「待て、それは時間停止なる能力が本当にあると仮定した話だろう!」
「そ、そうですわ! 時間停止だなんてさすがにオカルトでは!?」
お前ら、自分らと俺の能力を見て言えや。
特に将軍と俺の能力は、異能バトル系でもそうそうおらんぞ。
「論拠はなんだ? 私や将軍の能力の方がおかしいだろうに」
「お言葉ですが、時間停止と確信できる理由がわかりませんわ」
「時間を止めるとなれば、世界そのものに干渉しているではないか!」
空間転移とか電波経由洗脳とか、世界干渉じゃねーのかよ。
こいつら俺の言うことホイホイ聞くクセに、この件だけやたら意固地なんだよな。
世間の愉悦系は、復讐心の対象を簡単にずらして見せてるってのに。
なんで、こいつら真相を言ってるのに否定するんだ?
例の種付けおじさん、こいつらの恩人でもなんでもないだろ?
ネタバレRTAできんのは、ゲーム法則か?
確固たる原作があれば“展開のメタ読みだから”って言えるけど……ジャンルも主人公もコロコロ変わりうるのに、それはない。
あるとすれば“時間停止バレはエロイベント発生を阻害する”からだ。
つまり、タネツケ司令にまだエロイベント発生フラグが残ってるってことか?
うーん、ネームドを簡単に始末できないのと同じ法則?
「貴様らこそ、私が奴を知らないという前提で話しているだろう」
「ええっ、ま、まさか」
「総帥は彼の伝説の傭兵を知っているのか!?」
知らねーよ。
けど、このままじゃ話が進まん。
「ヤツは世界中で能力を使い、目についた好みの女を凌辱している。貴様らの過去は最悪だが、同様の目にあっている者がどれほどいるか、想像もつかん」
「確かに彼は複数の性的暴行で訴えられているが!」
「そ、そのような証拠がありますの?」
俺が知ってるって言ってもダメかー。
なんで、そんなにあの男の肩を持つんだ?
別にスター的な存在でもない、それなりに有名ってだけだろ?
敵対することになっても気にも留めてなかったじゃねーか。
「私の言葉が証拠とならないか。だが、私は貴様らの主として、奴を倒さねばならん」
「始末する分にはかまいませんけれど……」
「命令とあらば支配下に置いてみせよう!」
殺すのはOKなのか……お前ら奴の敵なのか味方なのか、どっちなんだよ……。
奴が犯人だと、なんか不都合でもあるのか。
いや……不都合あるのはゲームの方か。
連中の始末も含め“ゲームが終わる”までできないと考えるべきかなぁ。
立ち絵のあるネームドを雑に殺させないための修正力が働いてるとか?
まあ納得したら、二人とも無言で復讐最優先になりそうだもんな。
けど、将軍は顔バレしてるからダメだろ。
出合い頭の能力発動ってのは、フィクションじゃ抵抗側が絶対有利。
長官もさっき、既にテレポートを見せてるから対策を……いや、時間を与えなければまだいけるか?
「……わかった。奴が犯人と信じられんなら、これ以上は言うまい」
「いえ、信じないというわけでは……」
「さすがに突拍子がなさすぎるぞ!」
気を使われてもなぁ。
原作()のタイムスケジュールを想像すると。
たぶん将軍が拉致されて、お約束で一週間後に長官がNTR(部隊名)基地を襲撃した可能性が高い。
ゲーム内でお前一日に何回ヤってんだよってゲームも多々あるが、CG数が限られたヤツはむしろ適当に時間をホイホイ飛ばすのが普通だ。
エンディングで唐突に半年後とか数年後に飛んで、結婚済ボテックスになったりな。
こんなヒーロー系舞台なら、タイムスパンの様式美は取り込むだろ。
イベント1枚で一週間、13枚で1クール……いや、そこまでのこだわりはないか。
だったらこんなネーミングにしてないよな。
ともあれ迅速に進めて万全の俺らが今、突入すれば……勝てるか?
場所はあの採石場近くってもうわかってる。
テレポート対策には、それなりの時間が必要のはず。
ここで奴らを始末して、このゲームを完全に百合ゲーに変えてしまえば、不安要素がかなり減る。
対サイコレズに専念できる。
けど、俺以外が連中を非能力者と考えたまま油断して敗北、エロイベント……十分ありうるな。敵を低く見積もって上から目線で登場するヒロインは敗北フラグだ。
それに“敵に捕まって”ってやつは主人公と関係ないことが多い。
アリスソフトでも敵側に捕まって凌辱されるシーンがよく挟まれてる。
救済前提でも、あの手のイベントはたいていキツイ。
正直、性的トラウマを抱えたこいつらに味わわせたくない。
俺自身もあんまし見たくない。
でも、ここでオナホちゃん連れてアジトに帰ると、俺のトラウマというか立場が……!
チョロイから、サイコレズに渡して調教してもらうのも選択肢だけど、それをすると奴の主人公力が上がってしまうし……俺もセットで調教されそうだし……。
おっと、二人が怪訝な顔してる。
熟考してる場合じゃないか。
「……ひとまず、それでもよかろう。奴の時間停止能力は私にとっても脅威だ。慎重に動くべきだからな」
「「…………」」
無言で二人して目配せすんなや!
長官、お前ちょっと肩すくめただろ!
クソがー!
この件を口にするほど、俺の人望が下がってる気がするぞ!
もういいよ! 次のイベント候補はお前らだからな!
「まあいい。長官、アジトの最下層の適当な部屋に我々全員を転移させろ。気絶しているこの女も、だ」
「えっ……了解いたしましたわ」
とにかくCG回収がいったん終わったオナホちゃんをアジトに収監する!
ほっとくと奪回されるかもしれんからな!
堅実に行こう!
参謀とちょっと会うくらいは我慢だ!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
というわけでアジトに戻ってきた。
一つ屋根の下にサイコレズ参謀がいると思うと、ぞわぞわする。
さっさと済ませて、将軍か長官でエロイベント発生させんとな。
「ここですけれど。せいぜい地下二十メートル程度ですわ。地上へのテレパシー発信について万全とは……」
「地上は普通に市街地だからな! 山中というわけでもない!」
まあ、換気口こそあれど、長官のテレポートでしか出入りできんらしいけど。
そんな地下からでもテレポート発信があり、敵側が受信したらめんどくさい。
オナホちゃんは……まだ、ぴくっぴくってしながらヨダレ垂らして気絶してるな、ヨシ!
さすがに演技で痙攣はせんだろ。
「だから、私が地下100メートル以上を穿ち、この女の独房にする」
「総帥自ら行うのか!?」
「このアジト自体が、そうして私が作った穴へ適当な内装を行っているだけだからな」
能力で地面消去しながら、アリの巣みたいに掘って作り。
参謀の能力と、ドクターのクローン労働者で内装を整えたらしい。
資金は参謀と長官から、インフラや設備用機材は買い出しと窃盗で入手。
地道な建設法だよな……。
「それはそうですけれど、この女にそれほどの価値が……?」
「特殊能力者はいくらいてもいい。この能力が我々のものとなれば、大きな価値がある」
「テレパシーがそれほど役に立つとも思えないが!」
「私たちに比べて、矮小な能力ですわよね」
なんで他ネームドに関して、お前らバカになるんだよ……。
TCGとかやったことねーのかよ。
シナジーとかあるだろ……。
派手な能力でも、隠れてる敵に気づかなかったら見過ごしちゃうだろが。
こいつがいたら、将軍は洗脳漏れを即発見できるだろ。
長官なんか視認なしでテレポートできるんだぞ。100メートル先からテレパシーで標的誘導してもらって、あの脳みそ部分転移したら確実に死ぬ。俺と参謀を除いては。
「私は価値を見出している。参謀とドクターを呼んでおけ。発動中は危険だから、近づくなよ」
それだけ言って能力発動。
参謀が来る前にゴー!!
能力発動しながら、下に向かって移動しようとするだけで地面が消去される。
音も何もなく、すうっと地面が抉れて行くんだよな。
トンネル工事とかでマジ便利そう。
意識すれば体がうまく下へ下へ向かってくれる。これって引力から完全解放されると地球の自転でヤバいことになりそうだけど、雑なエロゲだけあって能力は本当にご都合だ。
普通に消したいものだけ消していける。
たぶん、重力を適当に消去して空飛んだりもできるんだろな。
両手を広げれば、横幅も広がる。
上に燃え上がるような黒い炎で、天井も高くなる。
完全に垂直に下ると、出入りに長官の能力が必要になってしまう。
スロープ風に下へ坂道を穿っていこう。
消滅した質量がどこにいってるかとか、原子分解ですらない感とか、いろいろこわいけど。
深く考えないことにする!
今はサイコレズ参謀の方が怖いしな!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
考えながら下へ下へと……けっこうな距離を進んだ気がするな。
一直線も何だから折り返しの、階段の踊り場的な場所も作っている。
明かりもないので、上にいる長官たちの姿はとっくに見えない。
というか真っ暗闇だな。
能力の黒い炎に包まれてる以上、俺がダメージを受けることもないわけだが。
そろそろ……
「地下100メートルを過ぎました、デスアクメ様」
え゛
「念のため、もう少し掘っておいた方がいいですよ。デスアクメ様」
「さ、参謀」
「はい。あなたのサイコレズ参謀です」
耳元で囁く声の主が、背後からねっとりと抱きすくめてきた。
能力、しっかり発動してるよね?
やっぱり
いや、俺がこいつの一部って言うか、こいつが俺の一部って言うか。
うおおおん、完全屈服したまんまってことじゃん!!
「あ、ぁ♡」
「ほら、もう少し深く。ふかぁく、進んでいきましょう」
おま、耳舐めながら……指ぃ!
能力発動してる最中にこんなことするなぁ!
俺、暗視能力とかないんだぞ!
顔も見えんし真っ暗な中で、感触と声しかわからん!
なんかいつもと違って、淡々としてない?
声が冷たくないっすか、参謀さん!
「暗い、み、見えておらんというのに……あ、危ないだろうが!」
「私は吸血鬼ですから、デスアクメ様の慌てている顔がよく見えますよ」
「ふぐっ♡」
「どうして慌てるんです? 私がいると困るんですか?」
うわあああああああああ、まずい!
なんか世界がカチっと切りかわった!
イベントCGだ!
これエロイベントに突入してる!
能力発動で下着がないから、別の意味でも突入されてる!
ちくしょー!
真っ暗な中だと背景も黒一色でCG作成も簡単ってか!?
暗所恐怖症になるぞ!
将軍に長官!
確かに呼べとは言ったけど、あくまで全員に情報共有させる意味だろ!
なんで作業中の俺の背後に、
「待て待て待て! こんなことを、していたら、あの女が目を、さます……ぅ♡」
だから指止めろぉ!
「ドクターに投薬させてきました。数時間は目覚めません」
「そ、そうか。さす、がだ――にゃぁあああ♡」
なんで対ネームドはバカムーブなのに……こんな時だけ賢くなるんだよ!
オナホちゃん放置してたらテレパス発動で、こんなことしてる場合じゃなくなるのに!
エロイベントはすべてに優先されるとでも言うのか!
「ところで、彼女はどうしてあんな状態に?」
うわああああ、マジ声こわいいいい!
「あ゛っ♡」
「まさか、こんなことをしたのですか? それとも、こんなことを?」
「ひぎっ♡」
「教えてくださいよ」
「ゆ、許して……」
「何をですか?」
うわあああ、全員そろって報告会的なことしてから作業すりゃよかった!
でも、
誰か助けにこいよおおおおおおおおおおおお!!!!
助けてくれよおおおおおおおおおおおお!!!!
吸血鬼から逃げるため、闇の中に一人孤立するという愚行。