コーディネーターを騙る一般転生娘は生き残りたい 作:ガンオンの亡霊
太宰治 - 『斜陽』
「無茶苦茶だ! こんなOSで……!」
「仕方ないでしょ……まだ未完成なのよ……!」
押し込まれた
実体弾の運動エネルギーや炸薬からもたらされる化学エネルギーに無類の防御力を誇る、連合の最新鋭技術
連合が、戦場を支配するモビルスーツを未だに実戦投入できないでいる理由はまさにその点にあり、いくら鹵獲した
物理的や生物学的に不可能というわけではないが、それこそ調整されたコーディネーター並の才能や、長期間に渡る並外れた努力が必要だろう。
しかし、その神業を持ってしても時間が足りないことは明白だった。何せ、ジンは
PS装甲がいかに堅牢とはいえ、コックピットに届く衝撃やパイロットへの負荷まで完全に打ち消せるものでは無い。加えて、常時装甲に通電しておく必要があり、また、被弾の瞬間に防御性能を発揮させる為にさらに電力を回す仕様上、どうしてもバッテリーの消耗は早くなる。
また、関節部やスラスター、センサー部、吸排気口などの非装甲部への被弾はどうしようも無い。このまま防戦を続けていても当たりどころが悪ければ撃墜も有り得るし、そうでなくともエネルギーが尽きればPS装甲だって切れてしまう。
揺らされるコックピットの中で操縦桿とコンソールを交互に捌きながら、なんとか再構築の隙を作れないかと歯噛みした、その直後だ。
特徴的なデュアルアイとV字のブレードアンテナを兼ね備えた、GAT-Xシリーズと似た雰囲気のモビルスーツが突如乱入し、そのシールドごとジンにぶつかっていったのだ。
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C.E.71年1月25日。この日を、私は生涯忘れることは出来ないだろう。
ヘリオポリスを振動が襲った瞬間、遂に来たかという高揚感と、遂に来てしまったかという恐れが入り交じって乱れた心を叱り飛ばして、すでに着用していたパイロットスーツのバイザーを下ろす。
全てこの日のために準備してきたのだ。
この日に間に合うよう
「あれはジンか!? ザフトの襲撃だってのか……!?」
「なら私も出る! Gやプロトシリーズをやらせるわけにはいかない!」
そう言いながら機体に乗り込んでしまえばこっちのもの。
開発チームがいくら渋ろうと、動き出したモビルスーツを止める手立てなんてない。
ここヘリオポリスで製造されていた、連合軍の
その成果物がプロトシリーズと呼ばれるP1からP3までの機体。アストレイシリーズと言えば聞き馴染んだ名前だろう。
P1のゴールドフレームはすでに運び出されているけれど、ここにはまだP2レッドフレームとP3ブルーフレームがある。そしてこの2機は外伝で重要な役目があるから、何があっても壊させるわけにはいかない。
そして私が駆る
プロトシリーズは外伝での役目があるから持っていけないし、かと言ってGAT-Xシリーズの6機目を作らせるなんてところまで介入出来なかった事情から生み出された、正史に存在し得ない機体。
MBF-00 試作量産型アストレイ。
アストレイ系列特有の、フレームが剥き出しの華奢にも見えるシルエット。その胴体部に乗っかる見慣れた意匠のガンダムフェイス。M1アストレイでは赤色に塗装されていたフレーム部分は、試験機を示すオレンジ色に染め上げられている。
M1アストレイならぬM0アストレイとでも言うべき、量産にあたってプロトシリーズから何をオミットし、何を付け加えるかの試験を行うテストベッドとして誕生させた機体。正史に存在しない以上、本来なら開発ツリー上は必要のない機体。
しかし、私が正史に介入するためにどうしても必要であり、このタイミングで用意出来た最大限の愛機だった。
ナチュラルに転生した私に唯一与えられた、原作知識というアドバンテージ。
それがもたらしたのは、誰よりも早くモビルスーツの時代への備えを始めることが出来た準備期間の長さに他ならない。
いつの時代も、子供が最初に学ぶような内容に大差はない。
転生者特有の前世の基礎学力を活かせるうちに、幼年学校から飛び級を繰り返しては瞬く間にハイスクール課程を修め、何年に1人の神童と大人達を錯覚させて取り入り、モルゲンレーテ社の奨学生として9歳で工業カレッジへ入学。
将来はジョージ・グレンのように宇宙を探検したいなどと嘯いては、彼が木星探査時に用いて、後の戦闘用モビルスーツの原型となった宇宙機器モビルスーツの
もちろん、一学生であり、コーディネーターの優れた頭脳を持たない私に出来る研究なんてそんなに大それたものじゃないし、ザフトが成し遂げたモビルスーツの軍事転用なんて夢のまた夢だ。
けれど、膨大な時間さえ注ぎ込めば
モビルスーツはコーディネーターにしか動かせないと言っても、それは別に選ばれし勇者にしか抜けない剣だとか、特別な因子を持っていなければ起動しないだとか、そういったファンタジー的な意味合いじゃない。
ただ単にナチュラル用のOSが未成熟なだけだ。
ここでガンダムF91の一幕を思い出して欲しい。シーブック・アノーが操縦するF91がウェポンハンガーからビームライフルを取ろうとして空振り、管制に怒られるシーンだ。あの時の管制は、「近付いたらあとはオートでやるんだよ!」と言っていた。
私は、ここにヒントがあったと考え、ある仮説を立てた。
この世界のモビルスーツ用OSはオートでの動作や姿勢制御のようなパイロットの補助機能に乏しく、これらをパイロットの技能で補えるコーディネーターのみがモビルスーツを兵器として成立させることが出来る、という仮説だ。
そしてこの仮説は、宇宙機器モビルスーツの操縦シミュレーターに初めて触れたとき、確信に変わった。
コーディネーター達はモビルスーツの緻密な動作や機体制御までほとんどマニュアル操作でやっていたのだ。それこそ宇宙空間や空中での姿勢制御や、歩行の為にどちらの足をどのタイミングで前に出すかすらマニュアル操作なのだ。コントローラーで前方移動を入力すれば良いゲームとは訳が違う。
事実、ナチュラルがナチュラル用のOSを搭載していないモビルスーツを動かせば、歩行させるくらいが精一杯で飛んだり跳ねたり走ったりなんて到底出来たものじゃない。戦闘なんて夢のまた夢だ。
けれど、その制御部分を担うOSさえ、もっと具体的に言うならパイロットの補助機能が成熟したOSさえ作ってしまえば、ナチュラルでもモビルスーツを扱えるということである。これがナチュラル用のOSと言われるものだ。
原作では、C.E.69年にL5で軍事用モビルスーツと交戦した地球軍(それも後のハルバートン提督と一部の議員が秘密裏に始めただけ)が機体とナチュラル用OSを作り始めており、開発期間が短すぎて間に合っていなかっただけだ。
キラの協力でナチュラル用OSの完成を大幅に短縮させることは出来たが、そうでなくとも時間さえあればゆくゆくは完成していた代物。
だったら、ちょっと優秀なナチュラルでしかない私でも、十分な時間さえあれば作れない道理はない。
そうして私は、私が持つ唯一の強みである準備期間を考えうる限り活かし、
「ここまでやったんだから、間に合ってよ……!」
慣れた手順で起動シークエンスを終える頃には、地下工廠(と言ってもコロニー内から見た話であり、実際はコロニーの外壁内)からコロニー内へ続く通路へのゲートが解放されていた。
渋りながらも最後には我儘を聞いてくれるチームの皆に感謝しつつフットペダルを踏み込み、薄暗い、無機質な通路へと機体を進ませた。
※モビルスーツ用OS関連の設定は筆者の妄想です。