「――既に北米でのナノマシン拡散は始まっています。ほどなく、米社会は海外治安維持活動が困難となるでしょう」
「起動済みの装置は、今朝のうちに南極海へ沈めましたわ」
「ナノマシンは一定気温以下で自壊スル仕様! 環境にもやさシーい!」
「万事滞りなく、ということだな!」
そうかー。
そりゃそうかー。
NTR(部隊の名前)の妨害をなくしたもんな。
将軍が能力そのまま発動してたら、世界征服が普通に進むのか……。
昔の特撮ってそゆトコあるよな。
1話目の作戦が阻止されなかっただけで、世界が詰むやつ。
「そしてぇ……昨日は政府や公的機関、メディアが我々の作戦を改竄して流布していたようですがぁ」
「冷静に進行するべきだぞ、サイコレズ参謀!」
「そ、そうだ。今は会議中だろう」
サイコレズ参謀が、ものすごい歯ぎしりしながら俺と将軍を睨んでる……。
モニターに例の告白シーン()が映ってるからってのはわかる。
わかるんだが。
なんで
なんかおかしいぞ……。
「そうですねぇ。今は会議中ですからぁ……ふぅ……ふふ、日本政府は焦りに焦っていますよ」
ため息ついて、にこって笑いながらこっち見るのやめろ。
お前、夜になったら俺にひどいことするつもりだろ!
「ハメゴイ将軍の能力は放置すれば24時間持続。洗脳された人間が、現状では廃人同然です」
「世界規模で合計10万人近い人間が、原因不明の廃人状態。そこには防衛大臣や官僚、SP、自衛官も多数含まれましてよ。私たちの活動を報道上でごまかそうとも、これはごまかせんわ」
「しかし、もうすぐ24時間だぞ!」
「ええ。そこで解除前に事前用意した声明を出しますわ。相手には、我々の洗脳解除条件などわかっておりませんもの」
「ふふふ。本気なら全員、完全な廃人にもできる……と脅迫します。つまり昨日はほんの見せ札……次こそ……今夜こそ本気、と言うことです」
まて、参謀。
なんで最後に舌なめずりしながら、俺を見るんだ。
別に今夜に作戦実行したりしないだろが。
しかも、それで
「私がテレポートで、このビラをばらまきますわ。場所は国会議事堂の正門、中央玄関、参観者入口」
三つの紙の山が一瞬で消えていく。
「テレポートは便利だな!」
ほんとだよ。
ビラって見てないけどまあ、どうせ
実際、そのへんの細かい手順は今も、なんかよくわからんし。
「これで偉大なるデスアクメの名が日本に……いえ、世界に響きますわ!」
前言撤回。
チェックしとけよ俺……。
「くふふ……世界に響くデスアクメ様を私が……」
参謀お前、そういう独り言はやめろや。
会議中に“にちゃぁぁっ”て擬音つきそうな顔するなよ。
しかも、なんで俺はそれに体が火照る? 注意できない?
なんかおかしいぞ……。
精神にも体にも、妙なフィルターがかかってるみたいな……。
できるはずのことが、選択できなくなってるような……。
そうなんだよな。
朝だって、
能力発動しないし、させても参謀を消せる気がしない……。
無理にしようとすると、体がすくむ。
メンタル的に
むしろ今も、普通にツッコミ入れてるのに……それだけに、おかしい。
「だ、大丈夫か、総帥!」
「あ、いや……大丈夫だが……」
心配した様子のハメゴイ将軍に抱き止められる。
妙にふらつくような、意識が強制的に朦朧化されるような状態になる。
これは別にサイコレズの能力とかじゃない……。
エロゲとしての世界法則的なヤツか?
元の記憶を見る限り、
調子に乗る?
屈服した?
「…………あのクソ泥棒猫がぁ」
今もすげー顔して、将軍を睨んでんな。
なぜか長官とドクターはそれに気づいていない。将軍と同じく俺を心配してくれてるっぽいが、これは……。
これは……そうか。
見たことあると思ったらアレじゃん。
わかってしまった。
すさまじくアホらしい理屈だが。
それですべてが説明できてしまう。
しかも、魂とか根源とか子宮とかが、それで納得してる。
間違いない。
今、この“エロゲー”の主人公はサイコレズ参謀なんだ……。
例のタネツケ司令のエロフラグを序盤で折りまくり、メスイキ(隊員名)を拉致し、世界征服もがっつり進行、あっちはオナホちゃんしか残ってねぇ。
一方で、サイコレズはストーカーしてただけで、その対象が勝手に添い寝してきて、股開いてきて、直後に(やつの主観では)寝取られて、ブチギレ調教かまして、これから逆恨みのままにねっとり調教してくる気満々だ。性別が違えば、NTRからの復讐型エロゲ主人公的な流れとも言える。
今朝からのあいつの言動。
まさしく、催眠とか脅迫で調子に乗ってるエロゲ主人公そのものだ。
そーなると、俺はどうなる?
たぶん廊下とか、将軍の部屋の前とかで屈服宣言レイプされて。
そんで会議にアダルトグッズ装備ってか挿入で出席させられて。
最終的に幹部全員の前で、参謀に屈服宣言とかさせられる流れか……いや、世界征服後に全世界にアへ顔ダブルピースさせられるかもしれん。
ぐ、やばい。
俺自身メイン攻略対象になったせいか、体が“むしろご褒美”みたいな反応してる!
アホか!
こんな中途半端に世界征服したトコで、内部崩壊フラグ立ててどうすんだよ!
それも俺が一人だけ破滅するやつじゃん、これ!
最初の流れより酷いわ!
せめて恋愛メインで清純百合ハーレムを築けば……って!
恋愛経験ナシのコミュ弱者にそんなことできるかー!
突破口はなんだ?
俺自身が参謀にまともに歯向かえねぇ!
現状では、長官とドクターはモブ化してる。
将軍は寝取られ彼氏ポジになってしまった。
敵サイド……種付けおじさんやチャラ男にヤられるのは、サイコレズより嫌だ!
しかもプレイ内容の流れはたぶん同じだぞ!
お、そうだ。
あのメスイキの奴はどうなんだ?
尋問と称して近づいて……いや、参謀が目の前で俺の無様披露に使うだけか。
「本当に大丈夫か、総帥!」
「大丈夫ではない……」
しまった口に出てしまった。
「何!?」
「何事ですの?」
「あッ、肉体に問題発生? クローンする? クローン!」
まずい。
「私が寝室へお連れしますよ」
げえええ、明らかに邪悪な笑顔!
まずい……どうする……!
現状のフラグ……現状……現状……うおおお、わからん! わかるか、バカー!
将軍のアレコレで“これはゲームじゃなくて現実”ってちょっと思えたのに、またぞろゲームになってんじゃん! どっちなのかはっきりしろよ!
無駄に重いトコだけリアルにしやがって!
もうひとまず、距離をとって逃げるしかない。
「カベジリ長官!」
「は、はい」
えーと、えーと、えーと。
海外はダメだ!
俺は英語とかわからん!
「埼玉だ! 埼玉に転移させろ!」
うおおおおおおお、つい前世の住所を言ってしまった!
「埼玉? あの、埼玉のどこに……」
「あー…………採石場だ! あの、よく撮影とかしてる!」
たぶんそのへんになんか……あったらいいな!
「ええっと……(検索中)……ここですわね。こんな場所に何が……」
「行けばわかる! ストリートビューでも見て転移させろ! 急げ!」
「は、はい。それはかまいませんが……」
「ハメゴイ将軍、カベジリ長官! 貴様らも来い!」
「了解だ!」
「緊急の案件でしたら、了解いたしましたわ」
「あ、あの、私は……」
勢いで言わないと、体の方がサイコレズに引きずられる!
「サイコレズ参謀は計画を進めておけ!
ドクターは昨日のヤツを研究しておけ!」
「えええぇぇ……」
「リョーカイ! 自我コピーと同体クローンで能力者量産に成功すれば、世界征服完了も間違いナーシ!」
すげえ物騒な計画を聞いた気もするが、今更だし知るか!
このままだと、ある意味で初期よりひどい破滅が待ってるからな!
俺は埼玉に逃げる!
なぜか埼玉
なお、筆者は近畿在住で、埼玉県は近畿圏外では最も長期間在住経験のある場所ですが、何分にも過去のため次回以後の話は特に埼玉の地方独自色が強いものにはできません。
大阪に行って、急に関西弁が強くなるのもどうかと思ったし……。