コーディネーターを騙る一般転生娘は生き残りたい 作:ガンオンの亡霊
アガサ・クリスティ
C.E.71年1月24日。クルーゼ隊によるヘリオポリス襲撃、およびGAT-Xシリーズ強奪を翌日に控えたこの日、私はヘリオポリスにいた。そう、原作始まりの地にしてGAT-Xシリーズやアークエンジェル、プロトアストレイシリーズが極秘裏に製造されている重要地点、ヘリオポリスにだ。
C.E.53年のジョージ・グレン暗殺が未遂に終わったことを知ったあの日、原作通りか原作改変かと夢想する私の甘ったるい考えは原作諸共木っ端微塵に打ち砕かれた。
からくも暗殺を逃れたジョージ・グレンはコペルニクスの悲劇に巻き込まれる形で歴史の表舞台を去ることとなったけれど、何せ数々の偉業を成し遂げ、プラントの設立にまで携わった偉人だ。この十数年で世界に、特にプラントに与えた影響は計り知れない。
下手をすれば
ともかくあの日、私は原作が不変の運命ではないことを知った。それは
ほんの数秒間に合わなかっただけで誰かが死ぬなんて場面は何度もテレビで見ていたし、誰かが欠けていたら勝てなかった戦いだって何度も見た。何かの歯車が少し狂っただけでどれだけの悲劇が起こるかわからない。
もしストライクが大気圏への突入に失敗したら? アラスカからのアークエンジェル脱出が間に合わなかったら? ピースメーカー隊の核攻撃が成功したら? ジェネシスの発射阻止が間に合わなかったら?
そんな悲劇は絶っっっ対に認めない。私はハピエン厨にして光属性のガノタなのだ。
それからの私は死ぬほど努力した。文字通り血の滲むような努力を。
もうやめたいと何度嘆いたかわからないけれど、数多の推しCPを壊されるより辛いことや恐いことなんて無かったから頑張れた。
私にコーディネーターのような強靭な肉体や優れた知能はない。けれども原作のマユラ・ラバッツと同一の存在に生まれたと仮定するなら、オーブの新型量産機のテストパイロットに任じられる程度には、ナチュラルの中でも優秀な素質があるはず。そして何より、これから先の原作知識を持っている。
だから私は、いや、だからこそ私は、
生まれてから今日まで、17年に渡り積み重ねてきた成果、見せてやろうじゃないか。
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「なにが起きてるんです!?」
「ザフトに攻撃されてる! コロニーにモビルスーツが入ってきてるんだよ!」
ヘリオポリスの工業カレッジに通うキラ・ヤマトとその友人達は、今日この日、何が起きているかを未だに飲み込めずにいた。ザフトがこの中立のオーブに属するコロニー・ヘリオポリスに? 何故?
シェルターへの避難の最中、たまたま同行していた教授の客とかいう来訪者はその目的が何であるかを察して駆け出し、キラもまた、放ってはおけないという彼の優しさからくる感情のままに駆け出していた。
そうして少年は出会うことになる。
これまでテレビの向こう側にしか無かった戦場と。その中で武器を取るかつて生き別れた友人と。そして、秘密裏に開発・製造され、自らが乗り込むこととなる新型機動兵器。彼が呼ぶところの、ガンダムと。
教授のお客さんをシェルターに押し込むことは出来たものの、定員オーバーで自身は避難することが出来なかった。
他のシェルターへ向かうために仕方なしにさっきの工廠へ戻ってみれば、戦闘はより激化していた。
「危ない後ろ!」
作業服姿の、おそらくはオーブか連合側の女性の後ろに回り込むザフト兵が目に入り、気付けばそう叫んでいた。
間一髪、銃撃を避けながら振り向きざまにザフト兵を撃ち抜いた女性、マリュー・ラミアスは民間人からの予期せぬ援護に当惑し、歯噛みした。彼らは巻き込まれた側で、彼女らがここに戦場を持ち込んだ側なのだから。
「来い!」
「あっちのシェルターに行きます! お構いなく!」
「あそこにはもうドアしかない! こっちへ!」
来させてどうする? コーディネーターの軍隊相手にGだけでなく民間人まで守りながら戦えるのか? 軍事機密は? 民間人に近づかせてどうする?
こちらに来させてどうするつもりだったかなど、マリューの頭には無かった。
キラがそうであるように、生来の優しさというものは咄嗟に出てしまうものだ。この時の彼女にも、ただただ目の前の少年を案じる想いしかなかった。
少年は数メートルもの高さをものともせず、工廠に横たわるモビルスーツ上に飛び降りる。
その彼に気を取られた僅かな間の、しかし戦場では大きすぎる隙だ。
マリューと共に戦っていた兵士がザフト兵の銃弾に倒れ、マリューもまた上腕に被弾を負う。
マリューへ駆け寄るキラ。
その2人の視線が交錯するのは必然だった。
「キラ……?」
「アスラン……?」
戦場のただ中で、まるで時が止まったかのような錯覚を覚える。
思考が止まって、現実感が無いままただ呆然と立ち尽くして見つめ合う2人の僅かな静寂を破ったのはマリューだった。
銃を構えてザフト兵を狙い、発砲するが負傷した腕では照準もままならない。それでも、短刀しか持たないザフト兵にとっては十分な脅威には代わりなく、近付かせないことくらいはできる。
ザフト兵は堪らずに飛びずさり、距離を取っていった。
負傷したザフトの赤服を助け起こし、別の機体へ向かう
マリューによってモビルスーツのコックピットに押し込まれるまでの間、キラは彼の背中から視線を離すことが出来なかった。