「ンむ……ん……おわぁ!」
「おはようございます。デスアクメ様」
名前に反応できんくらい怖かったわ。
起きたら目の前に、目のハイライト消えた美人のアップがあるのは心臓に悪いな。
おかげで転生前のこととか思い返すヒマもない。
人生初の朝チュンなんだけど、まったく嬉しくもない。
このアジト地下らしいから、鳥の声とか聞こえんけどな!
「あ、ああ、おはよう。寝ている間に能力が発動したりしなかったか? 腕に力を込めすぎて骨を折ったりしなかったか?」
サイコレズを抱き枕にしっぱなしだったっぽいからな。
寝てる間にサバ折りとかしてないか心配だわ。
「はい! まったく大丈夫でした! 布団も問題なく!」
あー、うん。
布団の中、すごい雌臭いね。
顔がべたついて生臭いし。
脚も妙にカピカピしてるんだが……まあ顔舐めしながら見抜きくらいはもう諦めた。
ただ、この状態であの露出度高い服着るのは、羞恥プレイが過ぎるわ。
「…………シャワー、浴びるか」
「クゥ~ン」
「貴様も来てよいぞ」
「ワフーン!!」
「……赤ちゃんプレイをやめればいいというものではないぞ」
まあ、あの見苦しい状態よりは媚びが見える分、マシか。
こっちの方が普通に撫でてやる程度にはかわいいし。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「あら、総帥閣下。おはようございます」
「よい。食事を中断する必要はない」
朝食は食堂で行うわけなんだが。
食事中だったカベジリ長官が立って挨拶してくる。
急いで飲み込んでるし、なんか申し訳ない。体育会系とか軍隊式とかってそゆもんかもしれんが、落ち着かんだろ……。名前がマトモなら優越感に浸れたかもしれんが、デスアクメだしな。
一方で、サイコレズは朝のシャワーから、まだ再起動せんし。
「おい参謀。今日の業務もあるのだろうが。いい加減、慣れろ」
「ハイ」
声色は少しマシになったかなぁ。
「朝から手をつないでいらっしゃるなんて、お二人は交際を始められましたの?」
そう、手をつないでるだけなのになぁ。
「私としては、それもかまわんのだが。こやつがこの状態ではな」
「えっ、つつつつ付き合ってくれるんですか!?」
ホント、自分に都合のいいことだけは聞き逃さねーなー。
真面目な話振ってもエラー起こしてるのによー。
「貴様が少しはマトモに対応できるようになれば考えてやる」
「まともです! ちょーマトモ!」
「まともではない」
「まともとは言えませんわ」
「そんなー」
なんでコイツ、
……と、長官がいるから、例の件を聞いておかないとな。
「それよりも長官、昨日の件について何かわかったか」
「ハッ、NTRの部隊構成員3名の名前と性別、そして能力については即座に。その他、細かな人間関係などについても調査を終えておりますわ」
「ほう、さすがだな。例の司令と博士についてはどうだ?」
「彼らについては未だ不明ですの。部隊メンバーについては、予算獲得のため広く告知されておりましたけれど、裏方である彼らは経歴にも不明な点が多く……」
「おそらく公的な記録に残ってはいまい。連中も能力者だろうが……おそらく能力自体を隠し続けているはずだ」
「それは……さすがに即座に特定とは……」
「うむ。推理や憶測の領域となる。サイコレズ参謀」
「はぁはぁ、私とデスアクメ様が恋人同士……」
「話を聞け! 貴様も調査を行え! 過去案件から分析しろ!」
「ぼぎゃぶ」
簡単に吹っ飛んで壁にめりこんで肉塊になってるな。
ホントに戦闘力高いのか、コイツ……あと、頭いいってのも疑わしいんだが。
「長官、食事を終えたら適当にコイツを連れて行って手伝わせろ。構成メンバーについての情報は会議報告の前に、書類をよこせ」
「は、はい。承知いたしましたわ」
「食事中にグロテスクなシーンを見せてすまんな」
なんかケチャップ系とかジャム系食べるのヤになったし、ごはん系にしよかなぁ。
クローンも食うから、割といろいろあるんだよな。
作ってるのもドクターのクローンなんだが。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そんなわけで、朝食を終えた頃。
長官から書類が渡された。
メールとかファックスじゃなく、手渡しなのね。
ドクターはあくまでバイオ系みたいだし、メカニック関連はこの基地も一般住居並みか。風呂もでかいけど、別にハイテクじゃないし。
参謀の部屋のモニターと盗撮器具は、あくまで参謀のプライベートの品だからな。
そんなわけで、まだカメラや盗聴器が残ってるだろう自室を避けて、サイコレズ参謀の部屋に戻ってきたのだった。
会議じゃなく書類でもらったのは理由がある。
会議中にタネツケ司令だのハラマセ博士だのみたいな名前を聞かされたら噴くし。
キャラ崩れたツッコミ入れたり、能力発動したら言い訳がたいへんだからな。
一人で先に読んでおこうというわけだ。
さすがに部隊名NTRでこれ以上ネタはないと思いたいが。
油断はできん……。
念のため、ベッドには座らず立ったまま読む。
おお、丁寧に顔写真付きか。
タネツケ司令とハラマセ博士はわかりやすい顔してんなー。
エロゲ竿役以外ありえん顔だ。
で、新しくわかった隊員は――
『
特殊能力はエネルギー放出。
波動拳とか、かめはめ波とか撃てるのね。公的に知られる特殊能力者では火力最強らしいけど、俺の能力が明らかに上位互換だよなぁ。
ファーストネームでアレかなって思ったら、顔がモロにデスノート主人公じゃねーか。
顔ヨシ、学歴ヨシ、身体能力ヨシ、親は警視庁エリートと……版権コピペキャラか!
で、後述の同部隊メンバーと婚約関係。やっぱ寝取られ男なのね。
容姿と能力ゆえ大学時代からファンが多く、カベジリ長官と同級生。
長官も寝取られヒロイン候補なのかな。
で、周囲からのあだ名は“ウツボッキー”――
んんん?
宇津保月 → ウツボツキ → ウツボッキ
……いじめか?
いじめでも普通、呼ばんだろ。
(二度見)え? マジで“ウツボッキー”って呼ばれてるの?
ファンが多いって、女子から黄色い声で“ウツボッキー”って呼ばれるの?
地獄か?
しかも、婚約者から今もそのあだ名で呼ばれてる?
おそらくは部隊でも???
地獄か????(二回目)
やべぇな。予想よりさらに下だわ。
この世界、こんな名前を真顔で言わなきゃダメなの?
別の意味であなどれんぞ“NTR”……。
『
特殊能力は飛行と高速移動。無難な主人公能力だな。
顔は、線が細くて中性的なタイプ。ジュニアアイドルタイプとも言えるか。
ふんふん、一応防衛大学の現役で能力の強さからスカウトされたと。
見た目に反して身体能力は高く、能力のための演算能力も高い、と。
ハメゴイ将軍の従兄弟で、かつての関係性は良好と。
うーん、こいつだと将軍が単独で寝取られヒロインか?
線の細さから、多数の女装コンテスト優勝経験あり。よくある設定やね。
そんで同性ファンも多く“メスイキくん”のあだ名で親しまれ――
やめたげてよぉ!
なんで逐一そっち方面にあだ名つけるんだ……!
もっと他にあるだろ!
どっかに同姓同名の人がいたらどうすんだよ!
こいつ絶対、途中でTSするか女装レイプされるヤツじゃん……。
将軍が寝取られた後かもしれんが、逆に将軍に寝取りビデオレターが来る可能性もあるな。そんでキレた将軍が殴り込んで捕まり、ケツを並べてヤられるって展開も容易に想像できる。
無駄な性的多様性を入れやがって……。
『
もう何も言いたくねぇ。
特殊能力は意識同調……テレパシーと感覚共有か。
エロ目的で使わされてエクスタシー2倍とかされるヤツやろ。最初に司令か博士がスタッフAをアレコレしてるのに気づいちゃったりしてそのまま……ってヤツじゃん。
顔はおとなしそうな黒髪ヒロインタイプ。
警視庁長官の孫で、ミスコン優勝経験者ね、ハイハイ。
で、これがさっきのウツボッキーの婚約者……。
さすがにこれは、俺でもわかるお察しな名前だぞ。
ほらなー、あだ名が“オナホちゃん”じゃん。
笑うしかねー……いや笑いごとじゃねぇだろ。
これが人格と人権ある人間につける名前かよぉ!
このゲームの作者、人の心とかないんか?
ゲームなら笑って見てたかもしれんけど、実際に転生したらムゴすぎて見てらんねぇよ!
ポリコレどうなってんの、この世界……。
とりあえず、このチョロインを拉致すれば、あるかもしれん原作()のストーリーは大きく変わりそうだが……司令&博士のチート能力であっさり取り返された上、精密検査と称してアレコレされる流れもありそうだなぁ。
やっぱまずは司令と博士の能力分析をすべきか。
はぁ……疲れた。
数人の人名を見るだけで、ここまで疲れたことが俺の人生にあっただろうか、いやない(反語)。
案の定というべきか。
書類を見ている間に何度か能力発動したらしく、天井と床の一部が抉れてる。
それにしても…………デスアクメでまだよかった。
たった一日で認識を変えられてしまった。
「これに比べればマシ」それだけで人は救われるんだな。
人類がここまで非実在人物に残酷になれるとは……。
男で主人公サイドに転生して、ウツボッキーとかメスイキとか呼ばれてたら、まともにやっていけた自信がない……。いや、TS転生でオナホちゃんって呼ばれる方がもっと酷いか。上司が明らかにアレだし。
真剣に自殺を考えたかもしれん。
ホントに、デスアクメがまだマシだとは……。
サイコレズもヤクギメックスもハメゴイもカベジリも、こいつらに比べればマシ……。
すまんな主人公サイド(たぶん)。
お前らには(精神安定剤として心の中で)しばらく踏み台になってもらうわ。
問題は、昼からの会議でこの名前を連呼することになりそうってことだよ。
長官や将軍は関係者らしいし、こいつらのことあだ名で呼ぶのかなぁ。
本名で呼んだげてほしいなぁ。
実際にこういった名前の方がいたらすみません……。
同じく、作者の知らない作品にこういう名前のキャラがいたらすみません。
本作に実在の特定人物の名前を揶揄する意図はありません。