「あら?」
ヤツの肉片を連続転移させていた長官が、ふと首をかしげた。
「どうした」
「い、いえ気のせいだと……えええ!?」
「何が起きているか――」
いや、教えられるまでもない。
わかった。
「デスアクメ様、扉が!」
転移させて配置変更した扉の位置が戻ってる。
抉れた窪みだらけの床の形も、変わって……ほとんどなくなってる。
なにより。
「肉片の残りが消え――」
そうか。
残ってた一人、博士の助手。
「巻き戻し……リセット能力か!」
「そんなのアリですか!」
あったんだからしょうがねぇだろ!
てか、時間停止があった以上、想定しとくべきだった……クソがー!
「状況から他にない! 私の能力外に出れば記憶も巻き戻されかねん! 参謀、扉の向こうを探れ! 博士とその助手の居場所を確認しろ!」
全員の記憶だけ持ち越し?
それはないはずだ、世界規模の巻き戻しで選別とかできん……お約束通り能力者のみのはず。
俺らが記憶維持してるのは、俺の能力で干渉無効できた結果……!
「私のコウモリの場所も戻ってます……き、気持ち悪い……酔う……吐きそ……」
お前、俺の背中から抱えてる状態で吐くなよ!
頭と背中にぶちまけられるじゃねーか!
「がんばれ。こいつらを始末したらなんでもしてやる」
「ん? 今なんでもするって言いました?」
お約束リアクションだな、おい!
余裕あるじゃねーか!
「が、外部に発信する類以外なら、本当になんでもだ。あ、しかし痛いのはやめてほしいが……」
「うひょぉおおおおおお! わかりました!」
頭に鼻血ぶちまけてるのわかってるからな、このヤロー!
しかも再生能力で鼻に戻っていく感触まで……。
「いいんですの?」
「大丈夫か!?」
「仕方ないだろうが! 貴様らも臨戦体勢を崩すな」
貞操奪ったばっかの連中に、俺の貞操が心配されてんじゃねーか!
「標的、扉の外に出現しました!」
よし、ヤツに記憶は戻ってない!
巻き戻し時間もそんなに長くない!
しかし繰り返されると博士だか助手だかから正解を引かれる!
「長官、同パターンで対処。参謀、博士と助手を特定、可能なら始末しろ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「やはりヤツに記憶はないな……」
種付け野郎はあっさり殺せた(二回目)。
「しかし、また巻き戻しが!」
そうなんだよな……。
「うぐぐコウモリがまた戻って……! ぎぼちわる……」
「一日、奴隷になってやるからがんばれ!」
「うひょぉおおおおおお! わかりました!」(二回目)
しかしまずいな、コウモリだけじゃリセットしてるヤツを倒せんらしい。
狼も出せるらしいが、キャパ的に一体が限度らしいし……コウモリと併用は困難らしい。
アーカードの旦那みたいには行かんか……。
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種付け野郎はあっさり殺せた(三回目)。
「どうにか進展させねば、繰り返す中で対策を編み出されてしまうか」
「し、しかしデスアクメ様……コウモリでは、うぷ……普通の銃弾でも、対策されます」
「不利な状況ですわね……」
「さ、さすがに巻き戻しの繰り返しは……ぎづい……」(ちらっちらっ)
参謀テメー、物欲しげな目で見てんじゃねーよ!
味をしめやがって!!
「参謀、コウモリは一度消せ」
「えっ……は、はい」
なんだよ、その露骨に残念そうなツラは。
「よし、私の血を吸いながら新しく作れ」
「えっ」
「あ、アレをしながら戦うのか!?」
「さすがに不謹慎では……」
仕方ねーだろ。
「参謀、私とより深くつながり、私の能力をまとったコウモリを作る。そして標的の肉体を物理的に――」
「巻き戻しですわ!」
「くっ、とにかく次はその手順だ! ヤツの始末と同時に――あっ♡」
「ふぁい♡ わひゃりまひは♡」
いきなり噛むなー!
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四回目。
「あば……な、ぐ……」
「殺し損ねましたわ」
「
「おぼ」
「だがもう死んだな!」
吸血しながらコウモリ操作は、参謀の精密性に難アリか。
というか、俺には参謀がコウモリを通して見てるものがわからん。
同調っても、そこまではいかないか。
それに俺自身、吸血されながら能力保つのが厳しいんだが……。
「おっ♡ おっ♡ あっ♡」
吸血でシンクロ率上がってる中、体が過敏化してこいつら三人に密着してるのがやばい……。
「あっ、巻き戻しですわ」
くそ、次の巡目で……どうにか……!
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五回目。
「あびゃろろろろろろろろろ!!!!」
うわー、キモいおっさんがぐちゃぐちゃになってくぞ。
「なるほど。想定される時間停止タイミングで周囲の多数の瓦礫を配置すればこうなりますのね」
「えげつないな!」
位置が変わらないからって、種付け野郎の周囲に瓦礫を転移。
ヤツ自身の体内や対外にも半ば座標固定するようにいろいろ転移させると……時間停止して動こうとしたヤツが自ら引き裂かれるわけか。
それは、いいんだが。
それは、いいんだが!
「んんんっ♡」
げっ、気を遣ったらコウモリに発動中の能力が切れた。
「
わざとやってねーか!
お前、吸血しながらコウモリ出すのに俺の体をまさぐる必要あるのかよ!
脇を抱えてた手がなんで胸やら股間に伸びてきてんだよ!
「また巻き戻しだ!」
「さすがに繰り返し過ぎでは……」
わかってんだよ!
お前らもコイツ止めろよ!
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六回目。
「がああああああ!! 脚がぁ!!」
「上半身だけでも逃げられないようですわね」
「ヤツに記憶がないのが残念だな!」
さらに過激化してるようだが、俺も余裕がない……
「おぉぉぉぉぉ♡♡」
「ふぁー、
おま、ホントに、わざと……やってねぇだろな!
「はぁ……明らかに向こうは妙な動きを見せてますから、次こそ……仕留めますよ?」
「ふぁい♡ がんばり……ます♡」
うわあああああああああ、ダメだ! 俺自身が屈してる!
なんでこんなシチュで俺はエロイベントに陥ってんだ!
サイコレズに隷属反応しかできなくなってるし!
これどういうシナリオだよ!
これで抜けるヤツいるのか!
「次は縦に両断してみようかと思いますわ」
「あの頭部装備が私の洗脳を阻害しているようだし、あれを外して洗脳が効くか試してみたくもあるな!」
「なるほど……なら頭頂部と耳を軽く削る形で」
こんな会話してる横でエロイベントしてどーすんだよ!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
七回目。
「だっ、出せ! 出せぇ――あ……あーーー」
「部分切削しやすいよう床に埋めれば、時間停止も意味がありませんわね」
「頭部ギアを破壊すれば、洗脳も無事に通ったな!」
「今回以後にこの連中を相手にする機会があるとも思えませんけれど」
貴様ら、俺らと別行動しすぎだろ……密着してるのに……。
「ならば、次は――ん?」
「巻き戻しですわ!」
今までとタイミングが違う!
「ぷは♡ どうやら博士を殺しても巻き戻しは発生するようですね……」
「はぁ……♡ っく……助手だ! 助手を不意打ちで即死させろ」
助手がリセット能力として、ヤツに自身の死を察知する時間を与えてはいけない。
俺の万物消滅付与コウモリで、能力自体を無効化しながら殺すしかない……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
八回目。
「だ、誰か! 誰がああああ!」
「今回は手足だけちぎって放置してみましょう」
「この男の生存と巻き戻しに直接の関係はなさそうだからな!」
ひどい絵面だな……。
「さっきのコウモリは相手に察知されましたから、もう一体新しく作りますよぉ♡」
「ああああああああああ♡♡」
こっちはこんな状況だってのによぉ!
「今度は同じタイミングで巻き戻しがきましたわね」
「おそらく脱出ルートを探しているな!」
なるほど、そういうことかー。
逆に言えばコイツを助けには来ないんだな。
まあ、コイツを放置してリセットの対処優先すると、コイツに逃げられそうだし。
次こそどうにか始末しなきゃな……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
九回目。
「やべろ……やべでくれ……」
「たいした負傷歴もなかっただけあって肉体的苦痛に弱いな!」
「ちょっと胴体部にご自身の手足を転移させただけですのに」
横で怖い顔してコワイ会話ばっかするなよ……。
こっちは酷い有様なのによ……。
「ひぃ、あひ♡ まだ、かぁ♡」
「ふぅ……いけました。
「本当、か」
「本当ですよぉ……しばらく様子を見る必要はありますが」
「ならばこの男の危機的状況がスイッチになるか、試してみるか!」
「歴戦の傭兵には、まだまだなまやさしいのかもしれませんものね」
「がああああああああああああ!!!!」
こわぁ。
「では私も能力付与した使い魔をいつでも出せるよう、デスアクメ様と深くつながっておきましょう」
「ま、待て」
「一日奴隷でなんでもいうコト聞くデスアクメ様でしたよね♡」
「う……は、はい……♡」
また体が期待してるし!
はぁ……とはいえ、この種付け野郎には吸血鬼スペックもなさげだし……残りイベントはサイコレズで埋めてしまってもいいか……。
そうして再度の巻き戻しに備え、様子見の間も延々といじめられてしまった……。
横で種付け野郎がさらなるR18Gに陥ってく間にも。
唐突かつ短時間ループ展開。
10分程度の巻き戻しを繰り返してます。
ウツボッキーとソクオチ秘書官はまだ生存。
本作における能力者登場は、今回のヤクヅケ助手で最後の予定。