書き割りの背景。

 おかげで、人目を気にせず中二ロールプレイできる。

 

「この会場に使われてるのも、後ろの女の能力か!」

 

「どうかな」

 

 能力説明はしねぇ。

 逐一、能力自慢したら後の敗北の元だ。

 ゲーム脳なりのガチ対策をさせてもらうわ。

 お約束展開を本気で潰す。

 

「くっ! どういう理屈だ! 俺の能力がなぜ効かない!」

 

「少しは頭を使いだしたか」

 

 困ったなぁ。

 距離とって散発的にフォースを撃たれると、捕まえられん。

 しかもテレパシーの子が俺を感知できてないのか、狙いにズレが多くてかえって防御しづらい。

 外したフォースでそのへん壊れて瓦礫が散ってるし。

 あんまり土煙たてられると、将軍の能力発動にもよくない。

 殺しちゃうのもテだけど、原作キャラを完全退場させるとワケわからん追加キャラ出てきそうだしなぁ。

 ちょいちょい将軍を狙ってくるから離れるわけにもいかんし。

 

 移動能力……それなりに速いんだろけど、格闘技術とかないからなぁ。

 パワーとダメージ無効化でごり押ししてるだけで。

 離れた隙に将軍を潰されたら意味がない。

 

「くそ、なら俺の最大火力を見せてやる……」

 

「こいつにか?」

 

 無力化したメスイキくんの服を掴み、突き出す。

 まあ俺自身に当たっても効かんのだけど、メンタルを折っておきたい。

 

「……卑怯者め!!」

 

「ほう。随分と仲がいいのだな」

 

 返事にちょっとタイムラグあったな。

 当人は目隠しして、テレパシーの子が指示出してるわけだが。

 おそらく、俺の内心は読めてない。

 テレパシーは外部干渉だからな。オート無効化できてるはずだ。

 すると、この場で状況を把握してるもう一人の人間……ハメゴイ将軍の意識を読んでるわけか。

 あー、そういやこのメスイキくんは将軍のイトコだっけ。

 人質に使うのはよくなかったかな。

 

「……だが、貴様らのような特殊能力テロリストのために、俺たちは組織されたんだ! メスイキだって覚悟はできてる!!」

 

「そうか」

 

 その名前で呼んでやるなよ。

 これ、たぶん今も世界中に中継されてんだぞ。

 

「だから、貴様らを今ここで倒す!」

 

「ほう。やってみろ」

 

 おーおー、元気玉ちっくなエネルギーの集め方だな。

 確かにすごいエネルギーだわ。

 ゲームや映画のCGでしか見たことないヤツじゃん。

 本気で人質もろとも殺っちまうつもりかよ。

 

「この、俺の、全エネルギーを……」

 

 俺には効かんけど、余波で将軍がダメージ受けたら困る。

 というかタメ、長すぎだろ……。

 そんな攻撃を目隠し状態でするなよ。

 

「喰らってやる義理はない」

 

「ぶご――うぼぁー!!!!」

 

 夜神月(違う)が盛大に吹っ飛び、貯めてたエネルギーが爆発する。

 

 さっきからのフォース連発で散らばってた瓦礫の破片を、投げつけてやった。

 別に空飛んでるわけでもなく、地上でエネルギー貯めてるし。

 数撃てば普通に当たる。

 そしてこの体(おれ)のゴリラパワーなら砂利でも凶器になる。

 タメ中に体勢を崩され、目隠し状態でダメージを受けたため集中が途切れたのだろう。

 蓄えたエネルギーも暴発し、当人が吹き飛んだわけだ。

 

 よし。

 

 寝取られ主人公()だけあって、これでも死んでないな。

 こいつを確保すれば――

 

 倒れたウツボッキ野郎を、将軍の能力下に置いてやろうと一歩踏み出した瞬間。

 

 ヤツの姿が消えた。

 

「!!」

 

 まずい!!

 

 将軍は……いる!

 メスイキも腕の中にまだいる!

 

「どうした、総す――」

 

「能力を解くなっ!」

 

 焦りまくった顔で駆け寄り、将軍を抱き寄せて能力を発動する!

 

 絶対消去の黒い炎で将軍を包む! ついでにメスイキも!

 

 時間停止された!

 

 たぶん、テレパシー使ってたオナホはもう連れて戻られてる!

 

 連続で使って俺はともかく、将軍を連れ去られるとまずい!!

 

 時間停止でも、俺の能力は抜けんはず!

 

 巨大な黒い炎に包まれたまま、その場を動かない。

 

 

 

 

     ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「………………」

 

 ステージに出る前とは違う、もっと嫌な緊張感。そして危機感。

 

 平和ボケした一般人の俺が味わったことのない、ひりつく感覚。

 

 どれだけそうしてたかわからんが。

 

「おい、総帥、さすがに痛いのだが」

 

「す、すまん」

 

 将軍から、弱々しくそう言われて、やっと冷静になった。

 抱きしめていた力をゆるめる。

 おお、小脇に抱えてたメスイキくんは泡を噴いてる……なんかすまんな。

 だが、まだ二人を離すわけにはいかん。

 能力も解除できねぇ。

 

「何事だ? 我々の動揺をあまり外部に見せるべきではないぞ!」

 

「私はくだらん世間の目より貴様が大事だ」

 

「そ、そうか! だが、参謀がいるのに、私などに!」

 

「何を言う。貴様(の能力)を失ってなるものか。貴様こそ、私(たちの目的)になくてはならぬ存在なのだぞ。いかなる形であろうと、手放したりはせん」

 

「そ、そんな、こんな世界中継されている場で!」

 

 ふぅ。

 しかし咄嗟で必死だったとはいえ、将軍とメスイキを能力発動の中に入れて無事だったのは収穫だな。

 これは制御、かなり上達したと言えるんじゃね?

 

 服も……ん?

 

「ごふっ」

 

「ど、どうした総帥!」

 

 三人とも服、消えてるじゃん!!!!

 




コロナ前の富士総合火力演習のイメージです。
なお、作者は総合火力演習を実際に見学したことはありません……。
断片的にテレビとか動画で見たことあるだけで書いてるので、おかしい点があってもそういう世界線とお考えください。


■NTR(New Type Ranger)メンバーの能力まとめ

●ウツボッキー(宇津保(うつほ)(らいと)
 エネルギー放出。
 波動とか念とかフォースとか、そんな感じのふわっとしたエネルギーを放つ。
 最大火力は半径50メートル程度のクレーターを生み出す。
 155㎜榴弾砲並みで、範囲外被害はほぼない。
 十分、人間兵器。
 コスパはいいが、消耗がないわけでもなく最大火力使用後はほぼ動けない。
 消耗がほとんどない連射ではゴム弾の弾幕程度。
 いずれにせよデスアクメ総帥にはどれも効かない。
 原作()において、最大火力はサイコレズ参謀戦で使われた。


●メスイキ(銘洲(めいしゅう)(いつき)
 高速移動と飛行。
 正確には自身に対する重力軽減。
 移動能力、ジャンプ力を上昇させ、限りなくゼロに近づけて空中を泳ぐように移動できる。
 その気になれば超高速でも移動できるが、肉体強度は変わらないため一定速度に抑えている。
 当人の格闘能力と戦術能力が高いため、奇襲と隠密によるニンジャ的ムーブが可能。
 能力自体はどれだけ使っても消耗しないが、加速や反動による肉体的消耗はある。
 目隠ししていなければ、もう少し強かった。
 原作()においてハメゴイ将軍を倒した後、高速移動に適した耐衝撃スーツ(センシティブデザイン)を着用するようになり戦闘力アップ。一方でウツボッキーが惑わされ、裏でハラマセ博士によるスーツテスト()を連日受けるようになる。


●オナホ(著路院(ちょろいん)御那穂(みなほ)
 テレパシーと感覚共有。
 一定範囲の人間の意識を感じ取ることで、隠れている人間を見つけたり目で見ずに対応したりも可能。
 また消耗すれば、他者の意識や記憶を深く読み取ったり、精神干渉したりもできる。精神的効果の解除も可能で、応用性は広い。
 今回は他二人の洗脳を解除し、戦闘における連携を感覚共有でサポートしていた。とはいえ実際に目で見るわけにもいかず、障害物の多い場所では困難な形式だった。なお、当人の耐性が強いわけでもないため、彼女がハメゴイ将軍の洗脳を受けなかったのは幸運が重なった結果に過ぎない。
 原作()においてハメゴイ将軍を倒した後“なぜか”体調不良になり、前線には出ずに司令部でオペレーター任務に専念するようになる。
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