斜め下に抜きゲー悪役TS転生   作:神谷涼

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3:言葉で会話しようよ

「ハッ、夢!?」

 

「……何がだ」

 

 がばっと身を起こしたサイコレズ参謀の背中を踏みつける。

 どうせ喜ぶだけだしな。

 

「アーーーッ! デスアクメ様! おみ足が直接、私の体に!」

 

「…………」

 

「ピャーーーッツ!! ぐりぐりされてりゅううう!!」

 

 またビクンビクン跳ねてる。

 ……この女、本当に組織の実務運営してるんだよな?

 記憶によれば、実際の組織運営をしてるのはコレで間違いないんだが。

 チョロイとかって次元じゃなくて、怖くなるんだけど。

 

「騒ぐな。貴様に任務を与える」

 

「ほわあああああ!!!! ほわあああああ!!!!」

 

「騒ぐなって言ってんだろが!」

 

 ずどむと、脇腹を思いきり蹴ってやったら吹き飛んで壁にめりこんだ……。

 この体、どんなパワーやねん。

 ゴリラかよ。

 エロゲ攻略対象なら、もっと能力頼りでいいだろ。

 

「ごふっ! ごぼぼぼ、ご褒美です! ありがとうございます!」

 

 そんで吹っ飛んだ本人はこの反応だよ。

 本人、吐血しながらキモい笑顔浮かべてるし。

 

 ノリといい、流れといい、やはりゆるいエロゲ感あるな。

 原作知識があれば、もうちょっとコイツについてわかるのに、現状ではコテコテなキャラって印象しかない……。

 体にあった記憶通りの能力なら、それなりに苦労してそうなんだけどな。

 

「頼むから、話を聞け」

 

「アッハイ」

 

 サイコレズ参謀が正座すると同時に、すうっと吐血してた血が消える。

 すごい色になってた脇腹(蹴ったトコ)も、キレイに治る。

 記憶通りの能力、というか特性。

 

「貴様にしかできん仕事だ。恥を忍んで頼みに来たのだから、真面目に聞け」

 

「ははーっ!」

 

 そのまま頭を下げ……って正座しながら下げるから土下座じゃん。

 

「業務に忙しい貴様に頼むのだ、頭を上げよ」

 

「いえ、偉大なる総帥デスアクメ様の前に、私如きが頭を上げるなんて!」

 

 顔だけ上げて上目遣いしてきた。

 えらく卑屈だなーって思ったら、視線ンンン!!

 こいつ、ローアングルからこの体(おれ)の股間しか見てねぇ!

 女が胸に視線きたら気づくしキモいってのが魂で理解できるわ!

 俺が凝視されてるのは股間だけどな!

 

「………………まあ、仕事とはいえ、貴様には褒美かもしれんな」

 

 そんなに見たきゃ見てろやクソが。

 目の前で敢えて、ヤンキー座りになってやる。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 本人の前なんだから、少しはごまかせよ。

 お前ホントに外部交渉とかできてんのか……腹芸とかできるの?

 ブバーッって鼻血、噴いてるし。

 やっぱギャグ寄りのゲームなんだな、コレ。

 こんなネーミングで重厚鬱ゲーだったりしたら、別の意味でレジェンドになってるだろ。

 

(ぶふっ)

 

 サイコレズ参謀の噴き出した鼻血がすごい勢いで鼻の中に戻ってる。

 思わず、吹き出しそうになって抑えると。

 

 あ、やべ。

 

「ひ、ひぃ! すみませんすみません! 真面目に聞きます!」

 

 例の万物消滅オーラが全身からあふれ出した。

 こんなことで発動するの、ホント不便すぎるだろ……。

 サイコレズがローアングラーやめて、怯えた顔になってるし。

 

「あ、ああ……あー。すまないが、貴様の仕事はこれに関することだ」

 

「は、はい、なんなりと!」

 

 確かに怖い能力だからなぁ、さっき幹部連中が怯えてたのもこのせいか。

 利用される可能性もあるけど、こゆのは勘違いを重ねるよりも先に理解者を作っておきたい。

 俺としては、幹部全員お互いの能力とか目的とか、しっかり共有させたいんだよな。

 

「私の能力の発動条件を知っているか?」

 

「デスアクメ様の憤怒と絶望が臨界点を超えた時、世界を滅ぼす力の一端が黒き炎として具現化し、煩わしきすべてを抹消すると伺っております!」

 

「え?」

 

「憤怒と絶望が臨界点を超えた時、世界を滅ぼす力の一端が黒き炎として具現化――」

 

 やめて。

 厨二病は元三十路男の心を抉る……。

 何ほざいてくれてんだ元の体(おれ)

 

「あ、ああ。その点には誤解があってな」

 

「なんと!」

 

「実は私の能力は、他の感情でも一定以上に昂れば発生してしまう」

 

 これはなんとしても誤解を解かなければ。

 能力説明されるたびに、俺の精神がダメージを受けてしまう。

 

「すると、今の発動は私に絶望し、私を滅ぼすためのものではないと!?」

 

「違う。先ほど、貴様らの前で玉座を台無しにした時もそうだ」

 

「で、ではデスアクメ様は何故、能力を……!?」

 

 おお、真面目な顔できるやん。

 常時そっちでいてくれたら、もっと好感度稼げるよキミ。

 ただ、今度はこっちがシリアスな顔しづらいんだよな……。

 一部はちょっと作り話にしないとだし。

 

「あーー、その、だな。実は少し力むと簡単に発動させてしまうのだ」

 

「は、はぁ」

 

「今のは、貴様が噴き出した鼻血が凄い勢いで鼻に戻っていくのを見たら、吹き出してしまいそうになって。それを我慢すると……その、な」

 

「…………」

 

 えっ、なんで無言でスマホ出してパシャパシャしてんの。

 

「さ、さっきもそうだぞ。あの将軍のクローンが、ぴっちりスーツに真顔で並んでるの見てるとシュールな笑いが……わかるだろ?」

 

 実際はこいつらの名前に反応したんだが、そこを言うと憑依転生の話になっちゃうからな。

 

「なるほど」

 

 真顔棒読みでスマホ向けてんのやめろやって……えええええ?

 こいつ、鼻から鼻血出しては戻し、鼻血出しては戻しを高速でしてやがる!

 

「ぷふっ! 貴様、鼻血……」

 

 敢えて笑うのを我慢せず、吹き出す。

 いかん、これはツボにはまった。

 抑えるとあのオーラも出るし、思いきり笑ってしまう。

 

 ひとしきり笑って気づくと。

 

「尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い尊い」

 

「お、おい、大丈夫か参謀」

 

 なんか虚無な表情で同じ言葉繰り返してて怖いんだが。

 しかもまだパシャパシャ撮影してるし。

 まあ、いいか。

 さっきのストーカーモードよりマシだ。

 それに、こいつなら能力について明かし、相談する意味も理由もある。

 

「そこで、貴様に頼みたい。これからの活動のため、能力制御を手伝ってもらいたいのだ」

 

「トウトイトウト――はっ、はい! て、手伝うとは、どのようにでしょう」

 

 おお、戻った。

 

「貴様以外では能力上、問題があるのでな」

 

「は、はい。光栄ですが……」

 

「私が能力を発動させても、着衣は消滅せんだろう。消滅させる存在を、無意識下で選択できてはいるのだ」

 

「なるほど、確かに気になっておりました!」

 

 全裸にならねーかなって期待してただけだろ、お前。

 

「意識的に消そうと思えば衣服も消せるがな。制御できれば夢見次第で逐一、寝具を無駄にすることもなかろう。この玉座もこんな有様にはならなかったろうしな」

 

「確かに……しかし、私めに何を手伝えるでしょうか」

 

 正直、さっきからのやりとりだけで、こいつにあまり近づきたくなくなってきたのだが。

 現状だとコイツが一番裏切りそうなんだよなぁ。

 触れさせてもくれない私より、初めて味わった肉棒が……みたいな流れ、いかにもありそう。

 だから今を犠牲にしてでも、未来のためにコイツの忠誠心を高めておく必要はある。

 忠誠心っていうより、依存心とか執着心だけどな。

 

「うむ。立つがよい」

 

「はい」

 

 私が立ち上がると、素直に立ち上がった。

 さすがに、またローアングラーにはならなかったな。

 

「こういうことだ」

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!」

 

 立ち上がったサイコレズに、両手を広げて抱擁してみると……予想通りの反応だな。

 このテンプレ感、セリフのテキストオンリー感。

 キャラの名前から考えてもボイスなしの同人エロゲか?

 やっぱツクールゲーかもしれんな。最近は戦闘ほぼないのも多いらしいし。戦闘員とひたすら戦闘するRPGもありえるかもしれんが……。

 

「騒ぐな。この状態で私の能力を発動させたくない。まあ貴様ならば痛い程度で済むだろうがな」

 

「ファーーーーーーー」

 

 言葉で会話しろよ。

 お前、どんだけ奇声あげてんだよ。

 身長差のせいで、こいつの顔が俺の胸に埋もれてるけど、もう逐一気にせず進める。

 

「ともあれ、私は同志たる貴様たちを能力に巻き込みたくないのだ。衣服と同様、私のものだと強く認識できれば、敵や障害物のみ消滅させもできるからな」

 

「バブーーーーーッ」

 

 こんなでも話自体は聞いてるみたいだし。

 

「なにせ貴様は不死身の吸血鬼だからな。うっかり発動させても安心だ」

 

「ハーーーーイ、バブーーーッ」

 

 こんな、イクラちゃんみたいな反応してる奴が何百年と生きてる吸血鬼とは思えんが……まあ、同人抜きゲーに深い設定がないのはよくあることだしな。

 一応記憶によれば、肉片一つでも残ってれば日没に復活できるらしい。

 負傷しても、すぐ再生する。

 再生能力以外もなんか吸血鬼っぽいことできるらしいんだが、元の体(おれ)が自分以外に興味なかったせいでよく知らん。なんでこの体(おれ)を上に立てて、悪の秘密結社してるのかもわからん。

 直接会ってわかったのも、鼻血をやたら出すって程度だ。

 シリアスなゲームなら、俺の能力で死ねない己を殺してもらうためって流れだろけど……このノリでストーカーしてたら、望まなくても消滅させられてるだろ。怯えた顔してたし、コイツの目的もよくわからん。単に俺を推してるだけとかって方が、ありそうに思える。

 

「……とにかく、私としてもなるべく貴様に触れて慣らしてゆく。貴様もせいぜい、私を驚かさん程度には触れていろ」

 

 相手がコイツじゃなかったら酷い命令だな。

 

「ファーーーーーバブバブ!! チャーン!!!!」

 

 ……本当に話聞いてるのか?

 顔を覗き込んでみると同時に、ぬるっとした感触。

 

「ひゃっ!? た、谷間を舐めるな!」

 

 思わず一瞬だけ能力発動したじゃないか!

 ていうか、これっていたす時も発動するのか!

 エロゲキャラにあるまじき無駄なエロ難度しやがって!

 これ絶対、能力無効化アイテムとか使われるやつだろ!

 

「ハァハァハァ……慣れるためですよぉ、デスアクメ様」

 

「粘膜接触までは許しておらん!」

 

 こ、コイツ舌やら体のあちこちやら消滅させられてるのに瞬時に再生して……!

 

 これは……はやまったかもしれんね。

 

 





タイトルに「TS」を入れました
タグには入ってるけど、勘違いさせると申し訳ないし……
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