「この衣装を私が着るのか?」
ウソだと言ってくれよ。
「はい! デスアクメ様の魅力を最大限発揮するなら、やはり黒!」
「私も賛同いたしますわ。それに、バストサイズを考えると胴を締め付け、ボディラインを強調した方がよろしいかと」
「対する私が白タキシード風だからな! 似合うぞ!」
だからって黒ゴスロリかよ。
しかも下半身の前オープンで見せパン、上乳シースルーで谷間見えるやつじゃん。
チョーカーやチェーンもあるから、ボンテージ系っぽくも見えるな……。
総じて単に別ベクトルの悪役衣装では……。
「貴様ら、私の年齢を知っているだろうが」
老化を消去して十代の外見にしてるけど、三十歳やぞ。
二十代後半で転生した俺より上だぞ。
「私だってもう800歳超えてますが、色違いドレスでデスアクメ様とステージに立ちたいですよぉ!」
「私とて、晴れ舞台に立ちたい気持ちはありますのよ」
「晴れ舞台はともかく、この衣装は……」
どう着るのかもよくわからんし。
何より、このレースまみれの衣装になるのは、今のラテックス系悪役衣装とは別のハードルが……。
「とにかく着てみるべきだろう! 食わず嫌いはいかんぞ!」
「そういうわけですから着替えましょう!」
「ちょ、貴様、この場で脱がすな!」
「一人で着れるドレスではありませんもの。女所帯ですし、お気になさらず」
「気にする! おい、参謀! 貴様に着替えさせてやるから、他二人はひとまず出ろ!」
「うひょおおおおおおおおおおおお! 二人とも出てください! はよ!」
サイコレズ、ブレねーなー。
「私も新衣装に変わる様子を見たいのだが!」
「私も衣装選択に大きく関わった身として気になるのですけれど」
「着替えてからでいいだろうが!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「恥じらうな! 堂々と振る舞ってこそ舞台の華だ!」
「えぇぇ、デスアクメ様の貴重な羞恥顔なのに……」
「身内が見るなら眼福ですけれど、舞台上ではそうもいきませんわ」
「くぅ……貴様ら、好き勝手を言いおって」
ハメゴイ将軍は仕方ないけど、他二人は仕事しろよ。
参謀は、そのテレビ局で使ってるようなカメラどっから持ってきたんだよ。
「リラックスだ! 本番で能力発動すれば、全裸だぞ!」
「ううう、それは嫌だぁ……」
「半泣き顔いただきましたあああああああああああああああああ!!!!」
うるせぇ。
実際、最初に着替えて披露したら、こいつらの反応が恥ずかしくて思わず能力発動して消滅させたからな。
結局は全裸を披露してしまった……。
「第一、本番で総帥に視線が集まり過ぎては、私の洗脳の効きも悪くなる」
「そこは、私がステージに立つ時点で同じではないか?」
「同じではない! カップリング効果だ! 私がソロで立つより、二人で異なる支持層から視線を集め、二人が接した瞬間に私の能力を発動すれば効果範囲も広がる!」
「そうですわ! 男装女子に興味のない連中も、総帥のフェミニンな魅力に引き寄せられましてよ!」
お前ら、今回はえらく仲いいな。
「私がデスアクメ様との王道カップリングなのにぃ……」
しかし、話のノリがバカエロゲから、ゆるい日常ギャグになってきてる気がする!
これはエロフラグに対するカウンターとしてでかいのでは?
こんな空気の組織が無様屈服させられるのは、胸糞展開ではないか?
原作展開を崩せてるのでは?
組織内の空気も「失敗には死あるのみ!」みたいなノリじゃないしな!
作戦実行までは3日。
思ったより時間があると考えるべきか、ないと考えるべきか。
本音を言えば作戦前に連中を始末したかったが、それは幹部らも納得してくれなかったんだよなぁ。まあ、普通に考えたら下手に動くと作戦に支障が出るからしょーがないんだけどさぁ。
現時点じゃ、連中の脅威度認識も高くできないし……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
レッスン2日目。
作戦実行は明後日だ。
「こうだ! 私たちの顔が近づいた瞬間、ちらっとカメラ目線! ここで能力発動するぞ!」
「ギニャー! デスアクメ様と顔くっつきすぎですよ!!」
「毎晩、私の顔を嘗め回してる貴様が言うな」
カベジリ長官はさすがに今日は来てない。
来てたら、この組織の運営が本格的に心配だ。
サイコレズ参謀はずっといて、大丈夫なのか? お前、組織運営担当ってはずじゃなかったっけ?
「もっと谷間を強調しろ! 尻を振れ!」
「生放送されるライブで大丈夫なのか?」
「大丈夫です! もっとやってください!」
「貴様には聞いておらん」
まあ、衣装と羞恥心には慣れてきた。
そうして気づいたけど……羞恥心とか緊張とかも
問題は“消す”だから、本当に消えてなくなっちゃうんだよな。
乱用してると正気まで消えそう。メンタル的な消去は本気でヤバい時だけ、それも限定された内容にしないと……トリガーを軽くしてると“生きる意志”とか“自己愛”とかも気の迷いで消してしまいかねん。
あるいは俺が転生して入り込んだのも、この体が自分自身を精神的に消去してしまったからとか? たいしてメンタル強かったわけでもなさげだもんな。
かつての
世界征服もなんかノリでやってるだけで、そこまで真剣でもなかったっぽい。
作戦立案は全部、サイコレズ参謀とカベジリ長官らしいしな。
「よし、休憩だ!」
「む。私は疲労も消去できるから続けて問題ないぞ」
「休憩も重要な練習だ! 気分転換しつつ、学習内容を最適化しろ!」
おお、すごい。
成績いいやつが言いそうなセリフ。
俺の転生前のアレコレはお察しだからな。
というか、この体も別に学力的に優秀ではない……。
「そうか……そうだな」
それっぽく頷いとこ。
「汗をお舐めします、デスアクメ様!」
「拭け! 手に持ってるタオルはなんだ!」
「これは私のよだれ拭き用です!」
「タオルは後で好きにしてかまわん! 頼むからタオルで拭け!」
人前で舐めてくるな!
俺だって数日で慣れてきたんだから、コイツもいい加減落ち着かねーかなー。
「………………」
「………………」
いかん。
ハメゴイ将軍と仕事以外で会話ができてない。
サイコレズと二人でノリツッコミして、将軍をのけ者にするのも空気的によろしくない。
ゲーム脳で考えれば、ここは将軍とのコミュシーンのはずだ。
そういや聞いとかないとなって思ってたのを振ってみよう。
「ハメゴイ将軍よ。貴様はなぜ我が組織に属した?」
「どういうことだ?」
「いや、私は同志集めをサイコレズ参謀に任せていたからな。貴様個人の目的や過去を知らん。指導してもらっている以上、聞いておこうと思ったまでだ」
言動見てるとこいつ、健全な人間ぽい。
なんというか普通に“いいやつ”なんだよ。
なんで無差別広域洗脳なんてヤベー能力持ってるのか、それを平気で悪用できるのかわからん。
「何? そうなのか!?」
「あ、はい。興味なさそうでしたから、デスアクメ様に教えては……」
すまん。
記憶によれば単にゲームしてて忙しかっただけだ。
「私は、今の社会が嫌いだ!」
「そうか。私と同じだな」
なるほど。
「私を壊した輩をもてはやすクズ! 奴を野放しにする警察! 私を捨てた事務所! 私に非があると罵った家族! すべて社会もろとも壊してやる!」
「……なるほど」
「将軍は元アイドルだったんですけど、ストーカーに暴行されて、その動画が流出拡散。警察からは人気目的の狂言を疑われ、ストーカーは未逮捕。自作自演扱いで炎上。事務所から見捨てられ、親からはそんな仕事してるからだって言われたんですよ」
サイコレズ参謀が小声で教えてくれたが……重くない?
だから今回もステージで、アイドルっぽく自己顕示したいのかぁ。
そんな彼女の内心を想像するだけでもキツいんだが。
「そして私は今の能力に目覚めた! 私を嘲笑ったすべてを破滅させる能力に! 事務所も家族も破滅させた! 残るは不特定多数の愚かな人間すべてだ!」
「おお。貴様のその怒り、存分に解き放つがいい」
すごい迫力だ……本気の憎悪と絶望を感じる。
まさに悪役の顔だ。
ふわっとした理由しかない俺としては、無難な中二相槌しかできない。
というか家族を自分で始末したから、アジトで生活してるのか。
他の面子もそれなりに重い過去を背負ってると考えるべきなんだろなぁ……。
「総帥も私以上に、この世界に怒りと憎しみを抱いているのだろう!」
「……そうだな」
なんか、すまんな。
確かに俺も家族は消滅させちゃってるが、就職しろ結婚しろってうるさかったからキレただけだし……その後も無軌道に生きてただけだからなぁ。
「ならば今は聞くまい! 私はこの世界に我が呪詛の万分の一とて、思い知らせてやるまで!」
お前の能力本気発動したら、万倍は十分思い知らせられそうだが。
まー、復讐ってのは本人が納得するまでが復讐だからな。
「そのためのステージか」
元アイドル、レイプ、炎上、破滅。
「私が舞台に上がった瞬間ではない! 私自身に視線を惹きつけた後、世界をひれ伏させる! 私を貶めた輩も目を向けるだろう! そして、私を穢した奴にも破滅をもたらす!」
「ん?」
犯人は捕まっていないんだったな。
さらに、将軍も能力で破滅させてない?
つまり犯人の正体は未だ不明ということ。
そして、原作ストーリー通りならハメゴイ将軍は最初に倒される……たぶん。
だとすれば。
「将軍よ。つらい話を聞くが、貴様を穢した輩はなぜ捕まらなかった? 通報はしたのだろう?」
「したとも! しかし奴は私のマンションに突然現れた! 建物内の監視カメラにも映像はなかった!」
「施錠した部屋に突然現れたのか?」
「いや、私は帰宅し部屋に入ろうとしたら……気がついたら私自身が部屋の中にいたんだ!」
わかりやすいな。
「……外見は覚えているか?」
「顔にはマスクをしていた! 肥満し脂ぎった男だったが、それなりに護身術を嗜んでいた私も歯が立たなかった!」
思い出すのも、つらそうだな。
本気で怒り、憎んでるのもわかる。
目の前でこんな話を聞かされりゃ、俺だって犯人に怒りが湧く。
二重の意味でな。
「そうか。犯人はわかった」
「なんだと!」
「ええっ! 警察では実際に、未解決というか将軍の自作自演で処理されてましたが!」
さっき見ただろが。これも原作補正なのか?
明らかに時間停止系の能力者。
元傭兵だが、十年ほど前に引退して激太り。脂ぎったおっさんになった。
写真ではまさに、種付けおじさんって外見。
時間停止してカメラの死角を移動して尾行、部屋に入る寸前で本人ごと押し入ったんだろ。
そして原作では将軍が敗北した後、そいつが尋問するわけだ。
よくあるパターンだよな。
かつて犯したヒロインが敵対してきたのを捕まえて、チン堕ちさせる。
どういうセリフでいたすのかも、すらすら浮かぶわ。
今回の作戦でステージに立つ彼女についても、いろいろ揶揄するんだろ。
「すべては作戦後に教えよう。今教えては、貴様が作戦実行より優先しかねん」
「ど、どういうことだ! 作戦現場にいるのか? まさかここに――」
「我々は全員、犯人と敵対している。それだけは約束する。作戦を終えれば、私から教えよう。だから、絶対に無事に戻るよう努めろ」
「ぐ……だが!」
「私を信じろ。私は貴様を守るため、共に立つのだ。問題が起きれば、私を盾にしろ」
本当によくあるパターンだよ。
俺もタネツケ司令に転生してたら、似たようなことしただろよ。
ハメゴイ将軍、背高くて乳と尻でかくて、態度が堂々としてる。同性にモテるタイプで、しかもアイドルだ。目を付けやすいし、くっころシチュにも合うだろさ。
無様に堕ちて“映える”タイプだよ。
けどな。
「わかっ、た! だが、総帥にも真剣にやってもらうぞ!」
「ああ、私も本気になる理由ができた」
被害者視点の話聞いて表情見てたら、胸糞以外何者でもねーだろ。
心底不快でムカつくわ。
原作があるのかないのか知らねぇけど、絶対ぶっ潰してやんよ。
「総帥、服が……!」
「きたぁああああああああああああああああああ!!!!」
あ、やべ。
また能力発動してしまった。
いつもの衣装以外でも能力で服が消えないようにならんとなぁ。
うっかりステージ上で、将軍の体の一部とか消しちゃったら申し訳ないってレベルじゃねーし。
■秘密結社サイドの能力まとめ
全員、能力使用による消耗とか特にありません。
総帥は眠くなるまで無敵状態維持できるし、長官はテレポート連発できる。
●デスアクメ総帥
絶対存在。ほぼ無敵。
物理干渉無効化、死んでも“死”自体を無効化。
自身の病気とか体脂肪とか苦痛とかストレスとか恐怖とか、本人に不都合なものはなんでも消せる。
老化も消してるので実年齢30だけど、外見年齢18歳。(エロゲ年齢設定)
肉体の自己リミッターも消せるので、咄嗟の行動ほどゴリラパワー。
無効化エネルギーを黒い炎として放出し、触れるものを消滅させたりもできる。
集中すればエネルギーの形を変えて剣とかにもできるが、射出はできない。
実は炎を発現しなくても体内では能力が常時発動している。
能力の強さに反して発動トリガーゆるゆるなのが、むしろ問題。
●サイコレズ参謀
吸血鬼。ほぼ不死身。
実年齢は八百歳以上だが、外見年齢19歳。
総帥の消滅エネルギー以外では、基本的に何しても死なない。
身体能力も強いけど、痛みは感じるので総帥ほどでじゃない。
コウモリとか狼とか霧とかに変身できる。
視線で催眠状態にしたり、血を吸って眷属化したりもできる。
一般的な吸血鬼弱点も持ってるけど、苦手なだけで即死するほどではない。
また長生きしてるだけに職歴も多く、アナログ的な意味で多くの技術や知識を持つ。
●Dr.ヤクギメックス
能力はない。
遺伝子工学の天才。倫理観は死んでる。
クローン作製を普通にしており、人格転移と人格コピーも可能。
自身のクローンによる研究効率化を行っている。
当人が死んでもクローン体に記憶セーブを移すのでほぼ不老不死。
特殊能力の原因をつきとめ、特殊能力持ちクローン量産を目指している。
能力耐性も特にないので、何かされたら普通に死ぬし状態異常に陥る。
●ハメゴイ将軍
無差別洗脳。
発動中に視覚および聴覚を向けた人間すべてを洗脳する。動物には無効。
リアルタイムなら映像中継等を介しても発動。
能力を受けると将軍か解除するか24時間経過するまで、判断力と記憶を失う。
将軍が命令すれば、その行動を機械的にこなすが自己判断はできない。
自殺的な命令も可能だが、記憶や技術は使えず単純命令をこなすだけ。
視点が定まらずよだれを垂らす、第三者から見ても明らかに異常な状態になる。
将軍から造られたクローン戦闘員は、同じ遺伝子を持つせいか効果を受けない。
戦略兵器級の能力だが、洗脳した人間を操って壁にする以外に己を守る手段はない。
当人にも自覚はあるため、格闘能力を高めている。
●カベジリ長官
テレポート。
任意の対象を、視界内または事前調査した特定位置に転移させる。
実際には「空間交換」であるため、既に物体のある場所にも転移可能。
石の中に転移させれば、石像が転がるため石化能力と誤解するかもしれない。
また、特定の物体一部を転移させたりもできる。
壁に穴を開けたり、人体を両断したり、体内に異物を送り込んで即死させたりも可。
自身へのテレポートは危機感によって自動発動するため、通常手段では拘束も殺害もできない。